日弁連新聞 第526号

第60回人権擁護大会開催
10月5日・6日 大津市

10月6日、大津市において、第60回人権擁護大会を開催した。1300人近い会員が参加し、「犯罪被害者の誰もが等しく充実した支援を受けられる社会の実現を目指す決議」、「個人が尊重される民主主義社会の実現のため、プライバシー権及び知る権利の保障の充実と情報公開の促進を求める決議」、「生物多様性の保全と持続可能な自律した地域社会の実現を求める決議」および「ハンセン病隔離法廷における司法の責任に関する決議」を採択した。
大会前日の5日には、決議に関連して3つのシンポジウムを開催し、計1861人の市民・会員の参加を得た。次回大会は、青森県で開催される。(2面に各シンポジウムの記事)

 

 

1300人近い会員が参加し、4つの決議を採択した 犯罪被害者の誰もが等しく充実した支援を受けられる社会の実現を目指す決議

犯罪被害者支援施策の充実のため、国・地方公共団体に対し、①損害回復の実効性を確保するための必要な措置、②犯罪被害者等補償法の制定、③公費による被害者支援弁護士制度の創設、④性犯罪・性暴力被害者のための病院拠点型ワンストップ支援センターの設立と財政支援、⑤犯罪被害者支援条例の制定を求めることを決議した。
また、日弁連としても、犯罪被害者の誰もが等しく充実した支援を受けられる社会を実現するために全力を尽くすとした。

 


個人が尊重される民主主義社会の実現のため、プライバシー権及び知る権利の保障の充実と情報公開の促進を求める決議

超監視社会におけるプライバシー権保障の充実のため、①公権力によるインターネット上のデータの網羅的な情報監視の禁止、②監視カメラ映像やGPS位置情報などの取得、利用に関する法規制、③通信傍受の制限等、④いわゆる共謀罪の規定の削除、⑤情報機関の監視権限とその行使の制限等、⑥マイナンバー制度が市民監視に利用されないための対応を行うことを提言した。また、市民の知る権利の保障を充実させるため、①情報自由基本法(仮称)の制定、②情報公開法等の改正、③行政機関が保有する電子データの長期保存および監視のための独立性の強い第三者機関の創設、④秘密保護法の廃止を含む抜本的見直し、⑤内部告発者の保護の強化と公益通報制度の周知、⑥メディアによる権力監視を一層強化するための仕組みの構築について提言した。
同時に、日弁連がこれらの提言を実現するため全力を尽くすことを決議した。



生物多様性の保全と持続可能な自律した地域社会の実現を求める決議

生物多様性の保全と持続可能な自律した地域社会の実現のため、国・地方公共団体に対し、①諸法令に生物多様性配慮義務規定を設け、生物多様性基本法の改正によりミティゲーション制度を導入する立法措置、②地域の生物多様性に関する保全管理計画の策定、農林業者等への経済的支援、再生可能エネルギー拡大のための施策の推進、③オーフス条約に早期に加入した上での情報公開制度の整備、市民参加の権利としての保障、市民の司法アクセスの拡充を求めることを決議した。

 


ハンセン病隔離法廷における司法の責任に関する決議

ハンセン病隔離法廷の違憲性を指摘できなかったこと等について改めて深く反省・謝罪するとともに、ハンセン病患者らが安心して社会で暮らせるよう全力を尽くし、同じ過ちを繰り返さないよう人権擁護活動に尽力することを決議した。
また、隔離法廷に関与した国の関係機関に対し、隔離法廷の違憲性やハンセン病患者らの名誉回復に関する検討、歴史資料館の設置、関係資料の永久保存と公開等を求め、再発防止策等の検討のための協働を提案することを決議した。

 


事業活動報告と特別講演

核兵器禁止条約の実現に向けた取り組み、いわゆる大崎事件の第三次再審請求支援など、2016年度下期から2017年度上期までの日弁連の活動について報告した。
また、石川健治教授(東京大学大学院法学政治学研究科)が、「憲法問題について」と題し特別講演を行った。

 

 

FATF第4次対日相互審査対応に関する全国担当者会議
9月25日 弁護士会館

FATF(Financial Action Task Force)の第4次対日相互審査(以下「第4次審査」)が2019年に予定されている。この審査で日弁連および弁護士会によるマネー・ローンダリング対策や会員の監督体制等が不十分と判断された場合には、FATFから監督体制の強化のみならず、弁護士の職の根幹を侵し、弁護士自治に影響する提言がなされる可能性もあり得る。
そこで、日弁連および弁護士会の課題を改めて共有し、克服するため、全国担当者会議を開催した。


