臨時総会(2006年12月7日) 議事概要

日時・場所

日時
2006年12月7日(金)12:30~17:25
場所
弁護士会館2階講堂「クレオ」

出席会員数、出席外国特別会員数及び議決権数

項目 人数
本人出席 595名
代理出席 8,733名
弁護士会出席 52会
外国特別会員 0名
外国特別会員代理出席 10名
議決権総数 9,390名



議長及び副議長の氏名

役職 氏名
議長 田中 敏夫(東京弁護士会所属)
副議長 江藤 洋一(第一東京弁護士会所属)
副議長 上田 英友(福岡県弁護士会所属)



出席した会長、副会長及び監事の氏名

役職 氏名
会長 平山 正剛
副会長 吉岡 桂輔、奈良 道博、飯田 隆、杉崎 茂、久保田 嘉信、小寺 一矢、高野 嘉雄、山田 靖典、松本 光寿、川副 正敏、松坂 英明、伊藤 誠一、木村 清志
監事 なし



会の流れ

日本弁護士連合会臨時総会は、2006年12月7日(木)午後0時30分から、東京都千代田区の弁護士会館2階講堂「クレオ」において開催された。


本総会は明賀英樹事務総長の司会で午後0時30分から始められ、まず、平山正剛会長から、議事規程第2条に基づき開会宣言と挨拶が述べられた。平山会長から、いずれの課題も日弁連にとっては重大な課題となっているため、十分に審議してほしい旨の発言があった。


続いて、正副議長の選任手続がなされた。


平山会長が議長の選任方法について議場に諮ったところ、篠塚力会員(東京)から、選挙によらず、会長が指名する方法で、議長及び副議長2名を選出されたいとの動議が提出され、他に意見はなかったため、平山会長が動議を議場に諮ったところ、賛成多数で可決された。


動議可決を受けて、平山会長は、議長に田中敏夫会員(東京)、副議長に江藤洋一会員(第一東京)及び上田英友会員(福岡県)をそれぞれ指名し、正副議長の挨拶がなされた。


その後、議事規程第5条に基づき、平山会長から議案が提出された。


議長は、本総会の出席者につき、現在集計中のため、後刻報告する旨述べた。


議長から議事録署名者として、渕上玲子会員(東京)、根木純子会員(第一東京)及び藤原真由美会員(第二東京)の3名が指名された。


議長は、議事に入る前にいくつかの注意事項等を述べ、また、本総会の議事は、会則第54条により公開されている旨及び傍聴者は傍聴席にて傍聴されたい旨を述べた。


平山会長から、第1号議案から第4号議案までは関連する部分が多いので一括審議を希望する旨が述べられ、異議がなかったことから、議長は一括審議をし、採決は個別に行うこととした。


議長は、第1号議案「当番弁護士等緊急財政基金のための特別会費徴収の件」、第2号議案「当番弁護士等緊急財政基金に関する規程(会規第36号)中一部改正の件」、第3号議案「会則中一部改正の件」、第4号議案「法律援助事業に関する規程制定の件」を一括して議題に供する旨宣した。また、全ての議案について朗読を省略したい旨を議場に諮ったところ、異議がなかったことから、全ての議案の朗読を省略することになった。


続けて、川副正敏副会長から第1号議案及び第2号議案について、以下のとおり、提案の趣旨及び理由の説明がなされた。


[第1号議案] 当番弁護士等緊急財政基金のための特別会費徴収の件

(第1号議案の提案の趣旨)

来年5月末日で終了する当番弁護士等緊急財政基金のための特別会費について、当番弁護士制度と被疑者弁護及び少年付添援助事業を存続させるため、いわゆる必要的弁護に相当する事件についての被疑者国選弁護制度が開始する予定の平成21年5月末日まで徴収期間の延長をお願いする。


また、財団法人法律扶助協会が、平成19年3月末日で事業を終了する見通しであるが、その後は法律扶助協会が事業主体である刑事被疑者弁護援助制度及び少年保護事件付添援助制度について、日弁連がこれを全部承継し、その実施主体となって存続した上で、第4号議案に基づき当番弁護士以外の被疑者弁護援助及び少年付添援助事業を日本司法支援センターに委託することとする。


これに伴い、基金の使途に変更が生じる。なお、当番弁護士制度は、これまでどおり各単位会において継続していただくということにする。このため平成19年4月以降は、使途変更後の基金に関する会費徴収に改めさせていただく。


今回の期間延長に際しては、特別会費の金額は現行の月額4,200円を維持して、増減は行わないこととさせていただく。


[第2号議案]当番弁護士等緊急財政基金に関する規程(会規第36号)中一部改正の件

(第2号議案の提案の趣旨)

以上の変更に伴い、当番基金の管理などのあり方を定めている当番弁護士等緊急財政基金に関する規程のうち被疑者弁護・少年付添援助制度の事業について、日弁連が実施主体となること及びこれに伴う基金の使途の変更に対応するために、関連する規定の新設ないし改正を行うものである。


具体的な条項については、議案書21頁の参考資料二、新旧対照条文に記載のとおりである。現行規程第1条、第6条第1項第1号ウと同項第2号で刑事被疑者弁護援助及び少年保護事件付添援助の実施主体である法律扶助協会という文言を削除して、新たに日弁連が事業主体となって、その支出は日弁連自身の事業費、事務費という定め方をし、第3条の収入項目の第5号に、第4号議案に基づいて設置することにしている法律援助基金特別会計からの繰入れを定め、同じく第4号議案に基づき刑事・少年を含む自主事業を日本司法支援センターに委託する場合、それに要する事業費及び事務費を支出するための根拠規定として、第6条第1項第3号を設けた。


(第1号議案の提案理由)

日弁連は平成7年、当番弁護士等緊急財政基金を設けて、会員から特別会費を徴収し、これを全国の弁護士会における当番弁護士と法律扶助協会の刑事被疑者及び少年付添扶助活動のための資金として援助することを開始し、以後、その質と量の充実・強化を進めてきた。当番弁護士と当番弁護士基金制度は、具体的な実践と成果をもってその必要性を広く国民に訴えることを通じて、被疑者国選弁護制度の実現を期することにあり、そのために日弁連と弁護士会は、法律扶助協会とともに自ら財源を確保し、当番弁護士制度及びこれに続く弁護活動としての被疑者弁護及び少年付添活動の維持・発展を図ってきた。このような日弁連の活動に対しては、広範な世論の支持と共感が集まり、平成13年の司法制度改革審議会意見書で、被疑者に対する公的弁護制度を導入し、被疑者段階と被告人段階等を通じ一貫した弁護体制を整備するべきであると明記された。


そして、これを受けた司法制度改革推進本部の公的弁護制度検討会での論議などを経て、平成16年6月、刑事訴訟法の改正により、被疑者国選弁護制度が発足することになった。平成18年10月からは、いわゆる重大事件を対象とする第1段階がスタートした。しかしながら、被疑者国選弁護制度の第2段階の対象事件は、必要的弁護に相当する事件であるが、その施行日は、平成21年5月までの範囲内で政令で定める日とされており、それまでの間は被疑者国選弁護制度の適用対象外とされる事件が圧倒的に多い。したがって、少なくともこれが実施されるまでの間、当面はその対象外とされている事件について、被疑者弁護制度を継続する必要がある。


また、当番弁護士制度については、身体拘束された被疑者に対する初回接見による法的助言等を行うという基本的な役割に加え、実際上新たに導入された刑事訴訟法第31条の2の私選弁護人選任申出制度に対応することになったが、今後のあり方は、この私選紹介制度との関係を含めて、各地での運用実績を踏まえながらその役割を改めて検討することが必要である。


しかし、少なくとも必要的弁護事件全部についての被疑者国選弁護制度が開始されるまでの間は、被疑者援助制度とともにこれを補完するという当番弁護士制度の実際上の役割が続くことは否定できず、当面は日弁連による財政手当を続けるべきである。


さらに少年付添人について、今回の少年法「改正」法案の中でその対象事件が一部の重大事件に留まるとはいえ、国選付添人制度が拡大されようとしている。したがって、少なくとも現段階においては、そのさらなる拡充と法的制度化を追求する活動を継続する必要は否定できない。その場合、国選付添人制度の対象事件が当面はこのように限定される見込みとなった経緯とともに、少年が被疑者である国選弁護対象事件とこれに続く付添人活動との連続性確保の不可避性などをも踏まえながら、将来の制度拡充の必要性と展望、そしてそこに至る日弁連としての取り組みのあり方、日弁連の特別会費という方法での財源確保の当否、内容に関する検討と会内論議を深めることが必要である。


そして、これらの諸点についての検討をより充実したものとするためにも、少年付添援助活動の実績を積み重ね、実証的な検討がなされるべきであることなどから、当番弁護士及び被疑者弁護援助制度と同じく平成21年5月までは、本基金から少年付添援助事業への支出を継続するのが適切である。


ちなみに、本基金のあり方が審議された平成16年2月に開催された臨時総会では、本特別会費の徴収は、少なくとも被疑者国選弁護制度の実施が必要的弁護に相当する事件に拡大されるまでは継続される必要があるとの趣旨の提案理由を付した議案が承認されている。


以上の理由により、当番基金をさらに2年2か月間継続するとともに、被疑者弁護及び少年付添援助制度を日弁連が承継してその事業主体となること、及びこれに伴う支出項目の改定などを提案する。


当番基金を平成21年5月まで延長した場合の収支シミュレーションであるが、特別会費の金額を現在の月額4,200円として計算すると、議案書の23頁以下の参考資料三「当番弁護士等緊急財政基金の収支シミュレーション」に記載しているとおりである。


平成21年5月末時点での収支は約5億9,733万円の累積赤字を生ずるということになる。この赤字分は、来年3月末に事業を終了する見通しの法律扶助協会において、解散時の自主資産の一部を日弁連に寄付し、刑事・少年などの自主事業を存続させるための資金に充てることが検討されている。その金額は、現時点での法律扶助協会での検討によれば概ね5億円前後が想定されており、これを当番基金の不足分に填補することを予定している。


