日弁連新聞 第535号

平成30年7月豪雨
災害対策本部を設置


このたびの平成30年7月豪雨災害によって、多数の方が亡くなられ、広範囲に甚大な被害が発生した。
日弁連は、7月9日に災害対策本部を立ち上げるとともに、緊急会長談話を公表し、被災者の生活再建のためにさまざまな取り組みを開始した。


会員研修を実施

翌10日朝には、被災地弁護士会とテレビ会議を実施し、当面求められる支援策を検討した。相談体制を早急に整備する必要から、13日に岡山、14日に愛媛、19日には広島で研修を実施した。愛媛・広島の研修は、全国にテレビ会議で配信し、多くの会員が受講した。


無料法律相談を開始

広島・岡山・愛媛の各弁護士会では、発災直後から無料電話相談を実施し、市民向けのニュースを発行するなど、さまざまな支援を開始している。本災害は、県の中心部から離れた地域の被害が多く見られることから、現地における電話相談の負担を軽減し、出張相談のニーズに対応できるよう、各地からの相談電話の一部を日弁連に転送し、東京三弁護士会の協力を得た電話相談を実施している。


義捐金を募集

11日には、被災地弁護士会による被災者支援の費用等に充てるため、義捐金の募集を開始した。多くの会員にご協力をいただきたい。


総合法律支援法の適用

14日には、本災害が特定非常災害に指定され、総合法律支援法が適用された。これにより、本災害の被災者は、資力要件の確認を要さず、無料法律相談を受けることが可能となった。
日弁連は、これまでの経験を踏まえ、各地の弁護士会など関係機関と連携し、被災者の生活再建のため、的確な情報提供、法律相談、立法提言などを行っていく。


(事務次長 近藤健太)



〈義捐金の振込先〉
 三菱UFJ銀行 東京公務部
 普通預金1006466 ニホンベンゴシレンゴウカイ
 *振込みの際には必ず振込人の氏名の前に登録番号を付けてください。
〈お振込みに当たって〉
 ※使途は日弁連にご一任ください。
 ※寄付金控除の対象となりません。
 ※詳細は日弁連ウェブサイトをご確認ください。
【お問い合わせ先】日弁連人権部人権第二課 TEL:03−3580−9910



民法改正と残された問題点


本年6月13日に「民法の一部を改正する法律」が、7月6日には相続分野の規定を約40年ぶりに見直す「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」が、それぞれ成立した。

(事務次長 五十嵐康之・武内大徳)



成年年齢の引下げ

民法の成年年齢が20歳から18歳へ引き下げられる。(2022年4月1日施行)
今回の改正は、日本国憲法の改正手続に関する法律(いわゆる国民投票法)の制定や公職選挙法改正による選挙年齢の引下げを踏まえたものである。他方、成年年齢の引下げによって、18歳・19歳の若年者が未成年者取消権を失うことから、消費者被害が拡大する危険がある。また、自立困難な若年者の困窮の増大、高校教育での生徒指導の困難化、養育費支払終期の繰上げのおそれなどの弊害が指摘されている。
改正法には、参議院法務委員会において附帯決議がなされ、成年年齢引下げに伴う消費者被害の拡大を防止するための法整備について、改正法成立後2年以内に必要な措置を講ずることが求められている。さらに、特定商取引法等の消費者保護規制の執行強化、若年者への消費者教育の推進、若年者の自立支援といった施策が求められている。
日弁連としては、成年年齢引下げに伴う弊害が現実化することのないよう、積極的に課題に取り組んでいく。


婚姻適齢の統一

731条が改正され、男女ともに婚姻適齢が18歳に統一される。(2022年4月1日施行)
一方、女性にのみ再婚禁止期間を設ける733条は、2016年に6か月から100日に改正されたが、これを廃止する改正はなされなかった。また、夫婦同氏を強制する750条についても、1996年の法制審議会による「民法の一部を改正する法律案要綱」の答申から22年が経過しているにもかかわらず改正されなかった。
日弁連としては、引き続き、再婚禁止期間の撤廃、選択的夫婦別氏制度の導入を求めていく。


相続分野の規定改正

①配偶者が居住建物を無償で使用する権利(配偶者居住権)が新設されるほか、②婚姻期間20年以上の夫婦間での住居の遺贈・贈与は特別受益の対象外となる。そのほか、③遺産に属する預貯金の仮払い制度の創設、④自筆証書遺言の方式緩和、⑤相続人以外の親族による特別寄与料の請求権の創設等、多岐にわたるものであり、相続制度の抜本的な改正となっている。(④は2019年1月13日施行、④以外は施行日未定)
相続は弁護士が日常的に関わる分野であり、今回の改正を契機に市民からの相談も増加することが予想される。日弁連としても、会員に多くの研修の機会を提供するよう尽力していきたい。

