裁判員制度は、市民が刑事裁判に参加して、裁判官と一緒に、有罪・無罪を判断し、有罪の場合は言い渡す刑罰を決める制度です。 本当に犯罪を行った人に対して適正な刑罰を科すことは、私たち市民が安全に暮らすために必要なことです。しかし、誤って無実の市民に刑罰を科してしまったら、その市民の自由や権利は不当に奪われてしまい、その打撃は本人のみならずその家族にまでも及びます。ですから、人に刑罰を科す前に、本当にその人が犯罪を行ったことに間違いないのか、慎重に判断する仕組みが必要です。
市民が刑事裁判に参加する制度は、市民の自由や権利が不当に奪われることを防止するために、重要な役割を果たします。さまざまな経験や知識を持った市民が、その常識に照らして「疑問の余地はない」と確信してはじめて、有罪とする。そのような仕組みが、市民のかけがえのない自由や権利を守るのです。
市民の司法参加は、国民主権を実質化し、司法の国民的基盤を確立するためにも必要不可欠な制度です。市民の・市民による・市民のための裁判が実現することによって、司法に対する理解が深まり、信頼が高まることが期待されます。 |
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刑事裁判では、法廷に提出された証拠に基づいて、どのような事実があったのかを判断します。同じ証拠であっても、それをどのように評価するか、人によって異なることは稀ではありません。例えば、ある証人の証言について、ある人は「信用できる」と思ったとしても、ほかの人は、その経験や知識に照らして「信用できない」と判断することがあります。
また、ある人が「不合理な弁解」と受け取った被告人の言葉が、ほかの人の経験や知識に照らすことによって、十分に納得できる説明であると判明することもあり得ます。刑事裁判の有罪判決は人の自由や権利を奪うものですから、証拠の評価は慎重に行わなければなりません。さまざまな生活上の経験や知識を持った市民が刑事裁判に参加することによって、証拠を多角的に評価することが可能となり、刑事裁判の質が向上することが期待されます。 |
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