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ご家族
インタビュー

「再審法の改正」について課題探究に取り組んできた高校生の2人に加えて、そのご家族にもインタビューさせていただきました。身近な問題としてとらえるのが難しいテーマについて、お子さまの学びを通じて家族でどのようなお話をされたのか、どのように受け止めているのかを伺いました。
*インタビューは2023年5月実施

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左から今西恵子さん(お母さま)・今西裕大さん
早川舞さん・早川健二さん(お父さま)

今回のインタビューで
「再審法」の問題を知る契機になり
子どもの話を聞いて
「えん罪」事件の怖さを知りました

- 「法学ラボ*」で学んでいることについて、ご家庭ではどのように話を聞いていましたか。

*「法学ラボ」は嵯峨野高校で生徒が取り組む課題探究ラボの1つです。

早川健二さん
(以下、早川・父)

昨年「ラボ」をやってるという話は娘から聞いていて、「法学」にチャレンジしているとか、「大崎事件について調べている」「鴨志田弁護士と話をしてきた」ということも聞いていました。私自身は「えん罪」という言葉は知っていましたが、「再審」については認識がなかったです。しかし、最近になって「袴田事件」の報道を覚えていたので、そこも少し掘り下げられるのかなと思い、娘とはなぜ「えん罪」は起きるのか、どうしてこんなに時間がかかるのか、そういうやりとりをしました。

今西恵子さん
(以下、今西・母)

「法学ラボ」に入っていることは息子から聞いていたのですが、テーマが「えん罪」というのはあとから聞きました。そのあと弁護士会主催のシンポジウムに参加するというので、資料を持ち帰ったのを見せてもらったり、そのシンポジウムを私自身が動画視聴したりして活動内容を知りました。

- 先ほどの二人のインタビューを聞いて、どう思いましたか。

早川・父

「えん罪」事件を私自身があまりよく分かっていなかったことと、特に再審については子どもから学ばせてもらったところがあります。こういう人権問題に高校生のうちから真摯に向き合うのは非常によいことだと感じると同時に、とても頼もしく思いました。

今西・母

息子が「えん罪」事件や再審法についてどう思っているのか、今回のインタビューで初めて知りました。リーダーの早川さんも高校生とは思えないようなしっかりした意見を持っていて、再審法を変えなければいけないという具体的な理由や問題点が、今回よくわかりました。「えん罪」事件については「湖東事件」など、いくつか聞いてはいたのですが、具体的な内容については初めて知ったので、怖いことが長く行われてきたんだなと実感しました。

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- 「えん罪」事件や「再審制度」の問題について、どのように思われましたか。

早川・父

これまでは「えん罪」自体が縁遠い話で、自分が関わることはないだろうと思っていて、他人事で関心がなかったのが事実です。だから報道を見てもそこまで心に響かないというのもありました。周りも関心を持っている人はほとんどいないので、今回初めて「えん罪」のことをしっかり考えてみました。そして、自分の家族・自分自身、知人・親友、大切な仲間がもし巻き込まれたらというのを想定して、これはまずいと真剣に思いました。そして急に身近なこととして感じられるようになり、同じようなことが明日起きるかもしれない、今日すぐに起きるかもしれないという危機感が出てきて、どうしたら防止できるのかについて、最近は考えるようになりました。

今西・母

過去に「えん罪」をテーマにした映画や本を見たことがあったので、その怖さは感じていたんですが、身近なものではなかったので巻き込まれることがあるというのは、今回の息子の研究を通じて知ったところです。「えん罪」で思い浮かぶのは痴漢とかで、息子が「えん罪」被害にあわなければいいなとか、巻き込まれないようにするにはどうしたらいいのかを考えました。息子だけでなく、自分自身にとっても怖いことなので、そういう事件に関心を持っていけたらと思います。

- 自分の家族・自分自身にこういう問題が起きたらと想像すると、どう思われますか。

早川・父

「えん罪」はとにかく人生を狂わす、台無しにしてしまうのでそれを考えるだけで胸が苦しくなります。だから、そうならないように何ができるのか、一生懸命に考え行動を起こさなければいけないと思います。自分事として、「えん罪」は目の前にあると意識しながら行動していく。娘、家族を含めて自分の大切な人たちをどうしたら守れるかを真剣に考えて、できる限りの啓発・啓蒙を積極的にやっていきたいと最近は考えています。それでもまったく罪を犯していないのに、警察に捕まって取り調べを受けるケースも出てくると思うんですね。そのようなとき、自分たちに何ができるかを冷静によく考えながら、支援できたらと思います。

今西・母

「袴田事件」は、90歳を超えて今もなお支え続ける家族の存在が大きいと思います。やってもいない「えん罪」で捕らえられたとき、もちろん家族は無実を信じますが、一度貼られたレッテルが無罪を勝ち取ったとしても、どこまで名誉が挽回されるのかということや、限られた人生を本当に棒に振ってしまうので怖いことです。そこの世間の見方まで変えてもらえるのかということまで、間違えた判断をしたときに失ったものを取り戻すというところまで、しっかり再審法で変えていってもらえたらと思います。