まず、司法調査室の十時麻衣子嘱託(第二東京)が、FATFが職業的専門家をマネー・ローンダリング監視のための門番役(=ゲートキーパー)と位置付け、疑わしい取引の報告義務を課すべきと勧告していること、報告義務が法制化されれば、依頼者は真に重要な情報を弁護士に伝えなくなり、職業としての弁護士制度が崩壊しかねないことを解説した。また、第4次審査では、①依頼者の本人特定事項の確認及び記録保存等に関する規程および同規則(以下「規程等」)の履行状況、②規程等の履行に関する日弁連および弁護士会の監督体制が主な審査対象とされ、これらが不十分であると評価された場合、報告義務の法制化につながりかねないと指摘した。
片山達嘱託(第二東京)は、カナダでは、弁護士会が会員に本人確認等の履行状況に関する年次報告書の提出を義務付け、履行が不十分な会員に対するフォローや立入検査等まで行っているにもかかわらず、審査で厳しい評価が下されたこと、台湾やシンガポールでは、審査でのマイナス評価を回避するために、疑わしい取引の報告義務が新たに課されたことを報告した。
伊東卓副会長は、第4次審査に備え、全会員に年次報告書の提出を義務付けるため、本年12月の臨時総会で規程等を改正する準備を進めていることや規程等改正案の概要について説明し、改めて弁護士会の協力を求めた。



ベビーシッター費用等の補助制度が始まりました!

 

11月1日から、会員の会務や研修(以下「会務等」)と家庭との両立を支援する目的で、会員が会務等のために必要になったベビーシッター等の費用または延長保育料を補助する制度がパイロット事業としてスタートしました(2019年3月31日まで)。

 

対象となる会務等

対象となる会務等は、日弁連のものだけでなく、弁護士会連合会や弁護士会のものも含まれます。会務には、委員会活動だけでなく、総会や常議員会、人権擁護大会、シンポジウム等も含まれます。また、研修は、必修の新人研修や倫理研修だけでなく、任意参加の研修も対象となります。


補助の内容

補助の金額は、1回当たり5000円が上限です。1年度につき、就学前のお子さん1人当たり1万5000円を上限とします。
利用するベビーシッター業者や利用場所、利用時間等に制限はありません。自治体等で行っているファミリーサポート事業や一時託児施設等の利用も含みます。また、保育園の延長保育料も補助の対象です。


申請方法

補助を受けるためには、対象となる会務等から3か月以内に、弁護士会経由ではなく、日弁連に直接申請することが必要です。
申請の際には、「登録及び補助金支給申請書」に領収書の原本、会務活動等を行ったことを証するものおよび親子関係等を証するものを添付する必要があります。ただし、すでに日弁連の育児期間中の会費免除制度を利用している方や2回目以降の申請については、親子関係等を証するものは必要ありません。

(若手弁護士サポートセンター 事務局次長 杉村亜紀子)

◇               ◇


*「登録及び補助金支給申請書」やFAQは、会員専用ページ(HOME≫届出・手続≫ベビーシッター費用・延長保育料等の補助)でご覧いただけます。

 

人権擁護大会シンポジウム
  10月6日 大津市

 


第1分科会

 

あらためて問う「犯罪被害者の権利」とは
〜誰もが等しく充実した支援を受けられる社会へ〜
日弁連は、2003年の人権擁護大会(松山市)で「犯罪被害者の権利の確立とその総合的支援を求める決議」を採択した。その後、犯罪被害者支援については、犯罪被害者等基本法が制定されるなど一定の進展があったものの、近年では停滞しているとの指摘もある。
本分科会では、犯罪被害者支援の課題やあるべき姿について改めて議論した。

 

基調報告

第1分科会実行委員会の天野康代委員(神奈川県)が、犯罪被害者支援に関する法整備や支援施策の歩みを説明した。また、被害者および被害者遺族のインタビューを交え、犯罪被害者に対する経済的支援が不十分であるなどの現状や残された課題などを明らかにした。


犯罪被害者等支援条例

吉沢徹委員(岡山)らは研究報告の中で、全国の犯罪被害者等支援条例の制定状況と先進的な取り組みを行っている自治体の条例の制定例を紹介した。その上で、日弁連のモデル条例案を示し、全国の自治体で被害者支援条例を制定する必要性を訴えた。


