第32回定期総会・刑法「改正」に反対する宣言

(宣言)

法制審議会の答申による刑法全面「改正」はきわめて大きな人権侵害の危険を招来させ、わが国における民主主義の根幹をゆるがすおそれがあるといわなければならない。


当連合会はこのような刑法全面「改正」を阻止するために、ひろく国民とともに全力をつくすとの決意を宣言し、この方針を一貫して強力に実行してきた。


当連合会をはじめとする国民各層は右「改正」をきびしく批判し、今日まで答申による刑法全面「改正」を許すことなく、ねばり強く阻止運動を展開してきたが、一方答申の実現をめざす動きも、またこの間さまざまに続けられてきた。


答申以降7年を経過した現在、政府案のとりまとめをいそぐ動きが一層強まっていると伝えられ、刑法の全面「改正」をめぐる国民的な論議の発展と批判の集中が欠くことのできないものとしてますます重要になってきている。


このときにあたり基本的人権の擁護を責務とする当連合会は、今後とも現行刑法をこえる処罰の拡大と重罰化を内容とする答申の具体化にあくまで反対し、国民的論議の発展に寄与するとともに、会内外の総力を挙げた強力な阻止運動を進めるために全力を尽すものである。


右決議する。


1981年(昭和56年)5月30日
日本弁護士連合会


(提案理由)

当連合会は昭和49年5月25日の定期総会において、進行中の刑法全面「改正」がきわめて大きな人権侵害の危険を招来するものであることを指摘して、これを阻止するためひろく国民とともに全力をつくすことを宣言し、全国でさまざまな阻止運動をおこなってきた。


刑法は、それが多くの国民の人権に直接かかわるものであるだけに、その改正の是非について国民的論議を十分つくすことが不可欠である。


ところが、政府案をとりまとめようとの動きが進められていると伝えられる現段階において刑法全面「改正」阻止に向けて総力を結集する必要が一層大きくなっている。


われわれは、現行刑法をこえる処罰の拡大と重罰化に反対し、「改正」作業の白紙還元を求める立場を貫きつつ「改正」の危険性を国民の前にさらに明らかにすることを基本として、会内外の総力を結集して一層強力な国民的阻止運動を展開する決意を改めて表明するために本宣言を提案するものである。