取調べの可視化を実現し刑事司法の抜本的改革を求める決議

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我が国では、これまで捜査官による密室での違法・不当な取調べが繰り返され、自白調書の作成過程が検証できない構造の中で、多くのえん罪が生み出されてきた。この数年の間における、志布志事件、氷見事件、足利事件、布川事件、厚労省元局長無罪事件等の経過は、これを明らかにした。殊に、主任検察官による証拠のねつ造まで明らかとなった厚労省元局長無罪事件は、捜査・公判の在り方を抜本的に改革する必要があることを一層強く認識させるものとなった。


当連合会は、かねてから、捜査官による違法・不当な取調べによる虚偽自白を防止するとともに、真に公正な裁判を実現し、えん罪を根絶するためには、取調べの可視化(取調べの全過程の録画)、触法少年調査の可視化(調査の全過程の録画)、証拠開示を含む武器対等原則の実現、人質司法の打破、国選弁護人(付添人)制度の充実、代用監獄の廃止等が不可欠であるとして、これを強く求めてきた。また、本年1月には、具体的なえん罪事件の発生原因を究明するため、新たに、独立した第三者機関を設置するよう政府に求めた。


今こそ、これらの刑事司法改革の諸課題を実現するべき正念場に立ち至ったというべきである。


とりわけ、取調べの可視化が、違法・不当な取調べを根絶させ、自白の任意性・信用性をめぐる争いを消滅させ、「自白調書」に依拠した捜査・公判の構造を抜本的に改革することにも繋がる喫緊かつ最重点の課題であることは疑いを入れない。触法少年の警察官による調査についても同じことがいえる。


本年3月31日に発表された検察の在り方検討会議の提言は、取調べの可視化に向けた明確な提言をなすには至らなかったものの、取調べの可視化につき、検察の運用及び法制度の整備を通じて、今後、より一層、その範囲を拡大するべきだとし、コミュニケーション能力に問題がある被疑者等やいわゆる特捜事件等についても、取調べの全過程の録音・録画を含め広範囲な試行を行い、試行開始後1年をめどとして多角的な検証を実施し、その検証結果を公表すること等を提言している。


この提言の趣旨に従い、知的障がい者、少年、外国人等のいわゆる供述弱者を被疑者とする事件においては、取調べの全過程の録音・録画が幅広く施行されなければならないし、特捜部等における取調べについても、相当数の事件において確実に取調べの全過程の録音・録画の試行がなされなければならない。そして、新たな検討の場においては、最終答申を待たずして、まず取調べの可視化(取調べの全過程の録画)の制度化を先行して結論付けるべきである。


強大な権限を有する捜査機関が証拠をねつ造までする状況の中では、捜査機関の収集した証拠を早期かつ全面的に弁護人へ開示して、えん罪を防止するとともに、刑事手続における実質的な当事者対等を実現するための制度改革が求められている。


また、国際人権法の求める身体不拘束の原則を実現するため、現在の勾留・保釈の運用の早急な改善と具体的な制度改革が必要である。弁護人の援助を受ける権利を実効あらしめるため、身体拘束全事件における被疑者国選弁護制度の実現も急務であり、逮捕段階にも国費による弁護制度は及ぼされなければならず、その仕組みを具体化し、実現しなければならない。


さらに、少年審判において、少年をえん罪の危険から守るとともに少年の環境を調整して立ち直りを援助する弁護士付添人の役割は極めて重要であるが、現行の国選付添人制度は、その対象事件を重大事件に限定しており、被疑者段階で選任された国選弁護人が家庭裁判所送致後には国選付添人として活動できないという制度的矛盾も発生している。当連合会は、2009年12月、少年鑑別所送致の観護措置決定により身体拘束された全ての少年の事件を対象とする全面的国選付添人制度の実現を提言しているが、この間の取組により弁護士の対応態勢が確保され、同制度実現のための条件は既に整っているのであり、速やかに国選付添人制度の対象事件を身体を拘束された少年の事件全件に拡大することが求められている。


