日弁連新聞 第527号

第14回国選弁護シンポジウム
もう待てない!逮捕段階からの全件弁護の実現を
11月17日 横浜市

2018年6月までに、勾留状が発付されたすべての被疑事件が国選弁護の対象となる。残された課題は、逮捕段階からの国費による弁護制度の実現である。初動弁護の重要性と各地の当番弁護士制度について検討し、あるべき逮捕段階からの公的弁護制度について議論した。シンポジウムには、580人の会員・市民が参加した。(共催:関東弁護士会連合会、神奈川県弁護士会)

 

第1部 早く行け!初動弁護のすすめ

逮捕段階における公的弁護制度を実現するためには、弁護実践を通じて、逮捕全件に弁護人が付される必要性があることを示さなければならない。
パネルディスカッションの様子捜査機関や裁判所に勾留の理由・必要性を問い直すべく、弁護士会が組織的に行っている取り組みが報告された。埼玉弁護士会では、弁護士会全体として勾留理由開示や勾留阻止・勾留延長阻止(準抗告)などの全件申し立てに取り組んだ結果、勾留請求却下率が飛躍的に上昇し、全国平均を大きく上回るに至った。この取り組みは各地に広がりを見せている。神奈川県弁護士会は、逮捕事案を認知した場合に委員会から当番弁護士を派遣する新たな制度を開始した。
個々の会員による弁護実践例も報告された。出動要請を受け、当日中に初回接見を行い、被疑者の誓約書、身元引受人の確保、検察官に対する意見書の提出などを行った結果、事後強盗事案や共犯事案でも勾留請求が却下されたとの報告があった。
さらに、取調べ可視化時代の弁護戦略として、黙秘権の重要性に立ち返り、黙秘を原則としつつ、その適切な解除を考える戦略も提言された。

 

第2部 逮捕段階の公的弁護制度の実現に向けた当番弁護士制度の在り方

逮捕段階からの国費による公的弁護制度の設計について、現在の当番弁護士制度に国費を投じる案、現在の被疑者国選弁護制度を逮捕段階からの制度に拡大する案という2つのモデル案が提示され、パネルディスカッション形式で議論・検討が行われた。
海外調査の結果として、イギリスでは連絡を受けて45分以内、ドイツでは概ね30分以内に初回の被疑者接見を行う運用がなされていると報告された。
最後に、逮捕段階の公的弁護制度実現に向けた当番弁護士の在り方として、①当番弁護士は、やむを得ない場合を除き、弁護士会に申し込みが到達した時から24時間以内に接見を行うこと、②当番弁護士は、自ら弁護人に選任されるように努め、弁護士会は、当番弁護士が弁護人に選任されないときは、迅速に他の弁護士が弁護人に選任される手続を整備することを提言した。



民事執行法の改正に関する中間試案に対する意見


法制審議会民事執行法部会は、2016年11月以降、①債務者財産の開示制度の実効性の向上、②不動産競売における暴力団員の買受けの防止の方策、③子の引渡しの強制執行に関する規律の明確化を中心に審議を重ね、本年9月8日の第11回会議で中間試案を取りまとめた。日弁連は、10月17日付けで中間試案に対する意見書を発表した。

 

意見書の概要

意見書の内容は多岐にわたるが、その概要は次のとおりである。
①については、現行の財産開示手続の申立てに必要な債務名義の種類の拡大に反対する。いわゆる第三者照会制度の新設自体には賛成するが、対象を金融機関の預貯金情報に限定するのではなく、私人に対しては株式、社債、投資信託受益権、保険契約等に関する情報を、公的機関に対しては給与債権(勤務先)、不動産登記の情報(名寄せ)に関する情報を求めることができる制度にするべきである。密行性優先の観点から、第三者照会手続に現行の財産開示手続の前置を必要とすべきではない。さらに、過酷執行を防止するため、給与債権等の取立権の発生時期の見直し、差押禁止債権の範囲変更の申立ての手続教示にとどまらず、給与等の債権の差押禁止範囲の見直しを実現するべきとした。
②については、従前、日弁連が法整備を求めてきた内容に沿うものであり、全体として賛成とした。
③については、中間試案には、国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律(ハーグ条約実施法)と同様の規律が掲げられた。しかし、執行の実効性強化、迅速性の確保および子の福祉の観点から、間接強制の前置を求めるべきではない。直接的強制執行が可能な場合を子と債務者が共にいる場合に限定するべきではなく、債務者の住居等以外での強制執行に制約を加えるべきではない。併せて、執行機関を執行裁判所とするべきである、子の所在調査のための制度を新設するべきであるなどとした。


