日弁連新聞 第537号

法制審議会民事執行法部会の議論状況
民事執行法制の見直しに関する要綱案まとまる


法制審議会民事執行法部会は、2016年11月以降、①債務者財産の開示制度の実効性の向上、②不動産競売における暴力団員の買受け防止の方策、③子の引渡しの強制執行に関する規律の明確化について審議を重ねてきた。
本年8月31日の第23回会議で「民事執行法制の見直しに関する要綱案」を決定した。



債務者財産の開示制度の実効性の向上

現行の財産開示手続の申立てに必要な債務名義の種類が拡大され、執行証書などに基づく申立てが可能となる。
また、第三者から債務者財産情報を得る制度が新設され、銀行などから預貯金債権等、振替機関などから振替社債等に関する情報が、いずれも財産開示手続を経ずに入手可能となる。
さらに、登記所から不動産情報、市町村や日本年金機構などからは給与債権情報も入手できるようになるが、その申立てには財産開示手続の先行が必要であり、給与債権情報の申立権者は、養育費等や人の生命身体に係る損害賠償請求権の債権者に限られる。


不動産競売における暴力団員の買受け防止の方策

不動産の買受申出人に暴力団員などでない旨の陳述が義務付けられ、虚偽の陳述には罰則が設けられる。
裁判所は警察に対し、最高価買受申出人や自己の計算で最高価買受申出をさせた者が暴力団員などに該当するか否かの調査嘱託を行い、暴力団員などと認められるときは売却不許可決定をすることになる。


子の引渡しの強制執行に関する規律の明確化

執行方法として、裁判所の決定で執行官に引渡しを実施させる方法と間接強制の方法が定められる。
前者は、間接強制を先行させる場合のほか、間接強制の実施では奏功の見込みがあると認められない場合、子の急迫の危険防止に必要な場合に申立てが可能となる。
手続面では、実施決定に当たり、原則として債務者の審尋が行われる。執行官は、相当な場合に債務者の非住居等でも執行ができ、子と債務者が共にいない場合でも執行が可能であるが、その場合には債権者の出頭が必要とされる。
また、これらの内容を踏まえ、国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律(ハーグ条約実施法)も同趣旨の内容に改正される予定である。


今後の日弁連の対応

今後は、法制審議会総会の採決を経て、立法化に向けた作業が進められる。
いずれの改正についても、最高裁判所規則に細目が委ねられる事項があるため、日弁連は、その制定過程を注視し、適宜対応を検討する考えである。

 ◇    ◇


(法制審議会民事執行法部会バックアップ会議  副座長 鷹取信哉)



報告
第10回法曹養成制度改革連絡協議会


法曹養成制度改革連絡協議会(第10回)が7月2日、文部科学省で開催された。会議には、法務省、文部科学省、最高裁判所、日弁連と法科大学院協会が出席した。


会議のテーマは、①法曹人口、②法科大学院、③司法試験、④法曹志望者の確保で、各テーマに関する資料の説明や意見交換が行われた。
①法曹人口については、法務省から法曹人口データ更新の報告がなされた。
②法科大学院に関しては、2018年度法科大学院入学者選抜の状況および中央教育審議会大学分科会法科大学院等特別委員会(以下「中教審」)の審議状況についての報告と、中教審で取りまとめられた「法科大学院等の抜本的な教育の改善・充実に向けた基本的な方向性」の内容についての説明がなされ、意見交換が行われた。
日弁連からは、今年は法科大学院の集中改革期間の最終年度であり、中教審で法学部3年・法科大学院2年のいわゆる「3+2」の議論などが進められているが、「3+2」については、質の確保をどのように行うかが重要な課題であるとの意見を述べた。
③司法試験については、法務省から、2018年の司法試験および司法試験予備試験それぞれの出願状況、受験状況、短答式試験の結果が報告された。
④法曹志望者の確保に関しては、法務省と文部科学省が行った法学部生に対するアンケートの結果が報告された。日弁連、法科大学院協会、文部科学省、最高裁判所、法務省の各機関が実施しているそれぞれの法曹志望者確保に関する取り組みについても報告がなされ、意見交換が行われた。
日弁連からは、兵庫県弁護士会が作成したパンフレットや同会が実施したイベント、昨年11月に大阪で実施したシンポジウムなどについて報告を行った。
また、今後各地で取り組みを進めるに当たり、裁判官や検察官にも積極的に出張授業に同席いただくなど協力をお願いしたいこと、大学生だけでなく、高校生に働きかけることも効果的と思われるので各機関で取り組む際には検討されたいことなどを述べた。