 

 

菊地会長らが福島県を訪問
福島第一原子力発電所などを視察
6月23日 福島県

日弁連の菊地裕太郎会長および副会長8人が、福島県弁護士会執行部の案内で、浪江町役場や福島第一原発などの現地視察を行った。日弁連、福島県弁護士会が事故後に福島第一原発構内を視察するのは、今回が初めてとなる。


浪江町役場の訪問と慰霊碑への献花

福島第一原発1号機原子炉建屋

浪江町内全域に出されていた避難指示は、2017年3月31日、「帰還困難区域」を除く区域で解除され、本年5月末時点で約1万8000人の町民のうち747人が帰還している。
訪問した浪江町役場では、青田洋平氏(浪江町まちづくり整備課計画係長)から、浪江町の復興事業の説明を受けた。災害公営住宅は集合住宅ではなく元の暮らしに即した戸建ての平屋造りとしたこと、町からの情報発信を強化し町民のつながりを維持するためのアプリケーションを開発し、町民にタブレット端末を配布していることなどの紹介があった。
その後、菊地会長と福島県弁護士会の澤井功会長が浪江町東日本大震災慰霊碑に献花を行い、全員で犠牲者の冥福を祈った。


福島第一原発構内の視察

視察バスに乗車して、福島第一原発構内を1時間ほどかけて巡った。1〜4号機原子炉建屋の外観を俯瞰した際には、映像でしか見たことのない、水素爆発により原子炉建屋の屋上が吹き飛んでいる1号機の様子や、がれきを撤去している光景を目視できるところまで近づくことができた。澤井会長は「あの大事故を起こした原発を実際に近くで見られることがいまだに信じられない」と感想を述べた。
構内の視察の後、菊地会長は感謝の言葉とともに、今後も福島県弁護士会の意向に沿う形で日弁連として被災地を支援していきたいとの決意を述べ、今回の視察を締めくくった。


(事務次長 近藤健太)



ひまわり

全国犯罪被害者の会(あすの会)が、本年6月3日をもって解散した。我が国の犯罪被害者支援施策の拡充に多大な貢献を果たした団体であり、これまでの実績に敬意を表したい▼1990年代後半に至るまで、犯罪被害者は忘れられた存在であり、犯罪被害者支援という用語もまったく知られていなかった。犯罪被害者は、刑事裁判に直接関与することができず、犯罪被害者等給付金も雀の涙程度で、報道においてプライバシーに配慮されることもなかった。ところが、2000年代に入り犯罪被害者が声を上げるようになってからは、犯罪被害者基本法の制定をはじめとして、支援施策が飛躍的に拡充した。今では全国の弁護士会に犯罪被害者支援に関する委員会が存在し、無料法律相談や具体的事件における裁判支援、報道対応等を行っている▼現代は誰もが犯罪の被害者となり得る状況にある。突然重大な犯罪に巻き込まれた被害者を社会が支えるべきことに異論はないだろう。そして、犯罪被害者支援の分野における弁護士の必要性と存在感はとても大きい▼あすの会の解散をもって、犯罪被害者支援の分野に「ひと区切り」感が生じるようではいけない。バトンを受け継いだつもりで、これからも頑張りたいと思う。

(H・T)

 


院内学習会 カジノ解禁実施法案の成立に反対する
7月10日 衆議院第一議員会館

arrow_blue_2.gif院内学習会「カジノ解禁実施法案の成立に反対する」


特定複合観光施設区域整備法案(以下「カジノ解禁実施法案」)が衆議院で6月19日に可決され、参議院で審議されている。(*)
日弁連は、暴力団やマネー・ローンダリング対策上の問題、ギャンブル依存症の拡大、青少年の健全育成への悪影響などの弊害があるとして、一貫してカジノの解禁に反対してきた。
改めてカジノ解禁の問題点を指摘し、カジノ解禁実施法の成立に反対するため院内学習会を開催した。学習会には各団体の代表者を含む約140人が出席した。(うち国会議員本人出席8人、代理出席25人)