今後の対応

今後は、法案化に向けて、議論がより具体的なものになっていくと思われる。日弁連としては、今後とも議論の推移を注視し、意見書に沿った法案となるよう対応を検討していく。

(法制審議会民事執行法部会バックアップ会議 副座長 鷹取信哉)

◇    ◇
*同部会での議論状況および資料等は法務省ウェブサイトで、日弁連意見書は日弁連ウェブサイトでそれぞれご覧いただけます。

 

 

法制審議会少年法・刑事法(少年年齢・犯罪者処遇関係)部会の議論状況について

本年3月から始まった標記部会への諮問事項は、「少年法における少年の年齢を18歳未満に引き下げることの是非」と「非行少年を含む犯罪者に対する処遇の充実」である。
既に本紙第521号(本年6月号)で紹介した第2回・第3回会議に続き、第4回会議(6月29日)では、家庭裁判所調査官のヒアリングが実施された。7月には、東京家庭裁判所・東京保護観察所・川越少年刑務所・多摩少年院・八王子少年鑑別所および更生保護施設紫翠苑への期日外視察を行っている。
第4回会議と第5回会議(7月27日)においては、第3回会議で事務当局から示された論点表(案)を基に、今後の議論の進め方について意見交換が行われ、部会で議論すべき論点が確認された。その論点は、①少年法における「少年」の年齢を18歳未満とすること、②起訴猶予等に伴う再犯防止措置の在り方、③少年鑑別所及び保護観察所の調査・調整機能の活用、④宣告猶予制度、⑤罰金の保護観察付き執行猶予の活用、⑥刑の全部の執行猶予制度の在り方、⑦保護観察・社会復帰支援施策の充実、⑧社会内処遇における新たな措置の導入、⑨自由刑の在り方、⑩若年受刑者に対する処遇原則の明確化、若年受刑者を対象とする処遇内容の充実、少年院受刑の対象範囲及び若年受刑者に対する処遇調査の充実、⑪施設内処遇と社会内処遇との連携の在り方、⑫社会内処遇に必要な期間の確保、⑬若年者に対する新たな処分である。
検討すべき論点が多岐にわたることなどから、①を除く主に「非行少年を含む犯罪者に対する処遇の充実」に関する12の論点について、3つの分科会で分担し、論点整理を行うことが決定された。各分科会会議は、9月・10月・11月と既に3回開催され、12月には第6回部会会議で各分科会の議論状況が報告される予定である。
各分科会の議論状況を見ると、注目すべき論点の一つは、「起訴猶予等に伴う再犯防止措置の在り方」である。複数の委員・幹事から、検察官の「条件付き起訴猶予」制度の導入が提案されている。これは、例えば検察官が起訴猶予とする際に遵守事項に類するもの(福祉的支援を受けることなど)を課し、それに従わなかった場合には再起する(不起訴処分等に付した事件について、再び捜査に着手する)ことができるとするものであり、さまざまな問題が懸念される。
不適切な制度が導入されないよう、バックアップ会議では今後も注視・対応し、会員に対する適時の情報提供に努めていきたい。


(法制審議会少年法・刑事法(少年年齢・犯罪者処遇関係)部会バックアップ会議 事務局長 水野英樹)

◇    ◇
*同部会の議論状況および資料等は、法務省ウェブサイトでご覧いただけます。

 


生活保護世帯における貧困の連鎖解消に向けて

日弁連は、10月18日付けで「生活保護世帯の子どもの大学等進学を認めるとともに、子どものいる世帯の生活保護基準を引き下げないよう求める意見書」(以下「意見書」)を取りまとめ、23日付けで厚生労働省に提出した。


