日弁連新聞 第523号

法制審議会民法(相続関係)部会における議論状況
相続法改正についての2回目のパブリックコメントについて(追加試案)

法制審議会民法(相続関係)部会は、2016年の中間試案に対するパブリックコメント(意見公募)を受けて同年10月18日から審議を再開し、本年7月18日まで10回の部会を開催した。
法務省は、中間試案後に示された新たな方策を中心に、期間を本年8月上旬から9月中旬として2回目のパブリックコメントを予定している。対象となるのは、以下の事項である。
(1)婚姻期間が20年以上である配偶者に対する居住用不動産の遺贈又は贈与についての持戻し免除の意思表示の推定。(2)最高裁判所平成28年12月19日の大法廷決定を受けた預貯金債権の仮払い制度。これについては、①審判前の保全処分によるもの(家事事件手続法200条2項の要件を緩和)と、②家裁の判断を経ないで一定の範囲の払戻しを認めるものが挙げられている。(3)相続開始後に共同相続人が遺産である預貯金の払戻しを受ける等遺産を処分した場合に生ずる計算上の不公平を是正する措置。これについては、①処分された財産が遺産分割時において存在するものとみなして遺産分割の対象とする方策と、②処分がなかった場合とあった場合の遺産分割における取得額の差額を民事訴訟で償金請求することができるという方策が挙げられている。(4)一部分割の要件の明確化。(5)遺留分減殺請求権の効力及び法的性質の見直し。これについては、遺留分減殺請求の効果を金銭債権化することを前提として、金銭債務の全部又は一部の支払に代えて受遺者等が指定する遺贈等の目的財産による現物給付を認める方策が挙げられている。
日弁連は、パブリックコメントについて意見書を作成するため、すでに各弁護士会および関連委員会に意見照会を行っているが、実務に対する影響が大きく、また、会員の興味も強いことから、今後も速やかに情報を提供していくこととしている。

(法制審議会民法(相続関係)部会バックアップ会議 座長 加藤祐司)

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*同部会での議論状況および資料等は法務省ホームページでご覧いただけます。



大崎事件
再審開始決定


本年6月28日、鹿児島地裁はいわゆる大崎事件第3次再審請求事件について再審を開始する決定をした。
請求人である原口アヤ子氏は、1979年10月、原口氏の元夫、義弟との計3名で共謀して被害者を殺害し、その遺体を義弟の息子も加えた計4名で遺棄したとして逮捕された。最高裁まで一貫して無罪を主張し争ったが、懲役10年の有罪判決が確定した。
服役後の1995年、再審請求を申し立て、2002年3月に鹿児島地裁は再審開始決定をしたが、即時抗告審において同決定は取り消され、その後も再審請求は棄却されていた。今回、最初の再審開始決定から15年の歳月を経て再び再審開始決定を得ることができ、本人の喜びはもちろん、弁護団としても感無量であった。
決定では、確定判決が認定した死因につき「タオルによる絞殺」であることを示す積極的な所見はなく、「共犯者」とされる3名の近親者の自白供述および「共犯者」の親族の供述はいずれも信用性が高くないとした。「疑わしきは被告人の利益に」という原則に立ち、供述の信用性の判断に当たって供述心理鑑定を有意な情報として高く評価する等、画期的な決定であった。
二度目の再審開始決定であり、原口氏が90歳と高齢であるにもかかわらず、検察は7月3日、即時抗告をした。正義の実現のためには、今少し時間がかかることとなった。

(人権擁護委員会大崎事件委員会特別委嘱委員/大崎事件再審弁護団団長 森 雅美)

 *日弁連は、6月28日、「「大崎事件」再審開始決定に関する会長声明」を、7月4日、「「大崎事件」再審開始決定に対する即時抗告についての会長声明」を発表しました。




裁判関係文書における旧姓使用について

最高裁判所は、本年9月1日から、裁判関係文書において裁判所職員に旧姓の使用を認める取り扱いを開始することとした。
この取り扱いは裁判官を含む常勤職員だけでなく、調停官、調停委員、司法委員等の非常勤職員についても同様に適用されるとのことである。
裁判所は、男女共同参画社会の実現に向けた社会情勢の動き等に鑑み、2001年10月から、一部の文書で旧姓使用を認めてきたが、今回、その対象範囲が拡大されることになった。

