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価格交渉拒否は独禁法違反?賃上げ分の価格交渉上の注意点

1 賃上げのための価格交渉指針の公表
「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」(令和5年11月29日 内閣官房・公正取引委員会)が公表されました。これは、公正取引委員会が業界ごとに行った価格転嫁円滑化の取組に関する実態調査の結果を踏まえて作成されたもので、労務費の転嫁の在り方の指針です。発注者は取引上強い立場にあることが多いため、受注者は、コストの中でも特に労務費について価格転嫁は言いだしにくいものです。そこで、我が国の雇用の7割を占める中小企業が賃上げ実現の原資を確保できる取引環境の整備を図ることが本指針の目的です。本指針は、発注者、受注者それぞれが採るべき行動、求められる行動を12の行動指針として取りまとめ、かつ、各行動指針に該当する取組事例を紹介しています。

2 発注者と受注者の行動指針と取組事例の紹介
発注者の行動指針としては、①労務費上昇分の取引価格転嫁を受け入れる取組方針の決定に経営トップが関与すること、②労務費の価格転嫁について協議の場を設けること、③受注者に労務費上昇の理由や説明を求める場合は、公表資料に基づくものとすること、④価格転嫁の要請額の妥当性判断には、受注者がその先の取引先との取引価格を適正化すべき立場にあることも考慮すること、⑤受注者から労務費上昇を理由とした価格転嫁を求められた場合は協議に応じ、また、価格転嫁を求められたことを理由に不利益取り扱いをしないこと、⑥必要に応じて、労務費上昇分の価格転嫁に係る考え方を提案することが示されています。
また、受注者の行動指針として、①各種支援機関等に相談するなどして積極的に情報を収集して価格転嫁交渉に臨むこと、②労務費上昇分の説明資料には公表資料を用いること、③適切なタイミングで自ら発注者に価格転嫁を求めることが示されています。
さらに、発注者と受注者双方の行動指針として、①定期的なコミュニケーションをとること、②価格交渉の記録を作成し、双方で保管することが示されています。

3 本指針の位置付け
発注者が指針に沿わない行為をすることにより、公正な競争を阻害するおそれがある場合には、公正取引委員会は独占禁止法や下請法に基づき厳正に対処していくとされています。他方、発注者が指針に示された全ての行動を適切に採っている場合には、通常独占禁止法や下請法の問題は生じないと考えられるとされています。
発注者側は、本指針に沿った価格交渉を実践することによりコンプライアンス経営の実践につながります。また、受注者側も本指針を理解して、価格交渉に臨むことにより、自社の労務費上昇分を取引価格へ転嫁する可能性が高まります。独占禁止法や下請法を遵守した取引価格の交渉方法や労務費上昇分の取引価格交渉方法について、疑問が生じたときには,ひまわりほっとダイヤルをご利用いただき、是非弁護士にご相談して,法的に適切なアドバイスを受けてください。