日弁連新聞 第525号

第20回弁護士業務改革シンポジウム
新時代に求められる弁護士の使命と役割
 9月9日 東京大学本郷キャンパス

 


9月9日に行われた第20回弁護士業務改革シンポジウムでは、9分科会に分かれて弁護士業務に関する課題等を議論したほか、ビジネスと国際人権をテーマとするセミナーを開催した。本稿では、これらのうち5つの分科会の模様を報告する。その他の分科会では、スポーツ新時代に求められる弁護士の使命と役割、近未来の法律事務所(e裁判による後見・破産、電子契約等)、弁護士紹介制度、小規模法律事務所の経営ノウハウがテーマとされた。 各分科会の詳細な報告は、「自由と正義」2018年2月号に掲載予定である。

 

第1分科会

 

企業経営とジェネラルカウンセルの役割 
企業内弁護士は本年6月時点で1931人に達したが、ジェネラルカウンセル(GC)の設置は少数にとどまっている。本分科会では、企業内弁護士の将来的役割を見据え、GCの役割や課題について議論した。

 

ローレンス・W・ベイツ氏まず、分科会長を務める本間正浩会員(東京/日清食品ホールディングス株式会社執行役員兼CLO)が、GCが企業の法務の最高責任者であり経営の一翼を担う役員たる弁護士であることなど、総論的な報告を行った。
次に、ローレンス・W・ベイツ氏(株式会社LIXILグループ執行役専務法務担当兼CLO/ニューヨーク州弁護士)が、①コンプライアンスの確保、②企業を構築するビジネスパーソン、③政府当局など外部への発信という3つの観点からGCの役割を詳しく説明した。
続いて、日本のGCの現況に関する調査結果が報告された。GCの権限が確立している米国に比べ、国内ではいまだ発展途上の役職であり、企業によって権限・役割に差があることが明らかとなった。
パネルディスカッションでは、現職のGCである三村まり子会員(第二東京/グラクソ・スミスクライン株式会社)、吉田佳子会員(第二東京/新日鉄住金ソリューションズ株式会社)、伊藤ゆみ子会員(大阪/シャープ株式会社)と、法律事務所に所属する弁護士である牛島信会員(第二東京)とが、GCの役割、企業経営への関与の実態、将来的課題等について議論を交わした。GCが企業の意思決定に大きな影響力を発揮する一方、ビジネスの結果に対して重い責任を負うこと、国際競争の中で日本企業が競り勝つためには、GCの役割が極めて大きいこと等が指摘された。

 


 

第6分科会

 

自治体連携における諸課題を克服する 
全国各地で弁護士と自治体との連携が加速している。本分科会では、各地における自治体連携の実践例を踏まえ、弁護士が地方行政分野における法の支配や住民福祉の実現にさらに積極的に寄与するための具体的方策について議論した。

 

午前の部では、元三重県知事の北川正恭名誉教授(早稲田大学)が基調講演を行い、地方創生時代の自治体では法の支配の徹底が重要であり、自治体が抱える問題の解決に弁護士が積極的に関わる必要があると強調した。
また、弁護士会の福祉分野におけるモデル事業の実施状況、公金債権分野における取り組み状況、自治体内弁護士と弁護士会の連携状況などについて報告がなされた。
午後の部では、福祉分野における自治体連携の実践例として、広島弁護士会の自死ハイリスク者支援、新潟県弁護士会の自治体職員やケアマネジャー等の支援者に対する支援、大阪弁護士会のひとり親家庭のための無料法律相談事業が紹介された。また、公金債権分野における自治体連携について、各地の実践例が報告された。
その後、野村裕会員(第二東京)が講演を行い、宮城県石巻市における自治体内弁護士としての自らの経験を踏まえ、行政連携に期待される自治体内弁護士の役割について述べた。
パネルディスカッションでは、自治体側の要望や弁護士の果たすべき役割について議論し、地方行政に携わる弁護士には、債務整理や離婚等に関する法的知識、社会保障に関する基本的知識のほか、相談者に共感して寄り添う姿勢が必要であるとの指摘があった。

 


 

第7分科会

 

市民・中小企業が求める弁護士保険の確立に向けて 
日弁連と保険会社等が協定を結び、弁護士紹介を備えた弁護士保険制度が発足して17年が経った。本分科会では、弁護士保険に関する知識を整理し、弁護士保険に関するADRの概要と課題、中小企業向け弁護士保険の役割と課題について議論した。