 


【お見舞い】

平成29年7月九州北部豪雨によって亡くなられた方々のご冥福をお祈りするとともに、被害に遭われた方々に対し、心よりお見舞い申し上げます。

 

最高裁判所裁判官候補者の募集について

最高裁判所裁判官のうち、鬼丸かおる裁判官(東京弁護士会出身)が2019年2月6日に定年退官を迎える予定です。
そこで、日弁連では後任候補者の推薦手続を進めています。以下の会員専用ページに掲載している「日本弁護士連合会が推薦する最高裁判所裁判官候補者の選考に関する運用基準」や「最高裁判所裁判官候補者の推薦基準」等を確認の上、同ページ掲載の履歴書を2018年3月30日(金)までに弁護士会連合会を通して、または直接日弁連の最高裁判所裁判官推薦諮問委員会にご提出ください。
また、会員が候補者を推薦するには、50人以上の会員の推薦が必要となります。応募に当たっては、推薦者50人以上の署名・捺印と共に、推薦届もご提出ください。

*詳細は会員専用ページをご確認ください(7月28日付お知らせ)。
HOME≫お知らせ≫2017年≫最高裁判所裁判官候補者の募集について



新事務次長紹介

小町谷育子事務次長8月1日付で、神田安積事務次長(第二東京)が退任し、後任には、小町谷育子事務次長(第二東京)が就任した。

 

小町谷 育子 (第二東京・48期)


新しい仕事を通じて多くの皆さまにお会いできることにわくわくしています。
法律業務も国境を超える時代。海外滞在の経験を業務に生かすことができれば幸いです。
会員の皆さまのお役に立てるよう一生懸命努めてまいります。ご指導とご協力を賜りますようお願い申し上げます。

 

 

 

ひまわり

最近、韓国の大法院電算情報センターで、裁判・登記・戸籍の電子化の状況を見学した。ほぼ全ての民事訴訟においてインターネット経由で提訴・裁判書類の提出・電子裁判記録の閲覧等ができる。法廷ではモニターに書類が表示され、事件記録は電子保存される。弁論・証拠調べ期日への出廷や証人尋問等の訴訟運用は電子化されておらず、我が国とほぼ同じである。

我が国でも本年6月に政府の「未来投資戦略2017」に裁判に係る手続等のIT化推進方策の検討が掲げられた。弁護士は裁判手続の最大かつ直接的な利用者であるので、日弁連は、会員の声を適切に収集・集約することにより、裁判手続のIT化の方向性を利用者の視点から主導できる立場にある。

ただし、統計データや客観的・実証的検証の裏付けがない理念的な意見が、政府に採用されることはない。裁判手続のIT化の方向性について日弁連の意見が採用されるためには、政府が持つ統計データを前提に、意見の論拠となる独自の統計データや客観的・実証的検証が不可欠である。

「論より証拠」を旨に、意見の論拠となる統計データの収集(統計的に意味がある会員アンケートの実施と分析等)や客観的・実証的検証を行う能力を向上させていくことこそが、日弁連の喫緊の課題である。

(G・T)

 

院内学習会
いわゆる共謀罪に関する院内学習会
6月21日 参議院議員会館


日弁連は、いわゆる共謀罪が刑事法の体系を根本から変え、市民の人権や自由を広く侵害する恐れが強いものとして反対してきたが、本年6月15日、組織的犯罪処罰法等の一部を改正する法律(以下「改正法」)が成立した。
改正法成立を受け、いわゆる共謀罪の問題点を改めて確認し、今後の取り組みを検討するため、院内学習会を開催した。
当日は、改正法成立後にもかかわらず約150人の参加者が集まった(うち国会議員の本人出席4人、代理出席2人)。


講 演

松宮孝明教授(立命館大学大学院法務研究科)が登壇し、改正法の対象犯罪は犯罪捜査のための通信傍受に関する法律3条1項3号による通信傍受の対象とされる可能性があるとして、その問題点を指摘した。また、参議院本会議において、参議院法務委員会の中間報告がなされた上で、同委員会の採決が省略され、参議院本会議の採決が行われたことが国会法56条の3に規定する中間報告の要件を欠いていたと指摘し、今後は、改正法成立時の手続的瑕疵も重要な争点となり得ると述べた。


