第29回定期総会・裁判官新任拒否に関する決議

(第三決議)

最高裁判所は、本年4月3日、第30期司法修習終了の裁判官任官志望者中2名を不採用とた。


これについては従来同様その理由は示されておらず、思想・信条・団体加入等を実質的理由とする任官拒否との疑念を払拭し得ない。


当連合会は最高裁判所に対し、あらためて、かかる措置を行なわないようにするとともに、この際、公正かつ明確な裁判官採用基準を明定、公表するよう強く希望する。


また、考試についての合否の基準の明確化につとめ、不合格者に対しては成績の内容を告知するなど適正な手続きを確立し、もって司法に対する国民の信頼を確保するため万全の方策をとるよう要望する。


右決議する。


1978年(昭和53年)5月27日
第29回定期総会 於広島市


提案理由

当連合会は、最高裁判所が昭和45年第22期司法修習終了者以降、毎年の如く繰り返してきたいわゆる任官拒否につき、調査の結果、いずれも思想・信条・団体加入を実質的な理由とした疑いが極めて強く憲法の理念に照らして容認すべからざるものがあるとの見地から、かかる措置を行わないようその都度要望してきた。


しかるに、最高裁判所は本年もまた第30期司法修習終了者中裁判官志望者80名のうち、2名を不採用とした。


右措置については、従来同様何ら具体的理由が示されていない以上、先の疑念はなお払拭し得ないのである。


当連合会は、本年3月「法曹養成」をテーマとする第5回司法シンポジウムを開催して、憲法の理念に基づく国民のための法曹養成制度のあり方を探究するとともに、現行の司法研修所教育のあり方が、右の理念からかけ離れつつある現状を指摘した。


特に昭和45年以来くり返されている任官拒否が考試制度の最近の運用と併せて司法修習生に大きな影響を与えていることは強く指摘されたところであった。


以上に鑑み、当連合会は、最高裁判所が今後裁判官の新任についての公正な採用の基準を確立すること、また不合格者に対する成績内容の告知など、その運用に意を尽すことが、ともに国民の司法に対する信頼を確保する所以であり、そのような措置をとられることを期待して、本決議を提案するものである。