第18回定期総会・弁護士に対する事業税廃止に関する決議

(第二決議)

弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とし、その職務は高度の公共性を有するものである。


よって、当局は弁護士に対する事業税を廃止すべきである。


右決議する。


1967年(昭和42年)5月27日
第18回定期総会


提案理由(議事録より)

地方税法に規定される事業税は、物的資本により利潤を追求し、事業主が死亡したり交代したりすることがあっても容易に継承される営利企業の収益に対して賦課されるべきが本筋ではないかと考えるものであります。


ご承知の通り、地方税法第72条に規定されている第1種事業、第2種事業は矢張り典型的なものでありますが、第3種事業にあげられているものの中で弁護士業をはじめ、医業、歯科医業、弁理士業、税理士業、公認会計士業、計理士業等の自由職業があり、これらの自由職業は物的資本により利潤を追求し、且つ承継性の強い営利企業とは本質的に明らかに異るものであります。


また、同じ第3種事業の中に理容業、美容業、クリーニング業、公衆浴場業のごとき業種があり、自由職業と同一の扱いをされていることもわれわれの到底理解に苦しむところであります。


他方社会保険関係におけるところの医業歯科医師業等は特別立法をもって事業税課税の対照から除外されておる。これまたご承知のところでございますが、我々弁護士の事業税課税は本質的に言っても首肯できないところでございます。


更に自由職業、就中、弁護士については他の営利企業に見られない高度の公共性があります。弁護士法第1条及び第2条により基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とすることが我々の本来の使命に外なりません。この使命に基いて誠実に職務を行い社会秩序の維持及び法律制度の改善に努力することが要請され、また、常に深い教養の保持と高い品性の陶治に努め、法律事務に精進する本来のそうした重き義務を負っているものであります。


憲法第37条第2項の規定からみて、資格を有する弁護人というのは我々弁護士を指すのに外なりません。


国選弁護制度あるいは法律扶助制度を通じて弁護士の公共性はつとに社会的に認識されておるところでございます。


公共性の故に事業税対象から除外されておるものが幾多もございますが、我々法律関係においては公証人は、公証人の仕事はまったくこれは一つの典型だと思います。このような公共性の強い弁護士業に対し、事業税が賦課されている実状は、われわれとしては到底黙過し得ないところでありまして、従前からその賦課に対して反対して来た理由もここにある訳でございます。


然るに、税務当局乃至大蔵省においては弁護士業についての右のような公共性を認識しようとする態度が殆んど見られません。先般の弁護士登録税の増額問題についてもしかり、当会として弁護士業の公共性を強調し登録税増額に反対して参ったのに拘らず、これに対するところの理解認識は全くといってもよいほど示されなかったことはこれまたご承知の通りでございます。われわれはそのような関係当局の態度を非常に遺憾に感ずると同時にこの際、更に強く、弁護士業の公共性を訴えて、弁護士業に対するところの事業税賦課の撤廃の実現を期すべくこの決議案をあえて提出する次第でございます。


以上の理由をもちましてこいねがわくば満場一致のご賛同を得たいと考えておる次第であります。