人身売買禁竭に関する件(決議)

東北地方農村その他に於て、人身売買の悪幣依然として存続することは人道上看過し難いところである。


当局は、速かにこれを禁竭するの方途を強化すると共に活溌なる啓蒙運動を推進し、併せて之等困窮せる者に対する保護施設を拡充実施せられんことを切望する。


1950年(昭和25年)10月21日
於京都市、人権委員会秋季総会


(理由)

米国における黒人売買の解放をリンカーンが行ったことは史上特記すべきものであって、境遇、地位、職業によって自由を有しないということは不当である。人身売買は憲法で禁止されているにもかかわらず今日なお官辺の調査によれば、2,000件にも及ぶといわれているが洵に悲惨であり、文化国家として屈辱である。


政府の施策に労基法、少年福祉法、教育法があるが不充分と思う。当局は、更に法令の完備、社会保障の確立、啓蒙運動の推進をなし、人身売買の根幹を絶たなければならない。


右決議実現のため理事会の承認を得右決議要望先に対し左記調査事例を具して、善処方重ねて要望した。


昭和26年1月20日
人権委員会


1. 山形県下事件

(略)


2. 群馬県下事件

(略)


3. 荒川区内事件

(略)


4. 横浜市内事件

(略)


5. 横浜市内事件

(略)


6. 渋谷区内事件

(略)


(参考事項)

日本政府が国連経済社会理事会第6回社会委員会に対して、昭和25年4月末迄の調査として提出した資料によると


  1. 労働省より労働基準法違反の面から摘発したものだけで同法実施以来1年間に2,300件に達していると報告されており、
  2. 厚生省よりは児童福祉法違反の面から取上げただけで戦後より2,014件に及んでいると報告されている。