日弁連新聞 第522号

第68回定期総会
「宣言・決議の件」など8議案を可決
5月26日東京都千代田区

 

東京都千代田区で開催された第68回定期総会では、2017年度予算が議決されたほか、外国法事務弁護士職務基本規程中一部改正などが可決された。
また、「日本国憲法施行70年を迎え、改めて憲法の意義を確認し、立憲主義を堅持する宣言」および「中小企業・小規模事業者に対する法的支援を更に積極的に推進する宣言」が採択された。
なお、来年の第69回定期総会は香川県で開催することを決定した。


決算報告承認・予算議決

2016年度の一般会計決算は、収入53億5241万円および前年度からの繰越金40億4295万円に対し、51億8648万円を支出し、次年度への繰越金は42億888万円となったことが報告され、賛成多数で承認された。

2017年度の一般会計予算は、事業活動収入55億2909万円に対し、事業活動支出58億5064万円、予備費1億円などを計上し、単年度では4億3755万円の赤字予算となっている。事業活動支出のうち複数の支出項目につき質疑や意見が出されるなど活発な議論が行われ、「死刑廃止及び関連する刑罰制度改革実現本部」の支出を削る修正動議が出されたが、採決の結果、修正案は否決され、原案が可決された。


外国法事務弁護士職務基本規程および外国特別会員基本規程中一部改正をいずれも可決

外国のABSに所属する外国弁護士の外国法事務弁護士としての登録に関し、外国法事務弁護士職務基本規程および外国特別会員基本規程に所要の改正を加えるもの。採決の結果、賛成多数でいずれも可決された。

*詳細は、本年6月号の本紙(1面)をご覧ください。


いずれの議案も賛成多数で可決された 「日本国憲法施行70年を迎え、改めて憲法の意義を確認し、立憲主義を堅持する宣言」を採択

日本国憲法施行70年を迎え、貧困の広がりとその連鎖、国家による自由への介入の強化、恒久平和主義に反する安保法制など立憲主義の危機ともいえる状況が生じていることに鑑み、あらためて日本国憲法の基本原理である基本的人権の尊重、国民主権、恒久平和主義と、それらを支える理念である立憲主義の意義を確認し堅持するため、今後も市民とともに努力を続けるとするもの。討論では、賛成する意見が相次ぎ、採決の結果、賛成多数で可決された。


「中小企業・小規模事業者に対する法的支援を更に積極的に推進する宣言」を採択

我が国の中小企業・小規模事業者は経済や雇用の主要な担い手でありながら、その法的支援が十分ではない現状に鑑み、弁護士会による相談・紹介制度の充実、費用面でのアクセス障害の解消等の諸取り組みを強化し、弁護士による法的支援を中小企業・小規模事業者に行き渡らせ、経営者・事業者、従業員などすべての関係者の暮らしと権利が守られる社会の実現を目指すとするもの。採決の結果、賛成多数で可決された。

 

法制審議会(民事執行法部会)の議論状況
民事執行法改正に向けて債務者財産の開示制度の実効性の向上などについて議論

2016年9月、法務大臣は、法制審議会に対し、①債務者財産の開示制度の実効性の向上、②不動産競売における暴力団員の買受けの防止の方策、③子の引渡しの強制執行に関する規律の明確化に関する諮問を行った。
これに基づいて法制審議会に民事執行法部会が設けられ、同年11月以降、民事執行法改正に向けた議論が重ねられている。


債務者財産の開示制度の実効性の向上

現行の財産開示手続の見直しとして、申立てに必要とされる債務名義の種類の拡大、不奏功等の要件の廃止、再実施制限の緩和、手続違背に対する制裁強化などが議論されている。  また、債務者以外の第三者から債務者財産に関する情報を取得する制度の創設が検討されており、弁護士委員は情報取得の対象を広く認めるべきであると主張しているが、部会内の議論では金融機関の預貯金債権に限定すべきとの意見も強い。


不動産競売における暴力団員の買受けの防止の方策

裁判所が警察の保有する暴力団員等の情報提供を前提に、審査の枠組み、警察への照会の時期、濫用的な執行抗告への対策、照会に必要となる情報の確認方法、暴力団員に該当しない旨誓約させる方法などが議論されている。