さらに、これまで法律扶助協会が集めてきた贖罪寄付についても、第4号議案の法律援助基金で受け入れて、必要な場合は当番基金に繰り入れることができるようにした。今後の贖罪寄付金の見通しについては、法律扶助協会の実績が毎年ほぼ6億円前後で推移してきたことを踏まえると、今般日本司法支援センターでも贖罪寄付を受け入れることに伴う目減りを考慮しても、なお相当の額が見込めるものと考えている。そして、その半額は単位会に残すとすると、先に述べた委譲金約5億円に贖罪寄付金を合わせて、このシミュレーションで想定している累積赤字約6億円近くをカバーできるものと想定している。


他方で、議案書23頁の参考資料三のシミュレーションでは、支出項目としてこれらの事業を運営する場合の事務管理費を計上していない。日本司法支援センターに委託する場合には、その分の委託事務費が必要になる。その金額は現時点では確定していないが、その点を含むと十分余裕があるということはできない。


また、贖罪寄付金については、その受け皿が法律扶助協会から日弁連と弁護士会に変わるとともに、日本司法支援センターとも競合することなどから、現時点でどれほど確保できるのかその見通しには一定の幅を含んでおかざるを得ない。そこで、本特別会費の金額については、以上のような事情を総合的に勘案し、引き続き月額4,200円のご負担をお願いせざるを得ないと判断した。


先般の代議員会議案の参考資料では、新規登録会員数、特に法科大学院を卒業する新司法試験合格者の弁護士登録時期と、その数のカウントの仕方に誤りがあり、平成21年5月時点での収支累計予測で約6億8,500万円というマイナスで、今回のシミュレーションとマイナス約1億円の誤差を生じている。今回のシミュレーションは、この点を改めて計算し直したものであり、その計算過程は議案書の61頁の補足説明に記載している。


平成21年6月以降はどうすべきかという問題については、本議案の対象ではなく今後の検討課題ということになるが、その点について議案書の15頁以下に問題の所在とこれまでの経緯などをやや詳しく記載している。


なお、第1号、第2号議案については、9月の理事会において全会一致で承認され、10月の代議員会では、その審議事項である第1号議案が圧倒的多数の賛成で総会への上程が承認されている。


続いて、小寺一矢副会長から、以下のとおり、第3号議案及び第4号議案の提案の趣旨及び理由について説明があった。


[第3号議案] 会則中一部改正の件

(第3号議案の提案の趣旨及び理由)

会則第89条の2として、「本会は、無資力者のためにする法律扶助に関し、法律援助事業を行うものとし、事業の範囲、内容その他法律援助事業に関する事項は、別に会規をもつて定める」との規定を置く会則中一部改正の議案の提案である。


弁護士法第33条第2項第9号に、弁護士会の会則には、「無資力者のためにする法律扶助に関する規定」を置く旨定められており、日弁連会則第88条と第89条に規定が置かれているが、この規定は、いずれも各単位弁護士会が主体となることを規定するのみで、日弁連自体は実施主体となっていなかった。弁護士法制定当時、あるいはこれを受けた日弁連会則制定当時は、無資力者のためにする法律扶助は各弁護士会が担当・負担することが想定されており、日弁連自身が扶助の実施主体となることまでは想定されていなかったからである。


ところで、従前法律扶助協会が行ってきた国庫扶助対象外事業は、来年3月に予定されている法律扶助協会の解散に伴い、日本司法支援センターに本来事業として引き継がれるわけではない。したがって、終了することになるが、日弁連としてこの自主事業をやめるわけにはいかず、これらの事業の持つ高度な公益性に鑑みて、これを全国的に利用可能な法律扶助事業として整理した上で、日弁連が運営主体となって平成19年4月以降も継続していく責任がある。


これまでは、日弁連の会則には日弁連がこれらの事業の実施主体となる明文の規定が置かれていなかった。そのため今回会則を整備して、根拠規定を明確にする必要があるため、第3号議案を上程したものである。


[第4号議案] 法律援助事業に関する規程制定の件

(第4号議案の提案の趣旨及び理由)

議案書29頁記載の第7条第3号のところに、「本会計」とあるのは、「一般会計」の誤りであるので、「一般会計」と訂正する。


第3号議案で提案した追加会則第89条の2の中で、「本会は、…法律援助事業を行うものとし、事業の範囲、内容その他法律援助事業に関する事項は、別に会規をもつて定める」としているが、そこにいう会規が本規程である。


規程案第2条は、事業の範囲をまず定めている。いわゆる、従前自主事業と呼ばれてきた法律扶助協会が行ってきた援助事業を1から10までに整理をし、しかも全国的に利用可能なものとしたものである。同条第1号の刑事被疑者弁護援助事業、同条第2号の少年保護事件付添援助事業以下、法律扶助協会及び各支部が社会のニーズに応じて実施してきた同条第3号以下の各種援助事業を列挙している。


次に、第3条は事業の方法を定めている。ここでは、実施事業の内容、それから「援助の基準、援助する報酬の額その他の実施に必要な事項については、実施要綱により定める」としている。そして、実施要綱については作成中であるが、基本的には援助の基準も報酬額も従前法律扶助協会が行ってきた内容を踏襲し、同様の基準を定める予定である。


第4条は、これらの事業を日本司法支援センターに委託することができるとしている。総合法律支援法第30条第2項には、日本司法支援センターが他の機関から委託を受けて業務を行うことができることを規定している。この規定を根拠に日弁連としては、これらの自主事業を全国的に実施可能な形に整理し、日弁連が事業実施主体となってその上で来年4月1日以降、運営を日本司法支援センターに委託することとした。


執行部としては、以下の4つの理由から、日本司法支援センターに委託する方向を選択した。


(1)自主事業というのは、特に被疑者弁護援助、少年付添事件援助については、本来公費負担で行われるべきものであり、弁護士個々の負担によって支えるものではない。今日本司法支援センターに委託をしないで日弁連、弁護士会で直接運営するということになれば、本来事業化ははるか遠のいていく。


(2)本来事業化を目指すためには、全国的に実施可能な体制を整えておく必要がある。


(3)自主事業を日弁連、弁護士会で継続するということになれば、弁護士、弁護士会の費用負担はますます増大するばかりである。執行部としては、将来の会員の負担を増大させるような選択肢は取り得ない。


(4)法律扶助協会が今後も自主事業を実施することは、現実的ではない。主たる民事法律援助事業が日本司法支援センターに引き継がれている状態で、人的・物的にも自主事業だけをやってくださいということはお願いできない。


7月の理事会でもいろいろな議論があった末で、この基本方針は承認をされた。一部重大事件について日本司法支援センターにおいて被疑者国選弁護制度が導入された今、日本司法支援センターにこの事業を委託して、1日も早い本来事業化への目途をつけなければならないと思っている。


次に、第5条で法律援助基金を設置する。これについては、議案書36頁の参考資料2のイメージ図を参照してほしい。


最後に、第1号議案から第4号議案までを通して共通の理解を得るために、若干法律扶助の変遷について触れる。昭和24年に制定された弁護士法において、法律扶助が各弁護士会の義務にされた。しかし、当時は全く資金も集まらず、扶助事件も全国で年間数件というような有名無実な状況であった。昭和27年に日弁連が中心になって基金100万円を集めて、財団法人法律扶助協会が設立され、広く社会から資金を集めたが、結局集まらなかった。昭和32年頃までは、わずか年間数10件というような悲惨な状態だった。これではあまりだということで、裁判所が予算を獲得してつけようかとの提案がなされたが、裁判所と法務省でせめぎ合いが起こり、それを見ていた日弁連の会内で、国からもらう補助は、弁護士の独立性・自立性を侵すというような議論が出て、総会でもめたそうである。結果は、法務省管轄で補助金を付けることになり、財団法人法律扶助協会に年間1000万の補助金が当時出た。


各弁護士は、扶助事件をボランティアとして低廉な報酬で引き受け、その報酬の中から寄付までして、貧しい国民の裁判を受ける権利を守るために奉仕を続けてきたわけである。日弁連・法律扶助協会ともども法律扶助の充実・拡大を求めて大幅な国庫補助の要求をしてきた。国は金を出せ、しかし運営には口は出すなという要求であった。平成に入って、補助金はそれまでに比べ数倍になったがとてもニーズには追いつかなかった。


そのうちに、弁護士会は当番弁護士制度を発足させた。刑事被疑者弁護援助を法律扶助協会に委託した。一度火のついた当番弁護士制度、被疑者弁護援助制度は、たちまちのうちに全国に広がって社会・国民の支持を得られるようになったが、その費用は、平成7年から弁護士自らが負担して当番基金で支えてきた。その間の法律扶助制度改革でも、民事が先行した。平成12年の民事法律扶助法の制定にこぎつけ、今までは考えられない国庫補助金が財団に出た。金額は21億円になったが、刑事弁護は取り残された。


しかし、その後の粘り強い取り組みの結果、一部刑事被疑者弁護も取り入れられ、平成18年度の法律扶助協会への補助金は45億円になっている。一部でも本来事業化され、それが今回の総合法律支援法である。民事・刑事を含む総合的な法律支援を担当するには、民法上の一財団法人である法律扶助協会ではできないということで、裁判所からも法務省からも、また我々弁護士会からも独立した独立行政法人がその役割を担うことになった。本年10月から来年3月までの予算は、127億円になった。平成19年度は214億円で予算化されている。平成21年度必要的弁護案件が国選化される段階では、約100億の手当が予想されている。日本司法支援センターと日弁連、弁護士会は、緊張関係は持続しつつも、センターの健全な運営に資するべきだと考えて本議案を提案した次第である。


