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「知って得する!」法律活用術

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「知って得する!」法律活用術

第2回 2017年2月22日号 ここがポイント!初めてのホームページ作成

※本記事はPDFでもご覧になれます
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はじめに

みなさん、こんにちは!ひまわり中小企業センターです。私たちは、中小企業のみなさまにとって、弁護士がより身近で頼りがいのある存在となれるよう日本弁護士連合会が設置したセンターで、みなさま向けの相談窓口(ひまわりほっとダイヤル)等を運営しています。 

前回からスタートした「知って得する!法律活用術」は、6回にわたり、創業者が、事業を立ち上げて軌道に乗せるまでのストーリーをもとに、それぞれの場面で直面する、数々の法律問題やその解決方法について、それぞれの分野で専門的な知識をもつ弁護士が解説しています。 

第2回目は、「ここがポイント!初めてのホームページ作成」と題し、「ココだけは知っておきたい」ホームページ作成時の法的ポイントについてお伝えします。

なお、本ストーリーで取り上げるポイントは、どのような職種の事業者の方にも当てはまる事例ですので、ぜひご参照いただければ幸いです。 

創業ストーリー(公子さんの奮闘)

公子さんは、有機野菜を使った安全・安心・ヘルシーな食事と国産ワイン、ケーキを提供する洋風カフェ・レストランの創業を目指すべく、まずは、店舗の賃貸借契約を行いました。次に、自分のお店の良さを少しでも早く多くの人に知ってもらいたいと考えた公子さんは、今、ホームページの作成を検討しています。 

ホームページではうちの一押し「国産ワイン」をアピールしたいな!
日本国内で製造しているんだから、「日本ワイン」って載せようかな。でも大丈夫かな。

「有機野菜を使った安全・安心・ヘルシーな食事」ってこともアピールしたいなぁ。
インターネット上で検索したら、農家のお父さんお母さんが笑顔で農産品を抱えているような写真、野菜と健康に関する記事やデータも出てくるから、そのまま引っぱってきて私のホームページに掲載したいな。
でも、本当に大丈夫かなぁ…。 

公子さん、ちょっと待って!! 
このままホームページを作成したら、あとあと大変なことになるかもしれませんよ! 

「不当景品類及び不当表示防止法」(景品表示法)に関わる問題

国内で製造したワインだから「日本ワイン」とホームページに載せて大丈夫ですか? 「国産ワイン」は原料が日本産か海外産かに関わらず、日本で製造・販売する全てのワインのことです※。一方、「日本ワイン」は、国産ぶどうを100%使用して、国内製造されたワインのことを指します。日本で製造・販売されたワインを公子さんが、ホームページ上、「国産ワイン」と表示することは問題ありませんが、「日本ワイン」と表示する場合、国産ぶどうを100%使用して、国内製造されたワインであることを十分確認する必要があります。公子さんは単に誤解をしていただけかもしれませんが、景品表示法との関係で注意が必要です。

※出典 日本ワイナリー協会ウェブサイト 
「日本ワインの基礎知識」(https://www.winery.or.jp/basic/knowledge/) 
「表示基準・表示事項解説」(https://www.winery.or.jp/basic/labeling/) 

・景品表示法と優良誤認表示(同法5条1号)とは

消費者の誰もがより良い商品やサービスを求めますが、実際よりも良く見せかける表示(不当表示)が行われると、表示につられた消費者が、実際には質のよくない商品やサービスを買ってしまうおそれがあります。景品表示法は、このような不当表示から消費者の利益を保護するための法律です。 

もし、公子さんが「日本ワイン」を提供するお店とホームページ上で表示して、実際は「国産ワイン」を提供した場合、実物(「国産ワイン」)よりも優良なもの(「日本ワイン」)と認識されて消費者を引きつけることになります。これは景品表示法にいう「優良誤認表示」、つまり「良いものですよ」と訴える表示をしているけれども、実際には表示されているほど良いものではない場合に当たります。 

・優良誤認表示を行った場合の法的制裁の可能性は

各都道府県や消費者庁では景品表示法違反の行為があると認めるとき、その行為を行った事業者に対し、消費者に与えた誤認を排除すること(例えば自社ホームページ等で、表示に誤りがあったことや、根拠がなかったことを公表すること)、その行為の差止め、再発防止のために必要な事項を命令することができます。この命令(措置命令といいます。)は、事業者名等が公表されます。また、その他一定の要件を満たした場合、課徴金納付の制裁もあり得ます。 