犯罪被害者の支援について議論されたワンストップ支援センター

前半では、世良洋子委員(福岡県)らが、性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターについて、緊急医療や証拠採取の必要性から病院拠点型が望ましいが、拠点病院の負担が大きく実現に至っていないこと、支援内容にばらつきがあること、支援員の確保が困難であることなどの問題点を指摘した。
後半の支援員による討論では、支援員の負担が過大となっていること、人的・物的不足に悩まされていること等の現場の声が伝えられた。




北欧の犯罪被害者支援制度

齋藤実委員(東京/獨協大学法学部特任教授)が、ノルウェー、スウェーデンの犯罪被害者支援制度について調査報告を行い、日本における犯罪被害者庁の設置、地域格差のない支援の実現可能性を示唆した。


パネルディスカッション

番敦子副委員長(第二東京)は、殺人等の重大事件で債務名義等を得た犯罪被害者の約60%が賠償金の支払いを全く受けていないとの調査結果を示し、加害者の資産を把握するための何らかの手当てが必要であると強調した。
河原理子氏(朝日新聞記者)は、犯罪被害者庁を設置するためには、弁護士会が主導して議論を深め、市民に訴えかけることも必要であると説いた。

 


 

第2分科会

 

情報は誰のもの?
〜監視社会と情報公開を考える〜
2013年、米国が世界中のインターネット等の通信を収集・分析していたことをエドワード・スノーデン氏が内部告発した。日本でも、大垣警察市民監視事件など、公権力による監視が強化されつつある。他方、特定秘密の保護に関する法律の施行により、報道の萎縮が懸念される中、公権力による情報隠しを危惧する声もある。
本分科会では、「情報は市民のものである」との視点から、公権力による日常的な監視と情報隠しの現状を把握し、歯止めをかけるための方策を検討した。

 

基調報告

田村智明会員(青森県)らは、顔認証システムと結合した監視カメラによる監視の現状等を説明し、プライバシーが危機的状況に陥っていると報告した。また、近時の公文書開示等の問題を例に挙げ、公的情報の公開が後退すると、公権力に対する監視が不十分となり、知る権利のみならず国民主権までもが危機にさらされかねないと指摘した。


基調講演

スティーブン・シャピロ氏(米国弁護士/元米国自由人権協会リーガル・ディレクター)が「監視国家におけるプライバシー」と題し基調講演を行った。米国は今もインターネットを通じて世界中の情報の収集・分析を続けており、プライバシー等を守るため、全世界が一致団結してこれと対峙する必要があると語った。


スノーデン氏のライブインタビューの様子ライブインタビュー

亡命先にいるスノーデン氏(CIA、NSAおよびDIA元情報局員)と会場をインターネットで中継し、インタビューに応じる形式でスノーデン氏が発言した。
スノーデン氏は、日本が世界中に監視体制を敷く米国に同調し、日本にいる人々の情報を米国へ開示する傾向にあることに懸念を示した。また、米国への情報開示により、日本に有利な結果を引き出しているようでも、実際には、米国の情報収集を容易にし、米国が取得した情報を日本との交渉時に自国に有利な交渉材料として用いる危険があると訴えた。


パネルディスカッション

シャピロ氏は、公権力による情報収集に無関心でも隣人によるのぞき見を嫌がる人が多いのは、情報に関わる問題を抽象的に捉えているためであるとし、弁護士は市民にプライバシー等に関する具体的問題点を訴え続ける必要があると述べた。
曽我部真裕教授(京都大学大学院法学研究科)は、ジャーナリストや弁護士が中心となって公権力に歯止めをかける必要があり、特に弁護士は、情報開示請求等の法的手続を適切に行うことにより世論を喚起すべきであると語った。
澤康臣氏(共同通信社)は、一つの組織に所属し続けることが多い日本の記者は、所属組織の活動に影響を及ぼす等の可能性のある記事を書きにくく、公権力に対する監視を十分になし得ない事情も存在すると報道機関の実態について指摘した。



 

第3分科会

 

琵琶湖がつなぐ人と生きものたち
〜市民による生物多様性の保全と地域社会の実現をめざして〜 
近年、乱獲、開発による生息地の破壊、外来種や化学物質による生態系の撹乱などを原因として生物多様性の危機が進行している。 本分科会では、生物多様性の意義を改めて考察し、その保全と自律した持続可能な地域社会を実現するための方策や市民参加を促す法制度等を議論した。

