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「知って得する!」法律活用術

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第3回 2017年3月22日号 ここがポイント!初めてのアルバイト採用

※本記事はPDFでもご覧になれます
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はじめに

みなさん、こんにちは!ひまわり中小企業センターです。私たちは、中小企業のみなさまにとって、弁護士がより身近で頼りがいのある存在となれるよう日本弁護士連合会が設置したセンターで、みなさま向けの相談窓口(ひまわりほっとダイヤル)等を運営しています。 

起業家応援マガジンVol.79から「知って得する!法律活用術」として、6回にわたり、創業者が、事業を立ち上げて軌道に乗せるまでのストーリーをもとに、それぞれの場面で直面する、数々の法律問題やその解決方法について、それぞれの分野で専門的な知識をもつ弁護士が解説しています。 

第3回目は、「ここがポイント!初めてのアルバイト採用」と題し、「ココだけは知っておきたい」の採用時の法的ポイントについてお伝えします。 

創業ストーリー(公子さんの奮闘)

公子さんは、有名レストランで経験を積み、ついに安全・安心・ヘルシーな食事と国産ワイン、ケーキを提供する洋風カフェ・レストランをオープンさせました。 前回立ち上げたホームページの効果も上々で、徐々にお客様も増えてきました。多くの方にお店を知ってもらうことを嬉しく思う反面、公子さんやその家族だけで調理や接客をこなすのが難しくなってきました 。 

そろそろホールスタッフとしてアルバイトを雇う必要があるかも。
できるなら、私のお店のコンセプトに共感してくれる人を雇いたいなぁ。 

でも私、採用なんて経験がないし、アルバイトを雇う方法や各種保険についてどうしたらいいのかよく分からないし・・・。 アルバイトだったら、口約束で来てもらってもいいのかな。社会保険とかもなくて大丈夫なのかな 。 

公子さん、ちょっと待って!! 
アルバイトを採用するためには、様々なルールや落とし穴があります。

アルバイトでも労働法が適用される?

アルバイトは、採用や退職、勤務時間の変更などが頻繁にあり、労働条件を明確に取り決めず勤務させていることもあるようです。 しかし、アルバイトを採用する場合でも、口約束だけでは違法となります。採用する人に対して、次の内容は書面できちんと示さなければなりません(労基法15条1項、パートタイム労働法6条1項)。

1) 期限はいつまでか
2) 契約の更新についての決まり (更新があるかどうか、更新する場合の判断の仕方(基準)など) 
3) どこでどんな仕事をするのか(仕事をする場所、仕事の内容) 
4) 仕事の時間や休みはどうなっているのか(仕事の始めと終わりの時刻、残業の有無、休憩時間、休日・休暇、就業時転換〔交替制〕勤務のローテーションなど) 
5) 賃金をどのように支払うのか(賃金の決定、計算と支払いの方法、締切りと支払いの時期、ボーナスの有無、昇給の有無)
6) 辞めるときの決まり(退職に関すること(解雇の事由を含む)、退職手当の有無)

「なんだか複雑で面倒だなぁ」と思わなくても大丈夫です!厚生労働省のホームページに、労働条件通知書という書面の例が掲載されています。これを参照すれば、簡単に作成できます。

では、仮に口約束で労働契約するとどうなるのでしょうか。労働基準監督署の指導対象になりますし、最悪の場合、罰金刑も科せられます(労基法120条1号)。また、最近は、SNSや掲示板に、「労働条件通知書を出してくれなかった。この店はブラック企業だ!」といった悪評を書き込みされるケースもあります。創業後、軌道に乗った今、悪評が立つのはぜひとも避けたいところです 。 

アルバイトの募集方法はどうすればよい?

創業直後は、高額な有料求人広告を使うことは資金面で躊躇します。こんな場合は、店頭やホームページ上でアルバイトの募集告知をする方法があります。この方法のメリットは、費用を最小限に抑え、アルバイトを募集できることです。また、その他の方法としては、知人からの紹介やハローワークを利用する方法もあります。

少し大きなレストランなどでは、初めの段階からアルバイトの採用を決めるところが多いでしょう。開店前にアルバイトを採用するときに大切なのは、売上・利益予測をきちんと立てて、無理のない範囲で採用することです。アルバイトでも簡単に解雇できないので、「足りなければ追加で採用しよう」と思う気持ちが大切です。

知って得する豆知識 男女どちらかに限定して募集するのはルール違反なの?  
カフェなどでは男女どちらかのスタッフに限定して募集したいというような要望があるかもしれませんが、女性のみを募集したり、そうでなくても「女性向けの職場です」と募集要項に書いて人を集めるのも、男女雇用機会均等法違反となります。 ただ、性別による差別なく採用選考を行った結果、採用された全員がいずれかの性別になること自体は違反にはなりません。 

アルバイトの社会保険はどうしたらいいの?

例えアルバイトであっても労災保険に加入させなければなりません。それ以外の雇用保険などの社会保険についても、一定の場合には社会保険に加入させなければなりません。例えば、雇用保険の場合、31日以上引き続いて雇用し、さらに一週間の所定労働時間が20時間以上の場合は加入する義務があります。詳しくは、お近くの労働基準監督署または弁護士、社会保険労務士にご相談ください。

さいごに

今回は,「ココだけは知っておきたい」初めてのアルバイト採用時の法的ポイントをお伝えしましたが、みなさんが知って得する法律活用術は,まだまだたくさんあります。全国の弁護士会では、弁護士が面談で相談をお受けする窓口「ひまわりほっとダイヤル」を開設しています。今回のアルバイト採用に関するご相談はもちろん、経営に関する悩みは何でも相談してください。 

次回はネット通販を開始するにあたっての法的ポイントについてご説明します!
お楽しみに。 

【執筆者について】
日本弁護士連合会 ひまわり中小企業センター

当センターは、中小企業のみなさまにとって、弁護士がより身近で頼りがいのある存在となれるよう日本弁護士連合会が設置したセンターで、みなさま向けの相談窓口等を運営しています。各回の執筆は以下の弁護士が担当いたします。 

第1回 平田 えり(福岡県弁護士会) 起業家応援マガジンVOL.79(1月25日配信) 
第2回 横田  亮(岡山弁護士会)  起業家応援マガジンVOL.80(2月22日配信) 
第3回 杉浦 智彦(神奈川県弁護士会)起業家応援マガジンVOL.81(3月22日配信) 
第4回 大宅 達郎(東京弁護士会)  起業家応援マガジンVOL.82(4月26日配信) 
第5回 久野  実(愛知県弁護士会) 起業家応援マガジンVOL.83(5月24日配信)
第6回 樽本  哲(第一東京弁護士会) 

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