賃借人居住安定化法案(追い出し屋規制法案)の早期制定を求める会長声明
政府は、2010年3月2日、「賃借人の居住の安定を確保するための家賃債務保証業の業務の適正化及び家賃等の取立て行為の規制等に関する法律案」(以下「本法案」という。)を国会に提出した。本法案は、これまで規制がなされていなかった家賃債務保証業に登録を義務付けるとともに、業態のいかんを問わず、鍵交換、家財道具を搬出、深夜早朝の督促など、人を威迫したり、人の私生活又は業務の平穏を害するような不当な取立て行為を刑罰をもって禁止するものであり、いわゆる「追い出し」行為による被害を未然に防止し、賃借人の居住の安定を図るために不可欠の法規制である。
ところが、本法案は2010年4月に参議院で全会一致にて可決されたものの、その後、3度の継続審議を経て、今なお成立を見ていない。この間も、家賃債務保証業者や賃貸住宅管理業者による「追い出し」被害は繰り返され、賃借人の居住権が脅かされる状況が続いている。名古屋地裁では、2011年4月27日に、家賃債務保証業者による執拗な退去要求につき、社会通念上許容される限度を超えたものとして、不法行為責任を認めた。今年に入ってからも、川崎市、相模原市、青森県などでも「追い出し」被害による損害の賠償を求める提訴が相次いでいる。これ以上、「追い出し屋」による居住権侵害を看過することは許されない。
他方で、本法案は、家賃等弁済情報提供事業につき、登録を義務付けるなど一定の規制を及ぼしつつも許容するという問題点を有しており、この点について、当連合会は、2010年3月8日及び9月24日付けで、同事業の禁止を含む抜本的な見直しを求める会長声明を発したところであり、国会での審議を通じて、必要な修正を図ることが求められる。
よって、速やかに本法案につき審議を行い、家賃等弁済情報提供事業の禁止を含む抜本的な見直しを行った上で、間もなく召集される臨時国会で必ず成立させるよう求める。
2011年(平成23年)10月13日
日本弁護士連合会
会長 宇都宮 健児