起訴前別件による逮捕状、勾留状乱発禁止の件(決議)

近時、往々にして起訴前の勾留期間満了、又は保釈等により釈放された場合に、予め用意された他の被疑事実に関する逮捕状又は勾留状を以て引続き逮捕拘留をなす事例がある。


斯ることは、起訴前の勾留期間の制限並に保釈制度の立法精神に反し、人権擁護の立場より憂慮に堪えない。  


爾今、右の如き乱用なきよう当局に深甚なる注意を要望する。


1954年(昭和29年)8月4日
於札幌市、人権委員会秋季総会


理由

拘禁の連続により、自白強要の不当は言をまたない。刑事訴訟法の改正で斯る弊害の根絶を期待していたが、捜査当局は、捜査の必要を口実として牽連犯又は性質上連続犯に於て往々不当な手段による拘禁の連続が行われていることは、目撃し、経験するところである。勿論期間の経過により拘置所の門前では代用監獄で再び逮捕されている事例を見るは洵に不当極まるので黙視し得ない。


捜査当局は、往々にして斯る逮捕状や、勾留状の乱用を当然と考え、今や慣例化せんとしているのではないかと憂うるものであり、捜査当局のかかる怠慢化に対して警鐘を打ち、根絶を切望する。