カジノ・ギャンブル問題検討WGの新里宏二座長カジノ・ギャンブル問題検討ワーキンググループの井原真吾委員(千葉県)がカジノ解禁実施法案の概要を説明し、衆議院の審議で明らかになった問題点を指摘した。①規制の具体的内容が政令に委任されている事項が331も存在し全体像が不明である、②7日間で3回・28日間で10回までとする入場回数の制限が不十分である、③カジノ事業者からの金銭の貸し付けを予定する特定資金貸付業務がギャンブル依存症を増加させかねないなどの問題点が挙げられた。
中村剛委員(東京)は、反社会的勢力対策の見地から、カジノ解禁によりヤミ金融の暗躍や違法薬物へのニーズが高まるなどの問題点を指摘した。犯罪収益をカジノのチップに交換するなどマネー・ローンダリングの手段となり得る危険性についても言及があった。
各地のカジノ解禁反対に向けた取り組みも報告された。ギャンブル依存症問題を切り口とした北海道の医療関係者による反対運動、神奈川の街頭署名活動やシンポジウム開催などのほか、大阪、和歌山における積極的な取り組みも報告された。
出席した国会議員からは、「カジノ解禁実施法の成立に向けた議論が十分に尽くされていない」「先進国の中でもギャンブル依存症が多い現状に拍車をかけるカジノは不要である」「賭博免責条項は犯罪特区を認めるに等しい」などの意見が出され、「カジノ解禁実施法が成立した場合には、地方公共団体のカジノ設置に反対する取り組みが重要となる」との声も上がった。


*カジノ解禁実施法は、7月20日成立した。



民事司法改革をめぐる近時の動きと日弁連の対応


民事司法の改革は、市民にとって身近で利用しやすい司法を実現するために重要な課題であるが、まだまだ十分に進んでいるとはいえない状況にある。
民事司法改革をめぐる近時の動きと日弁連の対応について報告する。


いわゆる骨太の方針の閣議決定

6月15日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2018」(以下「骨太の方針」)には「司法制度改革推進法の理念に則り、総合法律支援など利用しやすく頼りがいのある司法の確保、法教育の推進などを含む民事司法制度改革を政府を挙げて推進する」との記述が入った。
骨太の方針は、政府が財政的裏付けを伴って実施すべき当該年度の重要施策を網羅的に列記するものであり、このように民事司法改革に関して特に言及されたのは極めて画期的なことである。これは、以下の国会議員らの力強い活動によるところが大きい。
自由民主党議員は3月19日、「国民とともに民事司法改革を推進する議員連盟」(会長・河村建夫衆議院議員)を設立した。同議連は、第1〜第4勉強会(テーマは順に「司法アクセスの拡充」「権利救済の実効化」「国際民事紛争における日本の司法の役割強化」「国際民事紛争における日本の法曹の役割強化」)の後、5月29日の総会で中間報告を取りまとめ、政府に要望を行った。
公明党は4月、「民事司法改革に関するプロジェクトチーム」(座長・魚住裕一郎参議院議員)を設置した。日弁連などからのヒアリングを経て、5月28日、同党として骨太の方針などに向けた提言を策定し、提言中に「民事司法基盤の拡充強化と民事司法改革の推進」の項目を設けて政府に要望を行った。


日弁連の対応

日弁連は、民事司法改革を重点課題の一つと位置付け、2011年に民事司法改革推進本部(当時)を設置して以来、「民事司法改革グランドデザイン」の策定・改訂やシンポジウムの開催など、地道な取り組みを展開してきた。
今後も、執行部および昨年改組された民事司法改革総合推進本部を中心に、民事司法改革をめぐる政府等の動きに迅速かつ的確に対応するとともに、個別課題の検討とその実現に向けて積極的に取り組んでいく。

 (事務総長付特別嘱託 二川裕之)



公金検査請求訴訟制度の早期実現を目指すための院内学習会
6月14日 参議院議員会館

arrow_blue_2.gif公金検査請求制度の早期実現を目指すための院内学習会


日弁連は2000年12月、司法制度改革審議会に、国の財産上の行為に対しても住民訴訟と同様の納税者訴訟の制度を創設すべきであるとの提言を行い、2005年6月には、その制度を公金検査請求訴訟法案(以下「本法案」)として公表した。
日弁連はこの制度の必要性を関係機関に訴え続けてきたが、いまだ実現には至っていない。制度の必要性について国会議員や市民とともに理解を深め、早期実現を目指すべく、院内学習会を開催した。