江藤副議長から、午後1時現在の出席者数について以下のとおり報告された。


本人出席414名、代理出席7087名、会出席51名、合計7552名、外国特別会員は本人出席0、代理出席4名であった。


第1号議案から第4号議案までに関する質疑に入った。議長から、外国特別会員は、第1号及び第2号議案について討論・議決することができない旨の注意が述べられた。


まず、高橋太郎会員(東京)から、第1号議案及び第2号議案について、「(1)当番等の基金以外で特別会計に、現在いくつの基金があり、合計でいくらあるのか、(2)特別会計にある他の基金は当番等に利用できないのか、(3)56期以降は会員が増えており特に若手は経済的に困窮しているが、若手に対する低減措置をとることを検討したか、(4)若手会員について、一般会費の低減を検討したのか、(5)議案書14頁3、4行目に、累積赤字金額はさらに増大することになると記載されているが、日弁連会計全体の収支予測からのものか、(6)議案書17頁最後から3行目に、少年保護事件の継続如何と日弁連の財政措置のあり方について引き続き検討と会内論議が深められなければならないと記載されているが、検討する組織あるいは機会が設けられるのか」との質問がなされ、経理担当の奈良道博副会長から、「(1)特別会計は20あり、基金の規模は全体で60億、半分が会館特別会計である。20ある基金について必要があれば後ほど答える、(2)各特別会計は目的をもって設立されているので当然に他に流用することはできない。会館特別会計は、様々な事情から当番弁護と情報流通には流用できるという書きぶりになっている。他については、特別な必要があるとき、経理委員会もしくは理事会が、目的との関連性を検討した上で判断する、ということになる、(3)特にこの問題だけを検討してはいない、(4)全体の見直しについては、弁護士数の増加、各単位会の会費が高額になっていることなどの単位会の事情、全体の収支バランスなど総合的に検討する必要があり、今後も継続して検討していく、(5)収入については、議案書23頁注3の各年度の会員の自然増や自然減をもとにし、支出については、支出増率が5.6~7%であることをもとにして、収支見通しをして繰越金ができるのかなどの事前検討はした、(6)平成21年度以降の問題であり、今回承認を得た上で今後検討していく」との答弁がなされた。


弓仲忠昭会員(第一東京)から、当番弁護を一生懸命やってきた経験から感じたことからの質問として、「権力と対等な立場に立つのが弁護士の立場であるから司法支援センターの契約はしない。当番弁護士をやる意思はあるが、司法支援センターとの契約はしたくない弁護士は、今後どのように活かされるのか、そのために執行部はどのような努力をするのか、しないのか。(2)当番弁護士として出動して接見し、被疑者から気に入られても、非契約弁護士なので受任できないがそれでいいのか、(3)その場合、法テラスと契約して活動する弁護士が、再度当番弁護士の枠組みの中で派遣されるのか」との質問がなされ、川副副会長から、「(1)被疑者国選の実施事業主体を司法支援センターとする制度は、全国における迅速確実な弁護士をどう確保するか、という観点から創設された制度であるから、我々が主体的に関与することによって弁護士の独立を確保するということで理解いただきたい。同様な意見は各地の意見交換でも出ており、重く受け止めている。昨年10月に司法支援センターでスタートした被疑者国選と被告人段階での国選制度は現在順調にいっており、執行部としては、運用を安定的にきちっとやっていくこと、個々の案件で弁護の独立性を確保することに全力を挙げることでご理解いただきたい。国選弁護契約については、司法支援センターと基本契約をしている契約弁護士であることが前提だが、当該事件のみの契約というスキームをどのようにできるか検討している、(2)(3)契約をしていない弁護士が当番弁護士として逮捕段階で出動するのは当然のこと。どこまで当番弁護としてカウントしていくのかというのは、今具体的な制度枠組みをしている、(3)当番弁護については各単位会において自主的に枠組みが設けられている。初回接見費用の援助が原則だが、再度の接見が必要である場合、各単位会が自主的な判断で行うことについて日弁連がこれをだめだとすることはない」との答弁があった。


髙島章会員(新潟県)から、「(1)法テラスと基本契約をしないと被疑者援助の申請をできないのか、(2)司法支援センターとの契約書案がどうなっているのか、(3)基本契約をしていないが国選をやっている会員については4,200円の免除をしてほしい、(4)4、200円の支払いを拒否した場合、懲戒の対象になるだろうが、懲戒請求を受けた場合、思想・良心の自由、財産権の不当侵奪、法の下の平等に反すると思うがどうか」という質問がなされ、川副副会長から、「(1)個別案件を行う弁護士は司法支援センターとの基本契約をしていることが必要である。国民の需要に対し、迅速かつ確実な弁護士の確保をする必要性から設けられた枠組みである。弁護士による持込案件については、その時点で基本契約の締結をお願いすることになる。継続したくない場合は、個別事件終了と同時に解消できるスキームも検討している、(2)現在法律扶助協会が行っている自主事業と手続、内容、報酬は基本的に同じスキームである。それに基づいて委託の要領を現在作成し、前回の理事会には進行状況についての案文を示し、各単位会に持ち帰って検討していただいているところである、(3)制度設計を是とするかどうか会員の総意で決めていただきたい。会員の総意で決定した事項については全員で支えていっていただきたい、(4)懲戒事由であることは一般的にはいえるが、個別事由についてはここではいえることではない」との答弁があった。


熊野勝之会員(大阪)から、「契約弁護士は独立性を確保していくという答弁もあったが、国連の「弁護士の役割に関する基本原則」には、あらゆる人権を守るためには、独立した法曹の提供するサービスへの効果的なアクセスが確保されなければならないと定められている。「裁判官・検察官・弁護士のための国連人権マニュアル」237頁にベラルーシのケースを検討したときの意見であるが、「弁護士の独立を確保する鍵のひとつは、行政府から業務遂行のための証明ないし許可を受けずに自由に活動できるようにすることである」という記載がある。司法支援センターとの契約をしなければ総合法律支援法に書いてある業務を行うことができないということになれば、まさにこのケースにあたるのではないか」との質問がなされ、川副副会長から、「ベラルーシについては承知していないので、適合した答えをする知識を持っていないが、司法支援センターそのものは独立行政法人であって行政府からも公正かつ中立の組織である。総合法律支援法は、独立行政法人通則法第3条を援用して業務運営における自主性に十分配慮しなければならないという条項も引用しているし、総合法律支援法第33条において、独立して職務を行うということを明記している。すなわち、行政府の侵害は違法になるという枠組みである。さらに、国会の審議の中でも繰り返し附帯決議がなされ、我々の批判が司法支援センターの運用に貫徹されるという制度的枠組みを創設してきた。したがって、行政府の監督下にある弁護活動ということにはあたらない。しかし、独立性については常に留意しなければならないし、独立性に反するような場合は、日弁連は断固対応をしていかなくてはならないと思っている」との答弁があった。   


中川瑞代会員(第二東京)から、「(1)司法支援センターの独立性について答弁があったが、司法支援センターは、国家公安委員会の長が長になる、良心に従った答弁なのか、(2)国が監督した人ではないと納得できないというこの発言に対して弁護士会がどのような対応をしたのか、(3)国連の人権規約は、個々の事案で弁護士の独立が侵害されたという具体的な危険ではなく、一定の行政団体と契約をする状態で弁護を行った場合には、既に独立した弁護士の活動ということはできない、というものである。個々の対応で修復されるものではない。全国あまねく弁護士のサービスを受けさせるために契約弁護士である必要がどうしてあるのか。弁護士という資格がある人を弁護士会が推薦したら、その人を被疑者弁護人とすることがなぜできないか」との質問がなされ、川副副会長から、「(1)これまで経験・勉強してきた中で、誠実に、精一杯答弁している、(2)弁護士の独立が侵害される危惧があるということを正面から申し上げたつもりはない。制度設計で万全を尽くしながらも、制度は動的なものであるから、我々が主体的に担い、実践する中で独立性を確保していかなければならないと決意している、ということを申し上げた、(3)金平理事長の元の経歴は承知している。契約弁護士については、弁護士がいない支部も含めて、迅速・確実な弁護士の確保のためである。国選弁護報酬についても、これまでは裁判所の枠の中で行われてきたが、契約という形で一つの基準を示した上で行っていく」との答弁があった。重ねて小寺副会長から、「扶助がスタートして、多額の金が国から入ってくる段階でも、自主性・独立性が阻害されるのではないかという議論があったが、法務省管轄で、個々の事件でいろいろ言われたという事例は会員どなたも経験していないだろう。だからといって油断してはならず、今後もそのような事例がないよう、総合法律支援法第33条で入れ込んで、運営については緊張関係の中で持続的に判断していかなければならない」との答弁があった。


議長から、第3号議案及び第4号議案についての質疑に移行したい旨の発言があった。


新穗正俊会員(埼玉)から、「第3号議案及び第4号議案は、司法支援センターに委託するかが争点である。それについて、(1)委託費用について何も明らかにしていないが、なぜいくらかかるかをいえないのか、(2)委託しない場合、単位会や日弁連に負担がかかるという話だが、どういう事務が増えるのか。費用、手間を明らかにしてほしい。今までと同じではないのか。ちゃんと理解しているのか、(3)委託した場合、各会、日弁連は人員を削減できるのか、(4)申込手順について、審査が行われ、煩雑になるのではないか。持ち込み制でない方向でやられる可能性があると思うが、今なされている議論の中身を教えてほしい、(5)国選事件では2週間以内に報告をしなければ費用をカットするというのがあるが、委託により、被疑者弁護援助や付添人扶助についても2週間を過ぎればカットということになってしまわないかどうか」という質問がなされ、小寺副会長から、「(1)委託事務費用は現在協議中である。法律扶助協会では年間約2.5億が自主事業の事務費としてかかっている。今度これをセンターに委託すると約半分で済むのではないかと算定してセンターと協議をしている、(2)(3)法律扶助協会は手慣れていたが、今後、日弁連や単位会で行う場合、担当職員を増やして作業を行うので、法律扶助協会でかかっていた2.5億よりもっと増えるだろう。申込手順については彦坂嘱託から報告する」との答弁があった。彦坂浩一日本司法支援センター対応室嘱託から、「(4)申込手続については、法律扶助協会が行っていた扶助事業、援助事業の手続を踏襲。手続が複雑になることはない。具体的には、各手続で異なるが、申込手続について、刑事被疑者の関係でいうと、基本契約をしていない場合は、契約申込書と個別申込書を提出してもらう。個別申込書については、司法支援センター、弁護士、依頼者の三面契約になろうかと思う。終了の場合は終了報告をすることになり、それ以外の手続はないかと思う。持込原則にしているが、弁護士がいない場合は弁護士会に探してもらい、弁護士が付いた上で申込みをする、(5)国選のように2週間という水準はこの事業についてはない。(2)について、日弁連においては法律扶助協会への補助金、各弁護士会への補助金の支払が事務として生じている。委託しないで日弁連でやる場合、年間1万5,000~1万6,000件の全国からの申込書を処理して、それぞれ弁護士への支払額を決めて支払うという事務が日弁連に生じる。人員の増加は避けられない。日弁連ではなく各単位会で行う場合、事務処理が各単位会で生じ、日弁連ではそれの管理という事務が生じる。それぞれ、人と経費がかかってくると考えている」との答弁があった。


