日弁連新聞 第530号

退任のご挨拶
日本弁護士連合会会長 中本和洋

中本和洋会長

日弁連会長職の2年間は、多忙を極める毎日であり、毎日100メートル競走を何本も全力で走ってきたという思いです。
私が2年間、大きな故障もなく走り切ることができましたのは、副会長、事務総次長、嘱託弁護士そして職員の皆さまのご支援・ご協力によるものです。そして、日弁連理事・会員の皆さま方のお陰により、この2年間で一定の成果を得ることができました。ここに心から感謝申し上げます。
私が任期中に解決し、実現したいと考えていた課題の第一は、市民にとって利用しやすく頼りがいのある民事司法の改革です。大きな改革課題は、司法アクセスの改善、権利救済の実効性の強化、司法予算の拡大です。司法アクセスの改善に関しては、弁護士費用保険の拡充について大きな進展が見られました。権利救済の実効性の強化に関しては、現在、民事執行法の改正について法制審議会で審議が進められています。
修習手当の創設に向けた取り組みは、2017年11月に採用された第71期司法修習生から新しい給付制度が実現する形で実を結びました。各地の会員やビギナーズ・ネットの皆さまなどのご尽力の結果です。ご支援をいただいた皆さまに対し、心から感謝申し上げます。
弁護士の不祥事対策としては、預り金口座の規制を強化し、依頼者見舞金制度を創設しました。さらにはマネー・ローンダリング対策およびFATFの第四次対日相互審査への対応のため、依頼者の本人特定事項の確認等の履行状況について年次報告書の提出を義務付けるなど会規の一部改正を行いました。
死刑制度の廃止については、福井市で開催された第59回人権擁護大会で宣言を採択し、2020年までの実現を目指して活動を開始しています。
男女共同参画を推進するため、副会長のうち2人以上は女性が選任されなければならないとする、女性副会長クオータ制の実施も決まりました。
このように、一定の成果は得られましたが、憲法改正問題、法曹養成制度改革、民事・刑事司法改革、若手弁護士への支援等、多くの課題を次期執行部に引き継ぐことになります。
今日、日弁連の果たすべき役割は、極めて重要なものになってきています。日弁連は、会員の皆さまのさまざまな意見を集約して、合意形成を図り、希望と活力に溢れる司法の実現を目指して活動を続けなければならないと考えます。
会員の皆さまのご支援・ご協力に重ねて感謝申し上げます。



民法(相続関係)等の改正に関する要綱について


法制審議会民法(相続関係)部会は2月16日、相続法改正の要綱を取りまとめた。今回の改正は法律婚の保護に端を発したものであるが、要綱の内容はこれにとどまらず多岐にわたっている。


要綱の概要

①配偶者の居住権を保護するための方策として、短期居住権および配偶者(長期)居住権、②遺産分割に関する見直しとして、婚姻期間20年以上の配偶者に対する居住用不動産の遺贈または贈与についての持ち戻し免除の意思表示の推定、預貯金の仮払い制度の創設、遺産分割前に遺産に属する財産が処分された場合の取り扱い等、③遺言制度に関する見直しとして、自筆証書遺言の方式の緩和、自筆証書遺言の保管制度の創設、遺言執行者の権限の明確化等、④遺留分制度に関する見直しとして、遺留分減殺請求権の金銭債権化とこれに対する現物給付の否定、遺留分額算定における相続人に対する生前贈与の期間限定等、⑤相続による権利義務の承継等に関する見直しとして、相続させる旨の遺言による権利承継についても法定相続分を上回る部分については対抗問題とすること等、⑥相続人以外の者の貢献を考慮するための方策として、被相続人に無償で労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持または増加に特別の寄与をした親族に、相続人に対する特別寄与料の支払請求権を認めるというものである。遺産分割前の財産処分に関する規律や遺留分減殺請求における現物給付に関する規律は、パブリックコメント後に内容が大きく改まった。


今後の予定

近々改正案が示され、今通常国会に提出される見込みである。多くの国民の生活に直結する相続法の改正であり、裁判実務や弁護士実務に及ぼす影響も大きい。日弁連としても必要に応じて情報を発信していく予定である。

(法制審議会民法(相続関係)部会バックアップ会議座長 加藤祐司)


◇    ◇


*同部会での議論状況および資料等は法務省ウェブサイトでご覧いただけます。

 

 