行政訴訟センターの畠田健治副委員長(大阪)は、地方公共団体で違法な公金支出が疑われる場合、住民監査請求や住民訴訟を利用できるが、国に対する責任追及手段がないことを指摘した。その上で、本法案は、住民監査請求や住民訴訟に倣い、会計検査院を住民訴訟における監査員と位置付けた「公金検査請求」と、会計検査院の検査結果に不服があるときの「国民訴訟」の制度を提言したものであると説明した。
白藤博行教授(専修大学)は、会計検査院法には一見さまざまな検査制度が設けられているが、制度上・事実上の限界がある、現行の法制度だけでは国の違法な公金支出に対する責任追及は困難であり、本法案を成立に向けてブラッシュアップしなければならないと発言した。
阪口徳雄会員(大阪)は、本法案に反対する立場からは濫訴の恐れが指摘されることがあるが、住民訴訟の新受件数が年150件前後、上場企業における株主代表訴訟の新受件数も年20〜30件にとどまっていることからすれば、濫訴など考えられないと語った。
水野泰孝事務局長(東京)は、司法の場で争う方法がなければ、行政のコンプライアンス意識は鈍麻し、事実も明らかにならないと本法案の意義を指摘した。
杉尾秀哉参議院議員(立憲民主党)は、地方に比べて財政規模や支出が桁違いに大きいにもかかわらず、国に住民訴訟のような制度がないのは理不尽だと述べ、本法案の趣旨に賛同した。



障害者差別の解消を目指して


障害者差別解消相談対応マニュアル研修・意見交換会(キャラバン)を展開中


障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(以下「障害者差別解消法」)が2016年4月に施行された。同法14条は、国および地方公共団体に対し、障害を理由とする差別に関する相談への的確な対応等を求めているが、対応する職員によっては、障害を理由とする「不当な差別的取扱い」や「合理的な配慮」に関する個別具体的判断に問題のあるケースも散見される。
障害を理由とする差別や、障害者に合理的な配慮をしないことは、人権課題・法律問題である。弁護士は、障害者差別解消法を正しく理解し、障害当事者や自治体職員からの相談に適切に対応しなければならない。
日弁連は2017年9月、「自治体担当者向け障害者差別解消相談対応マニュアル」を公表した。このマニュアルの周知・理解を図り、自治体との連携体制を構築するため「障害者差別解消相談対応マニュアル研修・意見交換会(キャラバン)」を企画し、これまで東京(5月)と愛知(6月)で実施した。愛知で実施したキャラバンでは、自治体との連携における工夫や、弁護士会における職員対応要領の策定・実施状況等について話し合われ、弁護士会の積極的な活動を知る機会となった。
今後も各地でキャラバンを展開していく予定である。ぜひご参加いただきたい。

◇    ◇ 

(人権擁護委員会 特別委嘱委員 東 奈央)



シンポジウム
核兵器禁止条約の早期発効を求めて
核抑止論をどう克服する
6月16日 弁護士会館

arrow_blue_2.gifシンポジウム「核兵器禁止条約の早期発効を求めて~核抑止論をどう克服する~」


昨年7月、国連の条約交渉会議で核兵器禁止条約(以下「本条約」)が採択されたが、唯一の被爆国である日本は本条約に参加していない。本条約の意義と内容を確認し、日本の署名・批准に向けて何をすべきか、核抑止論とどう向き合うかを検討するため、シンポジウムを開催した。



基調講演を行う山田寿則氏はじめに山田寿則氏(明治大学法学部兼任講師)が基調講演を行い、本条約が核兵器の非人道性に着目して包括的な核兵器禁止規範を確立したものであるとの国際法上の意義を解説した。
憲法問題対策本部の和田光弘委員(新潟県)は、日弁連が核兵器廃絶に向けて長年活動してきたこと、本条約の交渉会議でも「威嚇」を禁止対象に含めるべきとの意見を述べたことなどを報告した。
和田征子氏(日本原水爆被害者団体協議会事務局次長)は、被爆者の立場から、朝鮮半島非核化への期待を示しつつ、日本も本条約に参加すべきだと発言した。
国連事務次長の中満泉氏は、本条約について、核軍縮不拡散体制を補完するものと位置付け、軍縮を通じて紛争の防止・解決を目指したいとのビデオメッセージを寄せた。
後半のパネルディスカッションでは、今西靖治氏(外務省軍縮不拡散・科学部軍備管理軍縮課長)、太田昌克氏(共同通信社編集委員/早稲田大学・長崎大学客員教授)、川崎哲氏(ピースボート共同代表/ICAN国際運営委員)、崔鳳泰氏(大韓弁護士協会日帝被害者人権委員会委員長)、金竜介会員(東京/在日コリアン弁護士協会理事)を迎えて議論が交わされた。
北朝鮮の核廃棄が完了するまではアメリカの核抑止力が必要であり、核抑止力の正当性を否定する本条約には参加できないという日本政府の考えに対し、核抑止論を採ることで核を手放せなくなり核拡散につながる可能性や、全世界の人々の生命・財産の安全を考えて作られ核抑止政策が間違っていることを明らかにした本条約の成立の意義などが指摘された。



