日弁連新聞 第532号

民事裁判手続等のIT化に向けた近時の動きと日弁連の対応


民事裁判手続等のIT化は、弁護士業務改革シンポジウムで2011年以来3回にわたり取り上げた重要課題である。
2017年以降、民事裁判手続等のIT化の動きが本格化している。


内閣の動き

2017年6月9日の閣議決定「未来投資戦略2017」において、「迅速かつ効率的な裁判の実現を図るため、諸外国の状況も踏まえ、裁判における手続保障や情報セキュリティ面を含む総合的な観点から、関係機関等の協力を得て利用者目線で裁判に係る手続等のIT化を推進する方策について速やかに検討し、本年度中に結論を得る」ものとされた。
これを受けて、2017年10月、内閣官房の下に「裁判手続等のIT化検討会」が発足し、本年3月30日の第8回検討会で取りまとめを行った(以下「取りまとめ」)。
日弁連は同日、会長談話を発表し、取りまとめが示した民事裁判手続等のIT化に向けた基本的方向性に賛同するとともに、①IT化に当たっては、裁判の公開、直接主義、弁論主義等の民事裁判の諸原則との整合性を図ること、②ITの利用が困難な者に対する支援措置の検討を進めること、③地域の実状をも踏まえ全ての人にとって利用しやすい制度を構築すること、④そのための十分な予算措置を講ずることを求めた。


最高裁判所の動き

内閣の動きと並行して、最高裁判所は、現行法下での争点整理手続のさらなるIT化を中心に検討しており、2017年12月から本年3月までIT化を想定した模擬裁判を実施した。
最高裁と日弁連は、2017年11月に民事司法に関する協議を開始し、テーマとして「民事裁判のIT化」を取り上げている。


今後の対応等

民事裁判手続等のIT化は、弁護士業務に大きな影響があり、広範な論点の検討が必要である。そのため、取りまとめを含む情報の会内共有を早急に図るとともに、弁護士会に対し意見照会を実施する予定である。弁護士会でも速やかに検討組織を立ち上げて、早期に議論を深めることが肝要である。


(民事司法改革総合推進本部裁判所の基盤整備部会 座長 斎藤義房)


*「裁判手続等のIT化に向けた取りまとめ―『3つのe』の実現に向けて―」は同検討会ウェブサイトで、会長談話は日弁連ウェブサイトでご覧いただけます。


法制審議会少年法・刑事法(少年年齢・犯罪者処遇関係)部会の議論状況と「検察官による『起訴猶予に伴う再犯防止措置』の法制化に反対する意見書」公表

arrow_blue_2.gif検察官による「起訴猶予に伴う再犯防止措置」の法制化に反対する意見書



昨年3月から始まった標記部会への諮問事項は、①少年法における少年の年齢を18歳未満に引き下げることの是非と②非行少年を含む犯罪者に対する処遇の充実である。
現在、②に関する論点について3つの分科会で分担し、考えられる制度の概要案等の作成や、検討課題の整理が行われており、昨年12月には第6回部会会議で議論状況が報告された。
注目すべきは、「起訴猶予等に伴う再犯防止措置の在り方」の論点に関する議論状況である。本紙第527号でも紹介したが、検察官が改善更生のために働き掛けを必要とすると考える被疑者について、一定の守るべき事項を設け、一定期間、指導・監督を行う制度の導入が主な内容である。
このような導入案に対し、日弁連は本年3月、「検察官による『起訴猶予に伴う再犯防止措置』の法制化に反対する意見書」を取りまとめた。
当該再犯防止措置は、検察官が自ら犯罪事実を認定し、刑罰の性格を帯びた遵守事項を定め、その執行をすることに等しい。検察官の本来の地位や役割から大きく逸脱するものであると同時に、被疑者が、裁判での立証や判断を経ず、「有罪」と認定されたのと同様に扱われる点で、無罪推定原則にも抵触する。
併せて、処遇のための詳細な事実調査を捜査段階で行うことはプライバシーの点で問題が大きく、捜査の糾問化・長期化を招く可能性など、制度化には多くの懸念がある。
さらに、少年法の適用年齢引下げとの関係でも、現行の家庭裁判所における保護処分等の代替とはなり得ない。
今後も議論状況を注視し、会員に対する適時の情報提供に努めていきたい。


(法制審議会少年法・刑事法(少年年齢・犯罪者処遇関係)部会バックアップ会議 事務局長 水野英樹)


◇    ◇


*同部会の議論状況および資料等は法務省ウェブサイトで、日弁連意見書は日弁連ウェブサイトでご覧いただけます。

 

