中小企業の事業承継・引継ぎ支援に向けた中小企業庁と日本弁護士連合会の連携の拡充について


令和7年1月9日  

中小企業庁    

日本弁護士連合会 

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中小企業庁と日本弁護士連合会は、中小・小規模事業者(個人事業主を含む。以下「中小企業」という。)を当事者とするM&A(以下「中小M&A」という。)を中心に、中小企業の事業承継・引継ぎに対する支援について、以下のとおり、連携を強化し対応を進める。


1 中小M&A推進の重要性

我が国の中小企業においては、経営者年齢の上昇に伴い、経営者に占める70歳以上の割合は過去最高となる中、足下の廃業件数も増加傾向にあり、黒字廃業の割合も未だ半数を超え、後継者不在による廃業割合も約3割を占める状況にある。こうした中小企業の廃業の増加による経営資源の散逸を防止し、これらの中小企業が担ってきた事業の価値を維持することは急務であり、中小M&Aの推進は我が国全体の喫緊の課題である。

これに加え、中小M&Aは、譲受側の企業において、従来の事業の再構築や経営資源の集約化を通じて生産性向上等をもたらすなど、企業の成長を促進するという積極的意義も有する。このような観点からも中小M&Aの推進は重要である。


2 官民による取組の重要性

中小企業においては、譲渡側はM&Aの実施経験がないことが通常であり、譲受側もM&Aに十分な知見を有していないことが多いことや、急速な市場の伸びに伴い、M&A後のトラブル等も増加傾向にあることから、中小M&Aを推進するためには、中小企業にとって安心できる取引を確保することが必要である。

したがって、中小M&A推進に向けて、可能な限り中小M&Aに関するリスクを特定・回避できるよう、官民が適切な役割分担の上で環境整備を行っていくことが重要である。


3 中小M&Aにおける弁護士関与の重要性

中小M&Aに関して安心できる取引を確保する上では、各種契約の締結及び実行に関する支援や法務デュー・ディリジェンス対応、M&Aにおける当事者間でのリスク・トラブル案件への対応等を含め、M&Aプロセス全体における弁護士の関与が極めて重要である。

さらに、中小M&Aが不奏功となり、やむなく転廃業を選択せざるを得ない場合においても、弁護士が関与することにより、経営資源引継ぎ支援へと切れ目なく円滑につなぐことができる。


4 現状の課題

これまでの取組の成果もあり、中小M&Aにおける弁護士の関与や人材育成の取組は一定程度進んだ一方で、現状において弁護士の関与は未だ限定的であり、特に地方においてはより一層の積極的な関与が望まれる。

中小M&Aにおける弁護士の関与を全国規模で促進するためには、中小企業の経営者や支援機関において、弁護士の関与の必要性や有用性が認識された上で、中小M&A支援に対応可能な各地域の弁護士と繋がる機会を十分に確保することが重要である。また、全国において、中小M&A支援に対応可能な弁護士を一層増加させることも急務である。


5 中小企業庁と日本弁護士連合会の連携強化

(1)従来の取組

これまで、中小企業庁は、全国48か所の事業承継・引継ぎ支援センターにおいて、士業等専門家による中小M&Aの個別案件へのスポット支援を行っているところであり、日本弁護士連合会は、中小企業の事業承継について専門部署を設け、会員に対するM&A研修講座の提供や、各地の弁護士会と経営支援団体や公的機関との連携の機会創出に努めてきた。また、令和3年度からは、こういった取組を一層強化するべく、地域の実情に応じて弁護士の紹介やお互いの人材育成等を行う組織的な取組を開始し、各地域において段階的に導入を進め、全国規模での当該連携強化を推進してきた。


(2)中小M&Aにおける連携強化

今般、中小企業庁と日本弁護士連合会は、急速な市場の伸びに伴い、M&A後のトラブル等が増加傾向にあること等を踏まえ、中小M&Aにおける弁護士の関与を一層促進するため、令和6年度中に、事業承継・引継ぎ支援センターにおける弁護士人材の確保に向けて、地域の実情に応じた弁護士人材の紹介等の取組を開始するとともに、引き続きお互いの人材育成等を行う組織的な取組を実施する。その上で、継続的に当該取組の内容・効果の確認・検証等を行いつつ、令和7年度までを目途に、当該取組を希望する地域で段階的に導入を進め、全国規模での当該連携強化を目指す。


(3)転廃業支援における連携強化

中小企業庁と日本弁護士連合会は、中小M&Aが不奏功となり、やむなく転廃業を選択せざるを得ない場合においても、経営資源引継ぎ支援へと切れ目なく円滑につなぐことができるよう連携を強化していく。

特に資産超過で円滑な廃業や清算が可能なケースを念頭に、事業承継・引継ぎ支援センターと弁護士会の連携強化に向けて、地域の実情に応じて弁護士の紹介やお互いの人材育成等を行う組織的な取組を実施してきたところ、今後も、継続的に当該取組の内容・効果の確認・検証等を行いつつ、令和7年度までを目途に、当該取組を希望する地域で段階的に導入を進め、全国規模での当該連携強化を目指す。