中小企業支援に関する意見交換会in奈良
6月29日 奈良市


日弁連は、各地の弁護士会と商工団体等との連携を深め、中小企業の弁護士へのアクセスを促進することを目的として、2010年以降、全国各地で中小企業支援に関する意見交換会を実施している。第25回目の意見交換会を奈良市で開催した。
(共催:奈良弁護士会・近畿弁護士会連合会)


意見交換会では、日弁連中小企業法律支援センターの藤田善六副本部長(新潟県)と委員4人が、弁護士や弁護士会による中小企業の支援について各地の特徴的な取り組みを紹介し、「中小企業関連団体と弁護士会の間で顔の見える関係を構築することが大切だ」と訴えかけた。
意見交換会の様子その後に行われた中小企業支援団体の経営指導員等との懇談では、「弁護士会と気軽に連携できる可能性があることが分かった」「弁護士会との連携を広げることで、県内の中小企業の発展につなげたい。今後、どのような施策が可能か考えていきたい」などの意見や感想が寄せられた。
奈良弁護士会の会員からも「本日の意見交換会が奈良弁護士会の一つの転機になったと評されるよう、がんばっていきたい」との意気込みが表明されるなど、中小企業関連団体と弁護士会の連携が深まる契機になった。
日弁連は、今回の意見交換会で出された貴重な意見をもとに、中小企業に対して一層充実した法的サポートや情報提供ができるよう、引き続き弁護士会と協力して取り組んでいく予定である。
今後も、中小企業の身近なサポーターを目指す日弁連の取り組みに注目されたい。


(日弁連中小企業法律支援センター委員 馬場智巌)


 

日本司法支援センタースタッフ
弁護士全国経験交流会
6月22日 弁護士会館


全国各地に赴任している日本司法支援センター(以下「法テラス」)のスタッフ弁護士が一堂に会する経験交流会を開催した。
他機関との連携や新たな取り組みなどの活動について報告し、スタッフ弁護士の役割についても検討を行った。


髙橋宏典会員(法テラス愛媛)は、「子ども食堂」にボランティアとして関わった経験に基づき、「子ども食堂」がシングルマザー支援の契機となる役割を果たしていることや、弁護士が関わることで「子ども食堂」に集まる人々の法的支援を図り得ることなどを報告した。
河智了顕会員(法テラスむつ)・廣田朋子会員(法テラス江差)・武井祥会員(法テラス釧路)は、成年後見制度利用促進におけるスタッフ弁護士の役割について報告した。制度利用の普及や受け皿の整備の度合いにより各地の課題には大きな差があるが、各地のスタッフ弁護士を通して他地域の課題や対応例を知ることで、自らが関与する地域における課題も発見・解決することができ、全体として成年後見制度の利用促進につながるとの視座を示した。
水島俊彦会員(法テラス埼玉)は、スタッフ弁護士のままで海外留学を果たし、自身のキャリア形成を図った経験を語った。また、司法ソーシャルワークにおいては、さまざまな分野の支援者との会議が必須であり、会議を円滑に進める技術を身に付けることで支援者との協働体制が構築でき、個々の課題のみならず地域課題を解決することができると報告した。
津金貴康会員(法テラス和歌山)は、和歌山弁護士会では、スタッフ弁護士が刑事事件に熱心に取り組む弁護士として評価されており、若手であっても、刑事事件に関する裁判所・検察庁との協議会を優先的に傍聴したり、難しい事件に関与したりする機会に恵まれていると述べた。また、触法障がい者のためのPT座長を務め、被疑者・被告人の障がいの早期発見や福祉職等と連携した環境調整などの取り組みに尽力していると報告した。



第2回 取調べへの弁護人立会権に関する講演会
台湾における取調べへの弁護人立会い実現の経緯と現状
6月22日 弁護士会館

arrow_blue_2.gif「第2回取調べへの弁護人立会権に関する講演会~台湾における取調べへの弁護人立会い実現の経緯と現状~」


2016年5月の刑事訴訟法等一部改正により一定の事件について取調べが可視化されたが、取調べへの弁護人立会いの実現はその糸口をつかめていない。昨年の韓国に続く第2弾として、1982年に取調べへの弁護人立会いが法制化された台湾の制度導入の経緯、運用状況等を学び、日本における弁護人立会権の実現につなげるため、講演会を開催した。