「震災特例法」の有効期限を再延長する改正法が成立


本年3月30日、「東日本大震災の被災者に対する援助のための日本司法支援センターの業務の特例に関する法律」(以下「震災特例法」)の一部を改正する法律が成立した。この改正により、震災特例法の有効期限がさらに3年間延長された。
震災特例法は、東日本大震災の被災者が、裁判その他の法による紛争の解決のための手続および弁護士等のサービスを円滑に利用できるよう2012年3月に成立した。2015年3月に有効期限が一度延長されたものの、本年3月31日には失効すると規定されていた。
しかし、震災復興は道半ばであり、震災特例法による被災者の無料法律相談件数は現在も高い水準で推移している。また、東日本大震災に起因する法的紛争に係る代理援助も一定程度利用されている。
日弁連は、2017年7月20日付で震災特例法の有効期限の再延長を求める要望書を取りまとめ関係各所に提出するなど、震災特例法の再延長に向けた取り組みを行ってきた。この要望に沿った今回の改正を歓迎し、引き続き、被災者の生活再建や被災地の復興に向けて尽力していきたい。


(事務次長 近藤健太)

 

第69回定期総会
高松で開催(5月25日)

本年5月25日(金)午後0時30分から、JRホテルクレメント高松(香川県高松市)において、第69回定期総会が開催される。
平成29年度(一般会計・特別会計)決算報告承認の件、平成30年度(一般会計・特別会計)予算議決の件、宣言・決議の件、会員より発議された決議の件などの議案が審議される予定である(議案内容等の詳細は、5月15日頃に送付される議案書に記載)。
多数の会員の参加による充実した審議をお願いしたい。

 

 

ひまわり

5月からクールビズが実施されたことを踏まえてテーマを考えた▼数年前、大相撲のテレビ中継でモンゴル出身力士のインタビューを見た。そのモンゴル出身力士は「来日当初は、日本は冬でもとても暑く感じ、冬になっても冷水のシャワーを使っていた。でも、そのうち身体も慣れてしまい、今では日本の冬の寒さが分かるようになった」というようなことを話していた▼その話を聞いたときにはとても驚いたが、よく考えてみると私自身も故郷の東北から東京へ来た当初は、冬の厳しい寒さをほとんど感じられず、東京には冬がないのではないかとも思ったほどである。しかし、いつの間にか身体が慣れてしまい、東京の冬も結構寒いなと感じるようになっていった▼ところが、最近では、雪が降ったかと思えば、程なく最高気温が30度に迫るなど、日本には夏と冬しかないのではないかと思ってしまうような気候になっている▼このような気候が一時的なものなのか長期的なものか、また、地球の長期的な気候変動に由来するものなのか人間の活動に由来するものなのか、私には分からない▼いずれであっても、今年の夏がクールビズでも乗り越えられないほどの酷暑にならないでほしいと心から願っている。


(Y・I)


2018年度会務執行方針(要約)

(全文はarrow_blue_2.gif日弁連ウェブサイトをご覧ください。)



はじめに

世界人権宣言が国連で採択されて70年を迎えます。しかし、世界は戦火が絶えず、テロが頻発し、暴力が繰り返され、社会に生じた歪みや亀裂が格差を拡大させています。
憲法第9条の改正論議は、立憲主義・恒久平和主義に依拠してきた国の在り方を国民に問いかけるものです。日弁連は、立憲主義を堅持し、国民主権・基本的人権の尊重・恒久平和主義という基本原理を尊重する立場から、宣言・決議を採択し、運動を展開してきました。今後も国民の理解と判断に資する議論の深化に努めることが必要です。
法的保護を求める方に寄り添い、貧困や差別に立ち向かい、労働者・消費者・犯罪被害者・外国人そして刑事被疑者・被告人の権利を擁護するなど、人権擁護活動を更に推進する必要があります。また、死刑制度の廃止を実現するために、一層の運動強化に取り組みます。
業務基盤の拡充と活動領域の拡大は焦眉の課題であり、総力を挙げて取り組みます。若手会員への支援も更に充実させます。
法科大学院制度の見直しに関し、建設的な活動を進めるとともに、法曹人口問題などに関する取組を継続します。また、新65期から70期のいわゆる谷間世代が、経済的負担等により法曹としての活動に制約が生じないよう取り組みます。
更なる刑事司法改革に取り組むとともに、民事司法改革を前進させ、民事裁判の活性化を目指します。行政事件・行政手続関与などの法整備も必要です。
日弁連が果たすべき重要課題は山積しています。副会長・事務総次長・職員が一丸となって、委員会の意見・会員の声をキャッチし、会務に反映させます。
そして会員の団結を強く訴え、強制加入制団体として弁護士自治を護り抜く強い覚悟を持ち、不断の努力をしていきます。会務執行の基本方針の根底にある弁護士自治の制度保障にいささかの綻びもないよう会務を執行します。


