日弁連新聞 第524号

預り金等の取扱いに関する規程の改正
~預り金口座の届出始まる~

本年3月3日の臨時総会で、預り金等の取扱いに関する規程が改正され(以下「本改正」)、10月1日から施行される。
本改正により、従来から義務付けられていた預り金口座の開設に加え、①口座名義に預り金口座であることを明示する文字(預り金、預り口、預り金口等)の使用、②預り金口座についての所属弁護士会への届出が義務付けられることとなった。

 

本改正の目的および内容

本改正は、預り金口座であることを客観化するとともに、口座開設義務の履行を担保し、弁護士会がその履行状況を把握するためのものである。
ただし、特定の依頼者や事件のための専用口座については、届出義務の対象とはされていない。また、高齢、留学等の理由で業務を行っていないとき、組織内弁護士で個人事件の受任が禁じられているときなど長期にわたり預り金を保管する可能性がない場合には、例外的に開設義務が課されないことも明文化されたが、その場合でも、開設しないことおよびその理由の届出が必要とされている。
明示文字を使用しない口座を使っている会員が、和解の分割金の振り込みを受けている等の理由により現在の口座名義のまま使用を継続する場合、経過措置として2020年9月までの3年間は、明示文字を使用しない口座を使うことができるが、明示文字を使用しない理由を届け出なければならない。その場合でも、従前の口座と別に明示文字を使用した口座を開設し、3年の間に移行することが想定されている。
なお、明示文字を使用する口座の開設や口座名義の変更に金融機関が応じない場合は、2017年6月15日付事務総長通知を参照されたい。(*)

 

市民の信頼確保のために

本改正は、弁護士・弁護士会に対する市民の信頼を確保するため、預り金を巡る不祥事の撲滅に向けた方策の一つであるが、届出義務の履行率が低くとどまれば、かえって市民の信頼を失うことになりかねない。
依頼者の資金を預かるすべての会員が明示文字を使用した預り金口座を開設し、所属弁護士会に届出をするよう切に希望する。


(依頼者保護制度に関する検討ワーキンググループ 座長 菰田 優)


*事務総長通知は、会員専用ページ(HOME》書式・マニュアル》弁護士倫理/顧客情報・預り金等の管理)でご覧いただけます。
*会員の皆さまは、本号に同梱したパンフレットもご覧ください。

 

 

第28回POLA(アジア弁護士会会長会議)
7月22日~24日 スリランカ・コロンボ

年に一度アジア太平洋地域の弁護士会や国際法曹団体のトップが集まるPOLAが開催された。今回は12の国・地域と3つの国際法曹団体から参加があり、日弁連からは中本会長が出席した。

 

会長会議では、日弁連から、弁護士・依頼者間の秘匿特権に関する決議案、POLAの公益情報交換システム(参加弁護士会間で情報を照会するもの)の利用促進を議題として提案し、いずれも採択された。あわせて、ローエイシア東京大会のプロモーションを行った。POLA閉会式にて
ワーキングセッションでは、参加した国・地域による報告と議論が行われ、中本会長が「法曹界の技術と未来」をテーマとするセッションにスピーカーとして出席した。中本会長は「AI(人工知能)は弁護士に取って代わるか」と題して、日本においてAIが法律サービスに与える影響やその限界に関する現状分析について報告し、弁護士業務にAIを活用するための提言を行った。そのほか秘匿特権と守秘義務などをテーマとする合計7つのセッションが行われた。
ワーキングセッションの合間には、マレーシア弁護士会からの出席者と会合を行い、両弁護士会間での交流の可能性等を議論した。
閉会式では、法的サービスを巡る技術革新の中で、司法の独立と法の支配の重要性を再確認し、相互に協力するとの「コロンボ宣言」が読み上げられ、会議が締めくくられた。
来年の第29回会議は、オーストラリアで開催される予定である。

(国際室嘱託 尾家康介)

 