子の引渡しの強制執行に関する規律の明確化

国際的な子の返還に関するハーグ条約実施法の規律と比較しつつ、間接強制の前置、執行官の権限、いわゆる同時存在の原則、執行場所、子の年齢による制限、専門家の関与、執行機関などが議論されている。

◇               ◇

今後は中間試案がまとめられ、意見公募手続が実施される見通しである。部会では、日弁連が公表している意見と異なる主張がなされることもある。日弁連としては、今後とも議論の推移を注視し、対応を検討していく。

(法制審議会民事執行法部会バックアップ会議 副座長 鷹取信哉)



いわゆる共謀罪の創設を含む改正組織的犯罪処罰法の成立について

本年6月15日、いわゆる共謀罪の創設を含む組織的犯罪処罰法等の一部を改正する法律案について、参議院本会議において、参議院法務委員会の中間報告がなされた上で、同委員会の採決が省略されるという異例な手続により、採決が行われ、改正法が成立した。

日弁連は、同日付けで「いわゆる共謀罪の創設を含む改正組織的犯罪処罰法の成立に関する会長声明」を公表し、本国会における政府の説明にもかかわらず、①一般市民が捜査の対象になり得るのではないか、②「組織的犯罪集団」に「一変」したといえる基準が不明確ではないか、③計画段階の犯罪の成否を見極めるために、メールやLINE等を対象とする捜査が必要になり、通信傍受の拡大など監視社会を招来しかねないのではないか、などのさまざまな懸念が払拭されていないことを指摘した。

日弁連は、引き続き、本法律が恣意的に運用されることがないように注視し、今後、成立した法律の廃止に向けた取り組みを行っていきたい。

(事務次長 神田安積)

 

性犯罪に関する刑法の一部を改正する法律が成立

本年6月16日、性犯罪に関し、刑法の一部を改正する法律が成立し、主に次の点が改正された。

同法は、7月13日から施行される。


構成要件の見直し

従来の強姦罪・強制わいせつ罪の構成要件を見直し、行為者・被害者の性別を問わず、暴行・脅迫を用いて肛門性交・口腔性交をする行為等を従来の強姦と同様の重い類型とした上で、強姦罪の罪名を強制性交等罪とした。

 

法定刑の引上げ

前記の構成要件の見直しを行った上で、法定刑の下限を懲役3年から5年に引き上げ、被害者を死傷させた場合の法定刑の下限も懲役5年から6年に引き上げた。

 

監護者による性犯罪に関する規定の新設

18歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて、わいせつな行為または性交等をした者に対する罰則を新設した。


非親告罪化

強姦罪等を親告罪としていた規定を削除し、これらの罪を非親告罪とした。これらの非親告罪化された罪を改正刑法の施行前に犯したものについては、施行の際既に法律上告訴がされることがなくなっているもの(告訴が取り消された場合など)を除き、施行後は、告訴がなくても起訴が可能になる(経過措置)。

(事務次長 神田安積)

 

修習給付金の創設を感謝する会
若手法曹が輝く社会へ
6月6日 参議院議員会館


本年4月19日、裁判所法の一部を改正する法律が成立し、第71期司法修習生から修習給付金が支給されることになったことを受け、日弁連は、国会議員の方々と新たな制度創設の成果を共有するため、感謝の意も込めて集会を開催した。
集会には、約270人が出席した(うち国会議員本人出席52人、代理出席72人)。


会場の様子冒頭、中本会長が、尽力いただいた国会議員の方々、司法修習生に対する給与の支給継続を求める市民連絡会、ビギナーズ・ネット、弁護士会、会員への感謝の言葉を述べるとともに、安心して修習に専念できる環境の整備をさらに進める旨の決意を示した。

ビギナーズ・ネットの萱野唯代表(第二東京)は、本制度は三権の一翼を担う人材を国が責任を持って育てるとの応援メッセージであると語り、本制度の創設に向けた多くの方々の努力に謝意を表した。