第1 平和と人権

憲法の基本理念・原理を堅持する立場から、憲法改正問題に取り組みます。
特定秘密保護法の廃止を含めた抜本的見直しに向けた取組を進め、運用状況を厳しく監視します。
いわゆる共謀罪法が恣意的に運用されることがないように厳しく注視し、廃止へ向けた取組を行います。
国際水準による人権保障を早急に実現するため、取組を進めます。
違法・不当な個人情報の収集・利用が行われないよう個人情報保護法の改正を求め、マイナンバー制度の運用状況等を厳しく監視・検証します。
高齢者や障がいのある人の権利擁護のため制度構築と運用改善に努めます。
児童虐待防止のための取組を強め、全国の児童相談所に弁護士の配置等がなされるよう態勢を構築します。
少年法の適用年齢引下げに反対します。
女性の地位・権利を確立するための取組を継続し、女性を差別する民法規定の改正を求めます。
性的少数者の個人の尊厳を確保する活動にも取り組みます。
外国人に対する不平等な取扱いの撤廃等に向けた取組を強化していきます。
消費者の権利を確立・充実させるための諸課題に取り組みます。
労働審判制度の充実と発展のための取組を継続します。また、労働者の救済策の充実にも取り組みます。
貧困の解消に引き続き取り組みます。
犯罪被害者支援体制の更なる充実を求めます。
市民や企業、行政に対する暴力団等による被害の防止、救済を図り、暴力団等の活動の排除に取り組みます。
犯罪被害者・遺族の方々の実情に配慮しつつ、2020年までに死刑制度を廃止することを目指して活動します。
罪に問われた高齢者や知的障がいのある人の支援を進めます。
非行少年を含む犯罪者処遇の在り方について積極的に意見を述べていきます。
公害・環境破壊の根絶を目指すとともに、持続可能な社会の実現に向けて取り組みます。


第2 弁護士の業務拡充と活動領域の拡大

市民の司法アクセスを弁護士費用の面から改善する権利保護保険(弁護士保険)の一層の拡充を図ります。
弁護士の公務員への任用促進等、行政との連携の取組を一層推進します。
企業活動に弁護士が重要な役割を担うことができるよう、積極的な取組を推進します。
中小企業支援の取組を推進します。
弁護士が組織内において活躍できるようサポートしていきます。
弁護士の国際的な活動を推進する施策に取り組むとともに、国際的に活躍できる弁護士の育成・支援を推進します。
適正な業務広告による市民の弁護士へのアクセス向上に努めます。
会員が複雑困難な紛争の解決に的確に対処できるよう、高い専門的知識の習得を目的とした研修制度について検討します。
業務妨害対策を検討し、推進します。


第3 法曹養成制度の改革

法曹養成制度をめぐる諸課題に関し、「法曹養成制度改革の確実な実現のために力を合わせて取り組む決議」等を踏まえた取組を進め、法科大学院制度を成熟させるべく努力を続けます。
司法修習の充実、司法修習生が安心して修習に専念できる環境整備に引き続き取り組みます。
いわゆる谷間世代の問題について、当事者の声を真摯に受け止め、施策を検討します。
法曹人口の増員ペースが一定程度緩和されていますが、この傾向が継続するかを注視しながら、今後の適正数を基礎付ける根拠事実を集積していきます。
法曹志望者増加のため、法曹という仕事の意義・魅力等について発信する取組を継続します。


第4 民事司法改革等の推進

市民の司法アクセス改善のため、裁判所支部機能の拡充に取り組みます。
強制執行制度の実効性の強化に取り組みます。
証拠収集制度の拡充、証拠・情報の開示制度の整備・拡充など民事裁判を活性化するための議論・検討を進めます。
依頼者と弁護士の通信秘密保護制度を確立するための活動に取り組みます。
民法(債権関係)改正について、2020年4月施行に向け、諸準備を加速させます。民法(相続関係)改正案の調査研究と対応を進めます。
労働法制の改正や、会社法制(企業統治関係)の改正等についても、必要な取組を行います。また、民事裁判手続等のIT化など、国民が利用しやすい司法制度の構築に取り組んでいきます。
行政訴訟制度の改革に取り組みます。


第5 司法アクセスの拡充

認知機能が十分でない高齢者・障がいのある人やDV・ストーカー・児童虐待の被害者が利用しやすい制度となるよう、民事法律扶助の適正な運用の実現を目指します。
法律扶助対象事件の拡大、立替基準の適正化、困難案件加算や償還免除の活用・拡大等に取り組みます。
逮捕段階における公的弁護制度の実現、国選付添人制度の対象拡大や、人権分野の法律援助7事業の本来事業化等を目指します。
弁護士ゼロワン地域の解消への取組、地域の実情に応じた司法過疎・偏在解消に向けた施策を推進します。
ひまわり基金法律事務所の支援を推進します。都市型(過疎地派遣型)公設事務所については、弁護士の安定的な確保・養成を継続する観点から施策を検討し、実施します。
弁護士会と連携しながら法律相談の活性化に取り組みます。


