第22回定期総会・司法の独立に関する宣言

(宣言)

戦後、国民の総意に基づき憲法に高く掲げられた、民主主義とその根幹をなす司法の独立は、20有余年を経た今日、今や重大な試練に直面している。


このときにあたり、人権擁護の崇高な使命をになうわれわれ在野法曹は、その総力を結集し、不抜の決意をもって、危機にたつ司法の独立を守り、国民の負託にこたえることを期する。


右宣言する。

1971年(昭和46年)5月29日
第22回定期総会


理由

われわれは、去る昭和44年5月の定期総会において、司法権に対する権力を背景とする圧力を排除し、その独立を守ることを期する旨の宣言を採択したが、その提案理由において「近年、議院内閣制による立法権と行政権の緊密化、換言すれば、国会の多数党が常に内閣を組織するという状態のもとにあっては、司法権の独立はいよいよ重大であり、人権擁護の最後のとりでとなっているのであります。国家権力が、自己の欲する裁判を実現するために裁判官に圧力を加え、もし不幸にして裁判官がその圧力に屈したときは、人権は法律の名においてじゅうりんされる運命となるでありましょう。我々在野法曹はそのような事態をひき起すいかなる兆候についてもこれを見逃すべきではないのであります。」と述べるとともに、「我々在野法曹は、人権擁護の最前線にある者として司法権に対する一切の不当な圧力を排除し、その独立を守る堅い決意を持って、民主国家の司法を国民のために死守する輝かしい責務にまい進したい」との所信を表明したのである。


しかるに、その後二年間にわたる事態の推移は、遺憾ながら、憲法が打ちたてた、民主主義に逆行する傾向がますます強まり「国家権力が、自己の欲する裁判を実現するために裁判官に圧力を加え」ようとする「兆候」が増大していることを示しているものといわざるを得ないのである。とくに、最近の一連の司法行政上の措置は、裁判官に対して、その思想・信条或いは団体加入等を実質的理由として、その身分保障をおびやかし、ひいては司法の独立を侵すものとの疑いが強く、その疑惑は今やひろく国民の間に深まっている。かくては、司法に対する国民の信頼は著しく失われ、戦後、貴重な歴史的体験にかんがみ国民の総意によって憲法に打ちたてられた民主主義の存立すら危殆に瀕するであろうことを憂えるものである。


われわれ在野法曹は、かかる重大な時期にあたって、あらためて二年前の宣言の趣旨を再確認するとともに、総力を結集し、確固たる決意をもって、国民とともに危機にたつ司法の独立を守り、人権擁護の崇高な責務を果したいと考えるものである。


よって、ここに右宣言するものである。


昭和46年5月29日
日本弁護士連合会