法制審議会会社法制(企業統治等関係)部会の議論状況

本年2月、法務大臣は法制審議会に対し、株式会社に関し、①株主総会に関する手続の合理化、②役員に適切なインセンティブを付与するための規律の整備、③社債の管理の在り方の見直し、④社外取締役を置くことの義務付けなど、企業統治等に関する規律の見直しについて諮問を行った。これを受けて、同審議会に会社法制(企業統治等関係)部会が設けられ、4月以降、会社法改正に向けた議論が重ねられている。
①では、株主の承諾を要せずに、参考書類等の株主総会関連書類をインターネットを利用して提供するための制度の新設および株主提案権の濫用的な行使を制限するための措置の要否が議論されている。
②では、取締役が職務執行の対価として会社から受ける財産上の利益に関する規律の見直し、役員の職務執行に関して責任の追及に係る請求を受けたこと等によって要する費用等を会社が補償する規定の検討および会社役員賠償責任保険(D&O保険)に関する規定の検討が議論されている。
③では、社債の管理の在り方を見直し、社債発行の際、社債管理者の設置を要しないときは、社債管理者よりも限定された範囲内で必要な社債の管理を第三者に委託することを可能とする制度について議論がされている。
④では、社外取締役選任の義務付けやその対象範囲の検討、社外取締役の要件である業務執行性の見直し、重要な業務執行の決定の取締役への委任に関する規律の見直し、責任追及等の訴えに係る訴訟における和解に関する規律の整備が議論される予定である。
日弁連は、「社外取締役の義務付けに関する意見書」を8月24日付で取りまとめ、翌25日付で法務大臣宛てに提出した。
9月6日の部会で第一読会が終了するが、引き続き第二読会においても議論の推移を注視し、弁護士委員・幹事をバックアップしていく。

(法制審議会会社法制(企業統治等関係)部会バックアップ会議座長 佐藤順哉)

 

 *同部会での議論状況および資料等は法務省ウェブサイトでご覧いただけます。

 

 

 

会員サポート窓口

 

 

「東日本大震災の被災者に対する援助のための日本司法支援センターの業務の特例に関する法律」の有効期限の再延長について

 

日弁連は、本年7月20日付で「東日本大震災の被災者に対する援助のための日本司法支援センターの業務の特例に関する法律」(以下「特例法」)の有効期限の再延長を求める要望書を取りまとめ、7月24日付で法務大臣、各政党、衆議院法務委員会委員および参議院法務委員会委員宛てに提出した。


2012年3月に成立した特例法によって、東日本大震災の被災者は、生活再建に関わるさまざまな法的手続や生活再建を阻害しかねない法的紛争などについて、無償で弁護士等に相談することが可能となっている。また、震災に起因する法的紛争については、償還が猶予されるなど当初弁護士の費用の心配をすることなく弁護士による代理援助を受けることが可能となっている
2016年度においても、特例法による法律相談援助件数は5万2995件、代理援助件数は471件を数え、特例法は、今なお、被災者の生活再建や被災地の復興に大きな役割を果たしている。
しかし、特例法は、時限法であり、一度有効期限が延長されたものの、2018年3月31日に失効すると規定されている。このまま失効すれば、なお続いている被災者の生活再建や被災地の復興にブレーキを掛けることになりかねない。被災者の生活再建や被災地の復興を十全に、かつ、確実に実現するためには、特例法の有効期限をさらに3年間延長することが必要である。


(総合法律支援本部 本部長代行 谷萩陽一)


*要望書全文は、日弁連のウェブサイトでご覧いただけます。

 

日弁連短信

 

弁護士、弁護士会の「国際化」

 