第6 憲法の理念に基づく刑事司法の実現

取調べの全件・全過程の録画実現のため、事例の収集分析を行い、弁護実践の充実強化を図ります。
捜査・公判協力型協議・合意制度(いわゆる司法取引制度)の運用を注視し、弁護人の弁護活動について研修の充実に努めます。
拡大された被疑者国選弁護制度への人的・物的な態勢が整備されているかを確認します。
裁判員にとって分かりやすい弁護を目指し、実演型の研修を更に積極的に行うなどの取組を進めます。
国選弁護人の活動が報酬面において正当に評価されるよう、法テラス・法務省との対外折衝に努めます。
取調べへの弁護人立会権の実現に向けた取組を進めていきます。
再審を含む全面的証拠開示制度の実現を目指し、立法事実を収集分析します。
「人質司法」を打破するため、事例の収集分析に取り組みます。
逮捕段階の公的弁護制度に関する具体的構想(日弁連試案)を策定します。
身体拘束全事件を対象とした全面的国選付添人制度の実現を目指します。


第7 被災者支援と災害対策

各地の弁護士会等と連携しながら、被災者等の救済が完全に達成されるまで災害復興支援活動に取り組んでいきます。
福島原子力発電所事故による損害の完全な賠償と被災地の復興を実現するため、被害者への支援などの活動に引き続き取り組みます。
原子力発電と核燃料サイクルから撤退し、再生可能エネルギーの推進等を中核とするエネルギー政策の実現に向けて取り組みます。
防災に備えて弁護士会が地元自治体と協働できるよう対策を検討し、災害発生時に直ちに対応できる態勢を構築していきます。


第8 若手会員への支援

若手会員の業務支援対策として、弁護士業務支援ホットラインやチューター弁護士制度の利用を促進します。
登録間もない会員が早期に知識・情報を獲得できる、効果的で充実した研修を企画し、会員にとり有益な情報を提供することを目指します。
司法修習生や若手会員の就業及び独立開業支援を継続して行います。また、若手会員の孤立化を防止します。


第9 男女共同参画の推進

日弁連の政策・方針決定過程への女性会員の参画拡大を目指します。さらに、弁護士会内と社会の両面から男女間格差を解消する取組を進めます。


第10 法教育の充実

法教育の担い手を養成するとともに、高校生模擬裁判選手権の企画運営や、会員による法教育授業の支援などを通じて、広く法教育が浸透するような活動を続けていきます。


第11 司法及び弁護士の国際化の推進

国際法曹団体等の会議への参加など、国際交流活動を一層進めていきます。
海外展開に取り組む中小企業に対して、弁護士による法的支援を推進・強化します。
国際仲裁を活性化するための施策及び体制整備を行います。
国際司法支援活動を継続していきます。
ハーグ条約事件等渉外家事事件の運用の改善や、当事者のための支援体制の整備等に取り組みます。
国際分野で活躍できる人材を拡充するための取組を継続します。
2020年4月に京都で開催される第14回国際連合犯罪防止・刑事司法会議(コングレス)に向けて情報収集を行い、弁護士の団体としての関与の仕方について検討を進めます。


第12 広報の充実

「日本弁護士連合会広報中長期戦略」に基づき、イメージアップ広報を継続します。また、弁護士の仕事を市民や企業に知ってもらう広報に取り組みます。


第13 弁護士自治を堅持する方策等

弁護士不祥事対策を推進するとともに、会員への支援策の充実を図ります。
弁護士職務基本規程の改正に向けた検討を進めていきます。
健全かつ適正な会財政を目指します。
弁護士法第72条の解釈適用問題について、引き続き検討・議論を進めます。
FATFによる第4次相互審査に向けて、依頼者の本人特定事項の確認義務と記録保存義務等の会員による履行状況を把握し、課題を検討します。
会務合理化のための施策を推進します。
法曹一元を実現するため、弁護士任官を推進します。また、関係機関と連携して、健全な市民感覚を裁判に反映させていくことを目指します。


民事訴訟法施行20周年シンポジウム
3月29日弁護士会館

1998年に施行された民事訴訟法(以下「新民訴法」)は、本年、施行20周年を迎えた。法改正当時の議論状況を踏まえつつ、今後の民事訴訟の運用の在り方等を議論すべく、シンポジウムを開催した。