集会に参加した盛山正仁法務副大臣は、修習給付金が社会に求められて創設された制度であると述べ、本制度の創設が、さらに法の支配が社会に浸透する契機となってほしいとの期待を寄せた。

参加した国会議員からは、新第65期から第70期司法修習生までのいわゆる谷間の世代の経済的負担が、改正法施行後に採用された司法修習生に比して重くなるなどの問題も残されている等の声も上がった。

 

日弁連短信

 

2019年審査に向けて~弁護士自治を護るために

 

事務次長 神田安積 私たち弁護士や弁護士法人が、マネー・ローンダリングとして疑わしい取引を報告する義務を回避して、弁護士自治を護るために自ら日弁連会規で定めた義務があります。それが、依頼者の本人確認義務や記録保存義務です。
2019年に、弁護士や弁護士法人が本人確認義務や記録保存義務を遵守しているか、弁護士会が義務を遵守していない会員に対して指導や是正措置を取っているか等について、FATF(金融活動作業部会)による審査(第4次相互審査)が行われます。審査の結果、仮に義務が適切に遵守されていない、日弁連が義務の履行状況を十分に把握していない等の指摘・評価がなされるに至った場合、義務の強化等が提案される可能性があり、内容によっては、弁護士自治に影響する事態もあり得ます。
そもそも依頼者の本人確認義務や記録保存義務のことを十分に理解していない方、また、自らの日常業務にマネー・ローンダリング等は無関係であると考えている方もいるかもしれません。日弁連に求められるのは、残された2年の間に、自ら課した義務の重要性を広く会員に周知し、義務の履行状況を実証的に示すことができるようデータを収集することです。
そこで、審査への準備の一環として、各会員に日々の弁護士業務に即してマネー・ローンダリングのリスクを把握し、義務の遵守体制を構築する契機としていただくために、全会員対象のアンケート調査を実施する予定です。
また、現在の規程等では、全会員の義務の履行状況を把握する手段がなく、そのため是正措置を効果的に実施することもできません。したがって、2019年の審査に対する準備に万全を期すべく、規程等を改正して義務の履行状況の報告を義務化することを検討しています。

会員の皆さまのご理解とご協力をお願いする次第です。

(事務次長 神田安積)

 

第54回市民会議
いわゆる共謀罪および弁護士保険(権利保護保険)について議論
6月9日弁護士会館

 

2017年度第1回目の市民会議では、いわゆる共謀罪および弁護士保険(権利保護保険)について、現在の状況や日弁連の取り組みなどを報告し、議論を行った。

 

いわゆる共謀罪について

共謀罪法案対策本部の山下幸夫事務局長(東京)が、いわゆる共謀罪法案について、「組織的犯罪集団」等の文言が不明確であること、テロ対策・国連越境組織犯罪防止条約締結のために不可欠ではないことなどの問題点をあらためて指摘し、意見書や会長声明の公表、反対集会やシンポジウムの開催等の日弁連および弁護士会の取り組みを報告した。

委員からは、日弁連の意見や取り組みに理解を示す声が上がる一方、市民生活に及ぼす影響などが市民に分かりやすく伝わっていないとの声や、全面的な反対運動を展開しつつも、それが奏功しない場合に備えた次善の策を検討しておくことも必要ではないかとの声も上がった。


弁護士保険(権利保護保険)について

和田光弘副会長が、弁護士保険(権利保護保険)について、保険の内容や保険金支払対象となる事由を紹介し、販売件数とLAC取扱件数ともに大幅に増加していること、交通事故以外の一般民事事件にも適用対象が拡大するなど司法アクセス改善に寄与していることを説明した。さらに、ADRの設置、新保険開発のための保険会社との協議等の近時の日弁連の取り組みを報告した。

委員からは、弁護士保険が交通事故以外でどのような場合に利用できるか知られていないとの指摘や、弁護士保険の存在・内容等を周知させるため、例えば、「弁護士費用」の保険であることを名称上も明らかにする、労働者団体やその組合員と連携して広報を行うなどの工夫が必要ではないかとの意見が述べられた。


市民会議委員 (2017年6月9日現在)(五十音順)

