住民基本台帳法改正法案衆議院可決に関する会長声明
本日、衆議院本会議において、住民基本台帳法改正法案が「この法律の施行に当たっては、政府は、個人情報の保護に万全を期すため、速やかに、所要の措置を講ずる」との付則が付されたうえで可決された。
改正法案は、住民票に10桁のコード番号をつけて、氏名・住所・性別・生年月日の4情報を、全国の自治体のコンピューターに登録し、指定情報処理機関が統一的に管理する内容となっているが、将来、税務、医療、教育、年金・福祉、家族、犯罪情報などの多様な個人情報を保有している政府がこれらの情報をコード番号に結合させる危険は大きい。
また、改正法案は、情報の目的外使用の禁止、公務員の秘密保持義務違反に対する加重罰則、民間利用の禁止などを盛り込んだものの、行政機関が使用した情報を消去する規定はなく、この情報を他の情報と結合しても罰則がないうえ、情報が漏洩されたときの保護措置もとられていないことなどを考え合わせると、プライバシーが侵害される恐れは拭い切れない。
プライバシーは、自己に関する情報を自らコントロールするという憲法上の権利であり、何よりも先ず個人情報の保護の在り方についての議論を優先すべきである。
当連合会は、従来より今回の改正法案が、住民基本台帳法の本来の目的を逸脱し、住民票コードの導入により国民総背番号制にも道をひらき、国家による個人情報の集中管理が行われ、国民のプライバシーを侵害する恐れがあるとして、反対の立場を示してきたが、参議院の審議においては、プライバシーなどの憲法上の権利の保障や立法の当否に踏み込んだ議論が充分なされるよう、強く求めるものである。
1999年(平成11年)6月15日
日本弁護士連合会
会長 小堀 樹