(司法調査室嘱託 高橋しず香)


*連絡協議会の議論状況および資料等は法務省ウェブサイトでご覧になれます。

 


司法試験に1525人が合格


9月11日、2018年の司法試験の合格発表があり、1525人が合格した。受験者は5238人、合格率は29.11%だった。


会長談話を公表

日弁連は、合格発表の当日に次のとおり会長談話を公表した。

◇    ◇


本日、平成30年司法試験の最終合格者1,525人が発表された。
高い志と熱意をもって法曹を目指し、司法試験合格を果たした方々に対し、心から歓迎の意を表するとともに、これから始まる司法修習において一層の研鑽を積まれることを期待する。
当連合会は、市民にとってより身近で利用しやすく頼りがいのある司法を実現するために、司法基盤の整備、司法アクセスの拡充、弁護士の活動領域の拡大などに積極的に取り組むとともに、社会の様々な要請に応えることができる質の高い法曹を輩出するべく、法曹養成制度の改革に主体的に取り組んできた。
年間の司法試験合格者数については、現実の法的需要や新人弁護士に対するOJT等の実務的な訓練に対応する必要があることなどから、まずは1,500人に減じて急激な法曹人口の増員ペースを緩和すべきことを提言し、平成28年3月11日の臨時総会で「法曹養成制度改革の確実な実現のために力を合わせて取り組む決議」を採択した。また、政府は、平成27年6月30日に法曹養成制度改革推進会議が決定した「法曹養成制度改革の更なる推進について」において、当面の司法試験合格者数を、質の確保を前提としつつ「1,500人程度は輩出されるよう、必要な取組を進め」るものとした。
本年の司法試験の合格者数は、1,525人となった。一昨年は1,583人、昨年は1,543人であり、近年の推移を鑑みるに、上記推進会議決定で言及された「1,500人程度」に至ったとも考えられ、これまでの法曹人口の急激な増員ペースが緩和されてきたと言うことができる。この傾向が今後も続くのか、引き続き注視していきたい。
当連合会は、法曹養成制度の改革が急速に進む中、今後とも関係機関・団体と連携しつつ、質の高い法曹を養成するために全力を尽くして取り組んでいく所存である。



【お見舞い】


このたびの台風20・21・24号および平成30年北海道胆振東部地震により被災された皆さまに、謹んでお見舞い申し上げます。



平成30年7月豪雨・北海道胆振東部地震
大規模災害への日弁連および弁護士会の対応


このたびの平成30年7月豪雨、台風20・21号、平成30年北海道胆振東部地震によって、多数の方が亡くなられ、広範囲に甚大な被害が発生している。
日弁連は、平成30年7月豪雨に関し7月9日に災害対策本部を立ち上げるなど、これらに対する支援活動を行っている。前号に続き、日弁連および弁護士会の対応を報告する。


災害に関する意見書2本を公表

8月23日にarrow_blue_2.gif「被災者支援に資する住家被害認定、災害救助法の弾力的運用及び公費による土砂等撤去の措置を求める意見書」arrow_blue_2.gif「災害関連死の事例の集積、分析、公表を求める意見書」をとりまとめ、それぞれ関係機関に提出した。
前者は、このたびの豪雨災害を受けて、国に対し、住家の被害認定について被災者の利益に資する認定を行うこと、大規模な土砂災害に際しては、災害救助法の活用や特例措置を設けるなどの方法によって、公費による土砂等撤去を実施することなどを求めている。
後者は、国において、将来の災害関連死を減らすために、災害関連死の事例を全国の地方自治体から集め、多様な専門家で構成される調査機関を設置して事例を分析し、分析結果を匿名化して公表すべきとしている。
*意見書は日弁連ウェブサイトでご覧になれます。