間違いだったときに間違いだったと認められる
組織や人間を少しでも多くすること
正しく物事を見ることが大事、何が正しいか
一人一人が言えるようになれば解決していく

- 子ども世代のために、自分たちが再審法改正に向けてどう動いたらいいと思いますか。

早川・父

仮に被告人が無罪を主張している場合に、報道とかを鵜呑みにするのではなく、ひょっとしたらやっていないんじゃないかという反対の考え方で疑ってみる、実はこれ「えん罪」かもしれないというのを疑ってみる、そういう姿勢も必要だと思います。世間の情報を選り分けて受け取るリテラシーを皆さんに持ってもらいたいということやインテグリティを磨き高める努力を怠らないことを言い続けるのも一つだと思います。啓蒙活動は非常に難しいですが、「えん罪」がいかに悲劇的なことかを簡単な絵でも短い情報でも、簡易に誰にでも理解できるようなものを作って配信するとか、世論に影響のある人たちに繰り返し発信してもらうといったことで広げることが大事なのかなと思います。

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今西・母

「えん罪」を問われたときに、それが間違いだったらまず間違いを認めるところが大事じゃないかと思います。再審にもっていくまでにすごい時間がかかって、そこからさらに再審が行われるということで、なかなか検察側が間違いを認めないという組織の体制があると思います。大人として、間違いだったときに間違いだったと認められる組織や人間を少しでも多くしていく、そこを正さないとってすごく思いました。それと、早川さんもおっしゃった正しく物事を見るということが大切で、本当にこの人が犯人なのかと疑ってみることも必要だなと思いました。あと一度貼られたレッテルを覆す見方ができるようになるには、やはり教育の力が重要で、家庭教育ももちろんですが、学校教育の場でもそうした視点を子どもたちに培ってほしいと思います。

早川・父

私も会社という組織にいて、みんなでインテグリティと共に、コンプライアンスを高める取り組みをしていますが、「えん罪」というのもよくよく調べてみると、コンプライアンス違反による不正に近いものがあると感じました。警察や検察も巨大な組織であり、上意下達というか、一人で決められるのではなく組織としての意向があると思います。起訴してしまったら組織として後戻りできないというのがあって、それは普通の一般の会社でも組織として似たようなところがあると思います。違うのは、モノを扱っているのか人権を扱っているのかというところで、モノと人権を一緒にしてよいはずがないと思います。警察・検察も組織(大勢の人たちが関わる集団)で同一案件に取り組みますが、その中には必ずこれはおかしいという違和感を覚えて、間違ってると心の中で思っている人たちがいるはずです。でもそれを声に出して言えない、いわゆる同調圧力だったり、上からの圧力で言い出しにくい状況があると思います。そうした組織が間違った方向に進んで行き、内部の誰かが違う意見を言おうとしたときには、全部握りつぶされてしまうというのがあると思います。企業は営利主義で「そんなことを言ったら信用を失い商売がダメになる」と言って、そこを大事にしてしまうところがあり得ますが、警察・検察でも似たところがあると思います。有罪率99.9%以上で、いったん起訴されたらその人たちは間違いなく罪を犯しているだろうと我々国民も思い込んでしまう。今西裕大さんがバイアスと言っていましたが、まさしくその通りだと思います。それを信用してしまうところがあるので、誰の言っていることが正しいかではなく、常に何が正しいかを一人一人が判断して口に出して言えるようになれば、間違いを認められないという状況は自然に減っていくのではないかと思いますね。

- 最後に再審法改正に向けて、インタビューを受けた感想や意見などあれば聞かせてください。

今西・母

今回、自分の親や兄にインタビューがあることを伝えたら、母はすごく積極的に調べるので、新聞を切り抜いて持ってきてくれたりとか、兄はジャーナリストなので意見をくれたりとか、身近なところで「えん罪」に興味を持ってもらう形になっていると思いました。この問題に少しでも関心を持ってもらえるように、私自身も身近なところで発信できたらいいなと思いました。

早川・父

再審法の改正は喫緊の課題だと思います。今もう既に苦しんでいる「えん罪」被害者の方たちを救うにはそれしかないと思います。それを押し進めて行くには、再審法の改正だけを全面に出すのではなく、「えん罪」という問題をもっと平易にSNSやインターネット、インフルエンサーを通じた形で繰り返し発信していくことが大事だと思います。「えん罪」はこういう点が問題で、非常に苦しくて人生をダメにしてしまう、そして誰に対しても身近で怖いものだということを並行して出していき、本当にひどいということを皆さんの胸に突き刺さる形でPRし、その解決策の一つが再審法の改正だと伝えていけば良いと思います。多くの国民が一致団結して声をあげていけばきっと実現できると信じるので、そういうPRを考えていくのがよいと思いました。

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