さらなる男女共同参画の推進に向けて
「第三次日本弁護士連合会男女共同参画推進基本計画」を策定


日弁連は1月19日、「第三次日本弁護士連合会男女共同参画推進基本計画」を策定した。日弁連はこれまで、2007年4月に「日本弁護士連合会男女共同参画施策基本大綱」を、同年5月に「日本弁護士連合会における男女共同参画の実現をめざす決議」をそれぞれ採択している。同年6月には男女共同参画推進本部を設置し、2008年3月に第一次、2013年3月に第二次の男女共同参画推進基本計画を策定するなど、男女共同参画推進に向けて取り組みを進めてきた。
本年3月で第二次基本計画の期間が終了するため、4月から5年間の計画として第三次基本計画を策定した。第三次基本計画では、「男女共同参画推進体制の構築・整備」「研修・啓発活動」など9つの重点項目を掲げ、各項目につき「基本的考え方」「目標」および検討すべき「具体的施策」を定めている。
近年、女性弁護士の増加ペースが鈍い。合格者に占める女性割合の低下に加え、裁判所、検察庁の女性採用数の増加などの影響による。女性弁護士の増加は、日弁連の男女共同参画推進のために不可欠である。第三次基本計画では「弁護士における女性割合の拡大」を独立した重点項目の一つとし、積極的に取り組むことを明らかにした。
今後も、第三次基本計画に基づき、男女共同参画の推進に向けた一層の取り組みが必要である。


(男女共同参画推進本部事務局長 可児康則)


*第三次基本計画は、日弁連ウェブサイトでご覧いただけます。

 


「弁護士情報提供ウェブサイトへの掲載に関する指針」制定

1月18日の理事会で「弁護士情報提供ウェブサイトへの掲載に関する指針」(以下「新指針」)が承認された。
ウェブサイトによる弁護士情報の提供については、「弁護士等の業務広告に関する規程」に基づく「業務広告に関する指針」第2の3に「弁護士情報提供ホームページにおける周旋と広告の関係」が定められていた。
しかし、表現が分かりにくいなどの指摘があったほか、弁護士職務基本規程(以下「職務基本規程」)第11条(非弁護士との提携)等との関係が不明確であったため、独自の指針を設け、内容を整理することとした。
新指針では、報酬を得る目的をもって法律事務の周旋を業とする者、または、それを疑うに足りる相当の理由があると認められる者が運営するウェブサイトから依頼者の紹介を受けることは、弁護士法第27条や職務基本規程第11条に違反すると指摘し、どのような場合が「周旋」や「報酬目的」に当たるかについても整理している。
職務基本規程第12条(報酬分配の制限)や第13条第1項(依頼者紹介の対価)との関係で問題となる点についても注意を促している。
他方、これまでの「業務広告に関する指針」による規制がやや広汎に過ぎるとの批判から、新指針では、弁護士紹介を業とするウェブサイトであるか否かについては「実質的に判断」するとしている。
さらに、弁護士情報提供ウェブサイトによる情報提供には、「弁護士等の業務広告に関する規程」も適用されることを明文化し、例えば誤導誤認のおそれのある広告や誇大広告が違反となることを明らかにした。
市民や弁護士が弁護士情報提供ウェブサイトを利用する機会は今後も増えていくと考えられる。会員には、非弁提携の防止等の観点から、新指針の十分な理解が求められる。


(インターネットを利用した弁護士等の情報提供に関する諸課題検討ワーキンググループ座長 鈴木克昌)

 

 

平成30年度同31年度
日弁連会長選挙 開票結果

平成30年度同31年度日本弁護士連合会会長選挙の投票および開票が2月9日に行われました。
2月16日の選挙管理委員会において開票結果を確定し、当選者を決定しました。


(当選者)

菊地 裕太郎
(東京弁護士会)

 