基調報告

共謀罪法案対策本部の海渡雄一副本部長(第二東京)は、改正法は憲法が保障するプライバシー権、思想・良心の自由、表現の自由などを侵害するだけでなく、国際人権法にも違反する法律であると訴え、今後、改正法の廃止・修正を求めていくとの決意を語った。


国会議員等のメッセージ

逢坂誠二衆議院議員(民進党・衆議院法務委員会理事)は、11年前のいわゆる共謀罪法案の審理の際には、与党修正試案が衆議院法務委員会に出されるなど、国会が政府提出法案をチェックする役割を果たしていたが、今回はそのような国会のチェック機能が働かなかったと指摘し、三権分立の危機を訴えた。
出席した他の国会議員も、改正法が恣意的に運用されないよう注視し、改正法の廃止を求めていくと述べた。
また、プライバシーに関する権利の国連特別報告者であるジョセフ・カナタチ氏からは、人が作った法律である以上、人の力で廃止できるとして、改正法の廃止に向けた行動を求めるメッセージが寄せられた。

 

核兵器禁止条約の制定に向けて交渉を行う国連会議に参加して
ニューヨークの空の下で 副会長 和田 光弘

 


核兵器禁止条約の制定に向けて交渉を行う国連会議の第2会期(6月15日〜7月7日)がニューヨークの国連本部で開催され、5月22日にホワイト議長が示した核兵器禁止条約草案(以下「草案」)について議論が行われた。
日弁連は、6月6日に「「核兵器禁止条約」の早期実現を求める会長声明」を発表して草案への賛意を示すとともに、和田光弘副会長および憲法問題対策本部の新倉修幹事(東京)を現地に派遣した。
国連会議における発言内容等について、和田副会長に寄稿を依頼した。

 

ホワイト議長(左)と話す和田副会長(右)6月19日、核兵器禁止条約の制定に向けて交渉を行う国連会議に、日弁連代表として参加しNGOの立場で発言した。
日程上6月19日の1日しか参加できず、草案の1条(禁止行為の範囲)に関連させた発言となった。発言時間確保のための英文メールからスピーチ原稿の作成やその練習と冷や汗の連続だった。そもそも国連本部にどうやって入場するのかさえ知らなかった。先遣隊の新倉幹事がいなければ、12時間かけてニューヨークの空を見ただけで帰ってきたかもしれない。
過去を調べると、日弁連は1954年に核兵器廃絶宣言をし、1978年には「核兵器使用禁止条約案」を取りまとめ、当時のワルトハイム国連事務総長に提出している。そうした先輩の業績に言及し、草案1条が禁止する「核兵器の使用」を広く解釈し、「威嚇のための使用」を含めるようにとの意見を述べた。また、1955年に下田隆一さんら5人の「ヒバクシャ」が国を相手に損害賠償請求訴訟を起こした「シモダ・ケース」を取り上げ、世界で初めて裁判所が「原爆投下は国際法違反」との判決を下したことにも触れた。
最後に、核兵器使用が国際法・国際人道法に違反する点の確認こそ条約のスタートでありゴールだ、「核兵器のない世界」を目指しましょう!と声を張り上げた。拍手が聞こえたから、何とか伝わったのだろう。
今や、条約交渉は国家間プラス市民社会という構図だ。新鮮だった。ほっとして見上げたニューヨークの空は、私にとって忘れられないものとなった。
*当日の発言の様子は、国連のウェブサイト「UN Web TV」で視聴できます。
*核兵器禁止条約は、7月7日(日本時間同日深夜)、採択されました。


 