日弁連リーガル・アクセス・センター(以下「LAC」)の中松洋樹委員(熊本県)らは、主要な協定保険会社等の家庭用自動車保険等に付帯されている弁護士費用特約一覧を示し、保険会社ごとに保険内容が異なるため、弁護士も注意を払う必要があると述べた。
日弁連研修・業務支援室の藤原靖夫嘱託(東京)は、来年1月から始まる弁護士保険に関するADRについて概説し、この制度により弁護士保険に関する紛争を早期に解決することが、弁護士保険の一層の発展につながると指摘した。
武田涼子委員(第一東京)は、スイスでは、保険契約者が保険事故時、法的手続中、終了時に注意すべきチェックリストがあることを紹介し、保険会社にとっても後の紛争を予防するため有益であると語った。また、内藤和美氏(慶應義塾大学商学部、関東学院大学経済学部非常勤講師)は、スイスの弁護士保険につき、保険料収入が20年間で2・8倍に増加し、今後も発展が見込まれていると報告した。
LAC権利保護保険の対象範囲の拡大に関するPTの山田正記座長(東京)は、昨年日弁連が実施した弁護士に関するニーズ調査の結果に基づき、中小企業は補償内容・金額の充実した保険を重視していると指摘し、ニーズに合った商品開発が必要であると語った。

 


 

第8分科会

 

事業承継における弁護士の役割と、他士業・他団体との連携
団塊の世代が経営を退く時期が迫り、中小企業・小規模事業者(以下「中小企業等」)の事業承継が喫緊の課題となっている。本分科会では、事業承継における弁護士の利用率が10%程度にとどまる中、中小企業等存続のため、弁護士が事業承継にどのように関わるべきかについて議論した。


パネルディスカッションの様子関義之会員(東京)が基調講演を行い、弁護士業務改革委員会企業コンプライアンス推進PTが作成した「事業承継トラブル・チェックシート」を活用し、中小企業等に弁護士の有用性を周知してニーズを掘り起こす必要性を説いた。
菊川人吾氏(中小企業庁事業環境部財務課長)は、今後10年間に380万の中小企業等のうち240万の経営者が70歳を迎えるが、その半数の120万に後継者がいないとの危機的状況を指摘した上、事業承継5か年計画の策定などの中小企業庁の取り組みを紹介した。
また、木坂尚文会員(仙台)が事業承継の各ステップで弁護士が果たし得る役割を、久野実会員(愛知県)が他士業や中小企業等支援団体との連携状況をそれぞれ報告した。
パネルディスカッションでは、現場で生じている問題として、現経営者と後継者のコミュニケーション、経営者保証、資金調達、債務超過企業の承継等が指摘された。そして、弁護士がこれらの問題のみならず相続や会社法の問題など幅広い分野に対応できること、他士業や中小企業等支援団体との協働が不可欠であることなどが議論された。

 


 

第9分科会

 

遺言関連分野における弁護士業務の将来像
高齢社会のさらなる進展とともに、遺言関連分野のニーズと重要性がますます高まっている。本分科会では、弁護士の遺言業務への関与、高齢者・障がい者のための遺言作成上の実務等を議論した。


水野紀子教授(東北大学大学院法学研究科)が基調講演を行い、日本の相続法の歴史的経緯を概説し、その構造的課題として、相続人の対立した要請を調整する遺産分割手続を欠き、紛争解決を相続人の協議に委ねていることを指摘した。
パネルディスカッション第1部では、ライフプランナーの村上均氏(ソニー生命保険株式会社)、松田純一会員(東京/NPO法人遺言・相続リーガルネットワーク理事長)、日弁連高齢者・障害者権利支援センターの青木佳史センター長(大阪)が、遺言業務の専門性と弁護士の関与について議論し、遺言業務に紛争や執行を見据えた弁護士の専門性が求められること等を確認した。
パネルディスカッション第2部では、高齢者・障がい者のための遺言(①障がいのある人の遺言、②親亡き後の問題における遺言、③お一人様の遺言)作成上の実務・課題について議論した。安達敏男会員(東京/元公証人)は、各遺言の公証実務や作成上の問題点を解説した。同センターの井上計雄委員(大阪)は、各テーマで活用できる方法や各方法を実践する場合のポイントを解説し、②の負担付き遺贈における負担の設定方法、放棄に備えた補充遺言や成年後見制度の併用の必要性について述べた。内藤克氏(税理士)は、②の負担付き遺贈や福祉信託における相続税や贈与税、③の清算型遺贈における譲渡所得税など税務上の問題点を指摘した。