林裕順教授(台湾中央警察大学/台湾総統府司法改革国是会議委員)が講演を行い、台湾における取調べへの弁護人立会権や立会弁護人の意見陳述権などは、主に世論の注目を集めた人権侵害事件に対処するため、被疑者・被告人の供述の獲得を規制する方向で都度導入されたとの経緯を説明した。そのため、統一した立法論理に貫かれた制度になっているとは言い難いものの、弁護人を選任し援助を受ける権利が憲法上保障された刑事被告人の権利であるとする台湾大法官の憲法解釈に触れ、今後の取調べ法制の変容が期待できると述べた。
続いて黄三榮氏(台湾弁護士/萬國法律事務所シニアパートナー)が弁護人立会制度の運用状況等について講演を行った。弁護人立会権が法制化された後も、捜査機関が被疑者に弁護人選任権を告知しなかったり、「被告人または被疑者の弁護人」の立会権とされていることを逆手にとって、被疑者を敢えて参考人として取り調べたりする運用などが原因で、弁護人の立会いなく取調べが行われる状況が生じていると指摘した。また、弁護人立会権を認めながらも、その制限または禁止に関する判断を対立当事者である捜査機関に行わせていることや、立会いを制限された弁護人に裁判所に対する異議申し立ての機会が確保されていないことは大きな問題であると批判し、今後、弁護人の権限の拡大を進めていくことが重要であると述べた。



第1回 自治立法に関する総合研修
6月18日・25日 弁護士会館


地方分権の進展に伴い、条例の役割が重みを増している。弁護士が条例の立案から施行・運用までの各過程に積極的に関与することは、条例の内容充実、住民の福祉向上、法の支配の拡充につながる。条例の制定等に必要な実務的スキルの向上を目指し研修を行った。


人口減少時代に求められる役割

原田大樹教授(京都大学大学院法学研究科)が「人口減少時代の条例制定支援」と題して基調講演を行った。原田教授は、人口の減少に伴う新たな政策課題が登場する中、条例制定の場面で弁護士に期待される役割として、紛争解決の経験に裏打ちされた正確な法的知識の提供のほか、新たな問題に対応する創造的な法制度の設計・提案者となることを挙げた。


事例発表
〜川口市いじめを防止するためのまちづくり推進条例

角南和子会員(東京)が、川口市の条例制定をサポートした経験を語った。角南会員は、条例づくり自体を経験したことがなくても、子どもの権利の問題やいじめ相談などに数多く対応した経験を生かし、得意分野の異なる弁護士4人のチームの一員として条例制定に携わることができたと報告した。


罰則協議とは

玉本将之氏(法務省刑事局刑事法制企画官)は、条例の罰則規定について自治体から問い合わせを受け、国が技術的助言をする罰則協議について説明した。
条例の罰則規定を実効的で適正な刑罰権の実現に資するものにするためには罰則協議が有効であると述べた。


法的整合性を担保する

岩本安昭会員(大阪)は、法令等の起案に必要な事務能力や技術の一つとして、憲法や他の法令との整合性の維持があり、日々多数の法令を取り扱う弁護士が得意とする分野であると指摘した。法制執務の中でも特にこの分野では、得意分野を異にする自治体の職員と補完し合い、弁護士が活躍すべきと述べた。



JFBA PRESS -ジャフバプレス- Vol.134

米谷 三以
通商法務官に聞く


2017年4月、経済産業省(以下「経産省」)に通商法務官のポストが新設され、弁護士のキャリアを持つ米谷三以さんが就任されました。通商法務の国内第一人者として名高い米谷さんに、お話を伺いました。

(広報室嘱託 柗田由貴)



就任の経緯

弁護士会の考えを世界へ発信し標準化していくためにも組織を見直し続けてほしいと語る米谷三以氏1995年に世界貿易機関(WTO)が設立されて以降、経産省ではWTO協定、経済連携協定、投資協定などの国際ルールへの対応が強化され、法務の専門性・経験を蓄積する重要性が認識されてきました。2003年、紛争処理を中心に扱う国際経済紛争対策室が設置され、さらに2008年、WTOの裁判対応その他の法務を担当する国際法務室が設置されました。私は、前者には通商法務調整官として、後者には室長として参加しました。
退任後も東南アジア、新興国などとの通商問題が一層増加・複雑化する中で、米中貿易問題も顕在化し、法務に対する需要が高まりました。より全体的な視点で俯瞰するために通商法務官のポストが創設される運びとなり、初代通商法務官として再び経産省に戻ることになりました。