所有者不明土地問題への対応について

現在、所有者の所在が不明あるいは所有者の把握が困難な土地(いわゆる所有者不明土地)に関する議論が各所でなされている。
特に、公共事業の用地取得や災害対策等のために土地の活用が必要となった場合に、その所有者の探索や権利者との交渉に費用や時間を要し、対応に支障を来すことなどが問題視されている。
この問題に関して、有識者等で構成される所有者不明土地問題研究会は、本年6月26日、相続未登記等で所有者が分からなくなっている可能性がある土地の総面積が、九州全体の面積を上回る約410万ヘクタールに達するとの推計結果を公表した。
本年4月に自由民主党内に設置された所有者不明土地等に関する特命委員会は、本年6月1日に中間取りまとめを公表し、法改正も含めた措置を講ずるべきとの提言を行った。
また、「経済財政運営と改革の基本方針2017」(いわゆる骨太の方針2017)や「未来投資戦略2017」にも、登記制度や土地所有権の在り方等の中長期的課題について関連する審議会等で検討すべきとの記載が盛り込まれ、政府が今後この問題について予算を計上した上で政策課題として取り組む方針が示されている。
所有者不明土地問題については、このような国や政党などの動きのほかにも、土地家屋調査士や司法書士などの隣接士業もそれぞれの職域に応じた参画を検討しているようである。
日弁連としても、所有者不明土地問題について問題意識を持ち、今後の取り組み方針を検討の上、対応するための態勢を整備する方向で現在準備中である。

(事務総長付特別嘱託 橋本賢二郎)

 

シンポジウム
中小企業支援の新時代
〜弁護士は中小企業の成長に貢献できるか〜
7月10日 弁護士会館

日弁連は、本年5月26日の定期総会で「中小企業・小規模事業者に対する法的支援を更に積極的に推進する宣言」を採択した。 この宣言を踏まえ、2016年に全国の中小企業1万5000社を対象として実施していた「第2回中小企業における弁護士の活用に関するアンケート」(以下「ニーズ調査」)の結果を報告し、弁護士がいかなる場面で中小企業の成長に貢献できるか等を検討するため、シンポジウムを開催した。

 

ニーズ調査の報告

日弁連中小企業法律支援センターの佐瀬正俊事務局次長(東京)が、ニーズ調査の結果について、10年間に一度も弁護士を利用しなかったとの回答が55%を占めた一方、多くの経営者が雇用や債権回収の問題に直面していると回答したこと等の概要を報告した。
その上で、ニーズ調査は、中小企業の法的援助へのアクセス改善のための施策を立案・実行する際に有用であるとの評価を述べた。

 

講  演

ニーズ調査の分析・検討に関わった佐藤岩夫教授(東京大学社会科学研究所)が、法社会学の観点から講演を行った。講演では、中小企業の経営者が弁護士に相談しない要因について、弁護士と知り合う機会が少ないこと、弁護士報酬に関する情報が不足していること、弁護士を利用する必要性・有効性を見いだしていないことが指摘された。

 

パネルディスカッション

鈴木拓将氏(株式会社矢場とん代表取締役)は、約10年前から顧問弁護士に経営会議への出席を依頼し、予防法務に活用しているとの自社における弁護士の利用状況を語った。
阿部眞一氏(有限会社和泉屋菓子店代表取締役)は、中小企業の経営者は、弁護士の法的知識だけではなく、弁護士とのコミュニケーションを求めていると述べ、弁護士も経営者のニーズを捉え、相談しやすい存在になるべきだと訴えた。
飯田隆副本部長(第二東京)は、自らの経験に基づき、弁護士は案件ごとの採算にこだわるのではなく、長期的な視点をもって中小企業と共に仕事をし、その成長を支えていくのが良いとの意見を述べた。

 

第12回
ACLA/CCBEとの三極会議
6月17日−19日 中国・杭州

日弁連、中華全国律師協会(ACLA)および欧州弁護士会評議会(CCBE)の情報・意見交換の場としての三極会議が開催された。
日弁連からは中本会長、小原正敏副会長ほか3人が参加した。

 

今年のテーマは、①法曹の国際化、②法曹の情報化、③公益活動への弁護士の参加、④若手弁護士の育成、⑤法曹の利用・促進の5つであり、各団体の会務報告も行われた。
日弁連からは、中本会長が、人工知能(AI)が法律サービスに与える影響やその限界についての分析および技術革新に対応して新たな価値やサービスの提供を生み出す必要性、経験の共有と変化への手助け等の弁護士会の果たすべき役割について発表した。
技術革新に関連して、ACLAからは、中国最高人民法院主導の下、全裁判例をインターネット上で検索できるようになったこと、上海弁護士会では2016年から裁判所、行政機関(司法局および上海市役所)と弁護士をオンラインで結ぶプラットフォームを設置し、期日調整や裁判所への質問等のやり取りをオンライン化したことが報告された。
CCBEからも、AIの脅威という側面だけではなく、司法アクセス向上の可能性といった利点にも目を向ける必要があるとのコメントがあり、バランスの取れた意見交換がなされるとともに、法律サービス分野における技術革新に引き続き高い関心が寄せられていることが再確認された。
また、公益活動への弁護士の参加に関し、ACLAから、中国では、刑事事件について弁護士による弁護を受ける割合が低いことに対する懸念があり、その改善に取り組んでいるとの発言があり、日本や欧州での刑事弁護活動について積極的な質疑応答がなされた。
今年は、開催地杭州の地元弁護士会である浙江省弁護士会からも執行部を含め複数の弁護士が参加した。来年は日本で開催される予定である。

