MENU

ひまわりほっとダイヤル 日弁連の中小企業向け弁護士予約サービス ひまわりほっとダイヤル 日弁連の中小企業向け弁護士予約サービス

最新情報

トップページ > 最新情報 > 「廃業時における『経営者保証ガイドライン』の基本的考え方」が改定されました

「廃業時における『経営者保証ガイドライン』の基本的考え方」が改定されました

1 はじめに
 2023年11月22日に「廃業時における『経営者保証に関するガイドライン』の基本的考え方」(以下「基本的考え方」といいます)の改定が公表されました。廃業時の基本的考え方策定の背景、改定の概要について説明します。

2 廃業時の考え方の策定の経緯
 2014年2月に「経営者保証に関するガイドライン」(以下「経営者保証ガイドライン」といいます)が運用開始されています。経営者保証ガイドラインは、「経営者保証における合理的な保証契約の在り方等を示すとともに主たる債務の整理局面における保証債務の整理を公正かつ迅速に行うための準則であ」ると記載されていますが(経営者保証ガイドライン2.⑴参照)、「主たる債務の整理局面における保証債務の整理」については、特に保証債務のみを整理する場合(単独型)は、十分浸透しているとは言えない状況でした。民間調査会社の調査によれば、2020年度に破産した会社のうち、経営者も個人破産している案件が7割といった報道もありました。廃業時に経営者が個人破産となるケースが多いことは、中小企業の経営者にとって事業再生や廃業の早期決断の大きな阻害要因になっているケースがあることから、廃業時の個人破産回避に向け、経営者保証ガイドラインの保証債務整理局面における主たる債務者・保証人、対象債権者および弁護士等の支援専門家が求められている対応の明確化を図るため、2022年3月に廃業時の考え方は策定されました。

3 基本的考え方改訂の経緯
 これに対し、基本的考え方がさらに改訂されたのは、廃業時においても、要件を満たせば、インセンティブ資産を満たす余地があることを明確に規定し、これまで以上に経営者保証ガイドランによる債務整理の取り組みを促進するものと言えます。
「経済財政運営と改革の基本方針2023」(2023年6月16日閣議決定)及び「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2023改訂版」(2023年6月16日閣議決定)で、企業経営者に退出希望がある場合の早期相談体制の構築など、退出の円滑化を図る旨が明記され、企業経営者への早期相談の重要性について周知徹底を行うこととされたことを受けて策定したとされています。企業経営者に退出希望がある場合の早期相談の重要性について、主たる債務者、保証人、対象債権者及び保証債務の整理に携わる支援専門家に対し、より一層の周知を行っていく観点から、保証人の残存資産の増加に資する可能性があること等を明確化するために改定が実施されたとされています(基本的考え方3項の新設)。

4 改訂の概要
  基本的考え方においては、主たる債務者、保証人(6項)、対象債権者(5項)及び保証債務の整理に携わる支援専門家(7項)に対し、廃業手続に早期に着手したことによる保有資産等の減少・劣化防止に伴う回収見込額の増加額について、合理的に見積もりが可能な場合は、当該回収見込額の増加額を上限として、事業清算後の新たな事業の開始等のため、一定期間の生計費に相当する額や華美でない自宅等も保証人の残存資産に含まれる可能性があることにも配慮することとされてます。 代理人となる弁護士は、廃業事案であるからと言って、保証人には自由財産しか残す余地がないと諦めるのではなく、廃業時の基本的考え方に沿って、インセンティブ資産を残す余地がないか確認する姿勢が求められますので、注意しましょう。
(参考)中小企業庁ウェブサイト掲載ページ
https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/keieihosyou/2023/231122.html
(参考)金融庁ウェブサイト掲載ページ
https://www.fsa.go.jp/news/r5/ginkou/20231213-2.html