ここに、当連合会は、


  1. 遅くとも来年度の通常国会までに、被疑者取調べの可視化(取調べの全過程の録画)を、対象事件の範囲を段階的に拡大することを含め、法制化すること、及び触法少年調査の可視化(調査の全過程の録画)を法制化すること。
  2. 上記1の法制化がなされるまでの間、各捜査機関の捜査実務運用において、取調べ・調査の全過程の録画を、できるだけ広範囲で実施すること、特に知的障がい者、少年、外国人等のいわゆる供述弱者及びいわゆる特捜事件については、弁護人等の求めがあれば原則として取調べ・調査の全過程の録画をすること。
  3. 捜査機関が収集した証拠リストの弁護人への交付を含む全面的証拠開示制度を早急に整備すること。
  4. 勾留・保釈の運用を抜本的に改善するとともに、出頭等確保措置を導入し、あわせて勾留及び保釈除外事由の要件の厳格化、起訴前保釈制度の創設を行うこと。
  5. 速やかに被疑者国選弁護制度の対象事件を身体拘束を受ける被疑事件全件に拡大するとともに、逮捕段階の被疑者を国費による弁護制度の対象とする制度を創設すること。
  6. 国選付添人制度の対象事件を少年鑑別所に収容されて身体拘束を受ける少年の事件全件に拡大すること。

を求めるとともに、これらの制度の実現のため、当連合会は、全力を挙げて取り組むものである。


以上のとおり決議する。

2011年(平成23年)5月27日

日本弁護士連合会


 

(提案理由)

第1

1992年に全国実施されるに至った当番弁護士制度は、本年、20年目を迎えた。当番弁護士制度は、弁護士の刑事事件離れも含め、「ほとんど絶望的」とまでいわれた刑事司法改革の鍵は、被疑者弁護の充実にあるとの認識に基づき、1990年、大分県、福岡県から始まり、2年を経ずして、全国で実施されるに至った。そして、この全国での当番弁護士制度の実践とその成果は、法制度そのものの改革をもたらし、2006年に至って被疑者国選弁護制度の一部実施、2009年の本格実施に結実した。いまだ不十分ではあるものの、国選弁護報酬は労力に見合ったものにする方向での改善がなされ、刑事弁護の裾野は大きく拡がり、ともすればボランティア活動視されてきた刑事弁護は、ようやくにして、弁護士にとっての本来の職域となったともいえよう。


被疑者国選弁護制度は、司法制度改革審議会の意見書に基づき実施に移されたが、同時に提言され、2009年に実施されるに至ったのが、裁判員制度である。当連合会は、陪審制の実現を発足当初からの課題としてきたが、選択制は採用されず、裁判員が量刑にも関与するなど陪審制とは異なるものの、市民の司法参加が実現したことになる。その後2年にわたる実績の中で、裁判員制度は、公判前整理手続による証拠開示の前進をもたらし、また、調書裁判、自白中心主義といわれてきた我が国の刑事裁判を変貌させつつある。


こうして始まった刑事司法の改革の進展の中で、取調べの可視化(取調べ全過程の録画)を始めとする諸課題が、目前の課題、次なる課題として浮上している。


第2

当連合会は、1980年代における死刑再審無罪4事件などを契機にしながら、捜査官による違法・不当な取調べによる虚偽自白を防止するとともに、真に公正な裁判を実現し、えん罪を根絶するため、代用監獄の廃止、人質司法の打破、国選弁護人(付添人)制度の充実、証拠開示を含む武器対等原則の実現、取調べの可視化(取調べの全過程の録画)等が不可欠であるとして、これらを実現するため活動してきた。また、本年1月には、死刑再審無罪4事件を経験しながら、おざなりな対応しかなされてこなかった経過を踏まえながら、現に発生しているえん罪事件の誤判原因を究明するため、新たに、独立した第三者機関を設置するよう政府に求めた。


そして、この数年の間に、志布志事件、氷見事件、足利事件、布川事件、そして、厚労省元局長無罪事件等、数々の重大なえん罪が明らかになった。また、大阪での警察官任意取調べの録音テープがマスコミに公表され、自白強要の実態が市民の知るところとなった。今こそ、えん罪を生み続けてきた我が国の刑事司法の構造を抜本的に変革すべき刻であり、我々は、不退転の決意で、この改革を実現しなければならない。