新穗正俊会員(埼玉)から、確認として、「2.5億の半分で1億数千万支払う、この費用は、被疑者国選1件6万円だとすると、何千件やれるのか。嘱託の話は、全部嘘。私は法律扶助協会もやっている。埼玉の副会長もやった。どのような手続が必要か十分わかっている。本当に扶助について、各会の被疑者弁護援助とかについて十分知っているのか。嘱託と副会長2人はどの程度経験があるのか、教えてほしい」との質問がなされ、小寺副会長から、「36年弁護士をやっており、経験はしている」との答弁がなされ、川副副会長から、「先生のように扶助に詳しいことはないが、刑事弁護、刑事被疑者弁護、少年付添の審査手続に関わり、扶助のプロパーではないが、扶助の流れについて基本的なことは承知している。ただ、各地によって法律扶助協会と弁護士会の連携は様々であり、また、事件の多寡によって、法律扶助協会の運用のあり方が異なる。福岡の状況については承知している」との答弁があった。


中村雅人会員(東京)から、「第4号議案に関連して、議案書28頁に事業の中身が記載されているが、公益通報者保護の問題が含まれるのか。公益通報者保護法は今年4月から施行された。国会の審議の中では、附帯決議で、民間の相談窓口については日弁連の協力を得て展開することとされた。前梶谷会長時代に全国の単位会宛に公益通報者保護の相談窓口を設置するようにという通知が出ているが、設置されているのは東京、大阪、京都で、細々とやっている。通報の結果、利益を受けるのは国民であって、通報者ではないため、通報者から弁護士報酬をもらうことができない。このような事件は、法律扶助でやってもらいたいと前々から言っているが、明文の規定がない。規程案第2条第10号の「その他の人権救済援助事業」に含まれるのか、それで援助可能か」との質問がなされ、小寺副会長から、「即含まれると今いうのは難しい。全国展開になっていけば、実績をふまえて、将来の援助事業として位置づけていけることもあるのではないか。まずは各会でやっていただくのが具体的には一番早いのではないか」との答弁があった。


佐藤昭夫会員(第二東京)から、「答弁が曖昧なので、熊野会員と中川会員の質問に関連して質問する。全国あまねくということで契約弁護士に限定するのか。答弁に誠意が感じられない。大阪の執行部の方は、答弁の態度に誠意がない。制度設計自体が国連基準に反しているという指摘に対する答弁がない」との質問がなされ、川副副会長から、「意見としては重く受け止める。基本契約については、過疎地域などもある前提で、迅速確実な弁護士の確保のために、扶助、国選などについて契約をしていただいて、それぞれ対応していただくことが必要である。また報酬の支払など統一的な事務処理をするためにも基本契約は必要である」との答弁があった。


髙島章会員(新潟県)から、「(1)第4号議案第2条第5号に外国人に対する法律援助事業があるが、既に法テラスが行っている一般民事においては、外国人の申込者は、適法なビザ及び日本に住居所を有することが要件とされている。オーバーステイの人からの相談・依頼を受けられるのか。あるいはフィリピンで日本人の婚外子をつくっていて強制認知訴訟を起こしたいというような場合は自主事業に含まれるのか、(2)刑務官からの暴行についての損害賠償事件が勝訴の見込みがないとはいえないにあたらないとして拒否された。法務省が実質的な被告となることに関連しているのではないか」との質問がなされ、小寺副会長から、「(1)民事法律扶助でも適法な外国人に限られていた。それで外れた人が自主事業としてやられている。今回の援助規程でいう「外国人」には、不法外国人、オーバーステイ等の人たちも含む、(2)刑務官の事例は個別の案件の扶助要件の問題。法律扶助協会がやっていたことがセンターに移されたことによって、レベルを上げることを求めるのであって下がることにはきっちりとした意見をいい、そのような運用に努めていかなければならない。事件のやり方について、自主性・独立性が侵害されることは、これまでもなかったし、これからもないようにしていかなければならない。契約をしていただいて、一緒にセンターがどうなっていくか、弁護士会とどういうふうにしていったらいいか、共に考えていってほしい。契約をしないで、どうなるどうなると言われるとつらい」との答弁があった。


髙島章会員(新潟県)から「民事は涙をのんでやっている。外国人についての答弁は、司法支援センターから約束から得ているのか」との再質問があり、小寺副会長から、「今これを承認してもらえるなら、これから交渉する。並行しながらやっている」との答弁があった。


石川清隆会員(第一東京)から質疑終局の動議が出され、動議提出に20人以上の賛成があったので、議長は動議について採決し、賛成多数であったため、質疑を終局し討論に入ることとした。


議長から、予め討論通告のあった会員からの討論を賛否順番に行う旨告げられた。


最初に、山崎俊之会員(釧路)から、第1号議案に賛成の立場から、「当番弁護士等緊急財政基金の趣旨は、全国各地の弁護士会の間に見られる財政規模の点での格差を、全国の会員によって埋め合わせをすることにあり、その趣旨に基づき、負担件数が多い弁護士会に対して財政的支援が行われている。釧路弁護士会では負担件数が全国の約3倍となっており、計算によれば特別支出の支給額は65万2,700円になっており、当番弁護士制度の維持・発展のために必要不可欠な財源となっている。釧路弁護士会では当番弁護士制度発足以来平成7年4月まで財政難のため、往復100キロ以上の遠隔地に接見に行った場合でも、当番弁護士の日当は全く支払われていなかったが、同年5月に日弁連に当番弁護士等緊急財政基金が設置されるようになってから支払えるようになり、当番弁護士の出動件数は増加した。平成11年4月には、北海道弁護士会連合会から遠隔地派遣共助も受けるようになった。このように歴史的に見ても、釧路弁護士会での当番弁護士制度の維持・発展は、日弁連の当番弁護士等緊急財政基金設置、北海道弁護士会連合会からの遠隔地派遣共助といった財政的支援の拡充と表裏一体となっている。当番弁護士等緊急財政基金のための特別会費徴収が終了することになると、負担件数の重い単位会に対する特別支出も打ち切られ、中・小規模単位会の財政的負担は増大し、ひいては弁護士個人の負担の増大につながる。被疑者弁護は被疑者の人権を保障するためのもので、公益的な意義を持つものであるから、そのための費用はみんなで負担するべき。最終的には国費によってまかなわれるべきであるが、国費による被疑者弁護が完全に実施されるまでは、我々弁護士全員が、平等な費用負担をして支えていかなければならない。第1号議案に賛成する」との意見が述べられた。


ここで、議長から、討論は第1号議案から第4号議案までを一括して討論されたい旨発言があった。


次に、高山俊吉会員(東京)から、全議案に反対するとの立場で、「副会長の答弁を聞いていて、弁護士のありようがこれでいいのかという怒りや批判や歯がゆさを感じ、それに対する答弁は説得力を欠き、また官僚的であると思った。本当に直面している課題は何なのかということを会員と一緒に考える人であってほしいし、そういうことを言う人ではなかったのではないか。今回の議案の根幹にあるものは何か、司法支援センターの開業以降、人権擁護事業を含めてすべての課題を国の管理と統制の下に差し出し、弁護士と弁護士会を国の下請け機関にし、弁護士・弁護士会を国の統制・管理の下に置くという政府の要求に率先ついていこうという提案をして、会員に同意を求めている。この国・司法をめぐってどういう状況が今起きているのか、改憲に向けて凄まじい策動が展開されている、核武装論を政府等の要人が発言する、集団自衛権を検討の対象だと宰相が言い出す、北朝鮮の核実験を好機と捉えて、経済制裁、臨検だという状況にさえなっている。戦争が始まった、少なくともそこに紙一重の状況に今なっている。この国はそういう状況に直面をしている。改憲と一体となって進む動き、防衛省の昇格法、改憲手続法、共謀罪、密告制度、こういう策動を問題だという人が多数である職業団体は日弁連、弁護士会、弁護士しかなく、その策動の最大の障害である。昨年の人権大会では、憲法第9条を守ろう、とりわけ第2項を外すことは許さないという声が圧倒的だった。日弁連の会長選では、3人の候補が第9条第2項を堅持と言った。そして弁護士を国の下働きにしようという動きに対して反対する活動がこの半年間取り組まれてきた。東京では被疑者国選弁護を引き受けないと言っている人が90%を超える。皆も頑張ろうという思いでやっている。その状況の中にこの議題が出てきた。民衆とともに憲法改悪を許さない、戦争へ進むことを許さないという弁護士が一緒に取り組んでいく時代が今きている。そういう団体を目の上のたんこぶと考えている人たちが弁護士を取り込もうとしている。弁護士を自分たちの管理下に置く。そして国家の行動原理、公の行動原理で活動する弁護士に変わってもらう。そういう生き方しかないという形に兵糧の管理、生きていけなくなる弁護士たちをつくる。そのことが国家政策に翼賛をする弁護士を増やすに違いない。だから契約をしてくれという。その方向に足並みをそろえてくれという要求。法律扶助協会を解散させ、会員の拠出金をセンターに上納させ、人権擁護事業を権力に丸投げさせ、司法における国の責務というものを権力の統制というふうに読み替える蛮行に対して異議を唱えるべき。それは改憲と戦争に結ぶ道。この状況を懸念するならば、この議案に賛成できないという声を執行部に突きつけていただきたい」との意見が述べられた。


