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売上減少・資金繰りに不安を感じている事業者の皆様へ -挑戦する中小企業応援パッケージ、中小企業の事業再生等に関するガイドライン、廃業時における「経営者保証に関するガイドライン」の基本的考え方-

日弁連中小企業法律支援センター事業再生PT幹事 弁護士 富永高朗

1 はじめに

この記事は、売上減少・資金繰りに不安を感じている事業者の皆様への近時の支援制度として、挑戦する中小企業応援パッケージ、中小企業の事業再生等に関するガイドライン、廃業時における「経営者保証に関するガイドライン」の基本的考え方について、概要を紹介するものです。

※本ページでご紹介する関係省庁や支援機関のURL、PDFファイル等は2024年(令和6年)1月時点の情報です。今後更新・変更される可能性がありますので、ご参照の際にはご留意ください。

2 挑戦する中小企業応援パッケージ

「調整する中小企業応援パッケージ」は、令和5年8月30日、経済産業省が、中小企業の持続的成長を支援するべく、金融庁・財務省と連携の上、策定したものです。
https://www.meti.go.jp/press/2023/08/20230830002/20230830002.html

①資金繰り支援についてと②経営改善・再生支援の強化の施策が示されています。
金融庁・農林水産省から、各金融機関団体に対し、同パッケージを踏まえた事業者支援の徹底についてとの要請が出されています。
https://www.fsa.go.jp/news/r5/ginkou/20230901-2/20230901_yousei.pdf

① 資金繰り支援について ・セーフティネット保証4号の借換え目的での利用が、当面は本年12月末まで継続になっています。
https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/2023/230830_4gou.html

・日本政策金融公庫による資金繰り支援について、コロナ資本性劣後ローンは貸付限度額を15億円へ引上げの上、令和6年3月末まで申込期限を延長されています。
https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/shihonseiretsugo_t.html

・日本政策金融公庫による、スーパー低利・無担保融資は、金利引下げ幅を縮小しつつも、同様に令和6年3月末まで申込期限が延長されています。
https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/covid_19_m.html

・物価高騰対策のセーフティネット貸付における金利引下げ措置についても、申込期限が延長されています。
https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/07_keieisien_m.html

②経営改善・再生支援の強化について
各企業の状況に応じ、経営改善フェーズ、再生フェーズ、再チャレンジフェーズそれぞれについての支援策が示されています。

〇経営改善フェーズは、中小企業活性化協議会の収益力改善フェーズ
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/saisei/01.html(令和4年3月4日付中小企業活性化パッケージhttps://www.meti.go.jp/press/2021/03/20220304006/20220304006-1.pdf)の整理を参考とすると、
「有事に移行するおそれのある中小企業」を対象としたものと考えられ、以下の支援策などが示されています。 

 

・信用保証協会による経営改善支援の強化がうたわれています。
例えば、認定経営革新等支援機関の支援を受けて、経営改善サポート会議等を利用した、経営改善サポート保証(コロナ対応)の制度も参考になります。
据置期間を最大5年に緩和し、信用保証料の事業者負担の軽減などもあります。
期間が延長されていますが、令和6年3月末が締切りとなっています。
https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/sinyouhosyou/kaizen_saisei/gaiyo.pdf

・早期経営改善計画策定支援事業の利用も考えられますところ、金融機関による利用も一定の条件で認める方向とのことです。
早期経営改善計画策定支援事業は、資金繰りの管理や自社の経営状況の把握などの基本的な経営改善に取り組むため、認定経営革新等支援機関の支援のもと、資金繰り計画や、ビジネスモデル俯瞰図、アクションプランといった内容の経営改善計画を策定するものです。費用の補助を受けられる場合があります。
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/saisei/04.html

・保証料の上乗せにより、経営者保証の提供を選択できる信用保証制度について、時限的に保証料負担の軽減策が検討されています(その後、「デフレ完全脱却のための総合経済対策~日本経済の新たなステージにむけて~」(令和5年11月2日 https://www5.cao.go.jp/keizai1/keizaitaisaku/2023/20231102_taisaku.pdf)では、2023年度に前倒しの創設が閣議決定されています。)。

〇再生フェーズは、「収益性のある事業はあるものの、財務上の問題がある事業者」を対象としたものと考えられ(参考:https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/saisei/index.html)、以下の支援策などが示されています。