(国際室嘱託 皆川涼子)

 

取調べへの弁護人立会権に関する講演会
韓国における取調べへの弁護人参与実現の経緯と現状
6月23日 弁護士会館

2016年5月に成立した刑事訴訟法等の一部を改正する法律により一定の事件につき取調べの可視化が実現したが、取調べへの弁護人立会いについては、まだ実現の糸口をつかめずにいる。
既に弁護人参与(弁護人立会い)が法制化された韓国の制度実現に至る経緯、運用状況等を学び、日本における弁護人立会い実現の足掛かりとするため、講演会を開催した。

 

講  演

朴燦運(パク・チャンウン)教授(漢陽大学校/韓国弁護士)が、「韓国の弁護人参与制度の現況、問題点、改善方向」と題して講演を行った。まず、制度実現に至る経緯について、戦後の韓国で弁護人参与の制度・慣行がない中で拷問を伴う取調べが多くなされたこと、2003年には13回にわたり事実上の弁護人参与が認められた後14回目の取調べで突如不許可とされた事件(いわゆる宋斗律(ソン・ドゥユル)教授事件)が発生したこと、その不服申立事件で大法院(最高裁判所)が接見交通権や弁護人の助力を受ける権利、憲法の適法手続主義の趣旨等を踏まえて弁護人の参与を認め、2007年の法制化に繋がったこと等を説明した。
また、朴教授は、参与の時間が長時間に及ぶこと、法令に基づき検事が参与権を制限できること、参与により訊問調書(供述調書)の証拠能力を争うことが事実上困難となること等から、参与率が0・3%未満にとどまっている現状を指摘し、これらの問題を解決するため、大韓弁護士協会が刑事訴訟法の改正等に向けた取り組みを進めていることを報告した。

 

質疑応答および報告

続いて、事前質問に基づく質疑応答がなされ、朴教授は、弁護人参与制度をより実効性のあるものにするため、弁護人に対する捜査資料や捜査スケジュールの開示が重要であると指摘した。
また、安部祥太助教(青山学院大学)が講演等を踏まえた報告を行った。同助教は、韓国の改革の視点として、過去の清算と未来志向、憲法化と国際化、観念論ではない現実的な議論といった諸特徴が見られることを指摘しつつ、日韓両国の憲法上の類似性から、韓国大法院が憲法上の弁護人の助力を受ける権利や「適法手続」原則から弁護人立会権を導いている論理は、日本の立会権実現に向けた解釈としても成り立ち得ること、現実問題として韓国における立会いが停滞しているところ、それが解決されれば、日本の実務においても示唆が大きいこと等を述べた。


第7回
韓国・ソウル
日韓バーリーダーズ会議
6月30日/7月1日

本年度の日韓バーリーダーズ会議が韓国のソウルで開催された。この会議は、1987年以降日弁連と大韓弁護士協会との間で毎年行われてきた定期交流会を前身とし、2011年から開催されているもので、今回で7回目となる。日弁連執行部や弁護士会連合会の代表等39人が訪韓し、日韓合わせて約100人による会議と交流が行われた。

 

1日目は、京畿道城南市にある大法院(最高裁判所)電算情報センターを訪問し、韓国で導入されている「e裁判」の現状を学ぶとともに、書面の電子作成・提出を模擬体験した。
2日目の会議は2つのセッションに分かれ、セッション1では「弁護士の業務領域の拡大と弁護士会の役割」をテーマとして議論が行われた。日本からは、企業内弁護士、任期付公務員、児童相談所への弁護士配置に関して、その現状と拡充・サポートの取り組みが紹介された。韓国からは、企業内弁護士の増加、定着、地位向上への取り組みのほか、既に導入された遵法支援人制度の活性化や法務担当官制度における弁護士選任推進の取り組み、導入を目指すマンション監査制度に関する取り組みなど、日本にはない制度や取り組みが紹介された。