 

第1部
琵琶湖がつなぐ人と生きものたち

西野麻知子教授(びわこ成蹊スポーツ大学大学院スポーツ学研究科)が基調講演を行い、琵琶湖の成り立ち、生物や固有種などを概説した。また、湿地帯と砂浜・礫浜・岩石浜の2つの環境が広面積かつ長期間存続してきたことで琵琶湖の生物多様性が育まれたと指摘した。
続いて、小松明美氏(巨木と水源の郷をまもる会代表)と堀彰男氏(須原魚のゆりかご水田プロジェクト代表)が登壇し、琵琶湖周辺で取り組む自然や文化の保全活動について報告した。
さらに、西野教授と滋賀県の三日月大造知事が市民による環境保全活動をテーマに対談を行った。三日月知事は、市民と企業の活動のマッチング、諸団体の活動の情報共有などの必要性を指摘し、命の源泉である琵琶湖を守る努力を続けていきたいと語った。


第2部
市民が守る身近な自然
〜生物多様性の主流化を目指して

琵琶湖の環境保全について語る三日月知事(写真右)吉田正人教授(筑波大学大学院人間総合科学研究科/公益財団法人日本自然保護協会代表理事)が基調講演を行い、生物多様性が生態系の多様性を含む広い概念であることを説明し、生物多様性条約の締約国会議の成果、里地里山の全国調査活動などを紹介した。
続いて、小倉孝之会員(神奈川県)が神奈川県の鎌倉広町緑地と北川湿地における保全活動の経過等を報告し、情報公開や意思決定過程への市民参加など、開発行為に伴い市民が直面する問題を提起した。
また、岩本研会員(鹿児島県)がドイツ視察の報告を行い、法律に基づくミティゲーションの実例として、企業が物流施設建設の代わりに別の自然環境を整備し、その管理費用を25年間負担する旨約した事例などを紹介した。
最後に、吉田教授、大久保規子教授(大阪大学大学院法学研究科)、宮本博司氏(元国土交通省近畿地方整備局淀川河川事務所長)、小倉会員が、パネルディスカッションを行った。宮本氏は、公共事業の問題点として、事業者の説明不足、事業を止める司法的手段の欠如などを指摘した。大久保教授は、生物多様性の保全に関する国内の立法状況を概説し、これを国際標準に近づけるため、市民の情報アクセス権・意思決定への参加権・司法アクセス権を保障するオーフス条約への加入を訴えた。



 

シンポジウム
何が問題?「性同一性障害」と法
9月22日 弁護士会館

報告

人権擁護委員会「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」検討プロジェクトチームの寺原真希子特別委嘱委員(東京)は、性別の多様性について正しく理解し、一人一人があるがままに生きられる社会を実現すべきであると述べ、日弁連の取り組みを紹介した。
本多広高特別委嘱委員(東京)は、法令上の性別の取り扱いの変更に際し、手術を要件としない国が欧州を中心に多数あること、しかも、本人の意思さえあれば医師の報告書等を必要としない国が増えていることなどの海外の状況を報告した。

 

パネルディスカッション

杉山文野氏(トランスジェンダー活動家)は、法令上は女性だが男性と自覚する当事者の立場から、就職や結婚に備えて手術を受けるべきかと悩んだり、就職後も性同一性障害を理由として周囲から特別扱いされるのではないかとの懸念等を抱いたりしている実情を語った。
針間克己氏(精神科医)は、性別違和を訴える受診者のうち手術を受ける人は3割程度にすぎないと指摘した。性同一性障害者は手術を希望するとの固定観念が、手術しない者は本物の性同一性障害者ではないとのさらなる差別を生む温床になっていると訴えた。
佐々木掌子氏(臨床心理士)は、法律が、社会的苦痛を除去するために手術という身体的苦痛を強要し、身体を傷付けたくないが法令上の性別を変更したいと考える当事者を精神的に追い込んでいる実態を訴えた。
仲岡しゅん特別委嘱委員(大阪/トランスジェンダー)は、性同一性障害者が直面するさまざまな問題の解決のためには、法令上の性別変更の要件を改めるだけではなく、社会生活上の性別を法令上の性別と切り離すアプローチも有用であると説いた。


 

第8回
人権関連委員会委員長会議
10月4日 大津市

 