通商法務官の役割・業務

通商法務官は、国際経済法に関わる事項全体を統括する立場にあります。いかなる紛争も政策と密接に絡んでおり、その事案だけでなく、他の事案さらに省の他の政策への影響を予想し、全体を見ながらコーディネートする必要があり、他省との調整も必要です。
具体的な業務としては、WTOなどにおける裁判的手続への対応、例えば、意見書作成、期日における弁論準備が半分近くを占めます。国際協定締結や手続提起前の交渉にあたってのアドバイスなど裁判的手続以外の対応は以前より増えました。「検討中の産業支援措置が国際ルール上問題ないか」などの省内の法律相談が全体の2割程度あり、リスクの小さい代替案の助言も期待されます。
私の下には弁護士や法曹有資格者6人を含む20人程度がおり、先例を踏まえた法律論や紛争における書面作成は弁護士等が、実務を踏まえた対応は行政官がそれぞれ中心となって対応していますが、両者が緊密に協力して当たる案件が増えています。紛争案件では、参事官補佐一人、係長一人とチームを組んで対応しています。弁護士等はそれぞれ、当事国として対応している案件を1〜2件の他、第三国参加している案件も数件ずつ抱えています。


通商法務官から見た課題・展望

国際経済法が頻繁に話題に上るようになりましたが、企業が上手に使えているとは言えませんので、その使いこなし方を広報する活動などにも力を入れています。日本企業は何も手を打たずに国際ルールを受け入れがちですが、それでは競争上不利になりがちです。よりよいルールを提案して国際経済をリードするために、日本企業とどのような共同体制を構築していくかを模索しています。近年、企業内弁護士が増えていますが、日本企業の法務部がコンプライアンスだけでなく、ガバメント・リレーションズ(対政府渉外)まで取り扱うようシフトしていかないと、日本企業は国際競争において後れをとるのではないかと危惧しています。
また、租税や関税など、それ自体専門領域として確立している分野が多数ありますが、これらは通商にも関わるので、担当省庁との連携を深めたいところです。経産省は通商法務官を創設しましたが、他省にも国際法務の専門家がいれば、経験を共有したり、互いに何ができるか検討したりできます。そうすれば、国際経済法は、使えるツールとしてさらに発展することでしょう。
さらに、企業のみならず研究者など外部とのネットワークがまだ弱く、これを強化しているところです。


通商法務官としてのさらなる取り組み

私は、各省に法務部が設けられ、日頃から話し合いや人事交流を行うような大きなコミュニティがあればよいと考えています。そうすれば、非常に面白くなるでしょう。例えば、国際ルールの形成にあたり、より深く視野の広い議論を行うことができ、日本はもちろん、世界経済にも貢献できるでしょう。国際法務の専門家の中には、専門能力を高めるべく政府、企業、国際機関、学界などフィールドを移動しながら活動する人もいるはずであり、そのためにもコミュニティをつくらなければとの使命感を持っています。


弁護士・弁護士会へのメッセージ

弁護士が活躍できる領域はますます広がっています。これからはルール形成も弁護士の仕事になっていくでしょうし、法を静的に捉え過ぎない意識改革も必要であると考えています。
弁護士の多様化が進む中、弁護士会は、様々なバックグラウンドを持つ人が所属・活動しやすい土壌を形成することで、さらに豊かな組織になるのではないでしょうか。弁護士会の考えを世界へ発信し標準化していくためにも組織を見直し続けるようお願いします。

 


第61回 人権擁護大会・シンポジウム(於:青森市)にご参加を!

10月4日・5日、青森市で第61回人権擁護大会・シンポジウムが開催されます。当日参加も可能ですので、ぜひご参加ください。


シンポジウム

2018年10月4日(木)13時30分〜18時
第1分科会 「外国人労働者100万人時代」の日本の未来
〜人権保障に適った外国人受入れ制度と多文化共生社会の確立を目指して〜第61回 人権擁護大会・シンポジウム
リンクステーションホール青森(青森市文化会館)


第2分科会 組織犯罪からの被害回復
〜特殊詐欺事犯の違法収益を被害者の手に〜
ホテル青森 グレートホール孔雀の間


第3分科会 日本の社会保障の崩壊と再生−若者に未来を−
リンクモア平安閣市民ホール(青森市民ホール)


 大会

2018年10月5日(金)10時〜17時
リンクステーションホール青森(青森市文化会館)