道あゆみ事務次長 通信や移動手段が飛躍的に発達し、もの、人、情報が容易に国境を超えるようになりました。それとともに、日本の弁護士、弁護士会の「国際化」の要請は、その強さ、多様さを増していると感じます。
弁護士の国際的役割への期待は、司法制度改革審議会で、すでに「21世紀における国際社会において」「法曹の役割の重要性が一段と強く認識される」などとされていました。こうした認識を受け継ぎ、政府の下、弁護士の国際的な活動領域の拡充が本格的に議論されるようになりました。最近では、「経済財政運営と改革の基本方針2017」(いわゆる骨太方針)で、中小企業等の海外展開支援、法制度整備支援、国際紛争への対応等の強化に言及がなされています。
会内でも、国際交流、国際人権、国際業務推進等をテーマとした各種委員会が、活発な取り組みを進めています。2015年には、会長を議長とする国際戦略会議が設置され、その成果の一つとして、「国際戦略(ミッション・ステートメント)」が策定されました。
こうした会内外の動きに呼応するかのように、日本の弁護士が、世代や地域を超えて国際化していると感じます。その傾向は、国際司法支援活動や中小企業海外展開支援事業に関わる弁護士、あるいは国際化に関わる研修参加者の増加等に現れています。
さらに今年は、ローエイシアの年次大会が東京で開催されます。その運営は同大会の組織委員会が担ってきましたが、日弁連もまた、関係機関や各弁護士会のご協力を得つつ、全力で準備を進めてきました。本号がお手元に届くころは、大会の直前です。人権、司法、ビジネス、家事法といった多様なプログラムを擁し、多くの若い世代が参加、活躍する歴史的大会になると期待します。
最後に。国際化とは、単に活動の場が国境を超えることではなく、他国や国際社会の情勢に照らし自らを見つめ直すことではないかと思います。日本の弁護士、弁護士会の課題の一つは、ダイバーシティとも言われます。世代や性別、地域を超え、多くの課題を共有する会員同士、それぞれの個性と役割を尊重し、前向きに熟議を重ね、行動することこそ、私たちの「国際化」の本質的課題と感じます。

(事務次長 道あゆみ)

 

全国一斉
「銀行カードローン問題ホットライン」を実施

本年8月1日を中心に全弁護士会において「全国一斉銀行カードローン問題ホットライン」(以下「ホットライン」)を実施し、全国で351件もの電話相談が寄せられた。
相談の中には、支払能力を明らかに超過した過剰融資が行われている事例も散見された。改正貸金業法の下、貸金業者による過剰融資や多重債務被害は大きく減少したが、近時、貸金業法の規制対象外である銀行等による消費者向けの貸し付けが拡大しており、新たな多重債務被害の要因となっているとの指摘がなされている。
日弁連は2016年9月16日付で「銀行等による過剰貸付の防止を求める意見書」を公表し、銀行カードローンの法規制等を求めているところであるが、ホットラインに多数の相談が寄せられたことは、銀行カードローン問題が新たな多重債務の原因となりつつあることを裏付けている。
今後、消費者問題対策委員会では、ホットラインに寄せられた相談内容を分析し、銀行カードローンの法規制を実現するための提言等に活用していくこととしている。

(消費者問題対策委員会 副委員長 辰巳裕規)

 

中小企業の海外展開支援に関する取り組み 

スタートアップ研修のご案内

 

日弁連の取り組み

昨今、アウトバウンド型の海外進出と貿易取引のほか、インバウンド投資や外国客が激増し、中小企業事業者向け渉外法務のニーズが全国に広まりつつある。
日弁連は、全国津々浦々の中小企業が地元の弁護士から渉外サポートを受けられるようにすることを目指して2012年にワーキンググループを設置し、渉外弁護士へのアクセスに悩む中小企業への弁護士紹介事業、人材育成のための研修やセミナー等の活動を進めてきた。また、eラーニング研修に法律英語、国際取引、海外進出など幅広いプログラムを用意し、毎年新しい講座を追加している。

 

スタートアップ研修

とはいえ、外国語や外国法の絡む渉外業務には心理的ハードルがあり、なかなか関心が集まらないという現実も否定できない。そこで、日弁連、全国の弁護士会および弁護士会連合会の共催で、中小企業向けの基礎的な渉外法務に関する導入啓発的な「スタートアップ研修」を企画した。これまで沖縄、宮城、広島、北海道、新潟で実施し、今後は香川(10月20日)、栃木(11月10日)、と続き、福岡、近畿、中部でも行う予定である。
「留学経験がなくても外国語の取引契約や外国法の問題を扱えるのか?」「国内業務と兼業でも扱えるようになるには何が必要なのか?」といった疑問に答え、具体的な仕事のイメージをつかめるよう、渉外業務に取り組む第一線の弁護士が講師を担当している。ぜひ受講し、渉外業務に関心を持っていただきたい。