 

 

司法試験に1543人が合格

9月12日、2017年の司法試験の合格発表があり、1543人が合格した。受験者は5967人(昨年から932人減)、合格率は25.86%。また、予備試験の資格に基づく合格者は290人だった。

 

会長談話を公表

日弁連は、合格発表の当日に次のとおり会長談話を公表した。

◇               ◇

本日、平成29年司法試験の最終合格者1,543人が発表された。
法曹養成制度の改革が急速に進む中、たゆまぬ努力と並々ならぬ情熱をもって法曹を目指して司法試験合格を果たした方々に対し、心から歓迎の意を表するとともに、これから始まる司法修習において一層の研鑽を積まれることを期待する。
当連合会は、市民にとってより身近で利用しやすく頼りがいのある司法を実現するために、司法基盤の整備、司法アクセスの拡充、弁護士の活動領域の拡大などに積極的に取り組むとともに、社会の様々な要請に応えることができる質の高い法曹を輩出するべく、法曹養成制度の改革に主体的に取り組んできた。そうした中で、法曹養成課程における経済的負担の重さが法曹への道を断念させる一因となっていることに鑑み、法曹となる人材の確保の推進等を図るため、裁判所法の一部が改正され、平成29年度以降に採用される司法修習生に対して新たな給付型の経済的支援が行われることになった。
年間の司法試験合格者数については、現実の法的需要や新人弁護士に対するOJT等の実務的な訓練に対応する必要があることなどから、まずは1,500人に減じて急激な法曹人口の増員ペースを緩和すべきことを提言し、平成28年3月11日の臨時総会で「法曹養成制度改革の確実な実現のために力を合わせて取り組む決議」を採択した。また、政府は、平成27年6月30日に法曹養成制度改革推進会議が決定した「法曹養成制度改革の更なる推進について」において、当面の司法試験合格者数を、質の確保を前提としつつ「1,500人程度は輩出されるよう、必要な取組を進め」るものとした。
本年の司法試験の合格者数は、昨年より40人減少し1,543人となり、昨年に引き続き法曹人口の増員ペースが一定程度緩和されたことから、この傾向の継続により1,500人となることが期待される。
後継者の育成に責任を持つべき当連合会としては、今後とも関係機関・団体と連携しつつ、多様で有為な人材が法曹を目指すよう、法の支配の担い手である弁護士の役割や活動の魅力を広く社会に発信するとともに、質の高い法曹を養成するために全力を尽くして取り組んでいく所存である。


 

ひまわり

齋藤純一『公共性』(岩波書店)は、アレント・ハーバーマスの批判的継承から公共性を再定義する。公共性とは、閉鎖性と同質性を求めない共同性、排除と同化に抗する連帯で、生の複数性を保障しあい、行為や発話を触発しあう民主的な理念であるという。

EU離脱を決めた英国やアメリカ・ファーストを求める米国におけるナショナリズムの再興は、公共性を国益と同視する考えに立っている。対岸の火事ではなく、日本も同じ方向へとひた走っているように見える。

かつて法律を巡る課題は国内にとどまる傾向が強かったが、グローバリズムは経済だけの問題ではない。いや応なしに法の領域にも大きな変革が求められている。受け止める私たちは、経済法の分野にのみ目を向ける傾向がないだろうか。

諸外国の経験を参考に日本の法制度の改革を求める声は拒絶に遭うのが常だった。日本の社会や文化に合わないという特殊性の強調だ。それはともすれば、排除、同化につながりかねない。

英米では同時に先の動きに対抗する市民の活動も顕著である。真にグローバルな視点に立ち、日本の法、制度、裁判が民主的な理念としての公共性に沿ったものとなっているかを問い直していくことが必要であろう。

(I・K)

 


内閣府消費者委員会消費者契約法専門調査会
報告書に対する意見

日弁連は、本年8月24日付で内閣府消費者委員会消費者契約法専門調査会報告書(以下「報告書」)に対する意見書を取りまとめ、25日に消費者庁および内閣府消費者委員会に提出した。