第3

とりわけ喫緊の最重要課題が、取調べ・触法少年調査の可視化(取調べ・調査の全過程の録画)の実現である。


  1. 過去には、世界の多くの国でも、密室での取調べがなされていた。しかし、えん罪事件や取調室の中での人権侵害事件の発生により、密室での取調べの抱える本質的かつ致命的な欠陥が明らかになるにつれて、多くの国が、密室での取調べをなくした。英国、オーストラリア、米国等の欧米諸国において、またアジアでも、韓国、台湾、香港等において、取調べの録画・録音、弁護人の立会い等による可視化がなされるに至っている。


    違法・不当な取調べをなくすために、取調べの内容を検証可能なものとすること、すなわち、任意を含む取調べの全過程を録画することが不可欠である。取調べの全過程の録画によって、違法・不当な取調べ自体が減少することは、諸外国の例を待つまでもなく明らかである。また、既に開始されて2年が経過した裁判員裁判においては、市民にわかりやすい審理が求められるとともに、できるだけ明瞭な証拠によることとし、裁判員に過大な負担をかけないことが求められている。自白調書の任意性や信用性をめぐって多くの証人尋問が行われるなど、公判における長期で判定困難な審理を強いることは極力避ける必要がある。そのためにも、取調べの可視化が必要であり、取調べの全過程の録画によって、自白の任意性・信用性をめぐる争いが大幅に減少することは、諸外国の例が示しているところである。


  2. 全過程の録画が不可欠であることは、少年法第6条の2に規定された触法少年の調査についても当てはまる。


    2007年の少年法「改正」により、触法少年に対する警察の調査権限が法定され、警察は触法少年に対する実質的な取調べができることになったが、触法少年は、一般に、被疑者取調べの対象になる犯罪少年以上に未熟で被誘導性・迎合性が強く、虚偽自白をする危険は成人以上に大きい。警察官の触法少年に対する調査の全過程が録画されるべきである。


  3. 最高検察庁は、2006年5月から「裁判員裁判対象事件における被疑者取調べの録音・録画の試行」を開始したが、被疑者の否認している場面などの録画はなされず、自白調書が作成された後の署名押印する場面か、自白調書を作成した後に、過去の取調べの状況を振り返って質問する場面が録画されるにすぎず、およそ、取調べ自体の録画とはいえない。また、これまで多くの虚偽自白を生み出してきた警察官による取調べについては、検察官と同様の方法で録音・録画を行うことがあるとされたものの、実際に録画される例は極めて限定的であり、これもまた、取調べの内容を検証するという目的に資するものとはなっていない。


    そればかりか、このような一部録画は、捜査官にとって都合の良い場面を切り取って録画するものであり、取調べの実情をかえって隠蔽する危険を孕んでいる。


  4. 厚労省元局長無罪事件を契機として設置された検察の在り方検討会議には、この取調べの可視化に向けた明確な提言が求められていたにもかかわらず、本年3月31日に発表された同会議の提言にこの点が盛り込まれず、新たな検討の場に先送りになったことは遺憾である。


    一方、この提言は「被疑者の取調べの録音・録画は、検察の運用及び法制度の整備を通じて、今後、より一層、その範囲を拡大するべきである」との方向を示すとともに、「知的障害によりコミュニケーション能力に問題がある被疑者等に対する検察官の取調べ」において「取調べの全過程を含む広範囲な録音・録画を行うよう努め」て取調べの録音・録画の試行を行うこと、特捜部等において「取調べの全過程の録音・録画を含め」た試行を行うこと、試行開始後1年をめどとして多角的な検証を実施し、その検証結果を公表することなどを提言している。