現在、国は、生活保護世帯の子どもは高校を卒業すれば就労すべきとの考え方から、生活保護世帯の子どもが生活保護を受けながら大学等に進学することを認めない運用をしている。そのため、生活保護世帯の子どもが大学等に進学すると、「世帯分離」の扱いを受け、当該子どもの分の生活扶助費が支給されなくなり、住宅扶助費も減額される。その結果、生活保護世帯の子どもは、大学等に進学することが困難になる。 2016年度の生活保護世帯の子どもの大学等進学率は、一般世帯の73.2%に対して、33.1%にとどまっており、大学を卒業したか否かで生涯賃金にも大きな差が生じ得る日本において、このような国の運用は、貧困の連鎖の一因となっている。 意見書では、貧困の連鎖解消に向けて、生活保護世帯の子どもが大学等に進学することを認め、「世帯分離」の運用をやめて当該子どもの分の生活保護費を支給すること、大学等に就学しながら生活保護を受ける子どものアルバイトや奨学金等の収入のうち、大学等の就学に必要な費用については収入認定しないことを求めている。さらに、子どものいる世帯の生活保護基準をこれ以上引き下げないことを求めている。 意見書は、前述の問題点を指摘し、貧困の連鎖を解消して生活保護世帯の子どもたちが一般世帯の子どもと比べて特段の制約を受けずに育つことができるようにするために取りまとめたものである。 国は、来年度から、生活保護世帯の子どもの大学等進学を支援するための何らかの対策をするとみられるが、その具体的な内容はいまだ決まっていない。


(貧困問題対策本部 幹事 河邉優子)

◇    ◇
*意見書は日弁連ウェブサイトでご覧いただけます。

 

 

 

日弁連短信

個人通報制度をご存じですか?

事務次長 五十嵐康之個人通報制度をご存じですか?人権分野における日弁連の重点課題の一つですが、意外に知られていないのではないかと思います。

個人通報制度は、簡単に言うと、具体的な事件において人権を侵害されたと主張する者が国連の各人権条約機関に審査を求めることができる制度で、国連の各人権条約本体やその選択議定書に規定されています。各国が人権条約を批准するだけでは人権保障を十全に果たすことはできないという認識のもと、国際社会の相互監視により批准各国における人権保障について実効性を持たせようという発想から生まれたと言われています。審査は各人権条約機関が行いますが、その勧告に拘束力はありません。

日本は自由権規約、子どもの権利条約、女性差別撤廃条約、障害者権利条約など多くの人権条約を批准していますが、その個人通報制度については全く批准・導入していません。

G7のうち個人通報制度を全く導入していないのは日本だけ(アメリカは各人権条約の個人通報制度こそ導入していませんが、類似の制度である米州機構の個人請願制度を導入しています。)であり、OECD35か国のうちでも個人通報制度を全く導入していないのは日本とイスラエルだけです。

そのため、日本は、各人権条約機関から個人通報制度を導入するよう再三勧告を受けています。

現在、人権条約機関には日本人の委員が合計5人(うち日弁連会員は2人です。)就任しています。

このような状況下で個人通報制度を一切導入しないことが、日本にとって本当に良いことなのでしょうか。

人権条約機関の見解が全て正しいとは言えないかもしれません。それでも、それらを日本の人権状況を見つめ直す一つのきっかけとして受け止め、検討した上で、採用すべきものは採用するという姿勢があっても良いように思います。

日弁連では、2007年に自由権規約個人通報制度等実現委員会を設置し、個人通報制度の実現に取り組んでいます。

今は地道に理解者を増やしている最中です。ゴールはまだ見えてきていませんが、一歩一歩前進しています。


(事務次長 五十嵐康之)

 

 

会員向け研修
刑法の一部改正(性犯罪)を踏まえた弁護活動に関する研修
11月1日 弁護士会館

性犯罪に関する刑法の一部を改正する法律が本年7月13日に施行された。今回の改正は、実務に大きな影響を与える重大なものであることから、立法趣旨・保護法益の理解・構成要件の解釈・非親告罪化に関する経過措置など、実体法と訴訟法の両面にわたる理解を深め、適切な弁護活動をなし得るよう、研修を行った。


日弁連刑事弁護センターの宮田桂子副委員長(第一東京)からは、今般の刑法改正について、①「強姦罪」から「強制性交等罪」への名称変更、②「監護者わいせつ罪」および「監護者性交等罪」の新設、③性犯罪の非親告罪化等を中心に、改正の要点について説明があった。