報告書では、消費者契約法(以下「法」)の見直しに関し、7つの措置すべき内容が取りまとめられた。日弁連は、これらの内容は消費者被害の救済範囲を拡大するものとして賛成し、次のように付言した。
すなわち、①不利益事実の不告知(法4条2項)の主観的要件に「重大な過失」を追加する提案については、主観的要件の削除を検討すべき、②事業者の働きかけにより消費者が困惑して契約した場合の取消権の提案については、事業者による働きかけがなくても、消費者の年齢や判断力不足に乗じて契約させた類型にも取消権を認めるべき、③事業者が契約の義務内容を先履行すること等によって契約させた場合の取消権を追加する提案については、執拗な勧誘等によって契約した場合も取消権を認めるべきであるとした。
また、④平均的損害(法9条1号)の立証に関し推定規定を追加する提案については、端的に立証責任を事業者に転換すべき、⑤消費者の後見等開始による解除条項および事業者による契約内容解釈条項を不当条項に加えるとする提案については、サルベージ条項および軽過失人身損害免責条項も不当条項に加えるべき、⑥条項の内容に疑義が出ないようにする配慮義務が提案されたが、条項使用者不利の原則を認めるべき、⑦消費者の知識・経験不足に対する配慮義務が提案されたが、これを法的義務として明確化すべきであるとした。
その他にも、約款の事前開示を義務化すべきことなどを指摘し、引き続き立法趣旨を踏まえた検討を求めている。

(消費者問題対策委員会 委員 岩城善之)


*内閣府消費者委員会消費者契約法専門調査会報告書は内閣府ウェブサイトでご覧いただけます。
*日弁連意見書は日弁連ウェブサイトでご覧いただけます。

 


裁判員裁判法廷技術研修
 8月8日~10日 弁護士会館

 

裁判員裁判の法廷技術を習得する研修が3日間にわたって本年も開催され、全国から集まった約50人の会員が受講した。これは、熟達した法廷弁護士への第一歩を刻む研修である。

 

研修は、模擬事件記録を題材に、冒頭陳述・主尋問・反対尋問・最終弁論の実演を3日間繰り返す。受講者は、実演の都度その場で講師から講評を受け、さらに別室に移動して、録画された自分の実演を見て振り返る。研修のコンセプトは「Learning by doing」であり、座学ではなく、自ら実演し、失敗を重ねて学ぶことを目指している。最終日には、検察官側と弁護人側に分かれて複数の証人を尋問する実践的な交互尋問のセッションも行った。

研修後の受講者アンケートで3日間の全セッション22項目について「役に立ったか否か」を尋ねたところ、全22項目について5段階で「4・5」以上の評価を獲得し、評価の平均値は「4・8」を上回った。研修を評価するコメントも多く寄せられた。例えば「自分の立ち居振る舞いを初めて客観的に見ることができ、どうすべきか明確に意識できた」「講師の方々の話のうまさにびっくりしました。自分の弁護活動を見直す良い機会になりました」「3日間では十分な時間とは言い難いので、4日間にして、ドリルや実演の時間を取ってほしいと思います」「尋問(主尋問・反対尋問とも)、特に交互尋問のパートで実践することができたのが良かった」「最初にボロボロの冒頭陳述をしてしまいましたが、充実した3日間を過ごし、最終日には自分の成長を実感することができました。すばらしい講師の先生方、スタッフの方々に恵まれ、この研修に参加できて本当に良かったです」などである。

優れた法廷弁護士への道は、まずこの研修の受講であろう。

(日弁連刑事弁護センター 幹事 遠藤直也)

 

シンポジウム
もっと使いやすい消費者契約法を実現しよう!
~より良い第二次改正を目指して~
9月8日 弁護士会館

本年8月、内閣府消費者委員会消費者契約法専門調査会(以下「専門調査会」)は、消費者契約法(以下「法」)の第二次改正に関する議論を取りまとめた報告書(以下「報告書」)を公表した。消費者保護の拡充のため、喫緊の対応課題である諸論点について早期の法改正を実現すべく、活発な議論を行った。

 