    この提言の趣旨に従い、知的障がい者、少年、外国人等のいわゆる供述弱者を被疑者とする事件においては、取調べの全過程の録音・録画が幅広く試行されなければならないし、特捜部等における取調べについても、相当数の事件において確実に取調べの全過程の録音・録画の試行がなされなければならない。これらの事件及び触法少年の調査については、少なくとも弁護人等の求めがある場合には、原則として、取調べ・調査の全過程の録画がなされるべきである。


    また、新たな検討の場においては、最終答申を待たずして、まず取調べの可視化(取調べの全過程の録画)の制度化を先行して結論付けるべきであり、直ちに全事件を対象とする制度化が困難だとすれば、対象事件の範囲を段階的に拡大することも検討されるべきである。


    弁護士には、このような運用及び法制の両面での取調べの可視化実現に向けた多様な弁護実践が求められている。

第4

我が国における刑事訴訟法は、もともと証拠開示に関する規定を欠いていたが、裁判員裁判に先立って導入された公判前整理手続の規定により、公判前整理手続に付された事件に限っては、証拠開示が弁護人の請求できる権利となった。これにより、従前に比べて証拠開示の範囲が飛躍的に拡大しているが、今なお、証拠の存否、類型該当性、主張との関連性をめぐっての紛糾が少なからず存在する。また、厚労省元局長無罪事件で行われたような検察官による証拠隠しを防止する規定とはなっていない。もとより、公判前整理手続に付されない事件については、弁護人の請求権すらない現状にある。このような現状を改革し、えん罪を防止し、刑事手続における実質的当事者対等の理念を実現するためにも、捜査機関の収集した証拠リストの弁護人への交付を含む全面的な証拠開示制度を早急に整備するべきである。


第5

我が国では他の国に比して、捜査・公判を通じ身体拘束率が極めて高い。これは、諸外国には存在する起訴前保釈制度がない上、勾留の理由及び権利保釈の除外事由として「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき」が定められていることにある。このため、実務では、抽象的な罪証隠滅の「おそれ」により、容易に勾留が認められ、保釈の許否に際しても、同様に保釈を認めない取扱いがなされている。


国際人権法は、被疑者の行為が「司法運営過程への妨害」に該当する場合にのみ、被疑者の身体を拘束することを認めているが、その基準はあくまでも「公正な裁判」が害されるか否かで、その要件は極めて厳格に解釈されており、その危険が具体的な資料によって裏付けられることが要求されている。


我が国での「人質司法」を打破するためには、無罪推定の原則に立って、被疑者・被告人の身体拘束を正当化する要件の見直しを図ることが強く求められる。捜査機関が被疑者等の身体拘束を利用して自白を強要したり、身体拘束により被疑者等の社会生活が破壊される事態が生じたりしている勾留・保釈の運用を抜本的に改善することが必要であり、そのために裁判所の果たす役割は非常に大きい。また、このような勾留・保釈の実情を抜本的に改善するためには、出頭等確保措置(いわゆる未決勾留代替制度)を導入して勾留を真に必要な場合に限定するとともに、勾留及び保釈除外事由の要件の厳格化、起訴前保釈制度の導入を実現する必要がある。


さらに、我が国では、被疑者は世界に類例をみない代用監獄に留置され、捜査官の支配下で、長時間・長期間にわたり自白を追求される構造になっており、このことが多くの虚偽自白を生んできた。代用監獄制度を廃止して勾留決定後の拘禁場所を拘置所に移し、長時間・長期間に及ぶ取調べを規制すべきである。


当連合会は、「人質司法」から脱却し、身体不拘束捜査の原則を具体化するための施策の実現を求める。また、私選弁護事件での保釈率が50%程度であるのに対し、国選弁護事件でのそれは5%程度で推移している。保釈における貧困を理由とする差別の現状を解消するため、立法措置なしに実現可能な新たな保釈保証制度の創設を推進する。


第6

痴漢えん罪事件の多発にみられるように、えん罪の危険は、重罪事件に限らない。軽罪においては、早期に身体拘束からの解放を得るために、えん罪を争わずに認めてしまう場合も多い。


