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資金繰りに不安を感じている事業者様へ

日弁連中小企業法律支援センター事業再生PT座長 弁護士 宮原一東

事業者にとって、資金は血液です。資金繰りが続く限りは、事業継続ができ、事業再生を目指すこともできますので、資金繰りを維持することが大事になります。では、どのように資金繰りを維持すればよいのでしょうか。 

第1に、実態把握です。資金繰り表を作成し、どの程度、資金が足りないか、いつまで資金繰りが持つかを確認することが必要になります。 

第2に、新たに資金調達するか、支出を止めるか、いずれかを検討する(場合によっては、両方行う)ことが必要になります。 

第3に、専門家の助力を得ることです。資金的に厳しい状況に陥っている事業者様は、早めに事業再生を扱っている弁護士、中小企業支援団体(中小企業活性化協議会等)に相談に行くことを検討することが必要になります。 

以下、簡単に説明します。 

資金繰り表の作成の必要性 

会社が倒産の危機に直面する直接的なきっかけは、資金ショートの危険が顕在化、現実化する点にあります。 

資金繰り表を作成しないと、会社が資金繰りの危機にあるのか、手形不渡りの危険があるかの判断ができません。また、いつまで資金が持つかの判断も立てられません。資金繰りの状況如何によって、金融機関との協議のみで解決が図れるのか、仕入先などを交えての対応が必要になるのか、取りうる選択肢にも影響があります。 

会社の危機状況を把握するために資金繰り表の作成が必要です。 

資金繰り表の作成方法 

では、資金繰り表はどのように作成すればよいのでしょうか。 

資金繰り表は、「日本公認会計士協会近畿会」のwebサイトから「改訂資金繰表」ファイルをダウンロードすることができます。ダウンロードしたら、まずは、約定どおりの支払を続ける前提の資金繰り表(約定資金繰り表)を作成してみましょう。 

約定資金繰り表の策定手順 

<目的> 
このまま約定どおりの支払いを続けたら、いつの時点で資金ショートするか(若しくは、手形不渡り事故となるか)を知るために策定します。逆に言えば、このまま支払いを続けても資金が問題なければ、後述の改訂資金繰り表を策定する必要はないでしょう。[月次資金繰り表]だけでは期中の資金ショートが分からないので、[日繰り表]も策定しましょう。 

<収入> 
収入は判明している限り、現実に入ってくる金額を書いてください。原則として、売掛金回収リストなどを活用して、現実に入金される見込みの金額を入れるようにしてください。将来分で売掛金が確定していないものや現金主義の会社の場合には、昨年の同時期を基準に今期の売上予測に従って、記入してください。 

<支出>
支出については、既に請求書が届いているもの、取引先により支払日が決められているもの、電気・ガス・水道等の公共料金(家賃やリース料等の事務所経費)の自動引落、従業員の給料、銀行等の返済等支払日が決まっているものは、できる限り正確に記入してください。 

改訂資金繰り表の策定手順 

<目的> 
約定資金繰り表で近い将来(ex.3か月後)資金ショート(ex.手形不渡り)することが判明した場合、資金ショートを回避するあくまで一時的な応急措置を取るために作成するものです。現実に交渉、行動に移すわけではなく、これらの検討材料として作成することになります。 

<収入> 
約定資金繰り表と同じです(新たな資金調達ができる場合は、その分を考慮します。)。 

<支出> 
できる限り、信用不安を惹起させない支払先から順次弁済を停止・返済猶予(返済を0にする)の検討をしてみましょう。 
停止しても事業価値が低下しないところから停止をお願いすることになります。 

①金融機関への元本支払いを停止 
いわゆる条件変更(リ・スケジュール対応)を検討するということです。 
元本の返済猶予については、柔軟対応してもらえる可能性があります。 

②金融機関への利息支払停止
金融機関の利息支払停止をしないと資金繰りが回らないというのは、異常事態です。金利すら支払えない事態になってしまいますと、金融機関の預金口座が利用できなくなるおそれもありますので、そこまで厳しい事業者の場合には、早期に弁護士に相談に行くことをお勧めします。 