まず、元専門調査会座長代理の後藤巻則教授(早稲田大学大学院法務研究科)が報告書の内容を解説した。報告書では、法4条3項(消費者取消権の対象となる困惑類型の規定)に、心理的不安を作出・増幅させる言動等による2つの困惑類型を追加することなど7項目について措置すべきとの指摘がなされたこと、一方で、非作出型のつけこみ型不当勧誘行為類型(以下「つけこみ型」)に対する消費者取消権の付与については意見の一致をみなかったことなどを詳説した。
同じく元専門調査会委員の増田悦子氏(公益社団法人全国消費生活相談員協会理事長)は、報告書の指摘事項について法改正が実現すれば、消費生活相談員としては、デート商法の事案などで事業者に対する違法性の主張がしやすくなると述べ、早期の法改正に期待を寄せた。
後半のパネルディスカッションにおいて、消費者問題対策委員会の野々山宏幹事(京都/NPO法人京都消費者契約ネットワーク理事長)は、報告書の7項目の指摘自体は評価しつつも、高齢者や若年成人の保護が重要課題であり、消費者の知識・判断力等の不足に乗じたつけこみ型に対する消費者取消権について改正提言がなされなかったことは極めて問題であると批判した。この点については、内閣府消費者委員会からも、報告書の公表後、つけこみ型に対する取消権の付与を含む3項目が「喫緊の課題」であるとする異例の答申書が出されている。
山本健司委員(大阪)は、元専門調査会委員の立場から、つけこみ型に対する取消権の付与については、専門調査会内で、適用要件が不明確との意見があったために提言に盛り込むことができなかったと議論経過を語った。

 


第33回全国再審弁護団会議
大崎事件 ~二度目の再審開始決定の意義と即時抗告審の展望~
8月29日 弁護士会館

本年6月28日、鹿児島地裁は、いわゆる大崎事件第3次再審請求審(請求人原口アヤ子氏ほか)において、再審を開始する決定をしたが、7月3日、鹿児島地検は即時抗告をした。
日弁連は、大崎事件で再審開始決定を獲得した弁護団からの報告を中心として、再審に関わるさまざまな問題を議論するため、全国会議を開催した。

 

大崎事件弁護団の工夫

 

弁護団の鴨志田祐美会員(鹿児島県)は、第3次再審請求当時、原口氏が88歳と高齢であったことから、早期に決定を得られるよう工夫したと報告した。特に再審請求書などではミニマムな書面を心掛け、審理終結間際に開示された証拠写真の意義については、裁判所に短期間で理解してもらうためにパワーポイントを用いたプレゼンを行うなど分かりやすさを意識したと語った。また、係属中の即時抗告審の主な争点が供述心理鑑定の信用性になると指摘し、検察官の補充意見書についても即座に対応し、早期に抗告棄却決定を獲得したいとの決意を述べた。

 

供述心理鑑定の活用

 

大橋靖史教授(淑徳大学総合福祉学部)は、再審開始決定のポイントとなった供述心理鑑定(供述の内容ではなく、「語り方」などの供述特性に着目して供述の信用性を分析するもの)について報告した。供述心理鑑定は、供述中に実体験に基づかない情報が混入している可能性(非体験性兆候)をチェックするものであり、犯行部分に非体験性兆候が見られるとの心理鑑定が、供述の信用性を減殺できる事情と判断された事例として、その知見が、今後も供述の信用性判断に活用できると語った。

 

再審における証拠開示

 

弁護団の泉武臣会員(鹿児島県)は、第3次再審請求審において鹿児島地裁が検察官に対し、証拠不存在とする場合はその合理的理由を書面で報告するようにとの訴訟指揮を行い、その結果、ネガフィルム原本が新たに開示され、鮮明な写真による鑑定人尋問が可能となったことも再審開始決定につながったと振り返った。他の再審事件でも裁判所に証拠開示に関する積極的な訴訟指揮を求める必要があると指摘し、再審における適切な証拠開示ルールを整備すべきだと語った。
*大崎事件については、本年8月号の本紙をご覧ください。

 


第55回市民会議
民法(債権法)および公文書管理について議論
9月12日 弁護士会館

2017年度第2回目の市民会議では、民法(債権法)および公文書管理について、立法状況や日弁連の取り組みなどを報告し、議論した。

 

