第27回定期総会・いわゆるロッキード事件に関する決議

(第一決議)

いわゆるロッキード事件は、我が国の政治・経済の中枢にあるものが、多国籍企業から不明朗な利益の供与を受けて国民不在のまま我が国の政治をほしいままに左右した疑いがあり、我が国の主権と民主主義の根幹にかかわる憂慮すべききわめて重大な事件である。


よって、国会と政府・検察庁は、事件を速やかに徹底的に究明し、国民の前に政治責任と刑事責任の有無を明らかにすべきである。


右決議する。


1976年(昭和51年)5月22日
第27回定期総会


提案理由

ロッキード事件は、我々国民に深刻な衝撃を与え、全国民の関心の的となっている。我が国政治・経済の中枢にあるものが、米国の企業から不明朗な多額の利益の供与を受けて政治をほしいままにした疑いがある。この事件について、主催者たる国民が、真実を知る権利を有することはいうまでもない。万一、これほどの事件の真相が明らかにされず、うやむやに葬り去られるとすれば、国民は、国会・政府・捜査当局に対しはなはだしい不信と怒りを表明するであろう。国民の知る権利は、民主政治を支える基本的権利である。これを軽視すれば、民主政治は滅び去り、独裁的暗黒政治への道をたどることになる。我々がこの事件の徹底的かつ迅速な究明を求めるのはこのためである。


ロッキード事件は幾多の点で重大性を有するが、何よりも我々が深刻に受けとめなければならないのは、我が国の政治の中枢にあるものが、CIAと関係があると報道されかつ他国の大企業の手先となっているものと結託して私利をはかり、重要な国策をほしいままにした疑いがもたれていることである。このようなことが真実であるとすれば、主権無視もはなはだしく、また民主主義の根幹をゆるがすものである。


このような重大事件をあいまいにすることは、断じて許されないことである。しかるに、すでに百日を経過しながら捜査は遅々としており、また、事案を刑事事件の枠内にとじ込めようとする動きも見られる。刑事事件としてはもとよりのこと、政治責任を国民の前に明らかにすることこそ現下の急務である。 憲法を何よりも尊重する我々法律家は、憲法の根幹にかかわるこの重大事件を、迅速かつ徹底的に究明し、国民の前に政治責任と刑事責任の有無を明らかにするよう、国会・政府・捜査当局に要望する責務があると考え、この提案をする次第である。