2017年懲戒請求事案集計報告

日弁連は、2017年(暦年)中の各弁護士会における懲戒請求事案ならびに日弁連における審査請求事案、異議申出事案および綱紀審査申出事案の概況を集計して取りまとめた。
弁護士会が2017年に懲戒手続に付した事案のうち、日弁連や弁護士会が一定の意見表明を行ったことについて、全国の21弁護士会に対してなされた約13万件の懲戒請求を除いた件数は2864件であった。
懲戒処分の件数は106件であり、昨年と比べると8件減っているが、会員数との比では0.26%で、ここ10年間の値との間に大きな差はない。
懲戒処分を受けた弁護士からの審査請求は39件であり、2017年中に日弁連がした裁決内容は、棄却が22件、処分取消が3件、軽い処分への変更が2件であった。
弁護士会懲戒委員会の審査に関する懲戒請求者からの異議申出は42件であり、2017年中に日弁連がした決定内容は、棄却が41件、決定取消が0件、重い処分への変更が2件であった。
弁護士会綱紀委員会の調査に関する懲戒請求者からの異議申出は904件、綱紀審査申出は376件であった。日弁連綱紀委員会および綱紀審査会が懲戒審査相当と議決し、弁護士会に送付した事案は、それぞれ1件、35件であった。


  • *一事案について複数の議決・決定(例:請求理由中一部懲戒審査相当、一部不相当など)がなされたものについてはそれぞれ該当の項目に計上した。
  • *終了は、弁護士の資格喪失・死亡により終了したもの。日弁連においては、異議申出および綱紀審査申出を取り下げた場合も終了となるためここに含む。

 

表1:懲戒請求事案処理の内訳(弁護士会)

新受 既済
懲戒処分 懲戒しない 終了 懲戒審査開始件数
戒告 業務停止 退会命令 除名
1年未満 1~2年
2008 1596 42 13 2 2 1 60 8928 37 112
2009 1402 40 27 3 5 1 76 1140 20 132
2010 1849 43 24 5 7 1 80 1164 31 132
2011 1885 38 26 9 2 5 80 1535 21 137
2012 3898 54 17 6 2 0 79 2189 25 134
2013 3347 61 26 3 6 2 98 4432 33 177
2014 2348 55 31 6 3 6 101 2060 37 182
2015 2681 59 27 3 5 3 97 2191 54 186
2016 3480 60 43 4 3 4 114 2872

49

191
2017 2864 68 22 9 4 3 106 2347 42 211
  • ※日弁連による懲戒処分・決定の取消し・変更は含まれていない。
  • ※新受事案は、各弁護士会宛てになされた懲戒請求事案に弁護士会立件事案を加えた数とし、懲戒しないおよび終了事案数等は綱紀・懲戒両委員会における数とした。
  • ※2012年の新受事案が前年の2倍となったのは、一人で100件以上の懲戒請求をした事案が5例(5例の合計1899件)あったこと等による。
  • ※2013年の新受事案が前年に引き続き3000件を超えたのは、一人で100件以上の懲戒請求をした事案が5例(5例の合計1701件)あったこと等による。
  • ※2016年の新受事案が3000件を超えたのは、一人で100件以上の懲戒請求をした事案が5例(5例の合計1511件)あったこと等による。
    ※2017年の新受事案は、日弁連や弁護士会が一定の意見表明を行ったことについて全国の21弁護士会に対してなされた約13万件の懲戒請求(個々の弁護士の非行を問題とするものではない事案)を含まない数とした。

 

表2:審査請求事案の内訳(日弁連懲戒委員会)

新受(原処分の内訳別) 既済 未済
戒告 業務
停止
退会
命令
除名 棄却 原処分
取消
原処分
変更
却下・終了
2015 20 11 1 1 33 22 6 1 4 33 29
2016 15 13 2 1 31 26 1 2 4 33 27
2017 23 15 0 1 39 22 3 2 2 29 37


  • ※原処分取消の内訳
  • 【2015年~2017年:戒告→懲戒しない(10)】
  • ※原処分変更の内訳
  • 【2015年:退会命令→業務停止2年(1)】
    【2016年:業務停止2月→業務停止1月(1)、退会命令→業務停止2年(1)】
    【2017年:業務停止3月→業務停止2月(2)】

表3:異議申出事案受付の内訳(日弁連懲戒委員会)

新受 既済 未済
棄却 取消 変更 却下 終了 速やかに終了せよ
2015 43 33 0 1 3 0 2 39 30
2016 55 29 1 1 2 1 2 36 49
2017 42 41 0 2 1 2 0 46 45


  • ※取消の内訳
    【2015~2017年:懲戒しない→戒告(1)】
    ※変更の内訳
    【2015年:戒告→業務停止1年(1)】
    【2016年:戒告→業務停止1月(1)】
    【2017年:業務停止3月→業務停止6月(1)、業務停止6月→業務停止1年(1)】

