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「知って得する!」法律活用術

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「知って得する!」法律活用術

第5回 2017年5月24日号 ここがポイント!法人化の際に取り得る選択肢(会社の形態)

※本記事はPDFでもご覧になれます
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はじめに

みなさん、こんにちは!ひまわり中小企業センターです。私たちは、中小企業のみなさまにとって、弁護士がより身近で頼りがいのある存在となれるよう日本弁護士連合会が設置したセンターで、みなさま向けの相談窓口(ひまわりほっとダイヤル)等を運営しています。 

起業家応援マガジンVol.79から「知って得する!法律活用術」として、6回にわたり、創業者が、事業を立ち上げて軌道に乗せるまでのストーリーをもとに、それぞれの場面で直面する、数々の法律問題やその解決方法について、それぞれの分野で専門的な知識をもつ弁護士が解説しています。 

第5回目は、「ここがポイント!法人化の際に取り得る選択肢(会社の形態)」と題し、「ココだけは知っておきたい」個人企業が法人化(会社形態)する場合に取り得る選択肢とその法的ポイントについてお伝えします。 

創業ストーリー(公子さんの奮闘)

公子さんは、安全・安心・ヘルシーな食事と国産ワイン、ケーキを提供する洋風カフェ・レストランを経営し、ホームページを利用して通販事業も新しく始めました。 レストランと通販事業のおかげで、地元のマスコミが取り上げるほど有名なお店になってきました。多くの方と名刺交換をする機会も増えたのですが、従業員を雇ってるのに個人事業でやってることに驚かれ、多くの方から「株式会社にした方がいいのではないか。」とアドバイスをされています 。 

たしかに、個人の名前で名刺を出すのも何となく恥ずかしくなってきたのよねぇ。
「レストラン公子 株式会社」にしようかな。 

代表取締役として自分の名前を名刺に書けば信用があるものね。
それに、会社と言えば株式会社だよね!すぐにでも名刺を作ってもらおう! 。 

個人事業なのに会社の名前を勝手に名乗ることはできませんよ。
また、会社の形態は株式会社以外の会社もあるのでしっかり検討してみましょう。

会社と誤認させる名称等の使用の禁止

会社でない者が会社の名称を使用することは禁止されています(会社法7条)。違反した場合には、100万円以下の過料が科されます(会社法978条)。よって、公子さんは「レストラン公子 株式会社」との名称を名刺に勝手に記載することはできません。株式会社を設立、登記をしてから初めて、名刺に記載することができるようになります。会社を名乗ることは社会からの信用がありとてもメリットがあるため,勝手には名乗れないようになっているのです。 

個人事業との違い

では、個人事業と会社の違いはなんでしょうか?個人事業と会社では法的な主体が異なります。会社にした場合、個人事業として得ていた許認可を会社名義に切り替えたり、不動産の賃貸借契約を新たに会社名義で締結するなどの必要があります。また、会社としての法規制を受けます。例えば、会社は営業の範囲が定款の目的に制限されるほか、会計の負担が増えるなどのデメリットもあります。 ただ、事業を拡大し、営利を追求しようとする場合は、会社にすることのメリットはとても大きく、事業が伸び盛りの公子さんには個人事業の会社化を検討することをお勧めします 。

会社の種類

会社の種類は株式会社だけではありません。出資者が債権者に対して直接責任を負う合名会社や合資会社もあります。しかし、公子さんが選ぶ会社の種類としては、事業のリスクを出資額に限定でき、会社債権者から直接の請求を避けることができる株式会社または合同会社(日本版LLC)を選択するのがいいでしょう。 株式会社または合同会社を設立するメリットとしては次のようなものがあります。

1)   社会的信用が一般的に高く、ビジネスの拡張や従業員の採用に有利である 
2)   会社の行為は会社のみが責任を原則として負い、経営者個人が責任を負う
   リスクを排除できる 
3)   所得が多くなると個人事業よりも税率が低くなるなど、節税効果が期待できる 
4)   代表者も社会保険に加入できる
                など 

