調査レポート
再審制度の実情を知った人の9割以上が
「再審法改正が必要」と回答
日弁連は、全国の18歳から86歳までの市民1,200名を対象に、2023年5月15日~2023年5月17日に、「えん罪」や「再審制度」、「再審法」について一般的にどの程度、認知・理解されていて関心があるのかを把握するため、「えん罪と再審制度に関する意識・実態調査」を行いました。
調査の結果、えん罪への関心が高い一方で、再審手続の実情についてよく知っている人は4人に1人にとどまっていることが分かりました。そして、証拠開示制度がないことや、検察官抗告により手続が長期化していること、手続に関する規定が十分でないために裁判官によってばらつきがあること等を知った人の実に9割以上が、「再審法改正が必要である」と回答しました。
半数以上の人がえん罪に関心を持っている。
えん罪の発生原因として、
取調べにおける虚偽自白を挙げる人が6割以上、
全ての証拠が裁判所に提出されないことを挙げる人が
5割以上も!
今回の調査によると、9割以上の人がえん罪という言葉を知っており、また約6割がえん罪に「関心がある」「やや関心がある」と回答しています。このことから、えん罪に対する関心の高さがうかがえます。
また、えん罪が起きる原因としては、取調べにおいて虚偽の自白が生じることを挙げる人が6割以上、警察や検察が持っている被告人に有利な証拠が法廷で明らかにならないことを挙げる人も5割以上に上りました。
再審手続の実情をよく知っている人は、4人に1人
えん罪についての関心が高いことはわかりましたが、えん罪被害者を救済する手段である再審について、その実情まで知っている人はどのくらいいるのでしょうか。調査結果では、再審という言葉や内容を知っていると回答した人は約9割いたのに対し、再審手続の内容として、例えば再審請求人やその弁護人が捜査機関が持っている証拠を全て見られるわけではない、ということを知っている人は24.8%にとどまりました。関心の高さに比べて、再審手続の実情はあまり知られていないようです。
「再審手続の進め方が裁判官によって
ばらつきがあること」に問題意識を持つ人が7割超
現行の再審法には、再審の手続をどのように進めるのかということについて、ほとんど規定がなく、裁判所の極めて広い裁量に委ねられており、その判断の公正さや適正さが制度的に担保される仕組みとはなっていません。そのため、例えば検察官に対して証拠を明らかにするよう求めたり、証人尋問や現場検証などを行ったりして、事実の究明に熱心に取り組む裁判所がある一方で、再審請求人や弁護人の求めに対して何らの応答もせず、何もせずに放置していると言われても仕方のないような消極的な対応をとる裁判所もあるなど、裁判所によるばらつきが大きいのが実情です。これについて、7割以上の人が、「再審の手続をどのように進めるかということについて、担当する裁判官によって大きなばらつきが生じている」ことは「問題だと思う」と回答しています。
諸外国に遅れをとる日本
世界に目を向けると、イギリスでは政府から独立した強大な調査権限を持つ公的機関が設立されていたり、日本と同じような再審制度であった台湾でも、2019年の刑事訴訟法改正により、通常審・再審手続の区別なく原則的にすべての記録と証拠物の情報を獲得できるようになったりと、各国で再審制度の改革が進んでいます。
一方、日本では戦後70年以上にわたり、再審法は全く改正されず制度改革は一向に進んでいません。
これに対して、このような状況を知った85%以上の人が日本でも法制度や手続を改善すべきだと思う、と回答しており、制度改善に対する熱量の高さがうかがえます。
実情を知ると再審法の改正が必要と考える人が9割以上
えん罪被害者の速やかな救済のためには、とりわけ、再審請求手続における証拠開示の制度化と、再審開始決定に対する検察官による不服申立ての禁止の2点は、重要な課題であると考えられます。
今回の調査結果でも、そうした実情を知った人の9割以上の圧倒的多数が、日本における再審法改正が必要だと回答しています。
<調査概要>
調査手法: WEBアンケート方式で実施
人口構成比に基づいてウェイトバック集計
調査対象者:全国の18歳から86歳までの市民
有効回答数:1,200名
調査実施期間:2023年5月15日(月)~2023年5月17日(水)