第1部   基調講演


新民訴法制定時に法制審議会民事訴訟法部会委員を務めた高橋宏志教授(中央大学大学院法務研究科)(講演当時)が基調講演を行った。高橋教授は、国民の裁判所離れに歯止めをかけ、利用しやすい裁判制度を作ろうと新民訴法が制定されたこと、これにより集中証拠調べが予想を超えて定着したこと、新民訴法によって、テクニックで勝つのではなく、情報を共有した上で技量を争うという思想の転換が生じたことを指摘した。また、近年、争点・証拠整理が形骸化したと語られていることに関し、裁判官も弁護士も、口頭議論による争点・証拠整理に熱意を持たなければならないと語った。


第2部  パネルディスカッション

 

パネルディスカッションでは、争点整理期間の長期化の問題等について議論した。
パネルディスカッションの様子 三木浩一教授(慶應義塾大学大学院法務研究科)は、争点整理手続の長期化の要因として、弁護士が準備書面の提出期限を守らないことや裁判所のイニシアティブが不足していることを指摘した。
畑瑞穂教授(東京大学大学院法学政治学研究科)は、効率的な訴訟運営がなされなければ依頼者の負担が大きくなる、書面提出期限を守らせるために何らかの制裁を設けることも考えられると指摘した。
民事裁判手続に関する委員会の越路倫有事務局次長(福岡県)は、福岡地裁本庁で実践されている、集中的に口頭議論を行う期日を設ける取り組みについて報告した。
山田真紀判事(東京地方裁判所)は、裁判所でも研究会や検討会を開催して、争点整理の方法について研さんを積んでいることに言及した。


今、地方で国際化
国際活動に関する交流会
3月17日 弁護士会館


昨年9月のLAWASIA東京大会には全国各地の弁護士が参加し、弁護士・弁護士会の国際化への機運が高まりつつある。この機会に、今後の弁護士の国際化やそのための支援方策の在り方・課題等を検討・議論するため、交流会を開催した。
交流会には、32弁護士会から53人が参加した。


基調講演

矢吹公敏会員(東京)が「日弁連の国際活動の30年」と題し報告を行った。
小山田一彦会員(仙台)からは、中規模弁護士会の取り組みとして、仙台弁護士会の国際交流活動の歩みと課題について報告があった。小山田会員は、日弁連や他の弁護士会、関係諸機関の協力や支援がなければ、国際委員会の立ち上げや各種企画等の立案実行は困難であったと振り返った。


事前アンケートに基づく意見交換

交流会に先立ち全弁護士会を対象に実施したアンケートの結果について、国際室の竹内千春嘱託(第二東京)から報告を受け、意見交換を行った。
意見交換では、地方の弁護士会の国際化における検討事項、問題点や障壁等が浮き彫りになった。例えば、「弁護士会の国際交流活動が会員にどのような貢献をしているかが分かりにくいので、それらをまとめて示してほしい」といった要望や「中小企業の海外展開を支援する拠点となった弁護士会が役所に挨拶に行ったところ『今頃やっと来たのか』といった指摘を受けた」などである。


参加者の感想と今後

参加者からは、「非常に啓発された」「他会の事情が分かり今後の国際交流活動に大いに参考になった」「日弁連との連携を期待する」「日弁連のリーダーシップを期待する」など、これからの発展を希望する声が多く寄せられた。
今後は、アンケート結果や交流会での意見等を具体的に分析し、弁護士会の国際化を推進するための取り組みを発展させていく予定である。


(国際交流委員会 副委員長 池内稚利)


シンポジウム
民法改正後の消費者に関わる民事ルールの全体像
消費者契約法、特定商取引法・割賦販売法も踏まえて
4月6日 弁護士会館

2017年の民法改正は消費者契約にも大きな影響をもたらす。民法改正後の消費者に関わる民事ルールの全体像を、改正民法のみならず、消費者契約法(以下「消契法」)、特定商取引法(以下「特商法」)・割賦販売法(以下「割販法」)も踏まえて俯瞰し、現行法による消費者被害の救済範囲を再確認し、今後必要な改正項目を検討するためシンポジウムを開催した。


基調講演

鹿野菜穂子教授(慶應義塾大学大学院法務研究科)が基調講演を行い、民法改正のうち消費者の利益と関わりの深い点に焦点を当て、審議経過を含めた改正経緯、改正法の内容を説明した。鹿野教授は、消費者契約への影響が大きい点として①保証債務に関する基本ルールの明確化、②定型約款規定の創設、③錯誤規定の整備などを取り上げ解説した。さらに、民法に組み込まれなかった消費者契約のルールについては2016年の消契法改正で段階的に実体法化され、残された問題も今通常国会に消契法改正案が提出されたものの、平均的な損害額の推定規定がないなど立法的課題はなお残されていると指摘した。