表4:異議申出事案受付の内訳(日弁連綱紀委員会)

新受 既済 未済
審査相当 棄却 却下 終了 速やかに終了せよ
2015 1002 6 896 17 5 18 942 309
2016 1103 8 929 25 9 241 1212 200
2017 904 1 824 20 8 29 882 174


  • ※2015年の新受事案のうち、同一の異議申出人による計285件の異議申出事案を含む。
    ※2016年の新受事案のうち、同一の異議申出人による計305件の異議申出事案を含む。
  •  

表5:綱紀審査申出事案処理の内訳(日弁連綱紀審査会)

新受 既済 未済
審査相当 審査不相当 却下 終了
2015 396 4 437 17 1 459 146
2016 332 0 399 4 3 406 72
2017 376 35 246 6 0 287 161


  • ※2017年の審査相当事案のうち、同種事案に関する議決32件を含む。

 

日弁連短信

日弁連会務を支える事務局


早いもので、2年の事務総長の任期も終わろうとしています。日弁連事務局の責任者として、会務を黒子として支える事務局についてお伝えします。
3月1日現在、日弁連事務局には、174人の職員が勤務しています。このほか弁護士職員として、事務総次長(7人)、嘱託(95人)がいます。日弁連事務局は、事務総次長のほか、総務部(総務課、情報システム・施設管理課、経理課、人事課)、審査部(審査第一課、第二課、第三課)、法制部(法制第一課、第二課)、人権部(人権第一課、第二課)、業務部(業務第一課、第二課、第三課)、企画部(企画課、広報課、国際課)の6部17課で構成されています。出井直樹事務総長そのほか、外郭団体等に日弁連職員が出向しています。また、弁護士職員である嘱託によって構成される室として、調査室、広報室、国際室、人権救済調査室、日本司法支援センター対応室、研修・業務支援室、司法調査室があります。
彼ら彼女らの働きなくして、日弁連会務は回っていきません。各種大会やシンポジウムで裏方を務めるのも事務局職員です。関係省庁等との協議に同席しメモ取りをするのも事務局職員です。登録や綱紀懲戒の事務を担う審査部、会員や外部からの問い合わせに粘り強く対応する総務部など、見えないところで地道に、しかし弁護士自治の根幹を支えているのも事務局職員です。会長・副会長、理事、委員、事務総次長が力を発揮できるのも、事務局があってこそです。
個々の事務局職員の能力も高いのですが、加えて仕事に対する取り組み姿勢が素晴らしいと感じます。そして、組織として会長・副会長をはじめとした執行部・役員を支える体制ができていると思います。
職員数は、会員数の増加と日弁連の活動範囲の拡大によって、ここ10年で約1.3倍に増えています。適正な事務局の規模・人員体制については、日弁連に求められる役割も踏まえて、意識していく必要があります。また、率先して事務局の働き方の改革を推進しなければならないと考えています。職員の中からそのような問題意識での改革案も出されています。
会員の皆さまにおいては、どうか日弁連の会務を黒子として支える事務局へのご理解と、忌憚のないご意見をお願いします。


(事務総長 出井直樹)


第3回国連人権理事会普遍的定期的審査(UPR)に関する院内学習会
2月7日 衆議院第一議員会館

国連人権理事会では、約4年半ごとに、全ての国連加盟国の人権状況を普遍的に審査している(UPR)。2017年11月、日本に対する3回目の審査が実施され、217項目にわたる勧告をまとめた暫定版報告書が採択されたことを受けて、本年3月の国連人権理事会本会合での日本政府による勧告の受け入れに向けた学習会を開催した。
学習会には、90人が出席した(うち国会議員本人出席13人、代理出席10人)。


日弁連からの報告「国連人権理事会・作業部会審査の勧告内容について」

国際人権問題委員会の金昌浩幹事(第二東京)は、第2回審査に比べて、人種やLGBTの差別を禁止する法律の制定およびヘイトスピーチへの対応に関する勧告が増えたことを報告した。
北村聡子副委員長(東京)は、賃金をはじめとする女性の雇用格差および障がい者への対応の是正について、第2回審査よりも数多く勧告を受けたと報告した。
海渡雄一委員(第二東京)は、福島原発事故や刑事拘禁に関する勧告も一定数あったことを解説した。