民法(債権法)について

法務省法制審議会民法(債権関係)部会幹事として民法改正の審議に加わった高須順一会員(東京)が、改正法は市民に分かりやすく利用しやすい民法を目指し、必要かつ合理的な改正を加えたものと評価できるとの日弁連の立場を説明した。また、保証人保護、定型約款の明文化、消滅時効の簡明化・統一化、債権譲渡の活用などについて改正法のポイントを解説した。
委員からは、改正法の具体的内容を一般市民に周知していく方法の検討や努力が不可欠であるとの声や、今回の改正で見送られた重要論点についても時代の変化に応じた法改正に取り組んでいく必要があるとの声が上がった。

 

公文書管理について

秘密保護法対策本部本部長代行および内閣府公文書管理委員会委員長代理の三宅弘会員(第二東京)が、情報公開法の「行政文書」の意義や公文書管理法における文書作成等の義務の内容を概説した。また、日弁連が2016年2月18日付「情報自由基本法の制定を求める意見書」により、知る権利や国民主権を踏まえた基本法の制定と公文書管理法・情報公開法の改正等の制度再構築を求めていることを説明した。
委員からは、公文書廃棄を巡る問題に関連して、公文書の管理等にレコード・マネージャーなどの第三者を関与させる必要があるとの指摘がなされた。また、情報自由基本法の制定のほか、個別の問題を解決するための法改正が求められるとの意見が述べられた。

 

市民会議委員 
(2017年9月12日現在)(五十音順・敬称略)

  • 井田香奈子(副議長・朝日新聞大阪本社社会部次長)
  • 長見萬里野(全国消費者協会連合会会長)
  • 北川正恭(議長・早稲田大学名誉教授)
  • 清原慶子(三鷹市長)
  • 吉柳さおり(株式会社プラチナム代表取締役、株式会社ベクトル取締役副社長)
  • 神津里季生(日本労働組合総連合会会長)
  • ダニエル・フット(東京大学大学院法学政治学研究科教授)
  • 中川英彦(元京都大学法学研究科教授)
  • 松永真理(セイコーエプソン株式会社社外取締役)
  • 村木厚子(前厚生労働事務次官)
  • 湯浅 誠(社会活動家、法政大学現代福祉学部教授)

 

 

成年後見制度利用促進基本計画に関する連続学習会
医療等の意思決定が困難な人に対する支援と成年後見人の役割
9月6日 弁護士会館

日弁連では、成年後見制度の改善・改革に向けて、医療や福祉の専門家等を講師として招き連続学習会を開催している。第2回目となる今回は、医療等の意思決定が困難な人に対する支援と成年後見人の役割をテーマに取り上げた。


成年後見人が果たすべき役割について議論された冒頭、日弁連高齢者・障害者権利支援センターの赤沼康弘委員(東京)が、医療等の意思決定が困難な人に対する医療行為の在り方等について問題を提起した。
次に、成本迅教授(京都府立医科大学大学院)が基調講演を行い、本人の意向に沿った治療を進めるためには、本人の同意能力の適切な評価とそれに基づく意思決定支援、意思決定プロセスが重要であると指摘した。
また、同意能力を評価する基準として、①医師からの説明を理解する能力、②医師から受けた説明の内容を自分のこととして認識する能力、③医療行為の結果を推測した上で論理的に思考する能力、④一貫して自分の意見を明確に表明する能力の4要素を総合的に判定する手法を紹介した。
続いて、医師免許を有する藤木美才委員(熊本県)が、医療現場における意思決定支援に関する実態調査について報告した。調査の結果、検査や治療の要否を本人が判断できない場合、親族に同意を求めて当該医療行為をするとの回答が多いこと、親族がいない場合は医療行為をしないとの回答もあったことを挙げ、成年後見人が医療の意思決定に関与する必要性を説いた。
続いて、成本教授のほか、坂本恵司氏(公益社団法人認知症の人と家族の会会員)、星野美子氏(公益社団法人日本社会福祉士会理事)、小西早苗氏(板橋区手をつなぐ親の会会長)らが加わってパネルディスカッションが行われ、意思決定が困難な患者の意思推定など成年後見人の果たすべき役割について活発な議論がなされた。