パネルディスカッション

高齢者への過量商品、不必要な高額商品のクレジット販売による消費者被害の事例について、特商法・消契法・民法による売買契約の取り消しの可否や、割販法・民法によるクレジット契約の抗弁対抗などについて議論がなされた。そのほか、土地の相続に関連してサブリースを持ちかけられ建築請負契約など複数の契約を締結した事例など4つの事例について議論がなされた。増田悦子氏(公益社団法人全国消費生活相談員協会理事長)は、紹介事例のような相談が国民生活センターに寄せられることも多く、消費者が自己の生活実態に合わない契約をした場合の救済方法の整備など、消費者保護に向けた議論が活発になされるよう期待を込めた。


シンポジウム
監獄法抜本改正後の受刑者処遇をめぐる判例の動向
刑事被収容者処遇法施行から10年を経て
3月31日 弁護士会館

いわゆる受刑者処遇法を一部改正し、未決拘禁者の処遇を含めた「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」(以下「刑事被収容者処遇法」)が2007年6月に施行されてから10年が経過した。この間、受刑者処遇の在り方をめぐる国家賠償請求の裁判例が積み重ねられている。これらの経験を共有し、被収容者のさらなる人権保障および処遇改善を目指す活動の一環として、シンポジウムを開催した。


運用状況

人権擁護委員会の下永吉純子委員(埼玉)は、刑事被収容者処遇法の施行により、刑事施設視察委員会の設置、外部交通の拡大等を含む処遇の適正化・透明化が図られ、被収容者の人権保障および処遇改善に向けて一定の道筋がつけられたと報告した。その上で、国家賠償請求などの裁判例の情報提供を呼びかけた。


事例報告

松本隆行副委員長(兵庫県)は、被収容者が拘置所内で凍死した事案について、神戸地方裁判所が2011年9月8日、刑務官らには被収容者の生命および身体の保持に努める注意義務に違反した過失があるとして、国に4364万円余りの損害賠償を命じた裁判例を報告した。松本副委員長は、刑事収容施設内部の出来事が明らかになることは少なく、証拠が偏在していることから、早期の証拠収集、証拠保全申立てが重要であると強調した。


コメンテーターから

葛野尋之教授(一橋大学大学院法学研究科)は、刑事被収容者処遇法の施行により被収容者の人権保障に一定の進歩があったが、今後は、国際水準を意識していくこと、損害賠償請求訴訟等において、裁判所が積極的に訴訟指揮することが重要であると指摘した。
刑事拘禁制度改革実現本部の海渡雄一本部長代行(第二東京)は、日本政府が、いわゆるマンデラ・ルールに従って拘禁制度を改善すべきとの国連人権理事会の勧告を受け入れたことを指摘し、今後は、制度の改革・改善を政府に求めていきたいと述べた。


「公共」教科書シンポジウム
新しい教科書の姿を考える
3月18日 東京都千代田区

arrow_blue_2.gif「公共」教科書シンポジウム~新しい教科書の姿を考える~


学習指導要領の改訂により、現行科目「現代社会」が廃止され、新科目「公共」が設置される。学習指導要領案は、単なる知識量ではなく資質・能力を育む観点を徹底する点、見方・考え方を働かせることで思考力・判断力・表現力の育成を質的に向上させるよう求める点、主体的対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)の活用を求める点などに特徴がある。
「公共」教科書のあるべき姿を検討するためシンポジウムを開催し、教育関係者を中心に約50人が出席した。


市民のための法教育委員会の村松剛事務局長(神奈川県)が、学習指導要領改訂の背景について、求められる学校教育の在り方が知識ベースから資質・能力ベースへ変化したこと、新しい教育課程の枠組みを設定する必要が生じたことを説明し、学習指導要領案について、着目点や活動内容、到達点などを分析的に解説した。「公共」教科書の在り方についても、主要な概念を深く理解させる教科書、具体的な課題を扱った教科書、資料から情報を読み取らせる教科書が望ましいと述べた。また、社会のルールである「法」は社会を考える視点になると指摘し、法教育は学校教育で育もうとしている資質・能力に直接つながる教育であり、法教育への弁護士の関わり方も増えると力を込めた。
野坂佳生委員長(福井)は、高等教育無償化の是非や地球環境問題の解決方法などを題材とするモデル教科書案について報告した。
続いて、宍戸常寿教授(東京大学大学院法学政治学研究科)、吉村功太郎教授(宮崎大学大学院教育学研究科)、渥美利文教諭(東京都立農芸高等学校)をパネリストとしてパネルディスカッションが行われた。
学習指導要領案で示された幸福・正義・公正、個人の尊重、民主主義などの視点、従来の知識情報伝達型から脱却することの可否にも議論が及び、モデル教科書案の内容についても意見交換がなされた。



JFBA PRESS -ジャフバプレス- Vol.131

年次報告書は提出しましたか?