10月4日(木)・5日(金)、青森市で第61回日弁連人権擁護大会・シンポジウムが開催されます。お手元の手帳の10月4日・5日の欄に「人権擁護大会・青森」の書き込みはお済みでしょうか。青森県で人権擁護大会が開催されるのは初めてです。青森県弁護士会では、110人余りの全会員の力を結集して、皆さまを歓迎する準備を進めています。
シンポジウムは、3つの分科会に分かれて開催されます。第1分科会は、「『外国人労働者100万人時代』の日本の未来」と題して、人権保障の観点から外国人受入れ制度と多文化共生施策について議論します。第2分科会は、「組織犯罪からの被害回復」を取り上げ、認知件数・被害額ともに高止まりしている組織犯罪集団による特殊詐欺の問題を考えます。第3分科会では、「日本の社会保障の崩壊と再生」をテーマに、若者をはじめとする全ての人に希望を与える社会保障制度を考察します。
公式観光は、青森の魅力を満喫できる日帰りと1泊の2コースを用意しました。また、記念ゴルフ大会は、第63回日本プロゴルフ選手権大会が開催された夏泊ゴルフリンクスで行います。懇親会とともに、いずれも心から楽しんでいただけると思います。
10月初めの青森は、南に列を連ねる八甲田の1500メートル余りの山頂から雄大な秋が迫る時期です。黄葉や紅葉が山頂を鮮やかに彩り、麓の緑葉へと続く変化は素晴らしい眺めです。一足早く、そして本当に美しい青森の紅葉に触れていただきたいと思います。また、鮮やかな紅葉とともに、青森の特産品りんごも実りを迎えます。
充実した大会・シンポジウムはもちろん、雪が降る前に、一年で一番色彩豊かに輝く青森の魅力も、ぜひ皆さまの五感に焼き付けていただきたいと思います。青森でお待ちしております。


(青森県弁護士会人権擁護大会実行委員会事務局長 竹本真紀)




ブックセンターベストセラー
(2018年5月・手帳は除く) 協力:弁護士会館ブックセンター

順位 書名 著者名・編者名

出版社名・

発行元名

1 量刑調査報告集Ⅴ 第一東京弁護士会刑事弁護委員会 編 第一東京弁護士会
2 量刑調査報告集 量刑不当破棄編Ⅱ 第一東京弁護士会刑事弁護委員会 編 第一東京弁護士会
3 労働関係訴訟の実務[第2版][裁判実務シリーズ1] 白石 哲 編著 商事法務
4 平成29年改正 知的財産権法文集 平成30年4月1日施行版 発明推進協会 編 発明推進協会
婚姻費用・養育費の算定―裁判官の視点にみる算定の実務― 松本哲泓 著 新日本法規出版
6 超早わかり・「標準算定表」だけでは導けない 婚姻費用・養育費等計算事例集(中・上級編)[新装版] 婚姻費用養育費問題研究会 編 婚姻費用養育費問題研究会
7 事業承継法務のすべて 日本弁護士連合会日弁連中小企業法律支援センター 編 きんざい
8 一問一答 民法(債権関係)改正 筒井健夫・村松秀樹 編著 商事法務
9 民法改正対応 契約書作成のポイント 若林茂雄・鈴木正人・松田貴男 編著、岩田合同法律事務所 著 商事法務
10 後遺障害の認定と異議申立 ―むち打ち損傷事案を中心として― 加藤久道 著、松本守男 監修 保険毎日新聞社



日本弁護士連合会 総合研修サイト

eラーニング人気講座ランキング(家事編) 2018年4月~6月

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順位 講座名 時間
1

遺産分割の基礎~よく尋ねられる内容を中心として~

112分

2

成年後見実務に関する連続講座 第3回 成年後見人の事務2~医療同
意、死後事務、保佐・補助、後見制度支援信託

39分

3

成年後見実務に関する連続講座 第1回 趣旨、成年後見開始審判の申立

67分

4

成年後見実務に関する連続講座 第2回 成年後見人の事務1

64分

5 相続分野に関する連続講座 第1回 遺産分割1(相続人確定、遺産範囲・
評価、調停・審判等)
143分
6

相続分野に関する連続講座 第4回 遺留分減殺

142分

7 成年後見実務に関する連続講座 第5回 任意後見制度の活用 113分
8 相続関係訴訟~争点整理と証拠収集の在り方を中心に~ 167分
9 離婚事件実務に関する連続講座 第1回 総論~相談対応・受任から調停
(調停における代理人のあり方)審判・人訴・離婚後の手続(氏の変更等)
117分
養育費・婚姻費用の算定方式・算定表の仕組みと諸事情がある場合の対応 113分

お問い合わせ先 日弁連業務部業務第三課(TEL 03-3580-9927)