それにもかかわらず、現在の被疑者国選弁護制度は、その対象事件を死刑又は無期若しくは長期3年を超える懲役若しくは禁錮に当たる事件に限定している。このような限定がなされたのは、弁護士・弁護士会側の対応態勢が整わないと想定されたことが主たる理由であった。しかし、現在では、弁護士会等において対応態勢は整いつつあり、被疑者国選弁護の対象事件を全ての身体拘束被疑者に速やかに拡大するべきである。


また、現在の被疑者国選弁護制度は、勾留決定後の被疑者を対象としており、逮捕段階については対象としていないが、逮捕段階において弁護人の援助を受ける権利を実効的に保障することは極めて重要である。この逮捕段階における弁護については、弁護士会が運営する当番弁護士制度、刑事被疑者弁護援助制度によって対応しているが、被疑者国選弁護制度の逮捕段階への拡大、又は国費による当番弁護士制度の創設により、拡充を図るべきである。


第7

弁護士付添人は、少年審判において、非行事実の認定や保護処分の必要性の判断が適正に行われるよう、少年の立場から手続に関与し、家庭や学校・職場等少年を取りまく環境の調整を行い、少年の立ち直りを支援する活動を行っている。少年審判において、弁護士付添人の存在は、極めて重要である。しかしながら、多くの少年やその保護者には、弁護士付添人の費用を負担する資力がなく、仮に保護者に資力があったとしても、少年のために費用を支出することには消極的な場合がほとんどであって、国費により弁護士付添人を付する制度がなければ、少年が弁護士付添人の援助を受ける権利は実質的に保障されない。それにもかかわらず、現行の国選付添人制度は、その対象事件を強盗、殺人等の重大事件に限定し、しかも家庭裁判所の裁量で付するという極めて限定的な制度となっている。2009年に国選付添人が選任された少年は、少年鑑別所に収容された少年1万1241人のうち、わずか516人(約4.6%)にとどまっている。


2009年5月21日以降、被疑者国選弁護の対象事件が、死刑又は無期若しくは短期1年以上の懲役若しくは禁錮に当たる事件から、死刑又は無期若しくは長期3年を超える懲役若しくは禁錮に当たる事件に拡大された。その結果、少年事件の多くで、被疑者段階で選任された国選弁護人が、家庭裁判所送致後には国選付添人となることができないという事態が生じている。被疑者国選弁護人は、家庭裁判所での少年審判を見据えて、少年に働きかけたり、被害者と示談交渉をする等の弁護活動を行っている。それにもかかわらず、少年側が私選で選任しない限り、付添人として審判における活動ができないのは、大きな制度的矛盾である。この意味で、国選付添人の対象事件を拡大し、この矛盾を解消することは、緊急の課題である。


当連合会は、2009年12月18日、「全面的国選付添人制度に関する当面の立法提言」を採択し、国選付添人制度の対象事件を少年鑑別所送致の観護措置決定により身体拘束された全ての少年に拡大するとともに、家庭裁判所の裁量のみならず少年又は保護者の請求があった場合も国選付添人を選任する制度に少年法を改正すべきであるとの提言を行った。そして、当番付添人制度を全国で実施するとともに、被疑者国選弁護人に選任された弁護士が家庭裁判所送致後も引き続き付添人として活動する体制の確立を進めてきた結果、既に、全面的国選付添人制度を実現する条件は整ったといえる段階に至っている。この間、当連合会は、国選付添人が選任されない事件の弁護士費用を援助するため、全国の会員から特別会費を徴収して「少年・刑事財政基金」を創設し、これを財源として少年保護事件付添援助制度を運営している。2009年度には、その援助申込件数は6914件にのぼり、援助総額は約7億円に達している。しかし、少年にとっての弁護士付添人による援助の重要性に照らせば、本来、国費によって付されるべきものであり、援助制度はあくまでも、暫定的な措置である。


国選付添人制度の対象事件を、少年鑑別所に送致されて身体拘束を受ける少年の事件全件に速やかに拡大すべきである。


第8

以上の理由により、当連合会は、国に対し、決議第1項から第6項までに記載のとおり、求めるものである。

あわせて、当連合会は、これらの制度の実現のため、全力を挙げて取り組むものである。