法律相談・災害ADR等を実施

広島・岡山・愛媛の各弁護士会では発災直後から無料電話法律相談を継続実施しており、相談件数は9月10日現在、広島684件・岡山575件・愛媛131件となっている(回線の一部を東京に転送し受電)。日弁連は、将来の災害時の法的ニーズに備えるため、今回の相談結果を集計して分析結果を公表する予定である。
また今回の災害は、各県の中心部から離れた地域の被害が目立つことから、各弁護士会では法律相談センターでの相談のほかに、呉市(広島県)、総社市(岡山県)、大洲市(愛媛県)など被災地域での出張相談も実施している。被災地での相談では、自治体・福祉機関や他士業との連携の必要性が明らかになっており、将来に備え、災害時の連携協定を検討するなど、平時の取り組みの必要性も確認されている。
さらに、各弁護士会では災害ADRおよび自然災害債務整理ガイドラインの運用を開始している。既に多数の申し立てがなされている弁護士会もある。地域や被災状況によって被災者のニーズは異なることから、さまざまな制度の活用を周知していく必要がある。


北海道で震度7

9月6日未明に北海道胆振地方で最大震度7を観測する地震が発生し、多数の犠牲者が生じるとともに、大規模停電など市民生活に大きな影響を及ぼした。札幌弁護士会は9月8日に災害対策本部を設置し、直ちに支援活動を開始しているが、日弁連は、本災害に関しても弁護士会などと連携し、被災者支援のノウハウの共有など必要な支援策を講じていく。


(前事務次長 近藤健太)



日弁連短信


多岐にわたる委員会活動


27項目前事務次長  近藤健太

2016年2月の事務次長就任時、私が担当することになった委員会・WG等の項目数です。
人権部所管でいえば、消費者問題対策、災害復興支援、高齢者・障害者権利支援、公害対策・環境保全、犯罪被害者支援など、業務部所管では、民事介入暴力対策、公設事務所・法律相談センター、若手弁護士サポート、研修、弁護士業務妨害対策、業際・非弁・非弁提携問題等対策などでしたが、そのほか労働法制や知的財産など法制部所管項目まで幅広く受け持っていました。


担当替えも頻繁に

事務次長生活を通じて担当が変わらないわけではなく、別の事務次長就退任の際には必要に応じた担当替えが行われます。私は日弁連会務歴も浅く、特段秀でた分野がなかったためか、他の事務次長が担当しない分野をその都度受け持つ形で担当替えになることが頻繁にありました。
一時は弁護士業務改革、リーガル・アクセス・センターや中小企業法律支援などを担当したこともありますが、その後も目まぐるしく入れ替わり、法テラスや子どもの権利、そして総会・代議員会も担当するようになりました。
退任時点の担当項目は32になっていましたが、就任から退任までに担当した延べ項目数は60近くを数えます。


事務次長の役割は

このように担当する委員会・WG等は広範ですし、一つの委員会でも大小多数の会議が開催されます。担当事務次長が全ての会議に出席することは不可能ですが、短時間であっても可能な限り顔を出すようにしていました。
また、日弁連内の複数の委員会が意見を異にすることはよくありますが、時として、意見を異にする2つの委員会を同じ事務次長が担当することがあります。これが弁護士業務であれば、「職務を行い得ない事件」として即刻手を引くところですが、担当委員会に関してはそうもいきません。「意見交換の場」などと称して両委員会の主要委員に集まっていただいたこともありましたが、事務次長としては極めて難しい立場に置かれていました。


終わりに

多数の委員会・WG等を担当させていただいたということは、それだけ多くの委員・幹事の皆さまにお世話になったことになります。多忙であるにもかかわらず、日夜、委員会業務に邁進する皆さまには頭が下がる思いでした。
この場を借りて御礼申し上げます。ありがとうございました。


(前事務次長 近藤健太)


弁護士任官推進 関東ブロック大会
弁護士任官のさらなる推進を目指して
9月7日 弁護士会館


2001年以降、裁判官の給源の多様化・多元化を図るべく、裁判所と日弁連は弁護士任官等に関する恒常的かつ密接な協力・連携を行っている。弁護士任官のさらなる推進を目指し、弁護士任官を経験した会員を招いてシンポジウムを開催した。
(共催:関東弁護士会連合会、東京三弁護士会)