関連各省庁担当者によるテーマ別質疑応答

杉浦正俊氏(外務省総合外交政策局人権人道課長)の進行の下、国会議員や日弁連からの質問事項に対し、関連各省庁担当者が回答した。
国土交通省担当者は、外国人の民間賃貸住宅への入居について、いわゆる住宅セーフティネット法を改正して住宅確保要配慮者に外国人を加えたところであり、外国人の民間賃貸住宅入居円滑化ガイドラインも見直して、これらの運用の徹底を図りたいと述べた。
厚生労働省担当者は、男女間の賃金格差の是正について、女性活躍推進法やガイドライン等を活用し、格差の二大要因である管理職比率および勤続年数の差異の改善に努めたいと述べた。
これらの問題のほか、刑事拘禁、原発事故、個人通報制度についても活発な質疑応答が行われた。


第15回高齢者・障がい者権利擁護の集い
実践!意思決定支援 〜本人主体の権利擁護を目指して〜
2月2日 オリンパスホール八王子

第15回目の開催を迎える本集会は、障害者の権利に関する条約の批准、第58回人権擁護大会における「総合的な意思決定支援に関する制度整備を求める宣言」の採択、成年後見制度の利用の促進に関する法律の施行など近時の動向を踏まえ、意思決定支援の実践をテーマに取り上げた。
当日は、弁護士等の専門職、自治体や社会福祉協議会の職員、福祉施設職員などを含む750人が参加した。(共催:関東弁護士会連合会、東京弁護士会、第一東京弁護士会、第二東京弁護士会、東京三弁護士会多摩支部)


日弁連高齢者・障害者権利支援センターの活動報告に続き、上山泰教授(新潟大学法学部)が「意思決定支援の意義と課題」と題して基調講演を行った。上山教授は、意思決定支援の概念を整理した上で、誘導的要素を排除するため複数の支援者による意思決定支援の重要性等を指摘した。
中西紀子会員(第二東京)は、第15回高齢者・障がい者権利擁護の集い実行委員会が行った意思決定支援に関する事例調査等について報告し、さまざまな場面で意思決定支援が問題となり得ることから、弁護士が支援の現場と十分に連携して意思決定支援に関与することが重要であると指摘した。
その後、寸劇による問題提起を挟み、意思決定支援の実践についてのパネルディスカッションを行った。住む場所の選択、虐待、金銭の使い方が問題となった3つの事例を中心に、意思決定支援の体制、医療における意思決定支援、代理・代行決定が許容される場面、推定相続人間で意見の対立がある場合の意思決定支援等について議論がなされ、弁護士に本人の意思を尊重した支援が期待されていることなどが指摘された。

 (日弁連高齢者・障害者権利支援センター幹事 岡垣 豊)


次世代の国際交流・国際司法支援を担う弁護士養成研修
日本を飛び出してみて〜JICA長期専門家としての活動と弁護士キャリア〜
1月31日 弁護士会館

日弁連は長年にわたり、東南アジア諸国の弁護士および弁護士会を中心に国際司法支援活動を行っている。このたび、国際交流・国際司法支援活動への理解を広めるため連続研修を開催することとし、その第1回目として、国際司法支援活動に携わった弁護士の活動およびキャリアパス等をテーマに研修を行った。


講師の田邊会員と天野会員元JICAモンゴル長期派遣専門家である国際交流委員会の田邊正紀副委員長(愛知県)が、法整備支援専門家としてモンゴルに赴任した経緯を語った。派遣されるためには、日本での実務経験、語学力、国際関連の委員会活動経験のほか、JICAや日弁連の専門家養成研修の受講、国際司法支援活動弁護士名簿への登録が必要であり、赴任を希望する国を現地視察することも重要であると述べた。田邊副委員長は、モンゴルにおける活動の成果として、判例集の編纂を行い、現在ではウェブサイトで全件公開されていること、調停制度を構築し、年間取扱件数が1万件程度と訴訟事件の約1割にのぼり、成立率も8割程度と紛争解決機能を発揮していることなどを報告した。さらに、帰国後のキャリアとして、欧米諸国への留学や資格取得を経て国際舞台で活躍している会員の例を紹介した。
元JICAラオス長期派遣専門家である国際交流委員会の天野麻依子幹事(埼玉)は、同委員会国際司法支援センターの説明をした。同センターラオスプロジェクトでは、ラオス弁護士会と協力し、移動法律相談会や法律相談技法ワークショップを開催したほか、2015年に設立されたラオス国立司法研修所弁護教官に対する支援を継続していることを報告した。また、JICAラオス法律人材育成強化プロジェクトでは、ラオスの司法省、最高人民裁判所、最高人民検察院、国立大学と協力し、民法典起草の支援や各執務参考資料の作成および普及活動、法曹養成制度の支援を行っていることを紹介した。



