栃木刑務所におけるスカーフ所持拒否等に関する人権救済申立事件(要望)

 

栃木刑務所長宛て及び法務大臣宛て要望

2017年5月12日

 

 

栃木刑務所は、被収容者であったイスラム教徒である申立人が同所内での礼拝に使用していたスカーフを領置し、また、ラマダンの期間中の食事の時間に関する申立人の願い出に対応せず、さらに、ラマダンの期間中の時間の把握に関する申立人の願い出に適切に対処しなかった。栃木刑務所によるこれらの対応は、いずれも申立人の宗教行為の自由という人権を侵害するおそれがあるとして、以下のとおり、栃木刑務所長および法務大臣に対し要望した事例。

1 栃木刑務所長宛て要望
(1) イスラム教徒の女性が礼拝を行うに当たっては、顔以外の部分を十分に覆うことができる程度の長さや形状のスカーフが必要であることに照らし、今後、イスラム教徒の女性の受刑者が礼拝を行うに当たっては、宗教上の行為に配慮した必要な措置を講じること。
(2) イスラム教徒の受刑者がラマダンを行うことを希望した場合は、日の出前にも食事を取ることができるようにするため、通常の夕食のほかに、衛生上問題のない飲食物を別途支給し、それを翌朝までに取ることを認めること。
(3) イスラム教の受刑者が礼拝を行うに当たっては、正確な時刻を把握する必要性があり、特に、ラマダンの時期についてはその必要性が高いことから、時計を使用することを認めること又は自らが正確な時間を確認することができる場所に時計を設置すること。

2 法務大臣宛て要望
(1) イスラム教徒の女性の受刑者が刑務所内で礼拝を行うに当たっては、顔以外の部分を十分に覆うことができる程度の長さや形状のスカーフが必要であることに照らし、被収容者に係る物品の貸与、支給及び自弁に関する訓令の別表にスカーフを明記する等、イスラム教徒の女性の宗教上の行為に配慮した必要な措置を講じること。
(2) イスラム教徒の受刑者が刑務所内でラマダンを行うに当たっては、受刑者の健康管理及び衛生上の配慮を行う一方で、食事の内容や食事を取る時間に配慮するとともに、受刑者が正確な時間を把握することができるよう、各施設に指導すること。



執行後照会に対する回答

法務省

<法務省矯正局成人矯正課長名回答・2018年1月9日>


(1 要望の趣旨1への回答)
イスラム教を信仰する女性が礼拝の際に使用するスカーフの取扱いについては、現在でも、各刑事施設において、実情に応じて可能な範囲で配慮が行われているものと承知していますが、当局としても、引き続き、対応を検討してまいりたい。


(2 要望の趣旨2への回答)
イスラム教のラマダン期間中の断食については、現在でも、各刑事施設において、実情に応じて可能な範囲で配慮が行われているものと承知しており、今後とも、各施設の実情に応じた適切な配慮がなされるよう努めてまいりたい。



栃木刑務所

<栃木刑務所長名回答・2018年1月9日>


(1 要望の趣旨1への回答)
イスラム教を信仰する受刑者に対しては、私物のスカーフの使用を認めていますが、長さや形状等から刑事施設の規律及び秩序の維持その他管理運営上支障が生じるおそれがあると認められる場合には、保安上の観点から使用を認めていません。
ただし、その場合であっても、受刑者から希望があれば、代替として当所で用意している布製のスカーフを貸与する取扱いとしており、当所の規律及び秩序の維持その他管理運営上の支障等が生じない範囲において、できる限り配慮を行っています。


(2 要望の趣旨2への回答)
ラマダンの実施を希望する者に対しては、夕食給与時に1日分の食事を支給し、夕食給与時から就寝時間前の午後8時30分までの間、喫食を認めることとしており、当所の規律及び秩序の維持その他管理運営上の支障等が生じない範囲において、できる限り配慮を行っています。


(3 要望の趣旨3への回答)
時計は、刑事収容施設法令上、室内装飾品に当たり、優遇措置として貸与するほか、処遇上特に適当と認める場合に限り、貸与することができるものとされており、受刑者から申出があった場合には、個別にその許否を判断しています。
なお、現在でも工場等には、時計を設置しておりますが、被収容者が、常時、時間を確認できるよう時計を設置することについては、当所の設備や管理運営上の観点から困難と考えています。