セッション2では「法曹養成問題」がテーマとされ、韓国からは、弁護士試験合格者の研修の方法や適正な弁護士数を巡る考察、ロースクールの在り方に関する議論、法曹一元制の現状などが紹介された。日本からは、法曹養成制度改革の成果と課題、法科大学院の集中改革期間における取り組みの状況、新たな修習給付金制度の創設等のほか、弁護士の魅力をアピールする広報活動など法曹志望者を増やすための取り組みが紹介された。
ともに法曹養成制度改革を経験した両国には共通する課題も多く、質疑と意見交換が尽きなかった。

(国際室嘱託 尾家康介)

 

成年後見制度利用促進基本計画に関する連続学習会(第1回)
三類型(後見、保佐、補助)の判定と診断書等の在り方
7月5日 弁護士会館

2016年4月に成立した成年後見制度利用促進法に基づき、本年3月、成年後見制度利用促進基本計画(以下「基本計画」)が閣議決定されたが、そこに盛り込まれた施策には検討すべき課題も多い。
日弁連は、それらの諸課題に詳しい専門家等を講師とする連続学習会により、成年後見制度の改善・改革に向け議論を深めることとした。第1回目は、三類型の判定と診断書等の在り方をテーマに取り上げた。


五十嵐禎人教授まず、久保厚子氏(全国手をつなぐ育成会連合会会長)と日弁連高齢者・障害者権利支援センターの矢野和雄事務局長(愛知県)が順に登壇し、三類型に関わる問題提起を行った。
久保氏は、知的障がい者の親の立場から、重度知的障がい者は現行の診断書式では後見類型に該当するが、後見制度では本人の意思が尊重されないため、多くの知的障がい者の家族が制度利用をためらっていると実情を報告した。
矢野事務局長は、日弁連が基本計画の案に対するパブリックコメントとして提出した意見書に基づき、後見類型が過度に広く適用されている状況を改め、保佐・補助類型の適用を広げるため、現行の診断書式を再検討する必要があると指摘した。
続いて、五十嵐禎人教授(千葉大学社会精神保健教育研究センター)が講演を行い、処理すべき情報量の大小に応じて必要とされる意思能力には差があり、年金収入だけで暮らしている人と、数億円の資産を保有している人とでは、財産管理のために求められる能力に大きな違いがあると述べた。
そして、本人の生活状況を把握していない医師が本人の財産管理能力を判定する現行の診断書式の不適切さを指摘し、この診断書式を改め、三類型に直結する判定の記載をやめるべきだと提言した。
また、五十嵐教授は、本人の生活状況に関しては、福祉専門家からソーシャルレポートの提出を受け、裁判官が、診断書だけではなく、ソーシャルレポートや調査官調査を基に総合的に三類型を判定すべきとの見解を示した。

 

JFBA PRESS -ジャフバプレス- Vol.124

国連子どもの権利委員会
大谷美紀子委員に聞く


2016年6月、国連子どもの権利委員会(以下「子どもの権利委員会」)の委員選挙で大谷美紀子会員(東京)が当選し、本年3月、日本人初の子どもの権利委員会委員に就任されました。
委員就任から数か月経った現在、いかなる思いを持ち、いかなる問題に取り組まれているか等について、大谷委員からお話を伺いました。

(広報室嘱託 柗田由貴)


 

委員就任の経緯

国連には人種差別撤廃委員会、自由権規約委員会などの条約に基づく委員会があり、これらの委員会の委員は、対象となる条約を批准した国・地域から選出されます。日本では、政府が委員候補者として学者を指名することが多く、弁護士の委員は、2008年に女性差別撤廃委員会の委員に就任され、2015年から2年間委員長を務められた林陽子会員(第二東京)だけでした。
私は、国際人権法などを専門とし、コロンビア大学国際公共政策大学院修士課程(人権人道問題専攻)在学中に国連人権高等弁務官事務所のインターンを経験したり、日弁連などNGOの一員として国連の諸会議に参加したりしてきました。また、子どもや女性その他人権問題を扱う国連総会第三委員会に政府代表代理として出席した経験もあり、今回、日本政府の指名を受け、日本人として初めて子どもの権利委員会の委員に立候補しました。
子どもの権利委員会は18人の委員で構成され、任期は4年、2年ごとに半数の9人が改選となります。196の締約国・地域による選挙の結果、私は152票を獲得し、エチオピアの候補者(当時、委員長)とともにトップ当選となりました。