(中小企業の海外展開業務の法的支援に関するワーキンググループ座長 武藤佳昭)

 

シンポジウム
養育費・婚姻費用の新算定方式・新算定表の提言
子どもの最善の利益のために
7月12日 弁護士会館

養育費・婚姻費用の新算定方式・新算定表公表記念シンポジウム「養育費・婚姻費用の新算定方式・新算定表の提言-子どもの最善の利益のために」


日弁連は、2016年11月15日付で「養育費・婚姻費用の新しい簡易な算定方式・算定表に関する提言」を公表し、本年7月には、両性の平等に関する委員会編の書籍「養育費・婚姻費用の新算定表マニュアル―具体事例と活用方法―」を出版した。新算定方式・新算定表の仕組みと使い方を周知し理解を深めることを目的として、シンポジウムを開催した。 


基調講演

両性の平等に関する委員会の竹下博將特別委嘱委員(第二東京)が、現算定方式・現算定表の問題点として、①収入の少ない側が子どもを引き取った場合に、世帯人数は義務者より多いが、生活費は義務者より少なくなる事例が数多く生じること、②住居費は世帯人数が多い方が高くなるはずだが、養育費の算定に現実の住居費が反映されないため、権利者の生活レベルが下がりがちとなること等を指摘した。
その上で、これらの問題点を解決するために、新算定方式・新算定表では、子どもの年齢区分を2段階から3〜4段階に、基礎収入を総収入の4割から6〜7割に修正する等しており、より生活実態に即した養育費・婚姻費用を算出することができると説明した。


パネルディスカッション

赤石千衣子氏(NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ理事長)は、子どもたちが貧困に苦しむことなく生き生きと生活できるよう、新算定方式・新算定表が普及することを強く望むと発言した。
原千枝子氏(養育費相談支援センター長)は、養育費について、決定のみならず支払いの履行まで確保することが、子どもの貧困問題の解消につながると述べた。
松本哲泓会員(大阪/元関西大学法科大学院教授、元裁判官)は、新算定方式・新算定表を普及させるためには、説得力のある理論的根拠や実証が必要であると述べた。
小川富之教授(福岡大学法科大学院)は、養育費を立て替え払いして回収する国や税金として徴収する国もあることを紹介し、新算定方式・新算定表の定着は、子どもの貧困問題の解消に向けた第一歩にすぎず、養育費・婚姻費用の支払いを確保するための取り組みをさらに推し進めるべきであると訴えた。

 

研修会
法廷通訳に関する研修会
通訳におけるメモと記憶のメカニズム
8月1日 弁護士会館


メモと記憶のメカニズムを題材に、通訳を巡る研究その他科学的知見に関する講義やメモ取りについての実演型研修を行い、要通訳事件における弁護の質の向上を目指すため、研修会を開催した。


第1部では、1分程度の文書を読み上げ、実際に受講者にメモを取ってもらう実演型研修を行った。多くの受講者は、固有名詞等の扱いに慣れていないため、文書内容の半分以下しかメモを取ることができず、その難しさを改めて実感する機会となった。
第2部では、第1部を受け、要通訳事件において弁護人、通訳人双方が知っておくべき多数の情報が紹介された。
吉田理加氏(順天堂大学講師/司法通訳者・スペイン語)は、通訳には、内容を把握・理解するリスニング能力、短期記憶力、ノート・テイキングの技術などが必要であると指摘した。人が一度に記憶できる単語は5~9語程度にすぎず、日付、固有名詞、専門用語等のなじみの薄い言葉は短時間で忘れてしまうため、即座に筆記すると良いと助言した。
また、水野真木子教授(金城学院大学)は、法廷通訳は、人となりや心情なども表現しなければならず、「えー」「あー」などの間をもたせるような非言語要素をいかに表すかが重要であると述べた。
馬小菲氏(就実大学非常勤講師/司法通訳者・中国語)は、証人尋問や被告人質問では、対象者が興奮するなどして発言時間が長くなることが多いため、事前に裁判官に対し、質問と回答を細かく区切る訴訟指揮を求めておくと良いと指摘した。
続いて、これらの講義等を踏まえて再度メモ取りを実演したところ、多くの受講者から、1回目より正確にメモを取ることができたとの感想が述べられた。
最後に、日弁連刑事弁護センターの寺田有美子幹事(大阪)は、誤訳を防ぐためには、通訳人が努力するだけではなく、弁護人が事前に公判資料を開示し、難しい法律用語を使わないこと等により、相互に協働する必要があると指摘した。 