③取引先や公租公課の一部の支払停止
それでもまだ収支がマイナスの場合はやむを得ず、取引先のうちの大口分の順で支払繰延の検討をしたり、公租公課の支払の一部を止めることを検討します。もっとも、安易に相談に行くと、信用不安が生じることになります。特に公租公課庁については、換価の猶予の相談などが考えられますので、丁寧な交渉が求められます。可能な限り、弁護士を交えて検討することをお勧めします。 

新規融資、新規の保証の検討 

資金繰りが厳しい場合、1つの手段は、新規融資等ニューマネーを入れる方法です。

ちなみに、売掛金担保にノンバンクから借り入れをするとか、経営者本人がカードローン、サラ金、親族から借り入れて、会社にお金をつぎ込む方法もありますが、この方法を取ってしまうと、その後、対応に苦慮することもありますので、お勧めはできません。 

金融機関に条件変更をお願いする方法 

資金繰り表の作成方法でも記載しましたが、元本の返済を止めてもらえれば(猶予してもらえれば)、資金が持つのであれば、金融機関に条件変更のお願いをすることは有用な方法です。事業者の財務状況、営業状況等にもよりますが、新規融資、新規の保証よりも、比較的簡単にできることが多いでしょう。 

元本の返済を待ってもらうだけで資金繰りが持たない場合には、金利の返済の猶予等をお願いしたり、業者への支払を待ってもらう方法を検討することになりますが、この場合、前述のとおり、難易度が上がりますので、弁護士等の専門家を入れて対応することをお勧めします(相談先は後述のとおり)。 

収益力改善に向けた計画の策定

金融機関に条件変更をお願いする際に、事業計画の作成を求められることがあります。また、金融機関から求められなくても、現在の自社の状況が思わしくない場合には、自社の現在の状況と将来の収益改善に向けた対策を整理するために事業計画を作成するべきであると思います。
この事業計画の作成については、税理士や中小企業診断士、公認会計士といった専門家に手伝ってもらうようお願いすることが考えられますが、公的機関からも支援を受けることができます。各都道府県に設置されている中小企業活性化協議会では、令和4年4月から収益力改善計画策定支援という事業を行っており、中小企業活性化協議会が金融機関への返済に窮している中小企業と金融機関の間に立って調整を行ってくれます。この「収益力改善計画」とは、1~3年程度の事業計画や資金計画を策定するもので、金融機関に条件変更をお願いする場合には、計画策定時から1年程度の計画を作成する必要があります。
皆さんはこの「収益力改善計画」を自力で作るのは難しいのではないかとご心配でしょうが、この計画作成に際してのアドバイスなどを中小企業活性化協議会に所属する専門家が行ってくれるケースもあります。もっとも、事業における収益を改善するための方策(売上を増やしたり、経費を削減する施策。これをアクションプランといいます。)については、当事者である皆さんが自力でアイデアを出す必要があります。
「収益力改善計画」のひな形や記載例については、中小企業庁の下記ホームページをご参照ください。 https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/saisei/01.html

相談窓口 

専門的な相談をする場合、全国47都道府県に1つある「中小企業活性化協議会」に相談することが可能です。事業再生の専門家がそろっていますので、安心して相談することができます。 

弁護士への相談を希望される場合、「ひまわりほっとダイヤル」(電話番号 0570-001-240)に連絡して、弁護士に相談を依頼することを検討しましょう。正式に代理人として、対応してもらうこともできるでしょう。 

弁護士は、公認会計士その他の専門家と連携したり、中小企業活性化協議会に支援してもらう段取りを行ったり、中小企業の事業再生等に関するガイドライン、特定調停スキームを活用するなどして、事業再生を目指すことが可能です。弁護士の場合、過剰債務に苦しんでいる会社の案件など難易度の高い事業者に対しても、様々な助言をしたり、代理人として交渉することができます。弁護士は、守秘義務があり、依頼者のために真摯に様々な策を検討してくれます。 

弁護士を活用する=破産手続、民事再生手続など法的整理に限定されるわけではありません。様々な策を総合的に検討の上、的確な助言を受けることができますし、代理人に就任してもらうこともできます。まずは弁護士への相談を検討してみてはいかがでしょうか。 

以上