シンポジウム 子どもの安全
〜製品事故から子どもを守るために〜
2月9日 弁護士会館

子どもをめぐる製品事故が後を絶たない。事故をなくすためには、製品の設計段階で子どもの特性が反映されること、事故情報を活かして設計や生活環境が改善されることが必要である。現状から課題を探るべく、シンポジウムを開催した。


消費者問題対策委員会の志水芙美代幹事(東京)は、子どもが関係する製品事故の裁判例を概観し、事故当時、被害児が通常予見される使用形態で製品を使用していたか否かが製造物責任法第3条の「欠陥」の有無に関連して争われるも、誤使用があったとして製造業者等の賠償責任が否定される事例が多いことを報告した。

小児科医の立場から発言する山中氏 野田幸裕氏(消費者庁消費者安全課長)は、消費者庁が、消費者安全法等に基づき事故情報を公表していることのほか、医療機関等から任意に事故情報の提供を受け、消費者への注意喚起を行っていることなどを紹介した。
鳥川慎吾幹事(大阪)は、消費者庁が医療機関等から収集した事故情報は公表の対象外とされているが、消費者にとっては、医療機関等からの事故情報こそが重要であり、その公表が必要であると述べた。
福田求道氏(NPO法人キッズデザイン協議会専務理事)は、子ども独自の行動・心理特性や生活実態を踏まえた製品設計の重要性を指摘した。福田氏は、例えば、床に置いた炊飯器の上に幼児が座って火傷する事故が発生しているが、このような事故は蒸気の出ない炊飯器であれば防ぐことができる、優れた製品等を表彰する活動を通じて社会そのものを変えていきたいと語った。
山中龍宏氏(小児科医)は、少なくとも3〜4歳までの子どもに「誤使用」という言葉は当てはまらないと指摘した。山中氏は、子どもの場合には月齢・年齢に応じて遭いやすい事故があり、毎年同様の事故が繰り返し発生していると述べ、事故を防止するためには、教育活動ではなく、生活環境や製品自体の改善が必要であると訴えた。


成年後見制度利用促進基本計画に関する連続学習会(第5回)
だれもが安心して老いることができる社会に向けて
任意後見制度の利用促進を考える
2月3日 弁護士会館

2017年3月に閣議決定された「成年後見制度利用促進基本計画」を受け、日弁連では、成年後見制度の改善・改革に向けて、医療や福祉の専門家等を講師として招き、連続学習会を開催している。
第5回目は、法定後見に比べて利用の少ない任意後見制度をテーマに取り上げた。


基調講演

上山泰教授(新潟大学法学部)が、日本ではドイツに比べ任意後見制度の利用が少なく、その背景として任意後見契約が適切な時期に発効していないことや適格な受任者が少ないことが挙げられると述べ、これらの改善の必要性を指摘した。


任意後見に関するヒアリング調査報告

日弁連高齢者・障害者権利支援センターの櫻井彰委員(徳島)が、日本公証人連合会、社会福祉協議会、有料老人ホームに対して行ったヒアリング調査の結果を報告した。調査の結果、任意後見制度の認知度が低く、メリットが知られていないことや費用の問題などの課題が浮かび上がった。


パネルディスカッション

元公証人の寺尾洋会員(東京)は、任意後見制度の契約数は2000年の制度開始時から2016年までの累計で10万7406件に達したが、発効数は6425件とわずか6%程度に過ぎないことを指摘し、移行型任意後見契約と同時に締結される委任契約が機能を代替している可能性があると述べた。
村田みつ代氏(世田谷区社会福祉協議会成年後見センター職員)は、世田谷区社会福祉協議会が法人として任意後見に取り組み、2017年12月末現在12人と契約を締結していることを報告し、今後も制度の周知や利用料金の見直しなどを行い、より使いやすくしていきたいと述べた。
佐々木育子委員(奈良)は、有料老人ホームで任意後見契約と公正証書遺言作成を同時に引き受けたところ、次々申し込みがあり、複数の弁護士でチームを組んで受任したことを報告した。一人ではなくチームで受任することにより、依頼者が求める「持続性」が生まれ、専門職にとっても受任しやすくなると語った。