本庄武教授(一橋大学大学院法学研究科)は、宮田副委員長とともに、改正の経緯や比較法的考察を踏まえ、刑事弁護活動への影響についての意見を述べた。

具体的には、「強制性交等罪の法定刑の下限が5年に引き上げられたのは、原則実刑であることを社会に示すこと、強盗罪等の法定刑とのバランスを考慮したことによる。他罪との比較からしても、酌量減軽を特別なものと考えるべきではなく、宣告刑の重罰化を回避する方向で考えるべきである」

「監護者性交等罪については、2016年9月15日付け日弁連意見書が指摘するとおり処罰範囲の不明確化が問題である。立案担当者は『監護者』の概念に絞りをかけたと考えているようであるが、外延が明確ではなく、いったん監護者と認められれば、容易に同罪の成立が認められてしまう。『影響力があること』の文言を厳格に解釈することが重要なのではないか」

「性犯罪は、世界的に重罰化の傾向にあるとはいえ、性犯罪者を特殊な人間などと捉えるべきではなく、その生育歴等を検討し、粘り強く更生の可能性を訴えていくべきである」

「立案担当者によれば、非親告罪となっても、被害者の意思に反してまで起訴はしないという。示談の重要性に従前と異なるところはなく、被害者には誠意を持って接していくことがこれまでにも増して重要である」など、弁護活動の観点から印象に残る意見が述べられた。


(日弁連刑事弁護センター 副委員長 横井弘明)

 


会務等で必要になったベビーシッターの費用・延長保育料等を補助します

会員の研修や会務活動と家庭の両立を支援するため、会員が研修、委員会活動等の会務のために必要になったベビーシッター等の費用を補助します。

補助の金額は、1回当たり5000円が上限で、一年度につき、就学前のお子さん一人当たり1万5000円が上限です。対象となる研修や会務は、日弁連のものだけでなく、弁護士会連合会や弁護士会のものも含みます。 「登録及び補助金支給申請書」にご記入の上、①領収書の原本、②親子関係を証するもの、③会務活動を行ったことを証するものを添えて、日弁連業務第一課宛てに郵送してください。


 詳しくは…

日弁連ウェブサイト内会員専用ページ  

HOME>>届出・手続>>ベビーシッター費用・延長保育料等の補助 (https://www.nichibenren.jp/opencms/opencms/todokede_tetsuzuki/babysitter_enchohoiku/index.html)をご覧ください。
「登録及び補助金支給申請書」も掲載しています。



シンポジウム
性暴力の根絶を目指して
刑法改正後の課題
 11月7日 弁護士会館

刑法の性暴力犯罪規定が110年ぶりに改正され、本年7月13日に施行された。しかし、施行後もなお、性暴力犯罪における暴行・脅迫要件や時効の在り方、適切な性交同意年齢などの積み残された課題が指摘されている。
本シンポジウムでは、刑法学研究者、性暴力被害の当事者および法改正に携わった実務家、それぞれの視点から、改正法の問題点と今後の取り組みについて議論を行った。


冒頭、島岡まな教授(大阪大学大学院高等司法研究科)が、改正法の問題点を明らかにした。改正法は、欧米諸国の性犯罪規定と比較して、強制性交等の構成要件に該当する行為が限定されている点、地位関係性を利用した強制性交等罪の主体が監護者に限定されている点などにおいて、犯罪の成立範囲が限定されていると指摘した。
本来、同意のない性交等はすべて性暴力であり、暴行・脅迫要件が緩和されなかった点は大きな問題であると強調した。本改正はジェンダー平等や弱者保護の観点から不十分であり、3年後の見直しは必須であると訴えた。
山本潤氏(一般社団法人Spring代表理事)は、性暴力被害者と性暴力被害者支援者の立場から、性暴力による被害の深刻さを訴えた。本改正は性暴力の実態に即しておらず、3年後の見直しを実現するための取り組みを進めると力を込めて語った。
パネルディスカッションでは、島岡教授、山本氏のほか、法制審議会刑事法(性犯罪関係)部会で委員を務めた角田由紀子会員(第二東京)が加わり、改正法における暴行・脅迫要件や性交等に対する同意をどのように考えるかなどを議論した。性交等に対する同意については、同意の有無を判断するための方法や適切な判断のために必要な経験則にも議論が及んだ。