弁護士任官等推進センターの三木恵美子事務局長(神奈川県)が基調報告を行い、多様な人材を供給することで、裁判所に市民感覚が取り入れられ、一層人権感覚に優れ、内容も充実した裁判が実現すると弁護士任官の効果を訴えた。
水野邦夫会員(東京/元東京高裁部総括判事)は、受け身の姿勢ではなく、自ら人間関係を作り、配属部の雰囲気を良くし、書記官とどう付き合うかを考え実践すべきと弁護士任官者の心構えを説いた。さらに弁護士任官者には裁判官・裁判所と弁護士・弁護士会との間の垣根を低くする役割が期待されていると指摘し、東京地裁部総括時代や山形地家裁所長時代に、裁判官と弁護士が忌憚のない意見交換をする交流会を立ち上げ、いずれも好評を博したと述べた。
坂口公一会員(第二東京/元秋田地家裁所長)は、コンピュータに関する事件の弁論準備手続において、当事者に機材を用いた作業を実演してもらいながら議論を尽くすといった工夫をした結果、尋問がより内容の濃いものになり、当事者が納得して和解の機運が高まったと報告した。また、裁判官は事件に取り組む環境に恵まれており、じっくり物事を考える時間を確保できたと語った。
大沼和子会員(東京/元東京高裁判事)は、子どもの権利委員会や少年事件に関与した経験が生かされたと語った。さいたま家裁熊谷支部時代、法定速度を50キロメートル以上超過して走行した18歳以上の少年を一律送検してよいか、背後に問題を抱えているのではないかなどの疑問を持ち、少年事件における手続選別基準の見直しを行ったと述べた。



新事務次長紹介

近藤健太事務次長


9月30日付で、近藤健太事務次長(東京)が退任し、後任には、

奥国範事務次長(東京)が就任した。


奥 国範(東京・54期)


これまで司法改革・若手会員支援・研修などの分野を中心に会務に携わってきました。変革著しい昨今の司法情勢では、日弁連の対応にもスピードが求められますが、拙速な対応となってしまっては本末転倒。事務総長の指導の下、会長・副会長による最適な会務執行を補佐して参ります。よろしくお願いいたします。




弁護士任官者の紹介

10月1日付で次の会員が裁判官に任官した。


相井寛子氏

相井寛子氏61期(元熊本県弁護士会)
司法修習終了後、御池総合法律事務所、法務省、桜町法律事務所に勤務。
〈初任地 大阪高裁〉





国際分野で活躍するための
法律家キャリアセミナー
9月8日 弁護士会館

arrow_blue_2.gif国際分野で活躍するための法律家キャリアセミナー


第9回目となるキャリアセミナーが、法務省・外務省の共催、一般財団法人国際法学会・法科大学院協会の後援を得て開催された。若手弁護士や司法修習生をはじめ、将来国際分野での活躍を目指す受講生が熱心に耳を傾けた。


法律サービス展開本部国際業務推進センターの山本晋平事務局長(第二東京)が国際分野を目指す上での心構えを、柴田紀子氏(東京地方検察庁検事)が国連薬物犯罪事務所に勤務していた時の経験や応募のノウハウを説明した。
ランチセッションでは、矢吹公敏センター長(東京/国際法曹協会(IBA)弁護士会問題評議会理事)から法曹の世界の国際的な広がりを踏まえた国際法曹団体の活用について紹介があった。
午後の部では、初又且敏氏(法務省大臣官房参事官・訟務局国際裁判支援対策室長)、武田彩香会員(第二東京/同局局付)、永岡和道氏(外務省国際法局経済条約課首席事務官)、清水貴久氏(外務省経済局サービス貿易室課長補佐)、福永有夏教授(早稲田大学社会科学部)が、政府や国際機関における国際法の活用や法曹の勤務について紹介した。
ハーグ条約に関するワーキンググループの橘高真佐美委員(東京/外国人ローヤリングネットワーク事務局)が弱者に寄り添う視点から渉外家事事件の面白さを、野口祐子会員(東京/グーグル合同会社執行役員法務部長)が法律事務所での勤務と比較しながらインハウスロイヤーの役割や必要な資質を、小松健太会員(第二東京/独立行政法人国際協力機構国際協力専門員)が法整備支援の必要性やそれに関わるルートなどを、それぞれ紹介した。
セミナー終了後には、40人以上の受講生が参加して講師と受講生との懇親会が行われ、講師を囲んで熱心に質問を投げかける姿が見られた。
今回のセミナーで実務の実際に触れ、志望分野への熱意を新たにした人、国際分野への全体像を把握して今後の参考とする人など、さまざまな受講生が将来国際分野で羽ばたくことを期待したい。

◇    ◇


(国際室嘱託 片山有里子)

 