本会議は、日弁連の人権関連の委員会・ワーキンググループ(WG)の代表者が「人権のための行動宣言2014」に掲げられている人権諸課題への各委員会・WGの取り組み状況を確認し、情報共有と意見交換を行うことで、日弁連の人権擁護活動を推進することを目的としている。例年、人権擁護大会に合わせて開催され、今年は45の委員会・WGの代表者に中本会長ら日弁連執行部を合わせた計73人が出席した。

 

会議当日は、人権諸課題への各委員会・WGの取り組み状況に関する事務局からの報告のほか、憲法問題対策本部から憲法改正問題についての報告、弁護士業務改革委員会から東京オリンピック・パラリンピック開催に当たって日弁連に求められる人権擁護活動についての報告が行われた。
また、今年も分科会に分かれて議論・意見交換が行われた。第1分科会では「ヘイトスピーチに対する具体的取組み」をテーマに、ヘイトスピーチ解消法や大阪市の条例制定後の運用状況、自治体における公共施設の利用許可制限、ヘイトスピーチに対する弁護士の関わり方について議論した。第2分科会では「えん罪を防ぐための刑事司法改革」をテーマに、えん罪防止の観点から、今後の刑事司法改革について議論した。第3分科会では「条約機関の勧告と人権諸課題の実現への日弁連の取組み」をテーマに、条約機関等による勧告の中で指摘された人権諸課題の実現に向けた政府への働きかけ、関連委員会・WGの横断的な取り組み方法など日弁連の活動について議論した。
本会議の議論を今後の日弁連の取り組みに生かすよう、引き続き努力していきたい。

(人権行動宣言推進会議事務局長 秋山 淳)

 

奨学金返済問題ホットライン
  ―保証人対策の重要性

 

 

9月30日に実施した「奨学金返済問題ホットライン」には、生活が苦しい借主本人のみならず、親や保証人の相談も含め、38件もの相談が寄せられた。
本人の自己破産が保証人である親に及ぼす影響に関する相談や、奨学金を事実上返済してきた親の病気や高齢により返済ができなくなったとの相談、本人と連絡が取れないなどの理由により返済猶予等の救済制度を利用できないといった相談も目立った。
本人の将来の仕事や収入のめどが立たないときに借り、高齢になってから保証の履行を求められるリスクが高い貸与型奨学金では、本人に加えて保証人に関する対策も極めて重要であることを改めて確認することとなった。

(貧困問題対策本部事務局員 岩重佳治)

 

司法取引に関する会員向けセミナー 米国の経験から日本の訴追協力型司法取引について考える
ホワイトカラー犯罪を中心に   9月21日 弁護士会館

日本でも2018年6月までに経済犯罪等を対象とした訴追協力型司法取引が導入される。
訴追協力型司法取引について長い歴史を持つ米国の経験や議論状況を学ぶため、元連邦検察官であるチャールズ・スクラースキー氏らを招き、会員向けセミナーを開催した。

 

チャールズ・スクラースキー氏鈴木一郎会員(大阪)が、日本に導入される制度について、生命・身体犯は含まれず経済犯罪等の一定の犯罪だけが対象となること、捜査協力と引き換えに付与できる恩典が法定されていることなどを概説した。
続いて、スクラースキー氏が、米国におけるホワイトカラー犯罪の司法取引の概要を報告した。米国の場合、検察官は、日本の制度とは異なり、連邦法上の犯罪すべてについて司法取引が可能であること、連邦犯罪では、量刑ガイドラインが重要な役割を果たしているが、司法取引により量刑下限以下の処分もあり得ることなどを解説した。
パネルディスカッションでは、企業の経理担当者が任意同行され、企業の犯罪行為の捜査協力と引き換えに、経理担当者個人の犯罪行為に関する恩典の付与を持ち掛けられたという創作事例を基に議論を行った。
平尾覚会員(第一東京/元検事)は、日本の捜査機関は、まず自らが可能な限りの捜査を尽くそうとするため、共謀など証拠物で立証できない事実に関わる情報を提供できる協力者でなければ、簡単には司法取引をしようとしないだろうと指摘した。
大橋君平会員(東京)は、弁護人として司法取引に応じるべきか検討するときは、まず被疑者・被告人が保有する情報が捜査機関にとって有用かどうかを十分に吟味することが重要だと述べた。
スクラースキー氏は、企業側の弁護人を務める場合、ビジネスの継続や株主代表訴訟の回避など、訴追されないことによって得られる企業側の利益を的確に把握して対応することが重要だと説いた。