井田香奈子 (副議長・朝日新聞大阪本社社会部次長)
長見萬里野 (全国消費者協会連合会会長)
北川正恭 (議長・早稲田大学名誉教授)
清原慶子 (三鷹市長)
神津里季生 (日本労働組合総連合会会長)
ダニエル・フット (東京大学大学院法学政治学研究科教授)
中川英彦 (元京都大学法学研究科教授)
松永真理 (セイコーエプソン株式会社社外取締役)
村木厚子 (前厚生労働事務次官)
湯浅 誠 (社会活動家、法政大学現代福祉学部教授)

 


新事務次長紹介
添田 真一(1994年入局)

添田 真一松本敏幸事務次長の後任として、7月1日、添田真一前法制部長が事務次長に就任した。

 

添田 真一 (1994年入局)


 旧会館だったころの日弁連事務局に採用いただき、20年以上が経過しました。今も昔も日弁連の根幹は弁護士自治にあることを踏まえ、日弁連の在り方を事務局職員として考えながら、会務を下支えする事務局機能のさらなる充実・強化に努めます。

 

 

 

FATF第4次対日相互審査とアンケート要請について

 

日弁連は、「依頼者の本人特定事項の確認及び記録保存等に関する規程」および同規則(以下「本規程等」)を定めている。本規程等に基づき、弁護士および弁護士法人は、依頼者の本人確認義務、記録保存等の義務を負っている。

 

FATFによる第4次相互審査

今般、マネー・ローンダリング対策に取り組んでいる政府間組織であるFATF(金融活動作業部会)による第4次相互審査が、日本に対して2019年に実施されることとなった。
第4次相互審査のうち日弁連に対する審査は、各会員の本規程等の履行状況が主たる対象となる。

審査の結果、仮に、本規程等が適切に履行されていない、あるいは日弁連が本規程等の履行状況を十分に把握していないなどの指摘・評価がなされるに至った場合、「義務不履行」の評価がFATFによってなされるとともに、義務の強化や義務履行監督体制の強化が提案される可能性がある。その内容によっては弁護士の職の根幹を侵し、また弁護士自治に影響する事態もあり得る。

 

全会員アンケート調査の実施

日弁連としては、2019年に向けて、弁護士自治を護るためにも、会員が本規程等で定められた依頼者の本人確認義務や記録保存義務を遵守しているかなどについて、データをもって実証的に示すことが求められることとなる。

そこで、第4次相互審査への準備の一環として、まず、本規程等に関する全会員アンケート調査を実施することとなった。アンケート調査の目的は、各会員において、自らの弁護士業務に即してマネー・ローンダリングのリスクを把握し、本規程等の遵守体制を構築するきっかけとすることである。

アンケート調査は、会員専用ページから直接ウェブにて、またはファックスでも回答可能である(回答期限は8月末日を予定)。できる限り多くの会員に回答の協力をお願いしたい。

 (FATF第4次対日相互審査対応に関するワーキンググループ 座長 伊東 卓)

*2面(日弁連短信)も併せてご参照ください。

 

第26回憲法記念行事シンポジウム
戦後を支えてきたものは?
憲法施行70年目の立憲主義〜何を守り何をめざすのか〜
5月27日 弁護士会館

施行70年を迎えた憲法が基盤とする「立憲主義」がなぜ重要なのかを探求するため、シンポジウムを開催した。会場には約600人が参加した。 (共催:東京弁護士会・第一東京弁護士会・第二東京弁護士会)

 

会長挨拶

冒頭、中本会長が、前日開催の定期総会で「日本国憲法施行70年を迎え、改めて憲法の意義を確認し、立憲主義を堅持する宣言」が採択されたことを報告し、日弁連は、今後も市民とともに、憲法の基本原理とそれを支える立憲主義の理念を守る努力を続けるとの決意を表明した。

 

石川健治教授基調講演

石川健治教授(東京大学法学部)が、「日本国憲法と立憲主義」と題して基調講演を行い、立憲主義は、時の政治権力により国民の権利が侵されないようにする仕組みであり、目的に基づく手段の合法性の観点から歯止めをかける役割を担うものであると説明した。また、現在、日本に対する武力攻撃等への対応という合目的性が前面に押し出され、立憲主義による歯止めが効かなくなっていると述べた。