続いて、中村雅人会員(東京)から、「結論としては執行部案に賛成だが、悩みながら賛成である。当番弁護士制度を維持・発展することは、いささかも揺るがないが、今回の提案は、若手会員や次年度に入る60期に対する配慮がやや見られない。会派内で議論した中では、若手会員に対する減免措置があってもいいのではないかという意見が大勢を占めた時期も一時あった。弁護士会は強制加入団体であるから、会費は収入が少ない会員も無理なく支払える金額でなければならず、これを超える会費の徴収は、弁護士会の活動に対する否定的な傾向を生じさせ、ひいては強制加入制度の見直しの要求をはじめとして、弁護士自治の維持に重大な影響を与えかねない。現行の会費は決して低額ではなく収入の少ない会員にとって相当な負担となっている。特に急激に増える60期やそれ以降はどうなるかという心配もある。収入がままならない会員たちがたくさん出てくることが当然予想され、会費の負担に耐えられないという可能性もある。一方、日弁連には特別会費等60億近くのお金があるし、会員の増員による会費収入の大幅増加が見込まれる。そんな中で、就職状況が非常に厳しい年が数年も続けば、経済的に自立できない多くの若手会員から、弁護士の強制加入制度に対する反発が生まれ、その諸活動に疑問を持つに至り、弁護士自治が内部から崩壊する危険性をはらんでいる。人権擁護活動や権力と対峙できるのも自治権があればこそ。この根幹部分が揺らいでいる。今後とも日弁連がこの運動を強力に推進するためには、就職難等の問題を真剣に考えて若手会員に対するあたたかい支援を贈るべきであり、会費負担は公平でなければならないというお題目で突き放すべきではない時代にきた。以上の次第で、当番弁護等に関する事業のますますの発展を祈念しつつ、日弁連執行部が若手会員、とりわけ新入会員が置かれた状況や会費の負担能力を直視し、法曹人口激増の時代にふさわしい日弁連財務のあり方を検討することを期待して、悩みながらも賛成する」との意見が述べられた。


次に、小川修会員(埼玉)から、反対の立場から、「人権擁護援助事業を日弁連自らが行う場合とセンターが行う場合との比較をしたいと思う。まず、人権擁護援助事業を行うのにふさわしい団体は基本的人権の擁護を使命とする弁護士会であることは明らか。センターを管理・監督する法務省が、少数者・弱者の人権擁護に我々ほど熱心でないことは公知の事実。次に、人権擁護援助事業に従事する弁護士の数は、センターが行う場合はセンターを忌み嫌う多数の弁護士が従事しなくなるのに対し、日弁連自らが行う場合はそれらの弁護士も従事し、格段に多くなる。次に、反対者はどちらの場合が多いか、日弁連自らが行う場合はこれに反対する者はほとんどいないのに対し、センターが行う場合には相当多数の会員が反対している。次に、人権擁護援助事業を行う場合の自主・独立性は、センターの場合は法務大臣認可の業務方法書及び法律事務取扱規程に従うことになるが、日弁連自らが行う場合は我々のみで定めた弁護士職務基本規程に従うのみで、やはり後者のほうが格段に優れている。いずれの点から見ても、日弁連自らが行う場合のほうがはるかに勝っており、センターへ一括委託する案は愚作案である。ゆえに反対する」との意見が述べられた。


次に、小久保哲郎会員(大阪)から、大阪弁護士会人権擁護委員会ホームレス問題部会でホームレスの支援、生活保護の裁判等に取り組んできた、人権大会の第二分科会(「現代日本の貧困と生存権保障」)のシンポジウムの実行委員もした、との立場から、「人権関連自主事業について賛成の意見を述べたい。現在生活保護の補足率は2割程度、約1,000万人が生活保護の網から漏れている。この原因は、水際作戦と呼ばれる福祉事務所の窓口規制であるということは、今年、日弁連がはじめて実施した生活保護の全国一斉110番の結果でも確認された。ホームレスの方で生活保護の申請のニーズがある方について、福祉事務所の窓口に同行して申請の援助をするという活動をしているが、ホームレスの方が窓口に行くと、住所がない、それから働けるということで、まず100%追い返されるが、弁護士が付いていけば態度は豹変して保護が受けられる。こういう活動を続けているが、ボランティアでやるには限界があり、法律扶助が不可欠。これについては、大阪の法律扶助協会の支部が、ホームレスの法的支援に限って生活保護の申請に対する扶助を立ち上げたのをきっかけに、徐々に広がって、東京や埼玉など現在五つの支部で法律扶助を実施している。法テラスに一括委託するという中で、全国的に均一にどこの地域でもそういうニーズがあったときに応えられるというシステムができるようにと願って活動してきた。各支部で立ち上げるということについては、今のところ5支部にとどまっている。外国人やホームレスの自主事業についての一括委託については、当初から、こうした人たちに対する扶助、国や行政と対決姿勢になる扶助について、法務省や法テラスが受け入れないのではないかという噂も絶えず、ずっと心配してきたが、法テラスが受けない、あるいは日弁連の執行部が法テラスに委託しないということであれば、それは本来本末転倒で、法テラスという名に値しない、法律の光が当たらないところを最初からつくることになるのではないかということで訴えてきた。そして、弁護士会や委員会を通じて、意見書を上げたり、これと思われる方に直訴状のような手紙を書くなりしてやってきたが、日弁連が昨夏に一括委託するということになった。万一仮に法テラスなり法務省がこの委託を受けないということになれば、法テラスに対して裁判等も辞さないつもり。ここまで育ってきた一括委託について、ぜひともその芽をつぶさずに委託を実現し、より幅広い弁護士が、全国的にこの事業に参加できるようになってほしいと願っている」との意見が述べられた。


続いて、浅野史生会員(第二東京)から、第1号議案から第4号議案までに反対する立場から、「そもそも最大の人権侵害を行うのは、法務省なり国なりである。刑務所問題しかり、あるいは刑事弁護に関する問題しかり、外国人問題しかり、そして共謀罪なんかもつくろうとしている。司法支援センターというのは、法務省あるいは法務大臣直轄の団体である。こういった団体に人権擁護事業を一括全面委託し、しかも金まで出すのは全くナンセンス。司法支援センターとは契約をしていないし今後もするつもりはない。こういった若手会員は、多くいる。その若手会員の危惧というのは、なぜ法務省管轄下で弁護士業務をやらなければいけないのかというところに、根本的な疑問があるから。そこで危険性を感じ契約締結を拒否している。第二東京弁護士会は、全国の中で契約登録率が極めて低い。今後、刑事事件について頑張っていこうと思うが、国選事件はこれからやることができなくなってしまい、大変残念に思っている。杉浦前法務大臣は、刑事手続を扱うことになると、国がしっかり監督権を行使した団体でないと納得できないと言っている。司法支援センターは、弁護士、弁護人、あるいは弁護士業務に対する管理・統制をやる団体と言わざるを得ない。日弁連が、こういった自主事業の一括委託をするというのは全くナンセンスであり、むしろ司法支援センターに対して協力を一切しないという態度を明確にすべきである」との意見が述べられた。


次に、立石雅彦会員(埼玉)から、大阪の小久保会員と一緒に日弁連においてホームレスの人々の人権救済のための事件委員会を一緒に担っており、釧路における人権擁護大会第二シンポジウム実行委員会の副委員長でもあり、昨年の人権大会においても実行委員をしていたとの立場から、「あえて今回の第1号議案から第4号議案までについては、すべて反対せざるを得ない。埼玉弁護士会常議員会において、この議案についての議論が行われた。まず、第1号議案から第4号議案まで一つずつ賛否を問うという形で議論していき、第1号議案の中身自体については、あえて反対するまでもないという意見もあったが、自分としては少年付添人、被疑者刑事弁護活動等は各単位会の自主的な、主体となる事業となるべきであり、今でも反対である。第2号議案については、反対の意見が賛成の意見を上回った。第3号議案については、体裁からは問題ないのではないかという意見もあったが、自主事業ということの成り立ち、沿革から、すべて日弁連が主体となると、むしろ各単位会における人権擁護活動が後退するのではないかという意見、第4号議案と相まって一括委託が可能となる道を開くということで、反対の意見が賛成の意見を上回った。第4号議案については、議論になったが、やはり反対の意見が賛成の意見を上回った。埼玉弁護士会としては、第1号議案については賛成、第2号議案、第3号議案、第4号議案については反対、第1号議案と第2号議案が一括して採決された場合には、反対の意見を述べるということになった。戦前の弁護士会は任意加入制で弁護士会、弁護士は、司法省の監督下にあり、最終的には大政翼賛していった、その反省の上に立って、戦後今の弁護士法ができた。立法過程においても、最高裁あるいは法務省は、弁護士会、日弁連を監督下に置こうと策謀していったが、現行弁護士法はあらゆる国家権力、国家機関からの監督を排除した。それは自治を十全ならしめ、人権擁護活動を十全ならしめるためだということを、昨年の人権大会において基調報告させていただいた。そういった観点から、人権擁護活動を司法支援センターに一括丸投げにするこの議案については、反対せざるを得ない。近代国家の本質は暴力の独占であり、むき出しの暴力組織というべきなのが、法務・検察権力であり、法務・警察権力の実質的支配下にある司法支援センターに人権擁護活動を丸投げすることは、人権擁護活動の趣旨・目的からすれば、全くの背理であり、人権擁護を弁護士の使命とする弁護士法第1条第1項にも抵触する恐れがあると考えている」との立場で全議案に反対する旨の意見が述べられた。


続いて、瀬戸則夫会員(大阪)から、賛成の立場で、「登録して30年経ち、25年間少年事件、学校の問題、児童虐待問題、子どもの問題に埋没してきた。当初は、付添人選任率が0.5%で、先輩が20年後には何とか10倍にしたいと言っていたが、それは実現した。この間、当番弁護士の一環の中で、少年事件にも全国各地で付添人が付くようになってきたが、その原動力として日弁連からの、基金を使った支援が、非常に大きなものとして付添人の拡充がされてきた。皆さんの支援を心から感謝する。現在、扶助における付添人扶助の役割が、非常に大きなものとなってきた。付添人というのは基本的に全体のため、国庫負担があるべきもの。そのためには、支援センターの本来事業化をするべきだという考えを持っている。そのためには、この議案を通していただきたいと思っている。そうでないと結局、小規模会については、様々な事情の中でなかなか対応できないところが多く、日本全体に対しての弁護士会全体の責任の果たし方として、非常にアンバランスな、欠けたものになるのではないかと強く危惧している。自分たちは支援センターに委託する場合、その運営について全部コミットして運営していく、コントロールする、支配していくというぐらいの心構えで、今準備している。ぜひ、ご賛成いただきたいと思う」との意見が述べられた。