このように、安易な広告表現は事業の信頼を揺るがす危険がありますので、慎重に検討する必要があります。 

知って得する豆知識 有利誤認表示  
景品表示法で規制の対象となる表示には、有利誤認表示(同法5条2号)というものもあります。これは、「お得ですよ」と訴える表示をしているけれども、実際には表示されているほどお得ではない場合をいいます。 例えば、テレビ広告等では「毎月29日は肉の日」と宣伝し、「牛肉 豚肉 鶏肉 当日表示価格より 半額」と宣伝したものの、当日表示価格の多くが通常価格を引き上げたもので、実際には通常価格の半額でなかった事案で、消費者庁が措置命令を出しています 。 

著作権法に関わる問題

公子さんがインターネット上で検索して「いいな」と思った写真や、記事やデータは、どれも著作権法の適用のある著作物です。 

例えば、最近、あるまとめサイト事業が社会問題となりました。 他社の記事やお医者さんの記事の内容を、同じ文章にならないよう語尾などを変えてコピー&ペーストしていたことが判明し、それらの記事を掲載していたまとめサイト事業が閉鎖に追い込まれたものです。

このようなことからも、著作権のルールに敏感になることが大事です。これは正確な情報を流通させるための予防としての意義もあるように思われます。 

・まずは、著作物の利用許諾を取りましょう

著作物を著作権者の許諾を得ないで無断で利用すれば、著作権侵害になります。 また、社会問題化したまとめサイト事業のように、著作者に無断で著作物の内容を変えて自身のホームページに使う場合には、著作者人格権の侵害にもなります。 このような権利侵害行為は、著作権者・著作者人格権者から、侵害行為の差止請求、損害賠償請求、名誉回復などの措置の請求を受けることになります。刑事罰に関する規定も、権利を侵害された人からの告訴が前提となっています(親告罪)が、設けられています。また、ウェブサイト上の著作物が二次的著作物の場合、原著作者の許諾も必要です。

・「引用」する場合、ルールを守りましょう 

もっとも、公表された著作物等は、公正な慣行に合致し、正当な目的で行われる限り、「引用」して利用することができます(著作権法32条1項、102条1項)。
著作物を引用して利用する場合、引用のルールをきちんと守りましょう。

公子さんの場合は、自身の開設するホームページにはめこみ利用する部分について、引用したい記事やデータについて、①引用した部分がはっきり識別できること、②公子さんのページと引用される方のページとの主従関係が公子さんのページが主であることがはっきりわかること(あくまで公子さんの文章がメインのページになっていて、引用元のページの内容がコンテンツのメインにならないこと)、③引用される方のページについて引用元・出所が明示されていること、が必要になります 。 

さいごに

今回は、「ココだけは知っておきたい」ホームページ作成時の法的ポイントをお伝えしましたが、みなさんが知って得する法律活用術は、まだまだたくさんあります。 

全国の弁護士会では、弁護士が面談で相談をお受けする窓口「ひまわりほっとダイヤル」を開設しています。今回の景品表示法や著作権法に関するご相談はもちろん、経営に関する悩みは何でも相談してください。 

違法なホームページ作成を無事に回避できた公子さん、次回はアルバイト等、人を雇用するにあたっての法的ポイントについてご説明します!お楽しみに。 

【執筆者について】
日本弁護士連合会 ひまわり中小企業センター

当センターは、中小企業のみなさまにとって、弁護士がより身近で頼りがいのある存在となれるよう日本弁護士連合会が設置したセンターで、みなさま向けの相談窓口等を運営しています。各回の執筆は以下の弁護士が担当いたします。 

第1回 平田 えり(福岡県弁護士会) 起業家応援マガジンVOL.79(1月25日配信) 
第2回 横田  亮(岡山弁護士会)  起業家応援マガジンVOL.80(2月22日配信) 
第3回 杉浦 智彦(神奈川県弁護士会)起業家応援マガジンVOL.81(3月22日配信) 
第4回 大宅 達郎(東京弁護士会)  起業家応援マガジンVOL.82(4月26日配信) 
第5回 久野  実(愛知県弁護士会) 起業家応援マガジンVOL.83(5月24日配信)
第6回 樽本  哲(第一東京弁護士会) 

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