委員会の活動

子どもの権利委員会は、子どもの人権の国際的な保障について定めた子どもの権利条約および2つの選択議定書の全部または一部を批准した国・地域から、批准後2年以内、その後は審査後5年ごとに提出される報告書を基に、条約の履行状況等を審査し、勧告を行います。
審査はジュネーブで行われ、2人ないし4人の担当委員を中心としつつも、全ての委員が報告書の内容を検討し、締約国の代表との対話に基づき、勧告を出します。


子どもの権利について世界・日本が抱える問題

審査をしていると、子どもの権利に関するあらゆる問題に直面します。暴力・虐待、精神障がいのある子どもを病院に閉じ込める等の自由の制限、移民・難民申請者の子どもの取り扱い、性別・人種・国籍等による差別、家庭環境での養育、母乳で育つ環境の不整備、食品の安全、大気汚染、望まない妊娠、飲酒やたばこなど、世界が抱える子どもの問題は多種多様です。
また、日本は、1998年、2004年および2010年に子どもの権利委員会の審査を受け、いじめ、自殺、性交最低年齢が13歳と低いこと、婚姻最低年齢の性差、児童ポルノ・援助交際、国際養子縁組の監視不足、障がいのある子どものインクルージョン(普通学級への受け入れ等)不足、過度に競争的な教育制度のストレス、人権救済機関の不存在、養育費未回収の問題、少年司法の問題等を指摘されました。婚外子の相続分差別やハーグ条約未締結など既に改善されたものもありますが、指摘された問題の多くは今なお課題として残されています。これらの中には法の改正や運用、弁護士実務に関わる問題も多数含まれていますので、皆さんにも是非関心を持っていただきたいと考えています。


委員として取り組みたい課題

子どもの権利条約の締約国・地域は、国連の人権条約の中で最も多いのですが、子どもの問題は、まだまだ人権問題というよりも、福祉の問題や社会問題として扱われています。子どもの問題が人権問題として正面から取り組まれるよう、子どもの問題の優先度や重要度を上げたいと思います。子どもの問題に真摯に取り組んでいるかは、それぞれの国・地域の予算の金額や配分、使われ方、効果検証の有無や内容などにも現れますので、審査の際にも留意しています。
また、女性に対する差別は子どもの段階から対処する必要があるため、特に、女児の問題に力を入れていきたいと考えています。

 

会員や弁護士会へのメッセージ大谷美紀子委員

人権に関する諸問題を扱う上で、実務家としての経験や感覚、専門性は非常に重要です。弁護士が活躍・貢献できるフィールドは世界中にあります。その可能性や広がりをぜひ理解し、国内にとどまることなく、世界規模で活躍していただきたいと切に願っています。
もっとも、世界を相手に道を切り開くことは、会員がそのロールモデル等を知らなければ困難です。弁護士会は、様々な道を会員に積極的に紹介し、会員が世界に羽ばたくための後押しをしてほしいと思います。

 

第60回人権擁護大会・シンポジウム(於:大津市)にご参加を!

10月5日・6日、大津市で第60回人権擁護大会・シンポジウムが開催されます。当日参加も可能ですので、ぜひご参加ください。

 

困っている人の味方「ナヤマズン」

シンポジウム
2017年10月5日(木)12時30分~18時

●第1分科会「あらためて問う『犯罪被害者の権利』とは~誰もが等しく充実した支援を受けられる社会へ~」

びわ湖大津プリンスホテル コンベンションホール「淡海」1~5

 

●第2分科会「情報は誰のもの?~監視社会と情報公開を考える~」

びわ湖大津プリンスホテル プリンスホール

 

●第3分科会「琵琶湖がつなぐ人と生きものたち~市民による生物多様性の保全と地域社会の実現をめざして~」

びわ湖大津プリンスホテル コンベンションホール「淡海」8~10

 