弁護士職務の適正化に関する全国協議会
8月4日 弁護士会館


市民窓口、紛議調停、懲戒制度運用をテーマに、各弁護士会から担当弁護士や担当職員が出席し、2つの協議会を開催した。いずれの協議会においても、苦情や紛議調停への対応、懲戒手続の適切な運用などにつき、弁護士職務の適正化の観点から活発な意見交換がなされた。

 

第5回市民窓口及び紛議調停に関する全国連絡協議会

市民窓口における苦情申立件数の増加割合が弁護士数の増加割合を上回っている現状、苦情申し立てに対する市民窓口の対応状況等について各地の情報を共有した。その上で、市民窓口は市民と弁護士会とのコミュニケーションの窓口であり、窓口担当者にオンブズマン的立場の者を充てることで、結果的に不祥事発見の端緒となり得るとの考え方が示された。また、紛議調停も申立件数が増えており、中でもその理由の6割強を占める弁護士報酬の問題について、事件処理の段階や依頼者・弁護士の帰責性との関係が議論された。さらに、弁護士法人は複数の弁護士会の会員となることも多く、弁護士法人の業務を監督する主体や方法に関するルールを設けるべきとの意見が述べられた。


第4回懲戒手続運用等に関する全国協議会

弁護士法第58条第2項に基づくいわゆる会請求や懲戒手続に付されたことの事前公表を行うに当たり実務上注意すべき点を確認した上で、具体的事例を基に各手続の在り方について協議がなされた。
また、本年10月から、①依頼者保護制度として、預り金口座につき預り金口座であることを明示する文字の使用等が義務化されるとともに、依頼者見舞金制度が実施されること、②会員の職務や業務に関する問題についてサポート相談員が相談に応じる会員サポート窓口が創設されることが説明された。(1面参照)
そして、これらは弁護士不祥事対策の一環であり、2015年度に開始したメンタルヘルスカウンセリング等に加え、その取り組みをさらに強化していくことが確認された。

 

連続シンポジウム
社会保障制度改革に関する連続シンポジウム
これからの日本の障がい者福祉制度
―制度後退を防いで権利性を確立するためには―
 7月13日 弁護士会館

 

2012年8月の社会保障制度改革推進法の制定以来、医療、介護をはじめとする社会保障制度が大きく変わろうとしている。日弁連は、社会保障制度改革の現状と課題について連続シンポジウムを開催しており、第2回目となる今回は障がい者福祉制度をテーマに取り上げた。

 

基調報告では、まず、茨木尚子教授(明治学院大学)が、障がい者福祉施策の歴史的経緯と現状の課題について報告した。茨木教授は、2016年7月に厚生労働省に設置された「我が事・丸ごと」地域共生社会実現本部において提唱された地域包括ケアについて、高齢者や児童に対するケアとの統合化は障がい者の要望と必ずしも合致しておらず、障がい者福祉の充実に資するものではないと指摘した。
また、増田一世氏(NPO法人日本障害者協議会常務理事)が、地域共生社会と障がい者福祉施策について報告した。増田氏は、障がい者福祉サービスの利用者が介護保険の被保険者にもなった場合に、サービスレベルを低下させないようにする必要があると説いた。
続いて、貧困問題対策本部の滝沢香副本部長(東京)が、憲法で保障された障がい者の権利に触れ、応益負担の撤廃や介護保険優先原則の廃止などの日弁連の姿勢を説明した。
基調報告後の意見交換では、内田邦子氏(同協議会理事)が、障がい者福祉サービスの利用者の立場から、単位時間の短縮やヘルパーの専門性の低下など、介護保険を利用した場合におけるサービス内容の後退について問題提起を行った。

 

高校生模擬裁判選手権
8月5日 東京・大阪・福井・高知

第11回高校生模擬裁判選手権を開催します!