 

新65期から第69期までの会員の声を聴く会
10月11日 弁護士会館

裁判所法改正により、第71期司法修習生から修習給付金が支給されることになったが、貸与制の下で司法修習を行った新65期から第70期司法修習生までのいわゆる谷間世代に対する救済措置はとられなかった。日弁連は、新65期から第69期までの会員から率直な意見を聴くためにヒアリングを実施した。

冒頭の中本会長の挨拶に続き、司法修習費用給費制存続緊急対策本部の釜井英法事務局長(東京)から、司法修習費用に関するこれまでの動き、いわゆる谷間世代に対する救済措置の検討状況などについて説明があった。

出席した会員からは、修習給付金の支給について喜ばしいとする反面、不公平感を否定できないとの意見があった。また、貸与金の返済が始まると、会務への参加などのさまざまな活動を十分にできなくなってしまうのではないかと危惧する意見もあった。


第58回「法の日」週間記念行事法の日フェスタ
霞が関司法探検スタンプラリー
10月16日 東京都千代田区

10月1日の「法の日」は、最高裁、法務省および日弁連の共同の決議を受けて1960年に設けられた。最高裁、法務省・最高検および日弁連は毎年10月1日から1週間を「法の日」週間とし、市民に法を身近に感じてもらうため、法の日フェスタを開催している。今回、日弁連は、弁護士と一緒に弁護士会・検察庁・裁判所を巡る霞が関司法探検スタンプラリーを実施した。
90人の定員を超える申し込みがあり、当日はあいにくの雨にもかかわらず、幅広い世代から多数の市民が参加した。

(主催:「法の日」週間実施東京地方委員会(東京高地家裁、東京高地検、法テラス東京、関弁連、東京三会、日弁連))

 

弁護士会の見学

最初に、引率を担当した弁護士から、弁護士会や弁護士記章について説明を受けた後、新人弁護士の成長を題材とした弁護士会の活動PR動画を鑑賞し、弁護士や弁護士会について理解を深めた。

 

検察庁の見学

続いて、東京地検に移動し、検察官から刑事手続についての話を聞いた。防弾防刃チョッキや手錠の展示があり、参加者は珍しそうに手に取るなどして見学していた。模擬取調室の見学では、取調べ可視化のためのカメラはどこに設置されているのかといった質問もあった。

 

裁判所の見学

次に、東京高地裁で最も大きい法廷の一つに入り、刑事部の裁判官から、裁判員制度や法廷についての話を聞いた。普段は禁止されている法廷内での写真撮影が許可され、参加者は、法服を着用しての写真撮影などを楽しんだ。

その後、東京家裁の少年審判廷の見学も行い、家裁調査官から家庭裁判所の役割などについて説明を聞いた。

最後に、法テラスから、資力のない人でも法テラスを利用することにより法的サービスを受けられるとの紹介を受け、スタンプラリーを終えた。

 

JFBA PRESS -ジャフバプレス- Vol.127

 

LAWASIA
東京大会2017
9月18日〜21日 東 京

LAWASIA(ローエイシア)の大会は、過去、1975年の第4回大会、2003年の第18回大会が東京で開催された。
今回、記念すべき第30回大会が9月18日から21日まで東京のホテルニューオータニで開催された。国内・海外からの参加者は合計1600人を超え、これまでのLAWASIA大会の中で最大規模の大会となった。

 