 


国際知財司法シンポジウム2017
  10月30日〜11月1日 弁護士会館

日弁連、最高裁判所、知的財産高等裁判所(以下「知財高裁」)、法務省、特許庁および弁護士知財ネットの主催により、国際知財司法シンポジウム2017が開催され、約20の国・地域から、3日間で延べ約1300人が参加した。

 

1日目は、特許侵害訴訟における証拠収集手続をテーマとして、4か国の模擬裁判が行われた。日本の模擬裁判では、清水節知財高裁所長を裁判長とする合議体で、日弁連知的財産センターの村田真一事務局長(第二東京)と平野惠稔国際PT座長(大阪)とが原告・被告に分かれ、主張を闘わせた。中国、韓国、シンガポールの模擬裁判も、各国から裁判官と弁護士を招聘して、本番さながらに行われた。4か国の模擬裁判の比較を通じて、制度の違いはもちろんのこと、証人の採否など、実務運用の違いも浮き彫りにされた。


パネルディスカッションに出席した裁判官

2日目は、法務省の主導によりASEAN各国から招聘した裁判官をパネリストとして、商標権侵害をテーマとしたパネルディスカッションが行われた。城山康文委員長(第一東京)が、カンボジア、ラオス、ミャンマー、タイおよびベトナムからなるパネルディスカッションのモデレータを、相良由里子委員(第二東京)が、ブルネイ、インドネシア、マレーシアおよびフィリピンからなるパネルディスカッションのモデレータをそれぞれ務めた。商標の類否判断が、国によって大きく異なったことが印象的であった。2日目のプログラム終了後には、弁護士知財ネットの主催により、盛大なレセプションが開催され、親睦が深められた。


3日目は、特許庁の主導により、アジアにおけるビジネスと知財紛争をテーマとした講演などが行われ、弁護士知財ネットの林いづみ事務局長(東京)による質疑が行われた。
最後に、中本会長らが閉会の挨拶に立ち、シンポジウムの大成功を祝した。


(日弁連知的財産センター委員長 城山康文)



シンポジウム
技能実習制度の問題点とあるべき外国人労働者受入れ制度
韓国雇用許可制の調査を踏まえて
 10月30日 弁護士会館

本年11月1日、外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(以下「法」)が施行されたが、技能実習制度が内包するさまざまな構造的問題はなお残されたままである。技能実習制度の問題点を再確認し、これに代わる、あるべき外国人労働者受入れ制度を検討するため、シンポジウムを開催した。


人権擁護委員会外国人労働者受入れ問題PTの髙井信也委員(第一東京)は、技能実習制度が発展途上国への技術移転による国際貢献という目的から乖離し、安価な労働力の供給源として利用されている実態を指摘し、技能実習生に職場移転の自由がないことや送り出し機関等による中間搾取がなされていることなどの諸問題を概説した。
栄敏彦氏(ものづくり産業労働組合JAM組織グループ長)は、労働相談の現場から、月1〜2日程度の休みで連日の長時間勤務を強いられる、時給300円の給与しか支給されないなど、技能実習生が直面している深刻な状況を伝えた。
平井辰也氏(EPA看護師介護福祉士ネットワーク代表)は、今回の法施行で技能実習生の受入れが認められた介護分野では日本語能力が不可欠であり、法が介護技能実習生に求める日本語能力では、介護の質が確保されないおそれがあると述べた。
呉学殊氏(独立行政法人労働政策研究・研修機構研究員)は、2004年に韓国が導入した雇用許可制について報告した。現在、韓国では、この制度の下、国内の労働力不足がほぼ解消され、外国人の人権侵害も相当程度解消されたと指摘した。
大坂恭子特別委嘱委員(愛知県)は、同PTが本年3月に韓国で実施した雇用許可制に関する現地調査について報告し、韓国が送り出し国と二国間協定を締結して中間搾取を排除していることなどを紹介した。