全国の高校生たちが一つの事件を素材として、法廷で熱戦を交わす高校生模擬裁判選手権(第11回)が、今年も全国4都市で開催された。(参加校数合計26校。共催:最高裁、法務省、検察庁ほか)
各地域の優勝校(関東大会は2校)・準優勝校は別表のとおりとなった。
本稿では、関東大会の模様をお伝えする。 

模擬裁判

課題事案は、公園のトイレから出てきた高校教師の鞄の中から覚せい剤が発見されたというもの。教師は身に覚えがないと言っているが、元教え子は教師が密売人風の男に続いてトイレに入るのを目撃していた。争点は、教師に覚せい剤所持の認識があったか否かにある。
模擬裁判は、実際の法廷を使い、各参加校が検察側・弁護側に立場を入れ替えて2試合ずつ行う。裁判長役は弁護士が務め、審査員は弁護士、裁判官、検察官のほか、学者や報道関係者が務めた。


高校生たちの工夫各校とも工夫を凝らして主張・立証を行った

模擬裁判は、冒頭陳述、目撃者に対する証人尋問と被告人質問、最後に論告・弁論と実際の刑事裁判手続さながらに行われた。各参加校は、論告・弁論に当たり、審査員に分かりやすくするため、自分たちの主張や見取り図を記載した模造紙を掲げたり、身ぶり手ぶりを交えて説明したりと工夫を凝らしていた。


講評と感想

模擬裁判後の講評では、ある審査員から、本大会は11回目を迎え、年々レベルが高くなってきており、尋問や論告・弁論において実際の法曹と何ら遜色なく、臨機応変の対応ができていたとの評価が述べられた。また、別の審査員は、真実を必ず明らかにするという迫力と熱意にあふれた尋問であったと述べた。
関東大会で優勝した中央大学杉並高等学校の生徒は、指紋などの客観的証拠が少なく、推論によることが多く難しかったと語った。また、同点優勝の渋谷教育学園幕張高等学校の生徒は、準備中に意見の相違から仲間と激しく対立したが、そこで議論を尽くしたことが結果につながったとの感想を寄せた。

 

 

各会場の優勝校および準優勝校 
【関東大会(東京)】

優勝:中央大学杉並高等学校(東京)

    渋谷教育学園幕張高等学校(千葉)

    ※同点優勝

【関西大会(大阪)】
優勝:同志社香里高等学校(大阪)
準優勝:京都教育大学附属高等学校(京都)
【中部・北陸大会(福井)】
優勝:福井県立勝山高等学校(福井)
準優勝:福井県立藤島高等学校(福井)
【四国大会(高知)】

優勝:高知追手前高等学校(高知)

    ※優勝のみ

 

50周年を迎えて
日弁連交通事故相談センターの活動

公益財団法人日弁連交通相談事故センター(以下「センター」)は、本年9月で設立50周年を迎えました。「自動車事故に関する損害賠償問題の適正かつ迅速な処理を促進し、もって公共の福祉の増進に寄与すること」を目的に掲げ、交通事故における民事紛争の処理にまい進してきたセンターの歩みと現状について、大嶋芳樹副理事長(第二東京)、田島純藏副理事長(東京)、小林覚常務理事(第二東京)からお話を伺いました。

(広報室嘱託 大藏隆子)

 


左から田島純藏副理事長、小林覚常務理事、大嶋芳樹副理事長設立の経緯は

昭和30年代以降、日本国内では交通事故が激増しました。日弁連や各地の弁護士会が手弁当で交通事故相談を受けていた時期を経て、1967年9月、被害者救済のため、日弁連が設立母体となってセンターが設立されました。設立当初は66か所で相談事業を実施していました。