株式会社または合同会社の比較

ここで、株式会社と合同会社の違いを確認しましょう。株式会社は所有(出資者である株主)と経営(業務執行者)が分離しており、株主は経営の専門家である取締役に業務執行の意思決定を委ねることができます。一方、合同会社は出資者である社員が経営を行い、定款に別段の定めがない限り、社員各人が会社を代表し業務を行う会社です。  また、株式会社には債権者保護手続、決算公告などの法規制、株主総会の開催や議事録の作成など内部規制がありますが、合同会社は規制が緩やかです 。

株式会社または合同会社の設立手続き

株式会社または合同会社を設立するには、発起人または設立者から何らかの財産の拠出をされ、定款を作成し、設立登記をすることが必要です。財産の拠出については、法改正によって最低資本金が撤廃されたことから、いずれの会社も1円から設立できるようになり、会社設立の負担がとても軽くなりました。株式会社では公証役場による定款の認証手続きが必要となりますので、合同会社よりも手間と費用がかかります。  公子さんの場合、自ら代表となって経営をするので、内部規制や設立手続きも容易な合同会社を選択してみてもいいでしょう。

知って得する豆知識 「会社の組織変更」って?
会社の権利義務をそのまま別の種類の会社に変更することを、会社の組織変更といいます。合同会社は株式会社及び合名、合資会社に組織変更することができます。公子さんの事業は創業したばかりなので、当初は合同会社を選択し、調理士である公子さん自らが経営者となり、将来事業が拡大したところで株式会社に組織変更をし、経営を専門家取締役に任せるといった方法も考えられます。 

さいごに

公子さんは、「ひまわりほっとダイヤル」などの相談窓口を利用し、弁護士に相談しながら合同会社を設立し、「合同会社 レストラン公子」と名付けました。取引先からの評判も上々で、優秀な従業員も採用できました。今後益々の事業拡大の兆しも見えてきています。

今回は、「ココだけは知っておきたい」法人化の際に取り得る選択肢(会社の形態)をお伝えしましたが、みなさんが知って得する法律活用術は、まだまだたくさんあります。 

全国の弁護士会では、弁護士が面談で相談をお受けする窓口「ひまわりほっとダイヤル」を開設しています。今回のホームページ作成一般に関するご相談はもちろん、経営に関する悩みは何でも相談してください。

公子さんのレストランは地元の人気店になり、会社になったことで取引先からの信用も深まり事業も急成長。会社内でも優秀な人材が多数育ってきました。公子さんとしては、こうした人材を活用して、さらなる事業拡大、事業展開を検討しています。 

次回は、事業拡大、事業展開における法的ポイントについてご説明します!お楽しみに 。 

【執筆者について】
日本弁護士連合会 ひまわり中小企業センター

当センターは、中小企業のみなさまにとって、弁護士がより身近で頼りがいのある存在となれるよう日本弁護士連合会が設置したセンターで、みなさま向けの相談窓口等を運営しています。各回の執筆は以下の弁護士が担当いたします。 

第1回 平田 えり(福岡県弁護士会) 起業家応援マガジンVOL.79(1月25日配信) 
第2回 横田  亮(岡山弁護士会)  起業家応援マガジンVOL.80(2月22日配信) 
第3回 杉浦 智彦(神奈川県弁護士会)起業家応援マガジンVOL.81(3月22日配信) 
第4回 大宅 達郎(東京弁護士会)  起業家応援マガジンVOL.82(4月26日配信) 
第5回 久野  実(愛知県弁護士会) 起業家応援マガジンVOL.83(5月24日配信)
第6回 樽本  哲(第一東京弁護士会) 

第4回 ここがポイント!初めてのインターネット通販
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第6回 ここがポイント!他の事業者と共同で事業を行う際の留意点