夏休み憲法教室
プリンセスプリンセス 中山加奈子さんに作詞のコツを学ぶ!
8月20日 弁護士会館

arrow_blue_2.gif<日本国憲法企画>夏休み憲法教室 中山加奈子さん(プリンセス プリンセス)と一緒に憲法を詩いましょう♪


中山加奈子さんと一緒に憲法を詩いましょう♪


作詞のコツをお話しする中山さん日弁連は、憲法の理念・役割を評価し、その大切さを謳う憲法詩(ポエム)を募る「憲法を詩おう♪コンテスト」を実施した。
その関連企画として、人気バンド「プリンセスプリンセス」のギタリストで作詞家の中山加奈子さんを講師に迎えて夏休み憲法教室を開催し、作詞のコツを学びつつ、憲法への理解を深めた。
まず、憲法問題対策本部の西田美樹幹事(東京)と出井甫幹事(第一東京)が、日本国憲法についてクイズ形式で講義を行った。その後、中山さんから、代表曲「Diamonds」の作詞秘話なども交えながら、自身の経験を踏まえた作詞のコツをお話しいただき、会場は大いに盛り上がった。当日は親子での参加も多く満席となり、熱気あふれるイベントとなった。
コンテストの結果発表は10月下旬頃を予定しており、大賞の憲法詩ソングの発表と表彰式は、12月1日(土)14時から東京都港区のサントリーホール(小ホール)で開催される予定である。


(憲法問題対策本部  事務局次長 福山洋子)



シンポジウム
民事裁判における情報・証拠収集方法の確立に向けて
9月4日 弁護士会館

arrow_blue_2.gifシンポジウム「民事裁判における情報・証拠収集方法の確立に向けて」


民事訴訟法施行20周年を迎え、情報・証拠収集制度の現状と問題点を明らかにし、証拠収集方法の拡充に向けた運用上・法制度上の課題等を考えるためシンポジウムを開催した。


2つの真実義務

民事司法改革総合推進本部の津田顕一郎委員(東京)が基調報告を行い、証拠収集方法に関する民訴法改正の流れを説明した。また、民訴法では、当事者は自らに不利でも証拠開示の要請に協力しなければならない点で真実義務を負うとも解されるが、弁護士職務基本規程において弁護士が負う真実義務は、真実に反することを知りながら主張反論等することは許されないという消極的なものに過ぎないと指摘し、2つの真実義務の関係について問題を提起した。


証拠収集制度の現状と課題

石黒清子委員(東京)は、2017年度の弁護士会照会制度の利用が全国で21万件を超えており、同制度抜きに証拠収集を議論するのは的外れになりかねないと説いた。
永石一恵幹事(東京)は、当事者照会・提訴前照会はあまり利用されておらず、相手方が回答しやすい具体的な質問形式にするなど工夫が必要であると述べた。
山岸泰洋事務局次長(東京)は、調査嘱託・文書送付嘱託について、必要性の要件を緩和しつつ、嘱託先の応諾義務を強化することは難しいと指摘した。
中嶋弘委員(大阪)は、文書提出命令について、団体の自由な意思形成を阻害する恐れがあっても、開示による具体的な不利益がなければ、認める余地があると述べた。
畑瑞穂教授(東京大学大学院法学政治学研究科)は、提訴前に利用できる制度には相手方に応じるか否かの判断を課す点で運用の難しさがあると述べた。
門口正人会員(第二東京/元名古屋高裁長官)は、裁判所による証拠収集の必要性の判断が少々厳格に過ぎるとの指摘について、裁判所は紛争の実効的解決に向けて証拠収集に柔軟に対処してもよいのではとの見解を示した。



子どもの権利委員会夏季合宿
8月28日/29日 弁護士会館


子どもの権利委員会は、2日間にわたる夏季合宿を開催し、子どもの権利に関わる諸問題に関する4つの企画を実施した。
本稿では、第1企画と第4企画について報告する。


第1企画

今、法制審議会少年法・刑事法部会で議論されていること 2


法制審議会少年法・刑事法(少年年齢・犯罪者処遇関係)部会(以下「部会」)の委員を務める子どもの権利委員会の山﨑健一幹事(神奈川県)が、部会の議論状況について報告した。
これまで3分科会に分かれて進められていた犯罪者処遇策についての検討の結果が取りまとめられたが、そのうち、少年法の適用年齢を引き下げた場合に起訴猶予となる18歳・19歳に対する「新たな処分」および検察官が働き掛けを行う「起訴猶予等に伴う再犯防止措置の在り方」について重大な問題がある。今後の部会では、これらの制度の検討を経て、少年法の適用年齢引下げ自体の是非に関する議論が開始され、審議が加速される見込みであると説明した。
会場からは、「少年法による処遇の実情や年齢引下げが持つ問題点が、市民にはいまだ十分に理解されていない」「具体的イメージを持ってもらえるような工夫が必要だ」などの意見が出され、今後、少年法適用年齢引下げに反対する運動を強化していく必要性が確認された。