大会
2017年10月6日(金)10時~17時
びわ湖大津プリンスホテル コンベンションホール「淡海」


 

歴史と湖の国、滋賀・大津へ。~滋賀弁護士会~

日弁連の人権擁護大会は、全国の弁護士が、開催地の弁護士・弁護士会と触れ合う旅でもあります。滋賀弁護士会の会員は140人余りですが、各法律事務所の職員も含め、会員数を超える人員で、一丸となって歓迎の準備を整え、万全の態勢で皆さまをお待ちしております。
困っている人を見かけると、「悩まずに、相談してね」と声を掛けてくるという、心優しい滋賀弁護士会のキャラクター「ナヤマズン」は、ビワコオオナマズがモデルであり、人権擁護大会でも大活躍の予定です。
万葉集に、「淡海の海夕波千鳥汝が鳴けば情もしのに古思ほゆ」(柿本人麻呂)と、壬申の乱(672年)によって荒れ果てた、近江大津宮を偲んだ歌があります。会場の眼前に広がる碧い琵琶湖は、当時を偲ぶには少々近代的すぎるマンションとホテルと噴水に囲まれていますが、千鳥が波間に浮かび、騒ぐ姿は、やはりいにしえのままです。
なお、天智天皇(中大兄皇子)は、大化の改新の主人公であり、蒲生野(今の東近江)を舞台とした恋の歌、「茜指す紫野行き標野行き野守は見ずや君が袖振る」(額田王)と「紫の匂へる妹を憎くあらば人妻ゆゑに我恋ひめやも」(大海人皇子)の、隠れた主人公としても有名ですが、競技かるた(百人一首)をテーマとした漫画「ちはやふる」で一躍名を知られるようになった、近江神宮の祭神でもあります。天智10年4月25日に漏刻(水時計)を作り、大津宮の新台に置いて鐘鼓を打って時報を開始したとの伝承から、その日を太陽暦に直したのが、6月10日の「時の記念日」です。
また、「木曽殿と背中合わせの寒さかな」の句で知られ、木曽義仲や松尾芭蕉の墓所であり、伊藤若冲の天井絵のある義仲寺も、会場から徒歩で行ける距離です。大会後の10月7日・8日は、国指定重要無形民俗文化財「大津祭」の日です。宵山は、JR大津駅の近くでも鑑賞できますので、お帰り前に、大津事件の記念碑と併せてぶらり一巡りされてはいかがでしょうか。


(日本弁護士連合会第60回人権擁護大会滋賀実行委員会委員長 小川恭子)

 

ブックセンターベストセラー
(2017年5月・手帳は除く) 協力:弁護士会館ブックセンター

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3 駐車場事故の法律実務―過失相殺・駐車場管理者の責任― 中込一洋・末次弘明・岸 郁子・植草桂子 著 学陽書房
4 信託法[現代民法 別巻]

道垣内弘人 著

有斐閣
5 判例による不貞慰謝料請求の実務[主張・立証編] 中里和伸・野口英一郎 著 LABO
6 量刑調査報告集4 第一東京弁護士会刑事弁護委員会 編 第一東京弁護士会
7 弁護士の経営戦略―「営業力」が信用・信頼をつなぐ― 髙井伸夫 著 民事法研究会
8 事例に学ぶ契約関係事件入門―事件対応の思考と実務 契約関係事件研究会 編 民事法研究会
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審判では解決しがたい遺産分割の付随問題への対応―使途不明金・葬儀費用・祭祀承継・遺産収益分配等―

遺言・相続実務問題研究会 編 新日本法規出版
10 共有不動産の紛争解決の実務―使用方法・共有物分割の協議・訴訟から登記・税務まで― 三平聡史 著 民事法研究会

  

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3 責任能力の基礎
4 司法取引と刑事免責~知らなきゃ怖い2016年改正刑訴法~
5 裁判員裁判法廷技術研修
6 要通訳事件における法廷技術と法廷通訳~スキルアップのための研修~
7 2016年度ツアー研修 第2回 操作弁護~もう一歩前へ
8 知らなきゃならない2016年刑訴法大改正のツボ(第1部)
9 責任能力が問題となる事件の弁護活動
10 知らなきゃならない2016年刑訴法大改正のツボ(第2部)

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