第50回定期総会・日弁連創立50周年記念/司法改革の実現を期する宣言

1949年(昭和24年)9月、新弁護士法制定とともに創立された日本弁護士連合会は、本年で50周年を迎える。


弁護士法は、戦前の歴史の反省にたって、基本的人権の擁護と社会正義の実現を弁護士の使命と定め、その使命を遂行するために高度な自治権を弁護士会に負託した。


当連合会は、この50年の間、冤罪事件への取り組みをはじめ公害、環境、消費者、労働問題など社会的弱者の生活と権利を守るため、幅広い分野において人権擁護活動を進めるとともに、法律制度の改善や民主的な司法制度の確立をめざす活動を展開してきた。


しかし、わが国の裁判所の現状は、いつしか民主化の指向と離れ、納得のいく裁判を求める市民の期待にこたえているとはいえない状況にある。弁護士及び弁護士会においても、市民のための司法を実現していくうえで、その役割を十分果たしてきたとはいえず、数多くの課題を抱えている。


当連合会は、1990年(平成2年)から三次にわたり司法改革宣言を行い、市民のための司法改革を提唱し、法律相談センターの拡大や当番弁護士制度の全国的展開など市民の司法と弁護士へのアクセスを強め、司法の容量と市民的基盤の拡充をめざしてきた。 われわれが自らの改革を含め積極的に取り組んできた司法改革運動は、未だ実現途上にあるものの、大きな前進を遂げてきた。おりしも21世紀を目前にした今日、司法制度の改革と基盤整備を目的とする「司法制度改革審議会」設置法案が国会で審議されている。


昨今の急激な社会の複雑・多様化、国際化に加え、規制緩和などの動きは、基盤整備としての司法機能の拡充を求めているが、このような時にこそ、市民社会の隅々まで、人権擁護と社会正義の実現を使命とする弁護士の活動分野が広げられることが強く期待されている。


当連合会は、1998年(平成10年)11月、「司法改革ビジョン」を策定し内外に発表した。この「司法改革ビジョン」は、日本国憲法と世界人権宣言の理念に基づき、個人の尊厳と市民の人権保障並びに公正な社会を築く観点から、社会のあらゆる分野に法と正義が行きわたることをめざす司法改革構想とこれを担う弁護士像を掲げた。すなわち、社会の変化や社会的弱者の立場を理解できる経験豊かな弁護士を中心として裁判官を任用する法曹一元制度の導入、市民が裁判に参加する陪・参審制の実現、法律扶助制度の抜本的改革、国費による被疑者弁護制度の法制化、行政争訟手続の強化、弁護士偏在解消のための法律相談センターや公設法律事務所の設置並びに弁護士業務の改革などである。


当連合会は、この記念すべき年を迎え、全会員が国民から負託された弁護士自治の重要性を再確認し、これをいっそう強固なものにして人権擁護活動をさらに推進し、国民とともに国民の立場に立って「司法改革ビジョン」に掲げる改革を実現するために全力を尽くすことを誓う。


以上のとおり宣言する。


1999年(平成11年)5月21日
日本弁護士連合会