全国冤罪事件弁護団連絡協議会 第26回交流会
防犯カメラと冤罪
監視社会化を考える
11月7日 弁護士会館

防犯カメラを含む監視カメラの映像は、証拠の客観化といった観点から有用であるが、信用性を過大に評価される危険性をはらむ。監視カメラ映像の両側面とどのように向き合うべきかについて、具体的な事件や研究成果を踏まえ検討した。

 

事件報告

大阪の事件について話す辰巳会員広島銀行窃盗誤認事件で被告人とされた方は、カメラの映像は科学的な分析・解析と公正中立な検証がなされることが大前提であり、映像の一部のみでは、捜査機関側に都合のよいストーリーの補完に利用されかねないと訴えた。弁護人を務めた久保豊年会員(広島)は、同じ映像でも他の証拠との結び付け方により有罪にも無罪にもなり得る怖さがあると述べ、映像の利用方法についての注意を促した。
大阪コンビニ窃盗誤認事件で被告人とされた方は、人間が映像を管理する以上ヒューマンエラーが発生する可能性があり、映像管理者のレベルが映像の存否や信用性を左右しかねないと語った。
八王子傷害誤認事件で弁護人を務めた牛田喬允会員(第二東京)は、防犯カメラの映像から犯人と疑われるも、ドライブレコーダーの映像により公訴棄却となった経緯を説明し、映像の良い面も悪い面も表れた事案であったと報告した。被告人とされた方は、映像の影響で気持ちが大きく左右された様を説明した。


研究者報告

指宿信教授(成城大学法学部)は、「監視を“監視”せよ!:監視カメラとその規制手法をめぐって」と題し報告を行った。匿名性や表現の自由等を脅かす恐れのある監視を“監視”する必要があると指摘し、その方法として、許容要件を条例やガイドラインで明確化したり、強力な罰則を設けてコントロールしたりするなどのアプローチを挙げた。


質疑応答

指宿教授は、証拠の保管に関して、一部重大犯罪の公訴時効が撤廃される中、誰がどのように保管するか等の定めがないことは問題であると述べた。大阪コンビニ窃盗誤認事件の弁護人を務めた辰巳創史会員(大阪)は、映像中の犯人と被告人との同一性を検証する際には、映像と同じ状況下の被告人の写真等を用いるべきであると語った。

 


成年後見制度利用促進基本計画に関する連続学習会(第3回)
成年後見制度と意思決定支援
 11月6日 弁護士会館

本年3月24日に成年後見制度利用促進基本計画が閣議決定されたことを受け、日弁連はこれまで2回の学習会を開催した。第3回目は、基本計画にも掲げられた成年後見制度における意思決定支援をテーマとした。


基調報告1

日弁連高齢者・障害者権利支援センターの水島俊彦委員(青森県)が、「意思決定支援をめぐる日本と海外の動向〜成年後見制度利用促進基本計画・意思決定支援ガイドラインを読み解く〜」と題して報告を行った。イギリスの動向を報告し、これからの成年後見人には、被後見人が意思決定するための支援を行い、被後見人の判断を尊重することが求められると訴えた。


基調報告2

児玉洋子会員(第二東京)は、「障害者権利条約が英国意思決定能力法(MCA)に与える影響について」と題し報告した。2005年にウェールズで制定された意思決定能力法では、意思決定支援の具体的な方法が明記されていなかったが、2006年の障害者権利条約の採択を受けて制定された北アイルランドの意思決定能力法では、被支援者が意思決定を行いやすい時間や環境を求めるなどの意思決定支援の手順が明確化されたと指摘し、障害者権利条約の影響力を評価した。


基調報告3

名川勝講師(筑波大学人間系障害科学域/NPO法人PACガーディアンズ理事長)が、「意思決定支援と成年後見人の関わり―意思と選好などを中心に―」と題して報告を行った。支援者の立場から、被支援者の意思や選好は常に同じではなく、被支援者の情報を集め続けることが重要であると指摘した。


パネルディスカッション

名川講師は、民法を改正して意思決定支援に関する規定を設けることを求め、被支援者の意思の尊重を訴えた。水島委員は、意思決定支援について報告を求められるイギリスの法定後見事務報告書の様式を示し、まずは家裁への報告書に同様の記載をすることにより意思決定支援を意識すべきと述べた。