第4企画

子どものためのスクールロイヤーをいかに広めるか


子どもの権利委員会の峯本耕治幹事(大阪)は基調報告で、2013年から大阪府で実施されている制度を紹介し、スクールロイヤーが携わると、現場に法的視点や危機管理・安全の視点が醸成され、問題の予防になるとともに、万一問題が発生した場合も早期の問題解決や学校・子どもの安定につながると説明した。
私立学校の教員を務めながら、弁護士として学校の相談にも応じる活動をしている神内聡会員(東京)は、教員兼務型のスクールロイヤーの利点として、事実を正確に把握しやすく、教員の実情を踏まえた助言などができることを挙げた。その上で、具体的な対応例を紹介するとともに、スクールロイヤーの究極の目的は「子どもの最善の利益」であり、教員が前向きになるような助言は子どもの利益につながると述べた。
埼玉県内で公立小学校の校長を務める可知良之氏は、教育現場はいじめの判断や保護者対応に悩むことが多く、さまざまな局面でスクールロイヤーの助言があると安心できると語った。



ひまわりほっと法律相談会
中小企業を弁護士が応援します!

arrow_blue_2.gifひまわりほっと法律相談会-中小企業を弁護士が応援します!-


今年も、中小企業に関する無料法律相談会とシンポジウムなどを、9月7日を中心に全国一斉で行った。


日弁連は2010年4月、中小企業に対して組織的かつ全国的に法的サービスを提供するため、全国52の弁護士会とともに「ひまわりほっとダイヤル」を開設し、本年3月末までに合計4万2931件の相談を実施した。
2008年からは、全国の弁護士会との共催で、「ひまわりほっと法律相談会―中小企業を弁護士が応援します!―」と題して中小企業に関する全国一斉無料法律相談会と、シンポジウムなどを開催している。この相談会は、中小企業の法的サービスへのアクセスを改善し、さらなる法的ニーズを発掘することを目的として、中小企業庁をはじめとする中小企業支援機関や各地の商工団体等と連携し開催しているものである。
今年も、各地で、卸売業・小売業・製造業・建設業・サービス業など、さまざまな業種の事業者から、債権回収・保全、雇用・労務、契約・取引に関する事項、事業承継、損害賠償など、企業経営に関して多岐にわたる相談がなされた。
また、シンポジウムなども、採用から事業承継まで中小企業が直面する種々の問題について、それぞれの弁護士会でテーマを定めて開催された。今回は働き方改革や民法改正など話題性のあるテーマが多く見られ、これらの問題への弁護士の関わり方について、広く中小企業の理解を得る機会となった。
日弁連は今後も、中小企業分野への弁護士業務の一層の拡充を図るとともに、中小企業関係者の暮らしと権利が守られる社会の実現を目指し、法律相談会やシンポジウムなどを開催していく予定である。

◇    ◇


(日弁連中小企業法律支援センター  副本部長 酒井俊皓)


JFBA PRESS -ジャフバプレス- Vol.136

旧優生保護法国賠訴訟
被害者の声に耳を傾け、社会を変える


旧優生保護法の下、「優生上の見地から不良な子孫の出生を防止する」名目で、2万件を超える不妊手術と6万件近い人工妊娠中絶が行われました。この法律は1996年に廃止されたものの、今日まで被害救済は図られず、今、全国で国賠訴訟の提起が相次いでいます。
この問題に光を当てるきっかけを作られた新里宏二会員(仙台)にお話を伺いました。

(広報室嘱託 大藏隆子)



旧優生保護法の問題との出会い

2013年8月、なんでも相談の窓口で、Aさんと出会いました。彼女は16歳の時、知的障害を理由に、何の説明もなしに不妊手術を受けさせられました。そして、20年にもわたり国の謝罪と補償を求め続けていました。