 

リレートーク・憲法前文の朗読

教育、学問、貧困対策、福祉、医療、国際貢献の諸活動に携わる市民が登壇し、それぞれの暮らしの中で立憲主義が垣間見える場面について、憲法の条文を紐解きながら語った。
続いて、俳優の加藤剛さんが憲法前文を朗読し、参加者はその意味をかみしめるように静かに聞き入った。


パネルディスカッション

石川教授のほか、上野千鶴子名誉教授(東京大学/ウィメンズアクションネットワーク理事長)、石田憲教授(千葉大学法政経学部)を迎え、パネルディスカッションを行った。
石川教授は、平和主義などの基本原理の改憲は、日本国憲法の死を意味し、クーデター・革命ともいえると指摘した。
上野名誉教授は、70年間選び守り続けてきた憲法を今後も選び続けるかの節目の年であり、改憲が現実味を帯びている今こそ真剣に議論すべきと述べた。
石田教授は、第9条の改正はアジア諸国にとって脅威となり得ると指摘し、改憲の是非は歴史的背景を踏まえて議論する必要があると訴えた。

 

シンポジウム
ちょっと待って!民法改正!知っていますか?成年年齢が20歳から18歳に?!
6月1日弁護士会館

民法の成年年齢を20歳から18歳に引き下げようとする動きが具体化しているが、その必要性について十分な説明や議論がなされているとは言い難い。未成年者取消権が消費者被害防止の最大の防波堤となっていることを踏まえ、被害拡大防止の観点から成年年齢引下げの問題を考えるためシンポジウムを開催した。


まず、河上正二教授(東京大学大学院法学政治学研究科/内閣府消費者委員会委員長)が基調講演を行った。河上教授は、本年1月の消費者委員会成年年齢引下げ対応検討WGの報告書を基に、成年年齢引下げを実施する場合、消費者被害防止のため、不当勧誘に対する取消権制度などの創設や十分な消費者教育がなされるまでの準備期間の確保が必要だと指摘した。

消費者問題対策委員会の中村新造委員(第二東京)は、選挙年齢と成年年齢を一致させる必然性はない、成年年齢を引き下げても飲酒・喫煙が認められるわけではないなど国法上の統一性は図られない、そもそも引下げの理由はなく国民も望んでいないと指摘した。

成年年齢引下げ問題PTの平澤慎一座長(東京)は、日弁連が本年2月に公表した「民法の成年年齢引下げに伴う消費者被害に関する意見書」について報告し、仮に引き下げる場合でも、消費者契約法・特定商取引法の改正や若年者に対する与信規制の厳格化の同時実施、消費者教育の充実が不可欠だと指摘した。

後半は、消費者団体・消費者教育支援機関・教育現場などの関係者がリレー報告を行った。

升本有紀氏(全国大学生活協同組合連合会全国学生委員長)は、当事者の立場から、大学生が訪問販売や宗教団体の勧誘などに多く遭遇していることを報告し、成年年齢引下げが行われると、大学入学や下宿を始める際に不適切な契約を締結させられるのではないかとの危惧を示した。

石川周子教諭(東京都立大江戸高等学校)は、成年年齢が18歳になると、例えば高校3年の生徒間にマルチ商法が広がった場合、生徒の中に未成年取消しが可能な者と不可能な者が混在することになり、教育現場が混乱に陥ると述べた。 

 

いわゆる共謀罪に関する法案に反対する国際シンポジウム
6月9日 弁護士会館

いわゆる共謀罪法案(以下「法案」)が衆議院で審議される中、国連人権理事会特別報告者のジョセフ・カナタチ氏(以下「カナタチ氏」)が法案に懸念を示す書簡を安倍首相に送付したことが明らかになった。

カナタチ氏から書簡の概要などの説明を受け、法案についてあらためて考えるため、シンポジウムを開催した。会場には約370人が集まった。


国外にいるカナタチ氏と会場をインターネット電話で中継し、インタビューに答える形式でカナタチ氏が発言した。

はじめに、カナタチ氏は、もともと日本のプライバシーに関する調査研究を行っていたこと、法案の審議期間が極めて短く設定されるなど諸外国に比して特異な手続が取られていたことなど、書簡の送付・公開に至った経緯を説明した。