次に、新穗正俊会員(埼玉)から、「今までの賛成意見は、委託をしないでやってもできることで、日弁連が主体となって全部やるというのだったら賛成である。センターに委託することを前提とした執行部提案は、センターの利益にだけなり、契約しない会員、契約して法律援助、人権援助事業をやる会員、市民・依頼者にとっては、不利益にしかならない。センターに委託してこれらの事業を行えば、市民から見るとその主体が日弁連や弁護士会であるにもかかわらず、現実の認識としては、必ずその成果は現実に事業を運営するセンターの成果としてしか認識されない。本来の主体である日弁連や弁護士会は、ただお金と人を提供するだけという立場に追いやられる。事業の重要な部分をすべてと言っていいほど行うのに、センターの宣伝をするだけになる。当番弁護士制度で弁護士会の評判を上げ得たのは、まさに弁護士会が資金と人を提供し、弁護士会そのものがその運営を行ったからこそ。さらに被疑者国選弁護制度の実現において、弁護士会だけにいつまでも負担させてよいのかという国民とか各政党からの声を集めることでできた。弁護士が会費を出して自費でやっているということを国民に知らせる機会を失う。執行部は委託する理由として、本来業務になりやすいと主張している。しかし、国民や国会議員から見れば、運営をしているセンターで独自にやっており、予算づけしなくてもできる事業であり、このままセンターが自分で資金を獲得してやってくださいと言われるのがオチである。日弁連が自前で運営していけば、当番弁護士のときと同じように国に圧力をかけ、また国民の支援も受けることができる。この大きなメリットをみすみすなくし、この事業を推進し、国に費用を負担させることについて、日弁連の発言力を著しく低下させることは明らか。次に、人権援助事業をセンターに委託することにより、結局、センターに反対する会員を人権援助事業から排除し、契約をしていない会員をセンターに契約させようということが目的だと考える。センターは、委託された事業についても、センターと契約しない限り業務はできないと明言している。その結果、センターとの契約を拒否している会員は、人権援助事業もできず、その会員に相談した依頼者は援助は受けられないか、援助を受けられるためにもう一回会員を探して相談をしなければならない。また、刑事被疑者弁護援助では、日弁連が費用を出しているにもかかわらず、わざわざ法務省の監督下にあるセンターの下で弁護を、被疑者は受けなければならなくなる。被疑者は、自分の敵の団体が監督するところで選任された弁護士に付いてもらいたいとは考えないのは当然。次に、日弁連がセンターに委託しなければ、援助事業を行う意欲のある会員は誰でも援助を受けることができるが、委託すれば、会員はセンターと契約しなければ援助を受けることができない。反対会員は特別会費を負担しているのに、援助事業を行う際には援助を受けられず、無償で援助事業を行えということになる。センターとの契約という思想・信条に対する侵害という問題もある。次に、センターと契約して援助事業を行う会員にとっても、一つは、事前の明確な申込みと審査が必要になるはずで、かなりそういう複雑な手続をとらなければいけない。次に、契約する会員の負担も、センターに反対する人権援助事業をやろうと思っている人も排除され、やろうという会員数はかなり減る。特に問題となるのは当番弁護士への参加も困難となること。それから、日弁連がセンターに委託する根拠は、いずれも虚偽である。法律扶助協会の実務にずっと携わってきたが、今の体制で、この制度を日弁連がやっていくとなれば、費用の負担というのはそんなに増えない。それについて明確な説明をしなかったことについては、非常におかしい。司法支援センターに委託をしなければ、みんな賛成するにもかかわらずそういうことをなぜやるのか。権力と闘うべきこういう事業について、丸投げをするということ自体反対である」との意見が述べられた。


次に、佐藤昭夫会員(第二東京)から、全議案に反対するとの立場で、「議事の進め方について、議長は公平・充実・円滑と言われたが、そうなっていない。第1に、公平と言うなら、この議場からの意見も、このマイクを使って語りかけるのが公平。なぜスタンドマイクを使ってと、必ずというようなことを繰り返すのか。2番目に、質問や討論の用紙があまり出ていないというようなことを言うが、提案を聞いて、それに対してどう考えるのかと、その段階で疑問なり、議論なりをするのが当然なのに、討論を単なる儀式化しようとしている。充実に全く反している。議長は、議事を円滑に進めるためには、答弁の不十分な点は、議長が執行部に質さなければいけない。いい加減な責任逃れの答弁を議長はそのまま見逃している」と述べたが、ここで、議長から、議長に対する意見ではなくて、議案についての意見を述べるよう要請があり、続けて、「どうして議長は、そういうようなことではかみ合った議論にならないと執行部に注意しないのか。議案に対する意見を述べると、委任状の多数で押し切ろうという意図が丸見えと考える。特別会費について、髙島会員はこれを納めなかったらどうなるのかと聞かれ、思想・信条にも関わる問題と指摘されたがそのとおり。単に会費をどちらに使ったらいいのかとか、どうしたほうが効率的だとか、そういうような問題ではない。法務省の管轄下の支援センターと契約をしない弁護士には、援護事業もさせないというような仕組みと制度設計ということに対しては、これをつぶさなければならない。良心の問題として反対している。日弁連が会費をもってそれを支持させるというようなことは、首に縄を付けた縄を自分で引っ張るというようなことと全く同じ。この特別会費は、賛成者からのみ徴収するということにすべきである。援助に対して委託をする、丸投げするという事業のやり方について責任をとれるのか。全く無責任だ。監督などというようなことは果たしてどの程度できるのか。執行部の言葉は、言葉だけ、実態を見ない。形式的に辻褄を合わせるということにすぎない。委託、支出というようなことは認められない。規定を定めるについても、支援センターへの委託は禁止するというただし書が絶対に必要である。人の意見を聞いて自分の考えの至らなさを反省する必要がある。1人ひとりの良心にかけて判断していただきたい」などの意見が述べられた。


次に、亀井時子会員(東京)から、現場の立場として、賛成の意見として、「弁護士になってほぼ40年間扶助の仕事をやってきた。扶助の歴史もかなり見てきたが、法律扶助協会は平成12年に法律ができて、法務大臣の指定を受ける法人となり、法務省の監督下にあるのは間違いなく、業務規程も報酬規程もすべて法務大臣の認可事項となって今までやってきた。しかしながら、権力にひれ伏したこともないし、法務大臣の下請けだと思ったこともない。弁護士の立場、自主性をやはり貫いた立場でやってきた。今後法テラスになっても、その立場で仕事はしていかなければならないと考えている。一番気がかりなのは、本来事業に移らなかった人権関連の仕事で、本来法テラスという機関ができた以上は、そこで国の費用でもって行われるべき仕事であるのは間違いないと思っている。刑事被疑者は、平成2年からやってきているが、当初は当番弁護士基金がなく、自前の資金で協会は仕事をしてきたが、平成7年に当番弁護士基金が通ってからは、かなり大幅に伸びてきた。昨年度の事業実績は、刑事被疑者が8,500件、少年付添が3,500件。当初の数件から始まったころから比べると、本当によくここまで来た。法律扶助協会の財政苦難の歴史がやっと少しずつ進化してきた。ところが、刑事被疑者については、平成21年までは自主事業でやらざるを得ない。少年事件についても、国選化の見通しがまだない状況。その他の人権関連については、全く見えないという状況だと思う。これは捨てられない事業であり、日弁連が本来的に行ってきた人権課題の事業であることは間違いない。ただ、市民のための事業としてやってきたのであって、日弁連の名前が上がるということが、本来の目的ではない。すべて本来国費で運営されるべき事業、今まで法律扶助協会がやってきたことを、法律扶助協会を引き継いだ法テラスに引き継ぐというのは、当然のことと思う。もう一つは、全国規模で実施するという体制。現在、刑事、少年、全国規模でやっているが、刑事被疑者はゼロから9件まで全国で10の支部があり、少年事件は21支部がある。まだ全国均質な体制になっていない。特に刑事被疑者については、平成21年までに全国均質、どこでもやれるという体制を築いていかなければならない重責を担っている。今の被疑者援助制度をもっと拡充していくには全国均質の組織体制を持つ法テラスに引き継いでもらうのが、一番最適と思う。少年事件も国選化は悲願。全国均質の体制をとらなければ、国選化自体かなり難しいと思う。法テラスに引き継いで、これが管理・統制する団体とは思っていないが、いかに弁護士会の権利を獲得していくかは日々の闘争でもあると思っている。その権利、市民の権利のために、全国規模の体制をとれる法テラスに、人権関連事業全部を引き継いでいってもらいたい。人権関連は弁護士会がやっているというが、扶助の関係で人権関連事業をやっている支部は12で、まだ全国的規模になっていない。全国で需要がある限り、全国規模による法テラスに委託するというのが一番最適と思う」との意見が述べられた。