JFBA PRESS -ジャフバプレス- Vol.130

2017年度 日弁連の広報

~弁護士の仕事や役割、弁護士が身近な相談相手であることについて広く社会の理解を得るために~


日弁連は2013年度から市民向けの広報活動の充実・強化に努めており、会務執行方針においても「広報の充実」を重要課題に掲げています。
2017年度は、動画・雑誌広告の実施、広報中長期戦略の策定、弁護士の魅力を伝えるリーフレットや社会科見学用動画の制作などを中核に据えて広報活動を展開しました。
本稿では、2017年度に日弁連が実施した広報活動を紹介します。

(広報室)


武井咲さんを起用した広告展開の継続

女優の武井咲さんを起用したポスター・クリアファイル・CM動画の使用期限を延長しました。各種制作物は、本年12月末まで使用できます。
CM動画については、昨年12月と本年3月に、BS放送のテレビ番組、JR東日本・JR西日本・東京メトロの各電車内ビジョン、YouTube TrueViewでの広告を実施しました。


雑誌への中小企業経営者向け広告の掲載

武井さんを起用した中小企業経営者向け広告を、プレジデント・日経トップリーダーなどの雑誌に掲載することにしました。雑誌は、中小企業経営者や高齢者など、ターゲットを絞った広告展開に適しています。
この広告では、ポスターのデザインを活用しつつ、キャッチコピーを「会社のこと、経営のこと。何でも相談できるんだ。」として、「ひまわりほっとダイヤル」を周知する内容としました。弁護士・弁護士会のイメージアップにとどまらず、弁護士が中小企業経営者の身近な相談相手であることを訴えかけています。


広報中長期戦略の策定

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日弁連の広報活動の基本方針を定めるものとして「広報中長期戦略」を取りまとめました。
イメージアップ広報を継続しつつ、弁護士業務の増大への寄与など会員の利益に資する広報活動の展開、ウェブサイト・SNSの活用促進等を進めていきます。


リーフレットおよびスマートフォンサイト「もっと知りたい弁護士の世界」の制作

高校生・大学生に弁護士の魅力を伝え、今後の職業選択肢として意識してもらうことを目的に、リーフレットおよびスマートフォンサイトを制作しました。さまざまな分野で活躍する弁護士が、自らの言葉で業務の実際や魅力を語ります。
斬新なデザインと情報量を抑えたリーフレット、QRコードによるスマートフォンサイトへの誘導、スマートフォンサイトへの情報の集約など、若年層に訴えかけるための工夫を凝らしました。リーフレットは、高校・大学・法科大学院での配布を進めています。


社会科見学用動画「Q&Aでよくわかる!弁護士のひみつ」の制作

社会科見学用動画「Q&Aでよくわかる!弁護士のひみつ」は、日弁連ウェブサイトで見ることができます

日弁連が制作に協賛した学習まんが「弁護士のひみつ」を活用して、弁護士の役割や仕事内容をQ&A形式で紹介する動画を制作し、日弁連ウェブサイトに掲載しました。日弁連・弁護士会の社会科見学や、弁護士会が実施する出前授業で活用します。


弁護士会との連携強化

2017年度も、弁護士会の広報担当者が一堂に会する全国広報担当者連絡会議を2回開催しました。第1回で得た広報ノウハウに基づく実践結果などを第2回で発表し合い、2018年度の広報活動へとつなげました。弁護士会を規模別に4ブロックに分け、マンパワーや予算などの実情を踏まえた意見交換も行いました。
日弁連は、今後も、弁護士会の意見に耳を傾け、弁護士会と連携して、より良い広報活動につなげていきます。


マスメディアとの交流

2017年度も、日弁連執行部と報道関係者との定期的な懇親会(通称「居酒屋日弁連」)を開催しました。民事司法改革、民法成年年齢引き下げ問題、裁判手続等のIT化をテーマに取り上げ、これらに詳しい会員をゲスト講師に迎えました。
多くの報道関係者の参加を得て、弁護士や日弁連・弁護士会の活動への理解を深めてもらう貴重な機会となりました。