子どもの権利委員会夏季合宿
第2企画 児童虐待問題への司法関与を考える
8月22日/23日 弁護士会館

子どもの権利委員会は、委員・幹事以外の会員等にも参加を募り、2日間にわたる夏季合宿を開催した。
全体委員会では、子どもの権利に関わる諸問題についての状況報告・今後の対応方針等の審議を行った。
本稿では、2017年改正児童福祉法(以下「改正法」)をテーマに取り上げた第2企画について報告する。

 

まず、花島伸行幹事(仙台)が、改正法の概要を説明した。改正法は、①児童福祉法28条審判(保護者の虐待等を理由に親権者等の意に反して児童に施設入所・里親委託等の措置を採る場合の承認審判)に関連して、家庭裁判所(以下「家裁」)が児童相談所(以下「児相」)に対して保護者指導措置を採るよう勧告できる範囲を拡大し、②親権者等の意に反して2か月を超える一時保護を行う場合に家裁の承認審判手続を導入した。
パネルディスカッションでは、成瀨大輔会員(東京/元裁判官)が、2か月を超えて一時保護を継続しようとする場合、改正法の条文構造からすると、親権者等の意思が直前で反対に転じてしまったときでも、2か月以内に承認審判を申し立てなければならないように読めると指摘し、申立期限を意識して準備を進める必要があると指摘した。
濵田雄久委員(大阪)は、大阪弁護士会の委員が原案を作成したモデル申立書案を提示した。申立書を簡便に作成できるチェック方式は、申立期限内に確実に申し立てを済ませるとの観点からも有用である。また、親権者等に申立書副本が送付される場合を想定し柔軟な対応が可能という観点からも妥当と考えられる。久保健二会員(福岡県/福岡市こども総合相談センターこども緊急支援課長)も、児相の立場から、このモデル案を活用したいと発言した。
久保会員はまた、家裁の児相に対する保護者指導措置の勧告について、児相が指導を行うことにより、保護者が今後も児相とのつながりが続くことを意識することには意味があると評価し、この制度をより使いやすいものにするために取り組みたいとの意欲を示した。

 


JFBA PRESS -ジャフバプレス- Vol.126

 

中小企業への法的支援を推進するために
弁護士ニーズはどこにあるのか~調査報告書を取りまとめて~

 

日弁連は、2016年7月以降、中小企業への法的支援を積極的に推進するため、中小企業における弁護士の需要調査および法的需要開拓のための資料収集を目的とするアンケート調査を実施し、本年8月、「第2回中小企業の弁護士ニーズ全国調査報告書」を取りまとめました(以下「本調査」)。本調査は、2006年以降に実施した中小企業の弁護士ニーズに関するアンケート調査(以下「前回調査」)から10年が経過したことを受け、その第2弾として実施したものです。
今回は、本調査を実施し、結果の分析を行った日弁連中小企業法律支援センターの中小企業ニーズ調査PTの佐瀬正俊座長(東京)、同センターの飯田隆副本部長(第二東京)、髙井章光事務局長(第二東京)、杉浦智彦委員(神奈川県)からお話を伺いました。

(広報室嘱託 神田友輔)

 


本調査の実施理由

(佐瀬)前回調査は、2000年代に入っても日弁連に中小企業に対する法的サービスについて検討する委員会がなく、中小企業の弁護士ニーズも把握できていなかったことから、東京弁護士会が行っていた弁護士ニーズ調査を参考に実施しました。
(髙井)前回調査から10年が経過し、司法制度改革によって弁護士が急増しました。他方、リーマンショックの影響などで、中小企業は10年間で約12%も減少しており、中小企業と弁護士との関わり方のベースとなる新たな資料を収集する必要がありました。

 

本調査の特徴

前列左から飯田委員、佐瀬座長、後列左から髙井事務局長、杉浦委員(飯田)前回調査と比較検討できるよう調査項目はできるだけ共通化しました。
もっとも、本調査では新たに弁護士保険(権利保護保険)のニーズについても調査しました。弁護士へのアクセス障壁となっている弁護士費用の問題への対応策を検討する必要があったからです。

 