その上で、カナタチ氏は、法案の問題点として、捜査機関の監視活動に対するプライバシー保障措置が不十分であることを指摘し、令状主義の強化、捜査機関から独立した監督機関の設置など適切な保障措置を整備する必要性を訴えた。

そして、法案の文言が不明確であること、処罰対象が広範に過ぎることを併せて指摘し、これらの問題点をあらためたとしても国連越境組織犯罪防止条約の締結に支障はないと述べた。

最後に、カナタチ氏は、このまま法案が成立した場合でも、日本政府に保障措置の整備を求め、国連人権理事会への報告を行うなどの取り組みを続けたい、日本社会をより良いものにするための手助けをしていきたいと語った。

継終了後、共謀罪法案対策本部の新倉修委員(東京/青山学院大学名誉教授)が、国連特別報告者の地位と役割などを概説し、日本政府が特別報告者に協力する義務を負うことを指摘した上で、プライバシー等の人権保障のため努力を続けていきたいとの決意を示した。

◇               ◇

*法案は6月15日、参議院本会議で採決され、成立しました。詳細は1面をご参照ください。

 

空き家対策シンポジウム
全国実態調査を踏まえて
5月22日弁護士会館

全国的に空き家が増加し社会問題となっている。日弁連では、自治体の空き家対策の実態を明らかにすべく、全国実態調査を実施した。

この結果を踏まえ、空き家対策の実効性を高めるにはどのような取り組みが必要であるかを考えるため、シンポジウムを開催した。


まず、北村喜宣教授(上智大学法学部)が基調講演を行い、2015年5月の「空家等対策の推進に関する特別措置法」(以下「空家法」)の施行前後の各地における動きなどを概説した。そして、各地の自治体が、即時執行や命令に従わない者の氏名公表など、空家法にはない独自の規定を設け、地域のニーズを反映した条例を展開していることなどを報告した。

続いて、法律サービス展開本部自治体等連携センターの伊藤義文委員(千葉県)が、日弁連の調査結果を報告し、多くの自治体が、費用の回収見込みが乏しいために代執行の積極的な実施を躊躇していると指摘した。

渡邉義孝氏(NPO法人尾道空き家再生プロジェクト理事/一級建築士)は、自身が理事を務めるNPO法人による空き家再生プロジェクトについて報告した。購入した空き家について有形文化財の登録を受け補助金を用いて再生する、借り受けた空き家を修繕してサブリースする、空き家と移住希望者とのマッチングを行うなどさまざまな手法が紹介された。

後半のパネルディスカッションでは、公害対策・環境保全委員会の小島延夫副委員長(東京)が、ドイツでは新規の住宅建築が厳しく規制されており、多くの人々が新築ではなく既存住宅をリフォームして住まいを確保しているために空き家率が極めて低いと指摘した。そして、日本においても、過剰な住宅建築を抑制するため、現存する住宅資源の再生活用を促すような税制度の導入などが必要だと指摘した。

田處博之教授(札幌学院大学法学部)は、近い将来、分譲マンションの空き室問題も深刻になるだろうと警鐘を鳴らした。

◇               ◇

*日弁連による全国調査の集計・分析結果は、ホームページ(HOME≫日弁連・弁護士について≫統計≫各種アンケート結果)でご覧いただけます。

 

JFBA PRESS -ジャフバプレス- Vol.123

司法面接の取り組み
カリヨン子どもセンター
チャイルドファーストジャパン


いわゆる「司法面接」とは、一般に、虐待や犯罪等の被害を受けた子ども等に対し、その供述結果を司法手続で利用することを想定して実施する事実確認のための面接です。誘導・暗示に陥りやすい子どもの特性に配慮して、専門的な訓練を受けた面接者が行います。今回は、司法面接を取り入れている社会福祉法人カリヨン子どもセンター(以下「カリヨン」)および認定NPO法人チャイルドファーストジャパン(以下「CFJ」)からお話を伺いました。