JFBA PRESS -ジャフバプレス- Vol.128

研修の達人に訊く

日弁連総合研修サイトでは、320以上のeラーニング研修を無料で公開しており、多くの会員の皆様にご利用いただいています。また、日弁連新聞において、毎月、数ある講座の中から人気講座ランキングを掲載するなど、その広報にも努めています。
日弁連総合研修センターでは、eラーニングなど日弁連が提供する研修を有効活用されている会員を招いて座談会を開催し、研修の効果的な利用方法などについてお話を伺いました。
本稿では、座談会で伺った貴重なお話の一部を紹介します。


「研修の達人」たち

今回、座談会にご協力いただいたのは、河邊伸泰会員(愛知県・44期)、金昌宏会員(旭川・50期)、東忠宏会員(仙台・56期)の3人です。いずれも、数多くの研修を受講されている「研修の達人」ともいうべき方々です。


書籍よりeラーニング?

達人から、書籍とeラーニングなどの研修との違いや使い分けについて聞きました。
「書籍を通読するには、非常に時間を要するとともに知識を体系的に整理する作業が必要となる。研修であれば、弁護士実務に長けた講師が体系的に整理した実務的な知識を、短時間で習得することができる」 「研修では、実務の最前線にいる講師から、書籍には書けない具体的なノウハウや実務家の本音を聴くことができる」「書籍では最新の動向が分からない場合もあるが、研修では、日弁連の担当委員会等でホットな話題になっているテーマ(法改正の動向等)について、実務の最新の状況を知ることができる」などの意見がありました。
eラーニングには、書籍とは違った魅力があるようです。


研修が役立ちました

達人からは、「全く新しい分野の仕事を始めるとき、標準的な知識・能力を身に付けることができた」「すでに一定の知識があっても、より深い理解を得ることができた」「地方にいながらにして立法過程に携わった方の熱い思いを間近に感じることができた」などの話がありました。
また、研修が業務に役立った具体例について、「特商法・割販法改正の審議経過や立法趣旨を知ったことで、画期的な最高裁判決を獲得できた」「公害調停制度を知り、受任事件の方針を変更した」「弁護士会照会の申出書の書き方などを大きく変更した」「初めて労働審判を受任した際、事前に必要な知識を一通り習得した上で事件を処理することができた」「一度は断念していた債権回収を再び進めることができた」など、多くの経験談を聞くことができました。


いつでもどこでも何度でも

達人は、時間を有効に活用しているようです。
「達人」はテレビ会議で座談会に出席した 「通勤電車の中でeラーニングを視聴する」「スポーツクラブでストレッチをしながら視聴する」「釣りをしながら講義を聴く」などの話がありました。スマートフォンやタブレットを活用して、すきま時間やながら時間を研修の受講に充てているとのことです。
このような雑多な時間では講義に集中できないのではとの懸念もありますが、講義を聴き流すだけでも、再度受講すべき研修かどうかの見極めができるとの意見もありました。
事務所でeラーニングを視聴する達人は、研修を受講する曜日と時間帯を事前に定めてスケジュールに組み込んだり、事務所の電話が鳴らない夕方以降の時間帯に受講したりするなど、さまざまな工夫を凝らしているとのことでした。
視聴していない講座であっても、講義のレジュメをダウンロードして業務の手引きに使用しているとの話もありました。
研修を受講する時間の確保に悩んでいる会員の皆さまの参考になるのではないかと思います。


まだまだ聞きたい達人の話

この座談会では、白熱した意見交換や有意義な報告が行われました。2018年1月号の「自由と正義」で、座談会の様子をより詳細に報告します。
本稿で紹介したものに加え、達人による研修情報の入手方法やお勧めの研修講座など、役に立つ情報を多数紹介する予定です。
ご期待ください!

