心にとめておきたい4つのこと
刑事裁判のルール
刑事裁判のルール
無罪の推定
「無罪の推定」とは、犯罪を行ったと疑われて捜査の対象となった人(被疑者)や刑事裁判を受ける人(被告人)について、「刑事裁判で有罪が確定するまでは『罪を犯していない人』として扱わなければならない」とする原則です。
「無罪の推定」は、世界人権宣言や国際人権規約に定められている刑事裁判の原則であり、憲法によっても保障されています。
疑わしきは被告人の利益に
 すべての被告人は無罪と推定されることから、刑事裁判では、検察官が被告人の犯罪を証明しなければ、有罪とすることができません。被告人のほうで、自らの無実を証明できなくてもよいのです。ひとつひとつの事実についても、証拠によってあったともなかったとも確信できないときは、被告人に有利な方向で決定しなければなりません。これを「疑わしきは被告人の利益に」といいます。
無罪の証明は難しい
 疑いを向けられた市民がみずからの無実を証明することは、とても困難です。
 検察や警察は、その組織・人員と、捜索・差押え・取調べなどの強制力をもちいて証拠を集めることができます。これに対し、被告人は自分に有利な証拠を集めるための強制力も組織も持っていません。ここに大きな力の差があります。にもかかわらず、被告人がみずからの無実を証明できない場合は有罪としてしまったら、多くの無実の市民が有罪とされてしまうおそれがあります。
えん罪は悲劇です
 そして、無実の市民に対する有罪判決は、その人の自由や権利を不当に奪い、その人生をくるわせるという深刻な結果を招きます。こうした悲劇を防止するために、被告人は無罪と推定され、検察官が犯罪を証明しない限り、有罪とすることができないものとされているのです。
どんな場合に有罪と判断できるのか
 「被告人は疑わしい」という程度の証拠しかない場合は、有罪にすることはできません。刑事裁判で有罪方向の事実の認定するためには、「合理的な疑問を残さない程度」の証拠を検察官が提出して、証明しなければならないとされています。
 「合理的な疑問」とは、みなさんの常識にもとづく疑問です。法廷で見聞きした証拠にもとづいて、みなさんの常識にてらし少しでも疑問が残るときは、有罪とすることができません。いいかえると、通常の人なら誰でも間違いないと考えられるときにはじめて、犯罪の証明があったということなのです。
 たとえば、ある事件の犯人が本当に被告人なのかどうかが問題となる場面を想定してみましょう。被告人が犯人であると認定するためには、法廷で見聞きした証拠にもとづき、常識にてらして考えたとき、間違いなく被告人が犯人であると確信できることが必要です。これに対して、証拠に基づき、常識に照らして考えると、犯人は被告人であると断定することに疑問の余地がある場合、被告人が犯人であると確信できない場合は、被告人を犯人であると認定することはできません。
刑事裁判で判断するもの
 裁判というと、「人を裁く」という印象があるかもしれません。しかし、じつは、検察官が「合理的な疑問を残さない程度」の証拠を提出したかどうかを判断するのです。証拠にもとづき、常識にてらして考えたとき、検察官の言い分に何の疑問もなく確信できるか、それが裁判の基準です。
 
法廷に現れた証拠だけをもとに判断。 常識にしたがって「間違いない」と確信できないときは無罪とする勇気を。 自白の判断は慎重に。 刑罰は報復だけではなく社会でのやり直しのチャンスも考慮して。