熱い思いを語る新里会員

日弁連意見書が途を開く

Aさんの手術が行われたのは半世紀以上前です。宮城県はAさんが手術を受けた年度の優生保護審査会関連記録を廃棄していました。いきなり国賠訴訟を起こしても、証拠や除斥期間の壁を前に、結果が振るわない見込みも十二分にありました。しかし、日弁連の人権救済申立てであれば、証拠や除斥期間は大きな問題にはなりません。そこで2015年6月、人権救済を申し立てました。
2016年3月には、国連女性差別撤廃委員会がこの問題を取り上げ、日本政府に対し、実態調査や加害者の訴追、全ての被害者を救済するための具体的な取り組みを勧告しました。
そして2017年2月、日弁連は優生思想に基づく不妊手術および人工妊娠中絶は人権侵害であるとの意見書(*)を発表しました。意見書に対するメディアの反響は大きく、NHKでは特集番組も組まれました。
この番組がきっかけで、Bさんという二人目の被害者とつながりました。宮城県にBさんの情報公開請求をしたところ、15歳で不妊手術を受けたことを示す優生手術台帳が開示されました。


「立法不作為」で壁を乗り越える

日弁連の意見書が出て、大きく報道された当初、私はこの問題が世論の力で解決に向かうのではないかと期待しました。しかし、厚生労働省は補償制度を具体的に検討しようとしませんでした。そのため、やはり国賠訴訟提起に踏み切るしかないと決意を固め、仙台で弁護団を結成しました。
除斥期間が大きな壁でしたが、「被害救済の仕組みを作ってこなかったことが国の不作為にあたり違法である」という立法不作為の構成で乗り越えることにしました。一口に立法不作為といっても、ハンセン病訴訟の場合とは構成が大きく異なります。ハンセン病訴訟では、隔離政策を残し続けたことが問議されましたが、旧優生保護法は1996年に廃止されており、国は憲法に反する法律を残し続けたわけではありません。しかし、被害者に対する救済・補償のための立法を行わず、放置した点を捉えて、「補償立法不作為」の違法を問題にしたのです。
本年1月、Bさんを原告とする国賠訴訟を提起しました。提訴に合わせて全国5か所でホットラインを開設したところ、新たな被害申告がありました。このうちCさんは、中学生の時に何の説明もないままに不妊手術を受けさせられていました。


県が動く、提訴が広がる

Bさんの提訴を受け、宮城県知事は、優生手術台帳に記載のない被害者が国に補償を求めた場合にも、手術痕の存在・手術当時の県内居住・関連文書の存在・本人供述の整合性という4基準に基づいて判断する、Aさんが手術を受けた事実を認めると会見で明言しました。運動の広がりが、ついに県をも動かしたのです。
本年5月には、Aさん、Cさんらが2次提訴を行いました。全国被害弁護団も結成され、6月には3次提訴も行われました。Bさんが提訴した当初の弁護団は10人ほどでしたが、今や、全国の弁護団には200人以上が名を連ねています。


次は、国を動かす

いよいよ国会でも救済立法の論議が本格化しようとしています。ハンセン病の救済立法では、熊本地裁判決をほぼそのまま取り込んだ内容の補償金額が定められました。司法の動きが先行することで、適切な被害者救済が図られます。被害者が納得できる救済立法を獲得するためにも、この訴訟をどんどん前に進めていくことが必要です。


弁護士の取り組みが社会を変える

旧優生保護法の問題は、決して過去完了のものではなく、極めて現代的な課題です。まだまだ提訴は続きます。若い会員の皆さんに、ぜひ取り組んでほしいと思っています。
弁護士という仕事のやりがいは、司法の場での活動を通じて、社会を変えられることにあります。若い方々にこそ、それを体感してもらいたいです。
日弁連や弁護士会には、被害救済を後押しするため、ホットラインの実施や新たな意見書の作成を進めてほしいと思っています。

◇    ◇


*意見書はarrow_blue_2.gif日弁連ウェブサイトでご覧になれます。




日弁連で働く弁護士たち ❸


■■ 国際室 ■■


弁護士が国際社会において果たす役割は年々増大しています。日弁連の国際交流活動や弁護士の国際業務推進活動に関する業務を担う国際室には、8人の嘱託弁護士が在籍しています。今回は松井敦子室長(第一東京)にお話を伺いました。


(広報室嘱託 本多基記)