・商工組合中央金庫による危機対応融資のDES(債務の株式化)による再生支援を可能とするなど再生支援の強化がうたわれています。
ご参考 https://www.shokochukin.co.jp/corporation/service/solution/management/

・後述の、中小企業事業再生等に関するガイドラインの事例集が公開されています。
https://www.fsa.go.jp/news/r5/ginkou/20231017.html 各社のご状況を踏まえつつ、取りうるスキームの検討や金融機関に理解を得るための資料などとしての活用が考えられます。

〇再チャレンジフェーズは、「事業継続が困難な中小企業、保証債務に悩む経営者等」を対象としたものと考えられ、以下の支援策などが示されています。
ご参考 https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/saisei/03.html

・中小企業活性化協議会に勤務する弁護士数を倍増し、同協議会に相談した企業の円滑な再チャレンジを支援する体制が構築されています。
なお、中小企業活性化協議会によれば、実際、再チャレンジ支援の件数は増加しているとのことです。

・廃業時における経営者保証に関するガイドライン」の基本的考え方の改定の検討がうたわれ、後述4の通り、廃業手続の早期着手により、手元に残せる資産が増加する可能性があること等を明確化されています。

・「経営者保証に関するガイドライン」における廃業時の保証債務整理に関する参考事例が公表される見通しです。
こちらは令和4年までの公表です。 https://www.fsa.go.jp/news/r3/ginkou/20220623-4.pdf
・信用保証協会からの代位弁済に陥ってしまった事業者に対し、求償権消滅保証による事業再生の可能性が広がっています。
https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/2023/230920.html

3 中小企業の事業再生等に関するガイドライン

https://www.zenginkyo.or.jp/adr/sme/sme-guideline/
〇中小企業の事業再生等に関するガイドラインは、中小企業者の事業再生等に関する基本的な考え方を示しています(第2部)。
その中で、中小企業者の「平時」「有事」「事業再生計画成立後のフォローアップ」それぞれの段階について、中小企業者と、金融機関それぞれが果たすべき役割が明確化されています。
中小企業者と金融機関との取引において、平時から適時適切な対応をとり、信頼関係を構築し、有事(財務内容の悪化、資金繰りの悪化等が生じたため、経営に支障が生じ、または生じるおそれがある場合)に移行しないことなどが期待されています。

そして、本ガイドラインでは、新型コロナウィルス感染症による影響からの脱却も念頭に、新たな準則型私的整理手続、「中小企業の事業再生等のための私的整理手続(中小企業版私的整理手続)」を定めています(第3部)。再生型の他に、廃業型の私的整理手続も定めており、廃業型の私的整理手続は、これまでわが国では見られなかったものです。

中小企業者とありますが、個人事業主も含まれます。学校法人や社会福祉法人も、事業規模や従業員数など次第で利用可能とされています。
第3部の私的整理手続を中小企業者が利用するには、財産状況などに関する経営情報等を適示適切かつ誠実に開示していることなどの要件があります。
もっとも、第2部は第3部の手続利用の前提条件ではないことには留意が必要です。

〇 第3部の中小企業版私的整理手続と、破産などの法的手続と異なる特徴として、以下があります。
・対象債権者のみに弁済猶予や免除などを求めるものです。
対象債権者は、原則として、銀行などの金融機関やサービサー等、貸金業者などです。廃業型では、リース会社も含まれます。
・対象債権者全員の同意が必要です。
・非公開です。事業価値の毀損を限定できます。
・保証債務の整理も、原則として経営者保証ガイドラインを活用するなど一体整理することになります。

第3部の私的整理手続では、外部専門家(弁護士、公認会計士等)の支援を受けて中小企業者が、対象債権者と協議をしつつ、全員との合意・計画成立を目指します。
また、両者とは別に第三者支援専門家という立場の方も選任することになります。
第三者支援専門家は、公正中立な立場であり、中小企業活性化協議会又は事業再生実務家協会が公開するリストの中から選ぶ、または対象債権者全員から同意を得て、他の第三者支援専門家を選ぶことが可能です。

