第27回定期総会・司法研修所における法曹教育に関する決議

(第三決議)

およそ法曹は、ひとしく人権を重んじ、正義を追求し、何よりも憲法と良心に従って国民のために司法の運用を行なう不き独立の精神の持主でなければならず、法曹教育は、このような法曹を統一・平等・公正に養成するものでなければならない。


しかるに近時、司法研修所において、司法修習生の自主的研究を制約するなど、管理体制がいちじるしく強化され、また裁判官の任用に際し思想・信条・団体加入を実質的理由とする疑いのある任官拒否がなされ、修習生の間に区別意識をもたらすなど、司法研修所創設の理念にもとり、真の法曹教育がゆがめられる傾向のあることは憂慮にたえない。


法曹教育は、司法制度の根幹であり、法曹一元を指向すべきものであることをおもうとき、司法研修所におけるあるべき法曹教育の理念が貫徹されることを最高裁判所に対して要請し、我々はこのための改善に不断の努力を尽すことを決意するものである。


右決議する。


1976年(昭和51年)5月22日
第27回定期総会


提案理由

  1. 昭和39年8月、臨時司法制度調査会の意見書が内閣に提出されて以来、今日まで約12年を経過した。
    すべての裁判官は一定期間弁護士を経験したもののなかから採用すべきであるとの法曹一元制度は、在野法曹のみならず国民各層の宿願であるが、当連合会は、右意見書がこの法曹一元制度を棚上げしたばかりでなく、司法制度全般にわたり官僚化をはかるものであるとして批判してきた。しかるに最高裁判所は、この意見書にもられた諸施策を推進してきたばかりでなく、思想・信条・団体加入を実質的理由とする疑いのある裁判官の再任拒否や新任拒否を行うなどして、司法の独立をおびやかしている。
  2. このことは、司法の重要なにない手である法曹の教育面にもあらわれている。
    およそ、法曹は、裁判官・検察官・弁護士を問わず、ひとしく人権を重んじ、正義を追求し、何よりも憲法と良心に従って国民のために司法の運用にあたる不き独立の精神の持主でなければならない。司法研修所における法曹教育が、このような法曹を統一・平等・公正に養成すべきものとされているのもそのためである。
    しかるに、近時最高裁判所は、司法修習生の自主的研究活動を規制するなどして司法研修所における管理体制をいちじるしく強め、修習生活に自由闊達な空気を失なわしめている。
  3. また、今年度最高裁判所は、三名の青年法律家協会会員の任官拒否を行ない、採用した同協会会員を脱会させるなど、あからさまな差別をしている。これは裁判官に対する統制をねらったものであるばかりでなく、このような任官拒否は、また、司法研修所の修習生相互間および裁判官志望者相互間に区別意識をもたらしている。これは司法研修所創設の理念にもとり、真の法曹教育をゆがめるものである。
  4. 最高裁判所は修習終了後の若手裁判官に対しても、下級裁判所における代行判事補研さん制度や参与判事補制度の運用を通じ、強権的な訴訟指揮や大量迅速処理方法などの習得をさせている。これは裁判官の独立をおかすばかりでなく、現在の司法研修所における法曹教育と一貫性をもつ官僚的裁判官の養成といわざるを得ない。
  5. 法曹教育は司法制度の重要な柱の一つであり、前述のような法曹一元制度を指向すべきものでなければならないのに、司法研修所における法曹教育の現状が、そのあるべき理念からいちじるしくかけ離れていることはきわめて遺憾である。
    我々は、最高裁判所に対し、このような理念が貫徹されるようつよく要請するとともに、我々自身このための改善に不断の努力を尽すことを決意し、この提案をする。