刑の消滅と之が対策について要望の件(臨時決議)

刑法第34条の2は刑罰につき体刑は10年、罰金は5年、刑免除の場合は2年にして各その刑の言渡は効力を失うと規定している。


然るにも拘らず、実際の取扱については


  1. 一般社会は右の法律上の効果如何に拘らず依然として前科者扱を為し、
  2. 検察庁においても前科ありとしての取調及び調書の作成を為すのみならず、前科なしと答えたため事実を否認するものとして不利に取扱われた事例があり、
  3. 市町村役場は身上調査に際し既に消滅した刑を記載回答する事例多く

その他類似の事例は一つにして止まらない。


よって当局におかれては、前科抹消を規定した法の本旨に副うよう関係官庁に警告を発し、関係官庁は固より一般社会における取扱を速かに改善する措置を講じ人権擁護上遺憾なきよう期せられたい。


1954年(昭和29年)5月15日
理事会


理由

刑の消滅と之が対策につき伊藤英夫委員より提案があり、定例委員会において慎重検討したるところ前記要望の如く万場一致議決したので、日弁連において之が改善措置を促すよう進達する。