運営の原資は

年間5億7000万円の国庫補助金を受けているほか、日弁連や弁護士会、関係団体などから寄付を受けています。これらを基に担当弁護士の日当などを支出し、利用者負担のない形でさまざまな事業を行っています。


相談事業の実施状況は

面接相談と電話相談とがあり、いずれも無料です。
面接相談は、全国156か所で実施している1回30分間の通常相談と、全国8か所で実施している高次脳機能障害相談とがあります。後者では、専門的な知見を有する弁護士に時間制限なく相談ができます。
電話相談は、他分野に先駆け、センター設立2年目の1968年から実施しています。また、毎月10日(土日祝日に当たる場合は休日明けの平日)には、夜7時まで相談ができる一斉電話相談を行っています。
2016年度の面接相談は2万937件、電話相談は2万2425件で、合計4万3362件でした。ちなみに、年間の交通事故は49万9201件でした。


示談あっせん ・ 審査事業について教えてください

示談あっせんを行う部屋示談あっせんは、センターの弁護士が、示談あっせん申出人(多くは交通事故被害者)と相手方(保険会社・共済等の担当者)との間に入り、話し合いの場を設けて事件が解決するよう手伝うものです。人損や人損を伴う物損の事案は全て対象となりますし、賠償者が一定の保険や共済に加入している場合は、物損のみの事案も対象となります。もちろん無料で利用できます。
2016年度の新規受理件数は1179件、示談成立は992件で、示談成立率は83・99%でした。通常3回程度で示談に至っており、早期かつ適切な解決の場として利用されています。
審査は、示談あっせんが不調に終わった場合の手続で、全労済など9つの共済に加入している場合に利用できます。3人の審査委員からなる審査委員会が話し合いの結論として「評決」を出すと、9つの共済は評決の金額を尊重することになっています。


青本は赤い本とどこが違うのですか

青本(「交通事故損害額算定基準―実務運用と解説―」)は、改訂のたびに約1万5000部が売れており、センター東京支部が発行する赤い本と並ぶ法律実務書のベストセラーです。
センター内に研究研修委員会があり、その委員が会議を重ね、2年ごとの改訂作業を進めています。
もともと、赤い本は東京地裁版、青本は全国版というすみ分けがありましたが、現在は、赤い本が各地で用いられるようになっています。そこで、今の青本は、重要な判例をセレクトしつつも、実務の運用と解説を充実させる方向に展開して、1年ごとに改訂される赤い本との差別化を図っています。
最新判例を調べたいときには赤い本、基準などについてじっくり理解を深めたいときには青本などと使い分けていただくとよいと思います。年金逸失利益の生活費控除割合や車の評価損などの一覧表が載っていたり、後遺障害等級表に詳細な注がついていて等級ごとの違いを確認しやすいなど、青本ならではの工夫もしています。


その他の実施事業は

相談担当者の育成のため、さまざまな研修事業を実施しています。全国研修のほか、センター本部から講師を派遣し、各地の希望に沿ったテーマで実施する地方研修もあります。
また、センターでは、交通贖罪寄付を受け付けています。飲酒運転・スピード違反など、被害者のいない犯罪においては、特に有力な情状立証の手段になりますので、ぜひご活用ください。


弁護士・弁護士会へのメッセージをお願いします

弁護士の皆さんには、日々研さんを積んでいただき、一人でも多くの被害者が救済されるよう、交通事故事件に取り組んでいただければと思います。
今この瞬間も、多くの交通事故被害者が苦しんでいます。センターは、これからも全国での相談事業を充実させるために取り組んでまいりますので、弁護士会には、今後ともセンター各支部の活動へのご協力をお願いします。

 

第14回国選弁護シンポジウム
(於:横浜市)にご参加ください!


