第50回定期総会・介護保険・成年後見制度の実施に向けての決議

本年は、国際高齢者年であるところ、わが国では、来年(2000年)4月から「介護保険」と「成年後見」の二つの制度が実施される。


これらの制度が真に高齢者の権利と生活を保障し、高齢者にとって利用しやすい充実した制度として運用されるため、当連合会は、両制度の実施にあたり、国及び地方自治体に対して、以下の諸施策が実行されるよう強く求めるものである。


  1. 憲法25条と13条に基づいて、国の責任において高齢者の医・食・住を含む生活保障の基盤を整備し、高齢者の法的地位と権利性を明確に規定することを骨子とする高齢者基本法を早急に制定すること。
  2. 介護保険の実施にあたって、利用者の自己決定を実質的に可能ならしめ、簡易な苦情処理システムを整備するために、来年4月までに、
    1. 簡易な苦情処理システムを取り込んだオンブズマン制度を各市町村に設置すること。
    2. 要介護認定申請に対する審査基準、サービス内容、サービス提供施設の実情など、自己決定による選択を保障するための情報、及び不服審査請求を容易にするために必要な情報の開示システムを、各市町村において整備すること。
  3. 成年後見制度が高齢者の生活援助システムとして実効あらしめるために、
    1. 独居高齢者など、身近に成年後見の申立人を得がたい高齢者であっても、成年後見制度による援助を適時かつ迅速に受けることができるよう、隣人、福祉関係者等による通報から、市町村長による成年後見制度の申立に至る一連の手続を、国、都道府県もしくは市町村において整備し、一般に周知する方法を講じること。
    2. 国もしくは都道府県において、迅速、安価かつ信頼性の高い鑑定方法を開発するとともに、鑑定人確保の方法を講じること。
    3. 必要かつ適切な援助を受けることができるよう、都道府県もしくは市町村において、成年後見人を確保し、養成する体制を整備するとともに、就任した成年後見人に対する身上監護などの支援体制を整備すること。
    4. 低所得の高齢者に対し、成年後見人あるいは成年後見監督人の報酬を、国、都道府県あるいは市町村において公費補助する体制を整備すること。

以上のとおり決議する。


1999年(平成11年)5月21日
日本弁護士連合会