大会を振り返って

本大会は、LAWASIA主催、日弁連共催、日本法律家協会および日本ローエイシア友好協会の協力の下で実施され、大会の企画・運営はLAWASIA東京大会2017組織委員会が担った。2016年4月に組織委員会の設立総会が開かれ、組織委員会には総務・財務・プログラム・広報・企画・接遇の6委員会が設置された。その後大会本番まで組織委員会、日弁連国際室・国際課、外部の国際コンベンション管理・運営会社が協力して大会準備を進めてきた。本大会のテーマには「Big Leap through the Rule of Law - LAWASIA Legacy and Future Role(法の支配による大いなる飛躍〜ローエイシアの軌跡とこれからの役割)」が選ばれた。
本年2月に大会の参加登録を開始したが、当初は必ずしも順調とは言えず、3月末時点で登録者数は国内・海外の登録者合わせて57人、4月末時点で117人という状況であった。さまざまな広報活動やプレセミナーの実施などを重ねた結果、最終的には、国内参加者約1000人、海外参加者約600人、合計で1600人を超える参加者数となり、これまでのLAWASIA大会の中で最大規模の大会となった。
ガラディナーの様子(9月20日)9月19日の開会式には皇太子同妃両殿下がご臨席され、会場は満席となった。プログラムは32の公式セッションが用意され、日英の同時通訳が付された。いくつかのセッションには中国語の通訳も用意された。その他、国際会議初心者向けのビギナーズイントロダクションや、若手弁護士のキャリア形成やLGBTをテーマにしたランチセッション、人権や家事のサイドセッション、家庭裁判所ツアーが開催され、多くの参加者が集まった。ソーシャルイベントでは、接遇委員会が中心となって企画した大相撲観戦、皇居ラン、アメ横買い物ツアー、着付け体験等に多くの人が参加した。また、コーヒーブレイクや、大会初日のウェルカムレセプション、大会3日目のガラディナー、最終日のフェアウェルパーティーでは、参加者間で交流を図る姿が数多く見られた。
本大会には数多くの若手会員が、日弁連および弁護士会の支援を受けて参加した。本大会が、日本の法曹が、アジア地域をはじめとする世界の法曹とつながり、国際的な視野を持って司法に携わるきっかけとなることを期待する。

(国際室嘱託 竹内千春)


 

セッション報告

本大会では、人権・ビジネス・家事・司法・公益・刑事・ADR・企業法務・若手法曹・弁護士会・MOOT(模擬仲裁)の11の分野にわたり、2つのプレナリーと30を超える公式セッションが実施された。

 

プレナリーと公式セッション

開会式直後に行われたプレナリー「司法権の独立と法の支配」では、那須弘平会員(第二東京/元最高裁判事)をはじめ、オーストラリア、香港、マレーシアの現役・元裁判官や中国法学会副会長、国連薬物犯罪事務所上級プログラムオフィサーが、700人以上の聴衆を前に、各国における法の支配や司法権の独立についての報告を行った。公式セッションでは、「トランプ・ブレグジット時代の投資協定仲裁」「高齢社会と法的対応」「電子化と裁判」「法律実務と技術革新」など、各分野で今まさに「旬」となっているトピックについて、世界の一流のスピーカーから質の高い報告があり、充実した議論がなされた。特に、「高齢化社会と法的対応」と「ビジネス法(アジアと欧州)」には、それぞれ200人を超える出席があり、「法律実務の国際化と若手弁護士の活動領域」には若手弁護士を中心に150人以上の参加があった。なお、約180人の全スピーカー・モデレーターのうち約3割が日本からの参加であった。
大会最終日のプレナリー「ビジネスと人権のための協働に向けて〜国連専門委員との対話〜」では、ビジネスと人権に関する国連作業部会長による基調報告の後、LAWASIA人権セクション共同議長である東澤靖会員(第二東京)がモデレーターとして、ビジネスと人権における法律家や弁護士会の役割等についての議論をリードした。


MOOT大会

MOOT(模擬仲裁)決勝戦の様子(9月21日)本大会と並行して、上智大学でローエイシア国際MOOT(模擬仲裁)大会が開催され、アジア・太平洋地域を中心に9か国16大学から、67人の法学部生やコーチが参加した。ミャンマーにおける日本企業とミャンマー企業のパートナーシップを巡るケースについて熱い議論を戦わせた。
決勝戦は大会の公式セッションとして行われ、昨年に引き続きSingapore Management Universityが優勝した。決勝戦では、東京高等裁判所の井上泰人判事と小原正敏日弁連副会長らが仲裁官役を務め、学生たちの白熱した論戦に耳を傾けた。
日本からは京都大学、神戸大学、上智大学の3チームが参加し、神戸大学と上智大学のチームは本大会の閉会式で表彰を受けた。

(国際室嘱託 島村洋介)



日弁連の国際活動

日弁連は、大会期間中に、海外法曹関係者を招いて、ディナーや複数の会合を開催した。日弁連にとって大変内容の濃い4日間となった。

 

日弁連主催ディナー

日弁連は、10の海外弁護士会および6の国際法曹団体と友好協定を締結または団体加盟している(本大会開催時点)。
9月18日夜には、友好協定締結先の海外弁護士会および国際法曹団体の関係者を招き、友好関係の確認とさらなる発展のため、日弁連主催のディナー(和食)を催した。
ディナーには、11の団体から代表者らが出席し、和やかな雰囲気の下、日弁連執行部や国際交流・国際活動に携わる日弁連会員らと親睦を深めた。