日弁連広報キャラクター「ジャフバ」の活用新生「ジャフバ」は、今後、全国で活躍する予定

日弁連広報キャラクター「ジャフバ」の着ぐるみをリニューアルしました。新しい着ぐるみは、空気で膨らませる仕様を採用し、熱がこもりにくいものになりました。大変軽く、小さく畳んで収納・運搬ができます。出演するイベントに応じて、法被やボレロを着せることもできるようにしました。日弁連・弁護士会のイベントで活用していく予定です。
日弁連の「えがお推進部長」を拝命した「ジャフバ」は、今後SNSを通じた情報発信にもチャレンジしていきます。


「ひまわりお悩み110番」「ひまわり相談ネット」の広報(日弁連公設事務所・法律相談センター)

2017年度は、法律相談センターにおける相談件数の増加を目標に、①動画制作、②「ひまわり相談ネット」予約システムの改修を広報施策の中心に位置付けました。
動画は、市民に向けて、弁護士への相談に気付きを与えることをテーマにした実写とアニメで、3月1日から日弁連ウェブサイトで公開しています。
「ひまわり相談ネット」予約システムは、利用者が煩雑な手続から解放され、ストレスなく予約できるよう改修し、3月1日からリニューアルしました。


「ひまわりほっとダイヤル」の広報(日弁連中小企業法律支援センター)

より親しみやすくなるようチラシを全面改訂し、全国の中小企業関連団体や市区町村に送付したほか、引き続きYahoo!・Googleでのリスティング広告やFacebookを通じて広報を行いました。
また、日本政策金融公庫が提供するメールマガジンへの寄稿、イベントでのチラシ配布、中小企業庁や日弁連広報室と協力しての雑誌広告の掲載(前記)など、「ひまわりほっとダイヤル」の知名度と相談数の向上に向けた試みを実施しました。



ブックセンターベストセラー
(2018年1月・手帳は除く) 協力:弁護士会館ブックセンター

順位 書名 著者名・編者名 出版社名
1 裁判官!当職そこが知りたかったのです。
−民事訴訟がはかどる本−
岡口基一・中村真 著 学陽書房
2 有斐閣 判例六法 Professional 平成30年版 山下友信・中田裕康・宇賀克也・中里実・長谷部恭男 編集代表 有斐閣
3 家庭裁判所における遺産分割・遺留分の実務[第3版] 片岡 武・管野眞一 編著 日本加除出版
4 模範六法2018 平成30年版

判例六法編修委員会 編

三省堂

5

株式会社法[第7版]

江頭憲治郎 著 有斐閣
6 超早わかり・「標準算定表」だけでは導けない 婚姻費用・養育費等計算事例集(中・上級編)[新装版] 婚姻費用養育費問題研究会 編 婚姻費用養育費問題研究会
7 こんなところでつまずかない!不動産事件21のメソッド 東京弁護士会親和全期会 編著 第一法規
8 主文例からみた請求の趣旨 記載例集 弁護士法人佐野総合 編 日本加除出版

9

国会便覧 平成29年11月臨時版143版

シュハリ・イニシアティブ
10 講義 債権法改正 中田裕康・大村敦志・道垣内弘人・沖野眞已 著 商事法務


日本弁護士連合会 総合研修サイト

eラーニング人気講座ランキング(企業法務・渉外編)2017年11月〜2018年1月

サイトへ日弁連会員専用ページからアクセス

順位 講座名 時間
1

English for Lawyers 会話1 国際会議でのネットワーキング〜海外の弁護士とつながる〜

44分

2 よくわかる最新重要判例解説2017(商事) 117分

3

弁護士のための企業会計に関する連続講座 第1回 会計入門

100分

4

コーポレート・ガバナンスに関わる弁護士のための連続講座(基礎編)
第1回 弁護士のための社外役員の実務

122分

5 コーポレート・ガバナンスに関わる弁護士のための連続講座(基礎編)
第2回 会計・財務の基礎知識
136分
6

弁護士のための企業会計に関する連続講座 第2回 会計基準

90分

下請法研修会〜中小企業の総合的なサポートのために〜 83分
8 中小企業との業務における会社法〜相談で使う会社法・裁判で使う会社法 112分
コーポレート・ガバナンスに関わる弁護士のための連続講座(基礎編)
第3回 監査の基礎知識
95分
コーポレート・ガバナンスに関わる弁護士のための連続講座(中級編)
第1回 近時のコーポレート・ガバナンスと社外役員の役割
79分

お問い合わせ先 日弁連業務部業務第三課(TEL 03-3580-9927)