昨年12月の臨時総会で、マネー・ローンダリング対策およびFATF(金融活動作業部会)の第4次相互審査への対応のため、依頼者の本人特定事項の確認(以下「本人確認」)等の履行状況について、全ての会員が所属弁護士会に年次報告書を提出することが義務付けられました(提出期間:本年4月1日〜6月30日)。
年次報告書の書式のほか、本人確認等に関する各種資料は、日弁連ウェブサイトのトップページ右下にあるバナー「依頼の際には『本人特定事項の確認』にご協力を」(以下「バナー」)のリンク先ページに掲載しています。
年次報告書の提出方法や書き方に関し、会員から寄せられた主な質問をQ&Aにまとめましたので、ご参照ください。
*本稿中「規程」とは「依頼者の本人特定事項の確認及び記録保存等に関する規程」を指します。


提出方法について

Q1 ウェブサイトでの提出が簡単と聞きました。どうやってウェブサイトにアクセスすればよいですか?


A1 弁護士会ごとにアクセス用URL、ログイン用ID・PWがあります。詳細は、所属弁護士会にお問い合わせください。


Q2 ウェブ入力に不慣れなのでFAXで提出したいと思っています。FAXで提出する際の書式はどこにありますか?


A2 バナーのリンク先ページからダウンロードすることができます。
なお、東京三会では会指定の書式がありますので、東京三会の会員は必ず所属弁護士会にお問い合わせください。


書き方について

Q3 報告期間(本年1月1日〜3月31日)中に本人確認を要する法律事務の受任はありませんが、報告期間以前に受任した事件で、報告期間中に金員を預かったため、本人確認を行いました。年次報告書中第2(本人確認等の措置の実施状況)の1は、①(本人特定事項の確認を要する法律事務の受任がありませんでした)にチェックすればよいですか?
また、本人確認を行ったのは報告期間以前ですが、報告期間中も記録を保存していた場合は、第2の3(規程5条に基づく確認記録及び取引記録の保存の実施状況)は、いずれにチェックすればよいですか?


A3 報告期間に関する考え方としては、法律事務の受任時期が基準ではありません。規程2条から4条までの本人確認が必要かどうかを当該報告期間内で検討したものは報告対象となるため、第2の1は②(本人特定事項の確認を要すると判断した場合に限り確認しています)をチェックします。
また、第2の3は報告期間中に本人確認を要する法律事務の受任がない場合でも、報告期間前に本人確認を行い、その確認記録または取引記録を報告期間中も保存している会員は、①(確認記録を保存しています)または②(資産管理行為等及び取引等の取引記録を保存しています)にチェックしてください。


Q4 私たちの事務所は、パートナーが事件を受任し本人確認も行っています。パートナーの指示で仕事をしている私たちアソシエイトは年次報告書中第2の1で①を選択することになるでしょうか?


A4 アソシエイトであっても本人確認が必要です。
他方で、本人確認を事務職員や共同受任をする他の弁護士に行わせることもできると考えられます。パートナーが本人確認をしているのであれば、同一事件を受任したアソシエイトも本人確認をしていると考えることができます。そのため、第2の1は、パートナー弁護士において実施している本人確認について、①〜③の中から当てはまるものを選択します。


Q5 私は組織内弁護士で、属する組織の業務のみを行っていて、個人事件を受任していません。この場合、年次報告書中第3(依頼の際及び依頼を受けた後の適切な対応の実施状況)はどのように回答すればよいですか?


A5 規程6条や7条を組織内弁護士等にも適用する場合の「依頼者」は当該属する組織であり、当該属する組織が命じる職務が依頼された法律事務に相当します。
したがって、組織内弁護士等は、当該組織が弁護士に命じた職務が犯罪収益の移転に関わるものか否かを検討し、その結果を報告する必要があります。


Q6 年次報告書中第5(本人確認等の措置を的確に行うための措置の実施状況)に挙げられている項目には具体的にどのような取り組みが該当しますか?


