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「知って得する!」法律活用術

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「知って得する!」法律活用術

第6回 2017年6月28日号 ここがポイント!他の事業者と共同で事業を行う際の留意点

※本記事はPDFでもご覧になれます
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はじめに

みなさん、こんにちは!ひまわり中小企業センターです。私たちは、中小企業のみなさまにとって、弁護士がより身近で頼りがいのある存在となれるよう日本弁護士連合会が設置したセンターで、みなさま向けの相談窓口(ひまわりほっとダイヤル)等を運営しています。

起業家応援マガジンVol.79から「知って得する!法律活用術」として、6回にわたり、創業者が、事業を立ち上げて軌道に乗せるまでのストーリーをもとに、それぞれの場面で直面する、数々の法律問題やその解決方法について、それぞれの分野で専門的な知識をもつ弁護士が解説しています。 

最終回となる今回は、「ここがポイント!他の事業者と共同で事業を行う際の留意点」と題し、第三者と協力して事業展開を行う際の法的ポイントについてお伝えします。 

創業ストーリー(公子さんの奮闘)

公子さんは、「合同会社 レストラン公子」の代表者として、安全・安心・ヘルシーな食事と国産ワイン、ケーキを提供する洋風カフェ・レストランを経営しながら、ネット通販にも挑戦し、順調に事業を成長させてきました。公子さんの活躍は地元のマスコミにも取り上げられるようになり、法人化も果たして、優秀な人材も採用できました。 経営者として忙しい毎日を送る公子さんに、ある日、親しくしている先輩経営者から、「経営がうまくいっているならもっと店舗を増やしてみたら? 人材や資金の支援もするから一緒にやろう。」との誘いがありました。2店舗目、3店舗目の出店を考えていた公子さんにとっては事業拡大のチャンスですが・・・。

ひとりで店舗を増やしていくには限界があるし、信頼できる相手となら一緒に事業展開をするのもいいのかも。 

せっかく会社も設立したことだし、出資してもらって新規出店費用にあてればいいのかな。 

公子さん、ちょっと待って!!共同事業や出資の受け入れには特有のリスクがあり、軽率に判断すると取り返しのつかなくなることがあります。誰かと共同で事業を行うときはきちんとした内容の契約を結んで、慎重に進めましょう。

共同事業の形

公子さんのように、こつこつと貯めた自己資金を元手に独力で創業して着実に事業を発展させるタイプの企業は、経営者が追加出資や会社に対する貸付によって事業資金を増やすような例外的な場合を除いて、事業が生み出す利益を再投資しつつ金融機関からの借入れなども活用して、安定的な成長を目指すことが一般的です。 このような安定成長を志向する企業であっても、自己の資金力や信用力にとらわれずに事業展開を進める方法の一つが、他者との共同事業や事業提携です。リソースの限られる創業後間もない会社が、他の事業者からの支援を成長につなげている事例は多くあります。

一口に共同事業と言っても、その形態は多様で、一方が他方に出資をして株式会社の株主や合同会社の社員になるもの(資本参加・資本提携)、共同出資による合弁会社を設立するもの、業務提携を行ってお互いに便宜を図り共同開発や販売促進などの事業協力を行うもの、複数の企業がコンソーシアムやジョイント・ベンチャー(JV)を組成して大きなプロジェクトの参加資格を得るもの、技術や知的財産等のライセンスを提供する形で行うもの、さらには、これらの各要素が組み合わされたものまで、目的に応じて様々な形があります。コンビニや飲食店、クリーニング、学習塾などのフランチャイズ契約も広い意味では共同事業の一種です。 

共同事業の契約

様々な形態が考えられる共同事業ですが、いずれにも共通することは、当事者の関係が契約で成り立っているということです。複数の企業がお互いにどのような経営資源を提供し合って、いつまでに、どんな成果を目指すのかということを事前に協議して、契約書の形で共同事業のルールを明確にしておくことは、共同事業の成果の最大化を図る上での出発点と言えます。当初計画していたような成果が出なかったときでも、関係の解消や撤退の要件を予め明確にしておくことで、事業失敗のリスクを最小限にすることができます。

この点をないがしろにして、お互いのやるべきこと、責任の所在等があやふやなまま事業を開始すると、うまくいかなかったときに、最悪の場合、紛争に発展するなど、お互いにとって不幸な結果になることがあります。 

特に、会社間の資本参加を伴う形での共同事業の場合は、スタート時点から、会社法に定める諸手続(※)を履行した上で、資本金額の変更登記などを行う必要があるほか、関係を解消する場面でも会社法の規定を遵守して進める必要があり、手間やコストがかかるため、検討の段階から法律の専門家の助言を得て慎重に行う必要があるでしょう 。

※ 株式会社の場合:募集株式の発行、定款変更(必要に応じて)のための株主総会の開催など
  合同会社の場合:社員追加、出資の価額変更のための定款変更(総社員の同意を要する)など

知って得する豆知識 「共同事業に関する契約のポイント」?
共同事業を行うための契約書では、最低限、下記の事項について明確に合意することを心がけましょう。
・共同事業の目的、獲得目標 
・各当事者が提供する経営資源や業務の内容(可能な限り具体的に定める)、時期、 方法 ・相手方に対する報酬の支払いや費用分担 ・情報の共有と秘密保持 ・個人情報の取扱い 
・契約期間、契約更新の可否 ・契約当事者が同種事業を単独で、又は別の事業者と共同で行うことの可否(競業 避止義務) 
・損害発生時の責任分担 
・契約の解除、共同事業からの脱退その他関係解消のためのルール 
・担当者、担当部署、連絡先、連絡方法 

さいごに

公子さんの経営する「合同会社 レストラン公子」は、先輩経営者と何度も話し合った末、資本参加を伴わない形の事業提携の契約書を締結し、先輩経営者の助力を得て、2店舗目の開店を目指すことになりました。さらなる飛躍を目指して、公子さんは走り続けます。

今回の連載では、「知って得する!」法律活用術と題し、全6回にわたり、起業時から事業発展に繋がる様々なシーンにおける法的ポイントをお伝えしましたが、みなさんが知って得する法律活用術は、まだまだたくさんあります。 

全国の弁護士会では、弁護士が面談で相談をお受けする窓口「ひまわりほっとダイヤル」を開設しています。今回の共同事業に関するご相談はもちろん、経営に関する悩みは何でも相談してください。

【執筆者について】
日本弁護士連合会 ひまわり中小企業センター

当センターは、中小企業のみなさまにとって、弁護士がより身近で頼りがいのある存在となれるよう日本弁護士連合会が設置したセンターで、みなさま向けの相談窓口等を運営しています。各回の執筆は以下の弁護士が担当いたします。 

第1回 平田 えり(福岡県弁護士会) 起業家応援マガジンVOL.79(1月25日配信) 
第2回 横田  亮(岡山弁護士会)  起業家応援マガジンVOL.80(2月22日配信) 
第3回 杉浦 智彦(神奈川県弁護士会)起業家応援マガジンVOL.81(3月22日配信) 
第4回 大宅 達郎(東京弁護士会)  起業家応援マガジンVOL.82(4月26日配信) 
第5回 久野  実(愛知県弁護士会) 起業家応援マガジンVOL.83(5月24日配信)
第6回 樽本  哲(第一東京弁護士会) 

第5回 ここがポイント!法人化の際に取り得る選択肢(会社の形態)
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