続いて、中本源太郎会員(東京)が指名されたが、亀井会員の意見に対して直接反論として意見したい旨の要望が鈴木達夫会員(第二東京)からあり、発言を譲られ、同会員から、「センターが管理・統制の機関であることは議論の前提になっていた。執行部でも、危惧があるから入って何とかよくするんだと言っていた。理事長を法務大臣が任命、指名し、いわゆる3点セットを法務大臣が認可する。理事長が全国の各地方事務所の長を任命する。法務大臣、法務省の管理・統制でなくて何なのか。次に、日弁連ニュース15号によると、なぜ一括委託しなければならないのかについて、公益性の高い本来国家でやるべき活動だから、支援センターの本来事業にしていくのが正しいと言っている。本来公益事業だということに対してもっと厳密に考える必要がある。自民党の改憲草案、第12条、第13条に公益及び公共の秩序のためには、基本的人権が制限されてやむを得ないというとんでもない規定が入った。公益とは国益。国家とは何か。法人税を引き下げて18%消費税でまかなうとの経団連の御手洗会長の提起を、安倍政権は受け入れようとしている。公益、国益、国家とは大銀行と資本家が民衆を支配する道具以外のなにものでもない。人民のための戦争などなく、イラクへの侵略戦争が示しているようにイギリス、アメリカの資本のための戦争。安倍政権が盛んに使い出している今、公益、国益という言葉を余計厳密に考えなければならない。被疑者弁護事業、少年保護事件付添、外国人の難民認定に関する法律扶助。これが公益活動だから本来国家がやるものだとくくられていいのか。国家権力と独立した、また独立した活動が保障されている弁護士会がやるべきもの、これを公益活動と言い換えて預ける点にごまかしがある。2番目、日弁連の理事会で配られた「法律援助事業に関する委託要綱」第10稿について。援助事業の申込に対する決定は地方事務所長がする(第9条)。第16条は、契約、日本司法支援センターと受任弁護士との間において、一切の余地なく受託事業の職務の取扱に関する基本契約を迫られる。資料等の提出というのは第13条で決まっているが、地方事務所長が必要と認めるときは、援助事業の申込者、弁護士、さらに被援助者、または受任弁護士に対し、資料の提出または説明を求めることができる。法務省の手先の権限として何を求めているのかということの資料を求めることができ、その資料の範囲は限定されていない。さらに、その活動の途中で受任弁護士は、着手報告書を地方事務所長に提出しなければならない。結果報告書も提出しなければならない。一括委託後、支援センターは弁護士をがんじがらめにし、難民認定の被告は法務大臣、その裁量の適否・可否をめぐっての訴訟でその報告、事案の内容を求められる。例えば、いわゆる不法入国者と言われる人たち、今どこにいるんだ、どういうふうに生活しているんだ、どういうふうに日本に来たんだ、家族はどうなっているんだ、そういう報告を求められた後、はじめて地方事務所長の裁量で援助事業を行うかどうか決まるというとんでもない制度。弁護士会の力をそぐ、弁護士会の団結を崩し弁護士を総翼賛させる。改憲、戦争の時代。司法センターはつぶすほかないとんでもない組織である」との反対意見が述べられた。


ここで、鈴木純会員(第二東京)から討論打ち切りの動議が出され、20名以上の賛成が得られたため、討論打ち切りの動議が議場に諮られ、賛成多数で承認可決されたため、討論を終結して採決に移った。


第1号議案についての採決の結果は以下のとおりである。


出席会員総数(代理出席・会出席含む。) 8,642名
賛成 7,469名
反対 1,165名
棄権 8名


賛成内訳 本人418/代理7,002/会49
反対内訳 本人55/代理1,108/会2
棄権内訳 本人2/代理6/会0


以上の結果、第1号議案は3分の2以上の賛成を得て可決された。


続いて、第2号議案から第4号議案までの採決に移った。


第2号議案については挙手により採決され、採決の結果賛成多数と認められ、原案通りで可決された。


第3号議案については挙手により採決され、採決の結果3分の2以上の賛成多数と認められ、原案通りで可決された。


第4号議案についても挙手により採決され、採決の結果賛成多数と認められ、原案通りで可決された。


[第5号議案]
弁護士過疎・偏在対策のための特別会費徴収の件(平成11年12月16日臨時総会決議・平成16年11月10日改正)中一部改正の件

議長は、第5号議案として、「弁護士過疎・偏在対策のための特別会費徴収の件(平成11年12月16日臨時総会決議・平成16年11月10日改正)中一部改正の件」を議題に供する旨宣し、松坂英明副会長から以下のとおり議案の趣旨及び提案理由の説明がなされた。


(第5号議案の提案の趣旨)

現在のひまわり基金の特別会費1,500円を1,400円に改め、この1,400円について、平成19年4月から平成22年3月まで会費の徴収を延長させていただく。施行は平成19年4月1日からとさせていただく。


(第5号議案の提案理由)

平成8年の日弁連の定期総会で、市民の弁護士に対するアクセスの障害を解消するということを目的とする、いわゆる「名古屋宣言」をし、これに基づいてひまわり基金を設置し、平成12年1月から平成16年12月までの5年間、毎月1,000円の特別会費の徴収の件が議決された。その後、同月の満了期日を受け、さらに臨時総会において、平成17年1月から平成19年3月までさらに延長するということになった。このとき、経済、財政をシミュレーションして1,500円に増額した。その結果、この日弁連のひまわり基金による弁護士過疎・偏在対策は非常に充実した。法律相談センターは全国で300か所設置されているが、そのうちの138か所が、このひまわり基金からの支援を受けている。平成13年の日弁連理事会承認にかかる司法サービスの全国展開にかかる行動計画では、まだ24か所開設をする必要があることになっているが、逆に言うとあと24か所まで到達をしたということになる。


次に、ひまわり基金公設事務所の活動展開であるが、平成12年、島根県の浜田市に「石見ひまわり基金法律事務所」を開設して以来、来年の3月末時点で77か所が開設されるということになるが、最低あと60か所設置をしなければいけないところが残っている。「日本司法支援センターの行う過疎対策」については、司法支援センターは10月から業務が開始したが、総合法律支援法第30条第1項第4号のいわゆる4号過疎対策の事務所は、6か所開設された。来年4月1日時点に立ったときに、先ほどの60か所を今後は日弁連、司法支援センターの4号事務所、それから定着支援の事務所ということでこの60か所を埋めていこうということになる。


法律相談センターについては、司法支援センターができても、直ちに法律相談センターに代わるものの活動をするわけではなく、法律相談センターの残り24か所の展開、それから維持については、日弁連としてもさらに継続して活動する必要がある。


「ひまわり特別会費徴収期限延長の必要性」については、来年3月におけるひまわり基金の正味財産は最終的に4億9,650万がシミュレーション上残存するということになる。他方、今後とも法律相談センターを維持し、ひまわり公設事務所を展開するということになると、さらなる資金が必要であるが、シミュレーションによると、今後3年間活動するとして、毎年年額5億円を超える資金が必要となる。


徴収期間は何年で徴収額はどのぐらい集めればいいのかというと、平成19年3月末の期末正味財産が4億9,650万だが、そのうち債権が半分、現金は2億3,800万。ひまわり公設から回収できるお金が総額で2億9,500万円。そうすると、3年間で約17億円必要ということになる。その17億円から現預金2億3,800万、後日債権回収される合計2億9,500万を控除すると約12億3,000万が足りないということになり、特別基金に充当するため、会費として集めさせていただかなければいけない。他方、弁護士の人口増と併せてシミュレーションすると、従前の1,500円から100円下げて1,400円を集めさせていただく必要があるということになる。


以上のシミュレーションにより、ひまわり公設の展開、従前のひまわり公設を維持し、法律相談センターも維持し、定着支援も活動援助していかなければいけないということになると、平成19年4月から平成22年3月末まで合計17億円が必要であり、シミュレーション上足りない12億3,000万について会費を集めさせていただきたいという提案である。


補足として、まず1点は、ひまわり公設事務所に派遣する弁護士の養成事務所に対する養成援助金という制度を考えており、19年度、20年度、21年度はそれぞれ3,000万円計上されており、合計9,000万ということになっている。スタッフ弁護士の各養成事務所に年間100万円の援助をするというのは既に制度化されているが、ひまわり養成事務所に対しても年間100万円援助する。この議決をいただいたら、後日しかるべき時期に理事会に上程をして、理事会でこの制度を立ち上げていただくということになっている。


2つ目として、平成22年4月以降はどうなるかというと、徴収期限の終期である平成22年3月までにゼロワン解消が図られた後は、基本的にひまわり公設の新規開設はなくなり、引継のみになることから、ひまわり公設関係の支出は約6,000万から7,000万ぐらい減少すると思われるが、他方、法律相談センター関係の支出は続き、約1億8,000万ある。ひまわり基金特別会計を現行のまま維持するかどうかは今後の検討課題であるが、ひまわり公設に対する援助金の回収がなされ、これがひまわり基金の財源となりうること、今後の大幅な会員数の増加があることなどを考慮すると、仮にひまわり特別会費の徴収を続けるとしても、特別会費の金額は漸次減少することが予想される。


そこで日弁連による弁護士過疎・偏在対策事業の存続の有無を含めた事業のあり方、また、それとの関連で、法律相談センター事業運営を今後とも特別会計で行うのか一般会計で行うのかなど、財源のあり方に関する課題についても議論をしなければいけない、具体的には、日弁連公設事務所・法律相談センターにおいて検討を早々に開始する予定である。さらに今後のひまわり公設、法テラスの4号事務所の展開の協働・協調について考えるワーキンググループの立ち上げについても検討を開始したところである。


ひまわり、法律相談センターの事業は大変大事な事業であり、来年4月以降のさらなる事業は必須であるので、ぜひご承認されたいのでよろしくご審議されたい。


続いて、第5号議案に関する質疑に入ったが質問はなく、討論に入った。


まず、渕上玲子会員(東京)から、賛成の立場から、「総合法律支援法に基づき、司法過疎対策を本来業務の一つとして位置づけている日本司法支援センターが開業した現段階では、支援センターとの間で合理的な役割分担をすべきであるということは言うまでもない。しかし、法テラスが予定する過疎地支援の方法は、4号事務所の設置という手法であり、過疎地に各弁護士会がひまわり基金の援助の下に設置してきた法律相談センター方式ではない。しかも、ひまわり基金の援助を受けている法律相談センターが全国に138か所も存在し、その多くが予約で満杯だったり、充足率が高いと聞いている。過疎地域の市民が、いかに法的サービスを必要としているかを示している。これらの法律相談センターは、それぞれの単位会が努力されて弁護士を確保している。それにもかかわらず、ひまわり基金の援助が今後なくなると、自力で法律相談センターを維持するということになるが、これではあまりにも負担が大きすぎる。また、公設事務所については、まだまだ実質的なゼロワン地域が60か所以上もあるということであり、4号事務所は平成18年度では6か所しか開設されないという現実もある。利益相反問題等を考慮すると、地域の弁護士の数が適正規模に達成するまで4号事務所と同一地域にひまわり公設を設置しておく必要がある。過疎地域の弁護士の数が適正規模に達成するまで、まだ時間を要するものであり、執行部のシミュレーションのとおり、月額の負担1人1,400円とし、少なくとも平成22年3月まで本ひまわり基金を存続させるという案に賛成する」旨の意見が述べられた。