A6 あくまで一例ですが、①の「最新の内容を保つための措置」については、日弁連が作成している委任契約書サンプル(バナーのリンク先ページでご覧いただけます。)を参考に、委任契約に際して本人特定事項の変更があった場合は申し出る旨の条項を設けていれば該当すると考えられます。
②の「事務職員に対する教育」等の実施については、弁護士・事務所の指示で事務職員に日弁連が提供する本件に関するeラーニングを視聴させている場合や弁護士会が主催している勉強会に参加させていれば該当すると考えられます。


◇    ◇


(司法調査室(FATF対応チーム))



日弁連委員会めぐり94


日弁連信託センター

 

今回の委員会めぐりは、日弁連信託センター(以下「センター」)です。昨年6月、弁護士が信託を活用して国民によりよい法的サービスを提供できるようにすることを目的に設置されました。日弁連で初めての信託分野を所管する委員会です。
センターの活動内容などについて、小原健センター長(第二東京)、林邦彦副センター長(大阪)、戸田智彦副センター長(東京)、伊庭潔副センター長(東京)からお話を伺いました。

(広報室嘱託 神田友輔)

センターの概要

前列左から林副センター長、小原センター長、後列左から伊庭副センター長、戸田副センター長弁護士業務改革委員会内に設置された信託制度プロジェクトチームを母体とし、信託分野に関心の高い会員を全国から集めて発足しました。
機動的な組織とするため、定員は30名と少数精鋭です。委員には、信託銀行の企業内弁護士や法務局での勤務経験を持つ弁護士などもいます。委員会の出席率は8割前後と高く、非常に活発です。


センターの活動内容

センターは、①弁護士が信託を業として行うことができるようにするための研究および必要な法改正についての提言、②信託の活用に関する会員への情報の提供および研修の強化、③信託の活用を図る上での課題についての調査および研究ならびに提言を任務としています。
信託分野を身近なものにするため、まずは早急に、会員や信託関連団体を対象とした問い合わせ窓口を開設する予定です。また、信託を積極的に活用してもらうために、より多くの金融機関で信託口口座を開設できるよう全国銀行協会などと協議をしていく予定です。
センターを設置したことにより、法務省・財務省・金融庁・信託協会などとさまざまな情報交換ができる体制ができました。信託を積極的に活用するための方策なども検討していきます。


会員へのメッセージ

信託は、これからニーズが増える新しい分野です。遺言や成年後見と同様に、法律専門家である弁護士だからこそ活躍できる分野ですので、信託を弁護士の基本スキルの一つに加えてほしいと考えています。
センターでは、意欲のある普通の弁護士が信託に対応できるようにすることが目標です。信託に関するeラーニングや、センターの委員が執筆した書籍もあります。研修パッケージも開発中です。ぜひ参考にしてください。


ブックセンターベストセラー
(2018年2月・手帳は除く) 協力:弁護士会館ブックセンター

順位 書名 著者名・編者名 出版社名
1 裁判官!当職そこが知りたかったのです。
−民事訴訟がはかどる本−
岡口基一・中村真 著 学陽書房
2 こんなところでつまずかない!相続事件21のメソッド 東京弁護士会親和全期会 編著 第一法規出版
3 模範六法2018 平成30年版 判例六法編修委員会 編 三省堂
4 後遺障害の認定と異議申立
−むち打ち損傷事案を中心として−

加藤久道 著

保険毎日新聞社

5

超早わかり・「標準算定表」だけでは導けない婚姻費用・養育費等計算事例集(中・上級編)[新装版]

婚姻費用養育費問題研究会 編 婚姻費用養育費問題研究会
6 離婚調停[第3版] 秋武憲一 著 日本加除出版
家庭裁判所における遺産分割・遺留分の実務[第3版] 片岡 武・管野眞一 編著 日本加除出版
8 破産管財の手引[第2版] 中山孝雄・金澤秀樹 編 きんざい

9

事業承継法務のすべて

日本弁護士連合会日弁連中小企業法律支援センター 編 きんざい
10 労働事件ハンドブック2018年 第二東京弁護士会 労働問題検討委員会 編 労働開発研究会


日本弁護士連合会 総合研修サイト

ライブ実務研修人気講座ランキング 2017年10月〜2018年3月

サイトへ日弁連会員専用ページからアクセス

順位 講座名
1

高齢者・障がい者相談に適切に対応するための基礎知識(総合法律支援法 2016年改正をふまえて)

2 よくわかる最新重要判例解説2017(民事)

3

民事信託に関する具体例と課税上の諸問題

4

2016改正特定商取引法の活用

5 よくわかる最新重要判例解説2017(商事)
6

よくわかる最新重要判例解説2017(刑事)

7 行政訴訟の実務を学ぶ
8 2016改正割賦販売法の活用
9 知的財産に関する研修会2017〜AIコンテンツと知的財産制度、判例概観(意 匠法・不正競争防止法)、農林水産分野の知的財産について〜
キャリアモデルとしてのジェネラルカウンセル

総合研修サイトで全講座無料で受講できます!

お問い合わせ先 日弁連業務部業務第三課(TEL 03-3580-9927)