業務内容は多岐にわたる

国際室会議ではさまざまな事項について検討・情報共有を行っている国際室では海外留学、海外勤務の経験や、国際人権活動、国際企業法務に従事した経歴などを有する嘱託が業務にあたっています。その業務内容は、①国際法曹団体、外国法曹団体や国際機関等との連絡・情報交換、②国際会議への随行・出席、日弁連が海外から表敬訪問を受ける際の対応およびこれらに伴うプレゼンテーション資料等の作成、③国際関連企画の立案・準備、④日弁連の活動についての国内外に対する広報活動、⑤海外の司法・法曹制度に関する情報等の収集・調査、⑥国際戦略会議および国際活動に関する協議会の事務局業務、⑦海外ロースクール推薦留学、若手会員の国際会議派遣やインターンシップなどの運営のほか、国際分野で活躍するための法律家キャリアセミナーの開催等による会員の国際化支援などです。これらの多岐にわたる業務を国際室の嘱託、国際課の職員が、さまざまなアイディアを出し合いながら進めています。ときには困難な問題にも遭遇しますが、チーム一丸となって乗り越えています。


業務の魅力〜海外の議論に触れる

国際法曹団体や海外の弁護士会との交流を通じて、弁護士や弁護士会の在り方といった根源的な問題についての活発な議論に触れることができるのも貴重な体験です。国や地域は違えど直面している課題は同じということも多いので、日弁連の国際活動の一助としていただくためにこれらの議論状況をフィードバックすることが重要な役割だと考えています。
また、会員の国際化支援業務では、世界を舞台に活躍したいと考えている意欲的な会員に接することができ、刺激や活力を得られることも大きな魅力です。


国際活動にご参加ください

日弁連では、会員の国際化支援として、留学支援や国際会議への派遣、キャリアセミナー、研修などさまざまな取り組みを行っています。今後はこれらの広報活動にも今まで以上に力を入れ、より多くの会員に、日弁連の会員の国際化支援プログラムを知ってもらい、国際活動に積極的に参加してもらいたいと思っています。




ブックセンターベストセラー
(2018年7月・手帳は除く) 協力:弁護士会館ブックセンター

順位 書名 著者名・編者名

出版社名・

発行元名

1 携帯実務六法2018年度版 「携帯実務六法」編集プロジェクトチーム 編 東京都弁護士協同組合
2 量刑調査報告集Ⅴ 第一東京弁護士会刑事弁護委員会 編 第一東京弁護士会
3 仮想通貨をめぐる法律・税務・会計 松嶋隆弘・渡邊涼介 編著 ぎょうせい
4 これだけは押さえておきたい!債権法改正の重要ポイント 東京弁護士会弁護士研修センター運営委員会 編 ぎょうせい
5 弁護士会照会ハンドブック 佐藤三郎・加藤文人・京野垂日 編著 きんざい
6 超早わかり・「標準算定表」だけでは導けない 婚姻費用・養育費等計算事例集(中・上級編)[新装版] 婚姻費用養育費問題研究会 編 婚姻費用養育費問題研究会
弁護士「好きな仕事×経営」のすすめ 北 周士 編 第一法規出版
8 特定商取引に関する法律の解説[平成28年版] 消費者庁取引対策課・経済産業省商務・サービスグループ消費経済企画室 編 商事法務
婚姻費用・養育費の算定 ―裁判官の視点にみる算定の実務― 松本哲泓 著 新日本法規
訴訟弁護士入門―民事事件の受任から解決まで 飛松純一 他著 中央経済社



日本弁護士連合会 総合研修サイト

eラーニング人気講座ランキング 2018年6月~8月

サイトへ日弁連会員専用ページからアクセス

順位 講座名 時間
1

災害時の二重ローン問題対策制度「自然災害債務整理ガイドライン」利用
における実務上のポイント・問題点

85分

2

ここが変わりました!「LACマニュアル改訂第四版」(2017年5月1日改
訂)

8分

3

会計原則の基礎知識〜会計の基本と会計基準と法令の関係〜

105分

4

成年後見実務に関する連続講座 第3回 成年後見人の事務2〜医療同
意、死後事務、保佐・補助、後見制度支援信託

39分

5 成年後見実務に関する連続講座 第2回 成年後見人の事務1 64分
6

実践演習!LAC制度の概要と対応のポイント(2017年度)

67分

7 【コンパクトシリーズ】セクシュアル・ハラスメント及びマタニティ・ハ
ラスメントの基本
28分
8 法的交渉の技法と実践〜問題解決の考え方と事件へのアプローチ〜 105分
9 中小企業のための事業承継コンサルティング 152分
10 消費者問題に関する連続講座〜分野別編〜 第6回「景品表示法」 60分

お問い合わせ先 日弁連業務部業務第三課(TEL 03-3580-9927)