長谷川直彦会員(東京)から反対の立場から、「過疎問題は、国の経済政策と不可分密接一体である。今のゼロワン・マップとされているところでも、30年前、40年前は人がいたという支部、地域は幾つもあり、司法過疎をつくったのは国である。15、6年前に支部の廃止、簡裁の廃止というものの嵐が吹き荒れ、修習していた栃木県では、5か所の独立簡裁のうち小山簡裁を除く4か所が廃止になった。地裁支部の廃止はなかったが、足利支部が甲号から乙号支部に格下げになった。茨城県とか群馬県では、支部の廃止があった。このときに廃止された支部、簡裁は、全国どこにでもあると思われる。このように国が、裁判を利用させない政策をやったのである。弁護士というのも一つの職業であり、裁判所があって、はじめて生活の基盤になる。したがって、裁判所がなくなれば近辺の弁護士がいなくなる。これは経済状況からいっても、やむを得ないものである。したがって、この国のこういう過疎問題というのは基本的に国が解決すべき問題であって、弁護士会が自腹を切ってやるということ自体、まさに本末転倒の議論である。今議論になっているLSCは、過疎を解消するための切り札ではない。LSCの議論が出たときは過疎対策ということが言われたが、実際は、全国50か所の本庁所在地に支部ができ、その周辺に小さな出張所がぽつぽつあるという程度である。肝心要のゼロワン対策というのは、佐渡だとか、ほんの数か所である。これは言ってみれば一種のアリバイづくりである。そして、数少ない本当に20数人しかいないスタッフ弁護士がゼロワンに配置されず、東京の多摩、埼玉に何名も配置されている。なぜ過疎でやらずに東京とか埼玉とか、一応は弁護士のいるところというよりも、東京はむしろ弁護士が過剰なところである。それは国選を担うやつがいない、まさに第1号議案から第4号議案までに出たように、こんな刑事弁護なんかできない、LSCとの登録拒否運動そういう形で誰もやる人間がいないためである。しかし、まさに拙速裁判である公判前整理手続なんかをやるためには、立会人たる弁護士を大量に必要とする。そのための弁護士が必要となるから、スタッフが必要だと。こういうような形で、大都会というべき東京とか埼玉に配置される。こんな矛盾はない、結局LSCがやっていることは、1,2か所アリバイづくりをやって、結局は過疎は全部日弁連にツケだけを回す。金のかかることは日弁連にやらせる。日弁連の金でやるということがLSCの本質である。そして、今の時代情勢について考えてみると、まさに戦争の時代である。かつて今から60年前に戦争をやったとき、やはり全国各地に法律相談所というものをつくった。これは、夫や父親が兵士にとられるといろいろトラブルが生じるので、その解消のために、一応全国各地に法律相談所をつくらざるを得なかったのである。それとまさに同じようなことが、今このひまわりだとかいうことで行われる。このようなひまわり基金の存在そのものに反対する」旨の意見が述べられた。


吉田瑞彦会員(岩手)から、賛成の立場から、「岩手弁護士会は、現在会員数65名の小規模単位会である。平成13年8月に遠野市にひまわり公設事務所を設置して以来、先月11月29日の釜石ひまわり事務所まで、延べ6か所の公設事務所が開設された。また、先月、一関市内に定着支援貸付により第二東京弁護士会から1人弁護士が来た。このひまわり公設事務所の設置により、県内3支部のゼロワンが解消された。公設で全国各単位会から来ていただいている弁護士は、当会の一員として当番、国選、あるいは委員会活動に熱心に取り組んでいただいているだけではなく、弁護士過疎対策についてマスコミからもいろいろ取り上げられて、この過疎対策のオピニオンリーダーとしての役割も果たしている。しかし、市町村単位でのまとまりという観点から見ると、弁護士に法律相談するまでに1時間以上かかる。法律相談の予約は1か月先まで取れないというような地域がまだある。これは、実質ゼロワン地域である。このように、岩手県内には実質ゼロワン地域として最低限沿岸地域ではあるが、久慈市と大船渡市に弁護士が必要である。第5号議案の補足説明では延長期間との関連で、日弁連の姿勢としてひまわり公設に主軸をおくのか、それとも4号事務所のスタッフに取って代わることを期待しているのかが必ずしも明確でないが、現時点においては、まだ未知数のスタッフ事務所との数あわせという観点ではなく、公設事務所がこれまで果たしてきた役割を評価して、今後とも弁護士会が主体となって実質ゼロワン地域を割り出して、ひまわり公設でいくという姿勢を示すべきである。岩手弁護士会の会長としては、当県における実質ゼロワン地域の弁護士過疎対策のため、ひまわり基金による公設事務所設置の必要性があり、実質ゼロワン地域の過疎対策の大きな力となるひまわり特別会費徴収の延長について賛成する」旨の意見が述べられた。


武内更一会員(東京)から、反対の立場から、「司法支援センターが司法ネットと称して、過疎地対策がかなり進むというふれこみを持って大宣伝された。しかし、事柄は全然そうならなかった。すなわち、国選弁護を国が管理するということこそが支援センターの目的であって、全国の各本所に、本庁所在地にその支部を設け、すべて監督すれば司法支援センターの目的の過半が達成される。そして民事扶助を管理するという点、司法過疎地については、支援センターは全く本来業務ではないと彼らは言い続けていた。法律にはそう書いてあるが、その結果、ツケをこちらに回す。そもそも司法過疎地域の対策は国の責任である。弁護士会が過疎を解消していくというのであれば、国がその金を出すべきであり、これは経済政策、社会政策、福祉の領域にわたる問題である。今の、地方を切り捨てて、そして福祉を切り捨てていく、この国策、国の政策そのものが、この問題に今表れている。司法支援センターが全国6か所しか過疎地事務所をつくらなかったのは、スタッフ弁護士が6人しかおらず、実際にそれ以外を含めても21人しかスタッフ弁護士の志願者がいなかったためである。これは、法務省の監督下に入ってがんじがらめになって、そして契約解除の脅しをいつも突きつけられて、そういう中で弁護活動をするということに対する反発が根本にあるからである。これを弁護士会が行う。そして、その費用は国が予算をつける。弁護士会の独立性でやってもらいたいというそういうスキームができたらもっと早く、この司法過疎という問題は解消に向かって進んでいた。しかし、国は、軍備、経済界の支援にはいくらでも金を投入するが、司法の過疎、法律的なサービスが届かない民衆のためには金を出さない。それがこの現実である。それを弁護士会が自前で負担をしていくということは根本的におかしい。そして、今大増員といっても弁護士はやはり東京、大阪に集中している実態がある。これは日弁連のアンケートが示しているとおりである。根本的には、経済的な問題、教育、文化、あらゆる問題が根本にあるからである。それを根本的に見直していかなければいけない時期にある。むしろ日弁連がそういうことを言わなければいけない時期にある。都会、経済界を優先するそういう政策ではなく、すべての地域、そして人々の生活、そういうことに国策、国の政策は転換していくべきだし、また弁護士会もそういうことを通して人を出すと、自ら弁護士会が担うということであればそれはあり得るし、そういう方向に向かって進むべきである。国の責務というと、金は出すが口も出す、管理は国が行う、こんな話がいつもついてくる。そうでなければお金が出ないかのように言うが、民衆が求めているのは、そういうことではない。国がきちんと福祉、社会政策の予算を付けて、その人々の生活を守る、そういう政策を希望している。それが圧倒的多数の民衆の声に違いない。それを実現するのが弁護士会の役割である。そういう観点をまず持って進むべきであって、支援センターがたった6か所しかできないという中で、それを補完するというそういう考え方で、弁護士会が自前でという路線をたどっている限り、永久にこの問題のある矛盾した事態は解消できない。国は金を出せ、そして弁護士、法律事務を管理するなということを言うべきであり、それが人々のためになる」旨の意見が述べられた。


水上正博会員(長崎県)から、賛成の立場から、「長崎県は7つの支部があるが、10年前の「名古屋宣言」のときは、5つの支部でゼロであった。それがこの11年から始まったひまわり基金によって、現在7つの中のうち一つには法テラスの地域事務所があるが、残りのゼロだった4つのところには全部ひまわり基金が事務所を設置した。現在もひまわり基金の事務所は4つある。そして、長崎県は、地域でなんとかしなければいけないということで、いろいろ取り組みをして、これまで4つの支部に合計5つのひまわり基金の事務所を設けたが、その中で1人は定着をした。さらに2年後にはもう1人定着する。そして、もう一つのひまわり基金は期間を延長していただいた。こういうことで会自体が、ひまわり基金をただお客さんとして担当弁護士を迎えるのではなくて、何とか地域にとけ込み、地域のために働いていただきたいということで支えているつもりである。そして一番言えることは、長崎県ではひまわりという言葉が知れ渡っている。ひまわり事務所と呼ばれており、各公設のひまわり事務所ができたところは、1,2年のうちに地裁、通常ワ号事件は2倍、3倍に増大している。多重債務関係は山ほど来ている。弁護士会で昔から法律相談センター事業をやってきたが、そこではほとんどすくい上げて掘りおこしできなかった。ところが、ひまわり基金の担当弁護士の活動が始まると、ものすごい相談者が訪れている。現在は、非常に市民から幅広くひまわり事務所という形で好意的に迎えられて、これは地元では、当番弁護士以上に弁護士会としての大ヒット商品だと私は考えている。こういう事業を、ここでやめてしまうと、弁護士法で認められている法律事務独占が危機に陥る。弁護士は弁護士過疎、司法過疎対策を途中でやめて何もしなくなった、あとは法テラスにどうぞ、という態度では、弁護士が独占する法律事務を、ほかのところに任せようという声になる。この事業は、将来弁護士が大増員すれば自然解消していくことになる。それに至るまではこの事業をもう少し続けるべきである」旨の意見が述べられた。


他に討論を希望する者がなかったので、議長は討論を終局し採決に入る旨を宣言した。


議長は、本議案の可決には出席者の3分の2以上の賛成が必要であること、外国特別会員には議決権がないことを説明し、第5号議案「弁護士過疎・偏在対策のための特別会費徴収の件(平成11年12月16日臨時総会決議・平成16年11月10日改正)中一部改正の件」につき採決に付し、挙手による採決が行われたところ、3分の2以上の賛成多数で可決された。


以上で、本総会の議案の審議は終了し、平山会長の挨拶ののち、午後5時32分、議長は閉会を宣言した。