日時
2017年11月17日(金)13時〜17時(12時受付開始)


会場
ヨコハマグランドインターコンチネンタルホテル


内容
・早く行け!初動弁護のすすめ(黙秘、勾留阻止を中心として)
・パネルディスカッション「逮捕段階の公的弁護制度の実現に向けた当番弁護士制度の在り方」


 

都会と歴史と自然が凝縮された神奈川県にぜひお越しください

みなとみらい21地区国選弁護シンポジウムは、1987年に第1回が開催されてから2年または3年に1回開催され、国選弁護を巡るさまざまな問題点や、新たな制度の確立に向けた取り組みについて検討を重ねてきました。今回のシンポジウムでは、「もう待てない!逮捕段階からの全件弁護の実現を」をテーマに、身体拘束からの早期解放に向けた弁護活動の紹介と、あるべき逮捕段階からの公的弁護制度についての検討を行います。全国から多くの皆さまのご参加を心よりお待ちしております。
さて、今回のシンポジウムの会場は、都市景観100選にも選定されたみなとみらい21地区にある、ヨコハマグランドインターコンチネンタルホテルです。ヨットの帆をイメージした外観は、皆さまもご存じではないでしょうか。シンポジウムと併せて、横浜の顔ともいうべきみなとみらい21地区や、隣接した馬車道、中華街など、横浜の観光名所をぜひ楽しんでください。
ところで、2016年4月、「横浜弁護士会」は「神奈川県弁護士会」に名称を変更しました。先ほどはシンポジウムの開催地である横浜のみなとみらい21地区を中心にご紹介しましたが、神奈川県の特色は、比較的小さい面積の中に、横浜や川崎といった都市部だけでなく、歴史や豊かな自然が凝縮されているところです。三浦半島から藤沢、茅ヶ崎など湘南地区へと続く風光明媚な海岸線、歴史ある寺社仏閣の集まる武家の古都鎌倉、戦国時代の城下町であり江戸時代の宿場町である小田原、古くは万葉集にも詠まれた湯河原温泉、全国有数の温泉街である箱根温泉のほか、県北部から西部に連なる丹沢の山々や渓谷の美しさも、ぜひ皆さまに体験していただきたいところです。


(第14回国選弁護シンポジウム実行委員会委員 伊藤武洋)

 

ブックセンターベストセラー
(2017年6月・手帳は除く)協力:弁護士会館ブックセンター

順位 書名 著者名・編者名 出版社名
1 携帯実務六法2017年度版 「携帯実務六法」編集プロジェクトチーム 編 東京都弁護士協同組合
2 新しい債権法を読みとく 山野目章夫 著 商事法務
3 駐車場事故の法律実務
−過失相殺・駐車場管理者の責任−
中込一洋・末次弘明・岸 郁子・植草桂子 著 学陽書房
4 実践!弁護側立証

大阪弁護側立証研究会 編

成文堂
5 割増賃金の基本と実務

石嵜信憲 編著

中央経済社
6 実務解説 民法改正
−新たな債権法下での指針と対応
大阪弁護士会民法改正問題特別委員会編 民事法研究会
7 弁護士の経営戦略−「営業力」が信用・信頼をつなぐ  髙井伸夫 著 民事法研究会
8 弁護士 裁判官 検察官 司法が危ない 権威と正義を失ったエリートたちの今(別冊宝島) 宝島社
9 量刑調査報告集Ⅳ 第一東京弁護士会刑事弁護委員会 編 第一東京弁護士会
10 判例による不貞慰謝料請求の実務[主張・立証編] 中里和伸・野口英一郎 著 LABO


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eラーニング人気講座ランキング(連続講座編) 2016年9月~2017年7月

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順位 講座名
1

交通事故の実務(全5回)

2 離婚事件実務(全5回)
3 労働問題の実務対応(全5回)
4

成年後見実務(全5回)

5 コーポレートガバナンス(基礎編)(全3回)
6 2013年度ツアー研修 相続分野(全4回)
7 English for Lawyers(会話編)(全4回)
8 弁護士のための企業会計(全5回)
9 2014年度ツアー研修 実務家のための民事弁護講義(全4回)
10 コーポレートガバナンス(中級編)(全3回)

お問い合わせ先 日弁連業務部業務第三課(TEL 03-3580-9927)