本調査の結果

(飯田)前回調査から10年が経過し、弁護士が大幅に増えたにもかかわらず、弁護士へのアクセス障壁は改善されていません。
また、中小企業の困りごとの内容を見ると、契約内容の相談・検討、各種社内規定の策定が上位にきており、弁護士ニーズは非係争案件にシフトしていると考えられます。もっとも、弁護士自身が係争案件にとらわれたままであり、ニーズとのミスマッチが生じていることも分かりました。
(杉浦)困りごとのトップは、前回調査では債権回収でしたが、本調査では雇用問題になりました。ただ、雇用問題について、弁護士以外の社外の人に相談して対処した中小企業が多く、弁護士の関与は非常に少ないです。抽象的には弁護士は何でもできると思われているようですが、具体的に何ができるのかが理解されていないようです。
また、「ひまわりほっとダイヤル」は約20%の中小企業に認知されていましたが、実際に利用したのは全体のわずか0・5%にすぎませんでした。認知度を高め、利用者を増やすための広報に一層力を入れていく必要があります。

 

弁護士へのメッセージ

(髙井)日弁連は、本年5月の定期総会で、「中小企業・小規模事業者に対する法的支援を更に積極的に推進する宣言」を採択しました。今後、日弁連は、積極的に中小企業に対する法的支援を推進します。中小企業とのやり取りは弁護士業務につながることも多く、貴重な経験になりますので、若手弁護士には正面から向き合うことをお勧めします。また、中堅以上の弁護士には、専門性をさらに磨いて、中小企業に対する法的支援に取り組むことを期待しています。
(飯田)中小企業が、困りごとに対処するために弁護士以外の人に相談している理由を考えてほしいです。頻繁できめ細やかなやり取りを心掛け、中小企業と良好な関係をつくる努力が必要だと思います。
(佐瀬)中小企業は、業種や規模、風土などが大きく異なります。弁護士が身近で利便性が高いことをいかに分かってもらうかが重要だと思います。そのために本調査の結果を活用してください。
*第2回中小企業の弁護士ニーズ全国調査報告書は、日弁連ウェブサイト(HOME≫日弁連・弁護士について≫統計≫各種アンケート結果)からご覧いただけます。



日弁連委員会めぐり 92

FATF第4次対日相互審査対応に関するWG

今回の委員会めぐりは、FATF第4次対日相互審査対応に関するワーキンググループ(以下「WG」)です。 2019年に第4次対日相互審査(以下「本審査」)が予定されており、本審査に適切に対応できるよう準備を進める必要があります。 伊東卓座長、神田安積委員、司法調査室(FATF対応グループ)の十時麻衣子嘱託(いずれも第二東京)にお話を伺いました。

(広報室嘱託 柗田由貴)

 

WG設置の経緯

左から十時嘱託、伊東座長、神田委員FATF(Financial Action Task Force/金融活動作業部会)は、1989年のG7サミットの経済宣言によりマネー・ローンダリング対策を目的として設立された政府間機関です。加盟国等は、FATFが国際的基準として採択した勧告の履行状況について相互に審査を行います。2003年には第3次勧告が採択され、これを受けて日弁連は、現在の依頼者の本人特定事項の確認及び記録保存等に関する規程及び同規則(以下「本規程等」)を定めました。
本審査は2012年に採択された第4次勧告に基づくものです。本審査では、職業専門家である弁護士について、本規程等の履行状況が審査される予定です。本審査に向けた日弁連および弁護士会の課題として①会員の本規程等の履行状況の正確な把握、②履行が不十分な会員に対する指導が挙げられます。
これらの課題を会員に周知して理解や協力を得つつ、弁護士会と連携して本審査に備えるため、本年4月にWGが設置されました。

 

WGの活動内容

日弁連速報等を利用して会員に対する周知を図るほか、日弁連による上記①②の課題克服に向け、本規程等の改正案を検討しています。
さらに、会員が改正後の本規程等を履行するために参考となる各種資料の作成にも取り組んでいます。


会員へのメッセージ

本審査の結果、履行状況等が不十分と評価されると、FATFによる政府に対する追加的措置の要請や国際的信頼の喪失につながるおそれがあります。そのため、政府は本審査への対応に真剣に取り組んでいます。にもかかわらず、日弁連や弁護士が適切に取り組んでいないとなると、法令等により、履行すべき義務の内容や履行状況の監督体制の強化を強いられ、弁護士自治にまで影響が及ぶことになりかねません。
会員の皆様におかれては、これらの状況をご理解の上、ぜひとも本審査への対応にご協力いただきたいと思います。

 

 

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9 実務解説 民法改正―新たな債権法下での指針と対応 大阪弁護士会民法改正問題特別委員会 民事法研究会
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