(研修・業務支援室)




日弁連委員会めぐり93

GPS捜査に関する立法対応ワーキンググループ


今回の委員会めぐりは、GPS捜査に関する立法対応ワーキンググループ(以下「WG」)です。
本年3月15日、最高裁は、令状を取得することなく行われたGPS移動追跡装置を利用した捜査(以下「GPS捜査」)を違法と判断し、立法的な措置が講じられることが望ましいとしました(以下「最高裁判決」)。
WGの活動内容等について、和田光弘座長(新潟県)と髙山巌副座長(大阪)からお話を伺いました。

(広報室嘱託 神田友輔)


WG設置の経緯

近年、刑事裁判手続の中でGPS捜査の違法性が争われる事例が相次ぎ、警察庁の運用要領の概要が明らかになってきました。日弁連は、本年1月19日、「GPS移動追跡装置を用いた位置情報探索捜査に関する意見書」を発表し、GPS捜査を直ちに中止するよう求めました。3月に最高裁判決が出されたことから、今後、関係機関により進められる立法作業を念頭に、日弁連の意見を取りまとめるための検討を行うことになり、WGが設置されました。


最高裁判決の評価

捜査手法に関する論点であるにもかかわらず、検察官出身の裁判官を含む15人の全員一致でなされた画期的な判決であると評価できます。憲法35条の解釈を示し、保護の対象に私的領域への侵入をされない権利が含まれると判断したことも注目すべきです。この「私的領域」の範囲が明確には示されませんでしたので、今後は争点になると考えられます。


WGの活動内容

当初は、最高裁判決のあった事件において主任弁護人を務めた亀石倫子会員(大阪)、成城大学の指宿信教授や龍谷大学の斎藤司教授などを招いて勉強会を開催し、委員の間で問題意識などの共有を図りました。
現在は、GPS情報データの範囲、対象犯罪の絞り込み、手続規制、事後規制などの論点について整理を行っているところです。立法作業の動きに即座に対応できるように準備を進めています。


和田座長(左)と髙山副座長

会員へのメッセージ

GPS捜査は犯罪事実を直接立証するものではないことが多いため、GPS捜査で得られた証拠そのものが公判で取調べ請求されるケースは限られています。被告人や弁護人が気付かなければ、問題とならなかった可能性が高いです。
GPS捜査以外でも捜査の方法・手続などに問題のある事件は多くあるはずです。ぜひ「問題はないだろうか」との意識を持って刑事弁護に取り組んでいただきたいと思います。
WGでは、GPS捜査実施事例の情報を集めています。会員の皆さま、ぜひご協力ください。





ブックセンターベストセラー
(2017年9月・手帳は除く) 協力:弁護士会館ブックセンター

順位 書名 著者名・編者名 出版社名
1 超早わかり・「標準算定表」だけでは導けない 婚姻費用・養育費等計算事例集(中・上級編)[新装版] 婚姻費用養育費問題研究会 編 婚姻費用養育費問題研究会
2 実務解説 改正債権法 日本弁護士連合会 編 弘文堂
3 類型別 労働関係訴訟の実務 佐々木宗啓 他 編著 青林書院
4 民法(債権関係)改正法の概要

潮見佳男 著

きんざい
5

養育費・婚姻費用の新算定表マニュアル 

−具体事例と活用方法−

日本弁護士連合会両性の平等に関する委員会 編 日本加除出版
6 携帯実務六法2017年度版 「携帯実務六法」編集プロジェクトチーム 編 東京都弁護士協同組合
7 平成28年改正 知的財産権法文集 平成29年5月30日施行版 発明推進協会 編 発明推進協会
8 Before/After 民法改正 潮見佳男 他 編著 弘文堂
9

交通賠償実務の最前線 −公益財団法人日弁連交通事故相談センター設立50周年記念出版−

公益財団法人日弁連交通事故相談センター 編 ぎょうせい
10 デリバティブ(金融派生商品)の仕組み及び関係訴訟の諸問題 司法研修所 編 法曹会


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ライブ実務研修人気講座ランキング 2017年5月~10月

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順位 講座名
1

マンション管理に関する諸問題 ~区分所有法の概要と実務

2 養育費・婚姻費用の算定方式・算定表の仕組みと諸事情がある場合の対応
3

民事信託アドバンス研修-民事信託の実務

4

よくわかる最新重要判例解説2017(労働)

5 民事信託に関する具体例と課税上の諸問題
6

知的財産に関する研修会2017

7 生活困窮者に対する法的支援~関係諸機関との連携のポイント~
8 よくわかる最新重要判例解説2017(刑事)
9 海外贈収賄問題に関する法律実務-日弁連「海外贈賄防止ガイダンス(手引)」の活用方法を中心に
10 ハーグ条約実施法及び実務の解説(2017・実践編)

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