 

IPBA(環太平洋法曹協会)との調印式にて中本会長(左)とMcNamara会長(右)バイ会合

会長をはじめとする日弁連執行部は、大会に参加した友好協定締結先弁護士会および国際法曹団体に、香港律師会、マレーシア弁護士会、中国法学会等の弁護士会・国際法曹団体を加えた計17の団体と二者間会合(バイ会合)をもった。 会合の内容は、これまでの交流状況の確認、今後の関係強化または構築のための取り組みに関する意見交換、さらには、FATF等弁護士自治の基本理念に関連する海外弁護士会の姿勢・対応状況についての情報交換など多岐にわたり、今後の日弁連の国際活動にとって有益な情報・意見交換の場となった。



若手弁護士の参加推進

日弁連は、若手弁護士の国際活動支援の一環として、弁護士登録後10年以下の若手弁護士に対し、大会の参加登録費のうち5万円を補助する制度を実施した。 この制度に応募した若手弁護士は267人に及び、日弁連の今後の国際活動を担う若手弁護士の国際会議・国際活動への参加を推進する力となった。

(国際室嘱託 皆川涼子)

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*LAWASIA東京大会2017については、「自由と正義」2018年2月号に掲載予定である。


 

 

ブックセンターベストセラー
(2017年8月・手帳は除く) 協力:弁護士会館ブックセンター

順位 書名 著者名・編者名 出版社名
1 実務解説 改正債権法

日本弁護士連合会 編

弘文堂
2 民法(債権関係)改正法の概要 潮見佳男 著 きんざい
3 携帯実務六法 2017年度版 「携帯実務六法」編集プロジェクトチーム 編 東京都弁護士協同組合
4 超早わかり・「標準算定表」だけでは導けない 婚姻費用・養育費等計算事例集(中・上級編)[新装版] 婚姻費用養育費問題研究会 編 婚姻費用養育費問題研究会
5 改訂版 後遺障害等級認定と裁判実務 ―訴訟上の争点と実務の視点― 高野真人 編著 新日本法規出版
6 弁護士職務便覧 ―平成29年度版― 東京弁護士会・第一東京弁護士会・第二東京弁護士会 編 日本加除出版
7 紛争解決のための合意・和解条項作成の弁護士実務 ―裁判官の視点を加えて 滝澤孝臣・大坪和敏 編著 青林書院
8 2分の1ルールだけでは解決できない 財産分与額算定・処理事例集 森 公任・森本みのり 編著 新日本法規出版
9 養育費・婚姻費用の新算定表マニュアル ―具体事例と活用方法― 日本弁護士連合会両性の平等に関する委員会 編 日本加除出版
10 民法(債権関係)改正法新旧対照条文 商事法務 編 商事法務


日本弁護士連合会 総合研修サイト

eラーニング人気講座ランキング(家事編) 2017年4月~2017年6月

サイトへ日弁連会員専用ページからアクセス

順位 講座名 時間
1

養育費・婚姻費用の算定方式・算定表の仕組みと諸事情がある場合の対応

113分

2 成年後見実務に関する連続講座 第2回 成年後見人の事務1 64分
3

離婚事件実務に関する連続講座 第1回 総論~相談対応・受任から調停(調停における代理人のあり方)審判・人訴・離婚後の手続き(氏の変更等)

117分

4

成年後見実務に関する連続講座 第3回 成年後見人の事務2~医療同意、死後実務、保佐・補助、後見制度支援信託

39分

5 遺産分割の基礎~よく尋ねられる内容を中心として~ 112分
6

成年後見実務に関する連続講座 第1回 趣旨、成年後見開始審判の申立て

67分

7 DVをめぐる法制度の概要と相談対応 89分
8 相続分野に対する連続講座 第1回 遺産分割1(相続人確定、遺産範囲・評価、調停・審判等) 143分
9 遺言執行をめぐる諸問題2016-遺言執行トラブル対応と遺言書におけるトラブル予防- 113分
10 離婚事件実務に関する連続講座 第3回 親権・監護権・面会交流・子の引渡し(審判前の保全) 109分

お問い合わせ先 日弁連業務部業務第三課(TEL 03-3580-9927)