〇 再生型、廃業型それぞれの手続の大まかな流れは以下の通りです。 

「再生型」手続
第三者支援専門家候補者の選定
主要債権者への再生型手続の申出(第三者支援専門家選任への主要債権者全員の同意)
第三者支援専門家への支援申出  
※主要債権者は、金融債権額上位50%以上に達するまでの対象債権者(単独または複数)
計画策定支援開始 
一時停止の要請(必要に応じて)
財務DD・事業DD
事業再生計画案の策定
第三者支援専門家による調査報告書の作成
債権者会議・第三者支援専門家による調査報告
再生計画成立
モニタリング

「廃業型」手続
主要債権者への廃業型手続の申出
計画策定支援開始
一時停止の要請(必要に応じて。 主要債権者全員の同意)
弁済計画案の策定
第三者支援専門家の選定(ただし、より早期選定も可。 主要債権者全員の同意))
第三者支援専門家候補者の支援申出
第三者支援専門家による調査報告書の作成
債権者会議・第三者支援専門家による調査報告
弁済計画成立
モニタリング

 

〇認定経営革新等支援機関による本ガイドラインを通じた私的整理手続の場合には、別途手続を経ることで、計画策定支援費用などの一部について、補助を受けられる場合もあります。 
ご参考 https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/saisei/05.html

  

4 廃業時における「経営者保証に関するガイドライン」の基本的考え方

〇廃業時における「経営者保証に関するガイドライン」の基本的考え方(以下「基本的考え方」という。)は、主たる債務者・保証人、対象債権者及び弁護士等の支援専門家について、中小企業の廃業時における経営者保証に関するガイドライン(以下「ガイドライン」という。)活用(特に7項「保証債務の整理」)の観点から求められる対応を明記したものです。

基本的考え方は、主たる債務者が、廃業のために、法的債務整理手続の開始申立て又は利害関係のない中立かつ公正な第三者が関与する私的整理の申立てをこのガイドラインの利用と同時に現に行い、又は、これらの手続が継続し、もしくはすでに終結している場合を想定しています。

基本的考え方では、対象債権者における対応の明確化も図られています。
例えば、保証人に自由財産を超える保有資産がない等の状況によっては、対象債権者に対し、弁済金額が無い弁済計画(いわゆるゼロ円弁済)も経営者保証ガイドライン上、許容されることに留意することなどが明確にされています。

〇令和5年11月には、基本的考え方が改訂されました。
https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/keieihosyou/2023/231122.html
改訂箇所表示版も併せて公開されています。
https://www.zenginkyo.or.jp/fileadmin/res/news/news351122_2.pdf

今般の改定は、企業経営者に退出希望がある場合の早期相談の重要性について、より一層の周知を行っていく観点から、廃業手続に早期に着手することが、保証人の残存資産の増加に資する可能性があること等を明確化するものです。

〇 基本的考え方を踏まえつつ、主たる債務者が廃業したとしても、保証人は破産手続を回避しえることが周知されることで、以下の点が期待されています。
・経営者が早期に経営改善、事業再生及び廃業を決断し、主たる債務者の事業再生等の実効性向上に資する
・保証人が新たなスタートに早期に着手できる社会を構築する
・ひいては地域経済全体の発展に資する

5 まとめ

令和5年11月27日には、内閣府・金融庁・財務省・厚生労働省・農林水産省・中小企業庁連名にて、全国銀行協会など金融機関団体向けに「デフレ完全脱却のための総合経済対策」を踏まえた経営改善・事業再生支援の徹底等について
https://www.mof.go.jp/policy/financial_system/fiscal_finance/torikumi/20231127_yousei.pdfでは、
「事業者の実情に応じた経営改善支援や事業再生支援、再チャレンジ支援等を先延ばしすることなく、一歩先を見据えて取り組む新しい段階へと移行していく必要があります。」とし、資金繰り支援、条件変更・借換え、資本制劣後ローン、経営改善・事業再生支援等、メイン先以外への支援と信用保証協会への役割、経営者保証、住宅ローン等、ALPS 処理水放出の影響を受けた事業者支援といった、様々な場面について、事業者支援の徹底が要請されています。

このように、売上減少・資金繰りに不安を感じている事業者の皆様への支援制度は、着実に充実しています。
これらも踏まえ、前述の各制度について、弁護士のサポートをご利用いただくのも一つです。例えば、融資不可の連絡があった場面でも、「一歩先を見据えて」、前述の各制度などを通じた支援の可能性は考えられます。
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弁護士の一つの特徴は、解決の最後まで、中小企業者の支援を行うことができる点かと存じます。弁護士には法令上の守秘義務がございます。
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