(広報室嘱託 神田友輔)


カリヨンの司法面接 司法面接室長:一場順子会員(東京) 司法面接士:木田秋津会員(東京)

 

司法面接室に併設するバックルーム。一場順子会員(右)と木田秋津会員(左)カリヨンの活動

困難に直面し、居場所を失った子どもたちのため、「子どものシェルター」「自立援助ホーム」「法人型ファミリーホーム」を運営しています。

 

司法面接導入のきっかけ

虐待や犯罪等の被害を受けたり、被害を目撃したりした子どもは、調査・捜査の過程で繰り返し被害事実を聞かれるたびに、忌まわしい被害を再体験し、耐え難い二次的被害を受けます。こうした事態を回避する方法を模索していましたが、2008年に米国で裁判官・検察官等の関係者を視察して、可能な限り1度の面接で済む司法面接の取り組みについて聴取したことをきっかけに、2011年6月、カリヨンに司法面接室を開設しました。現在までに47件の面接を実施しています。

カリヨンの司法面接

カリヨンの司法面接室カリヨンでは、専門的な知識を持つ弁護士が司法面接を担当することで、法的に必要な被害事実を過不足なく聞き取ることができます。

また、子どもは誘導や暗示にかかりやすく、容易に記憶の混濁が生じ、虚偽の事実を真実と思い込んでしまうおそれがあります。誘導しないためにオープンな質問をして自由に話してもらい、正確な情報を聴取するようにしています。

 

 

 

 

 

 

 

今後の課題

司法面接を制度化し、少なくとも高裁所在地には、司法面接室を設置できたら良いと思います。この司法面接室は、子どもが安心して話をできるよう、そして各関係機関が集まりやすいよう、独立した民間機関に設置するのが望ましいと考えています。


弁護士へのメッセージ

被害を受けた子どもたちが、「話す」ことで次のステップに進むことができるケースも多くあります。カリヨンの司法面接室は、一般の弁護士も利用することができます。ぜひ活用してほしいです。


CFJの司法面接 山田不二子理事長(内科医)


山田不二子理事長CFJの活動

子どもの権利擁護センターの運営や虐待相談、虐待の第一発見者が虐待通告に必要な情報を子どもから聞き取るためのRIFCR™(リフカー)研修、ChildFirst®司法面接研修などを行っています。


司法面接導入のきっかけ

約20年前、医師として診察した中学生に、親族からの性虐待が疑われたことがありました。複数の医師で治療に当たりましたが、誰が加害者かなどの核心部分は話してくれません。もっと彼女のためにできることはなかったか、どうしたら彼女に心を開いてもらえたのかと自問し、海外の事例を調査する中で、米国の小児科医から、訓練を受けた職員が代表して子どもの話を聴く司法面接を紹介されました。


CFJの司法面接

司法面接室に併設するモニタールームCFJには、2台のビデオカメラを備えた司法面接室とモニタールームだけでなく、専用の診察台と医療機器を備えた診察室が併設されています。医療的ケアを同時に行うことで子どもの身体的不安を取り除くこともできるのが特長です。








ChildFirst®司法面接研修

虐待等の被害を受けたことが疑われる子どもから、負担を最小限にしつつ、誘導することなく被害事実を聴き取るための研修です。児童相談所職員、警察官、検察官、家裁調査官、弁護士などを対象に5日間の日程で行います。以前は、受講者の多くが児童相談所職員でしたが、現在では、受講者の約半数を検察官や弁護士が占めています。誘導せずに事実を聴取する技術は通常の弁護士業務にも役立つと思います。機会があれば、ぜひ受講をお勧めします。


弁護士へのメッセージ

CFJは、司法面接を含めたすべての活動において子どもを第一に考えています。虐待等の被害を受けた子どもの代理人を務める弁護士だけでなく、多くの弁護士に司法面接を知っていただき、子どもの虐待の問題に取り組んでいただきたいと思います。
また、活動の一環として、子ども虐待防止のシンポジウムを毎年開催しており、本年は11月25日・26日に東京都港区で開催します。このシンポジウムにも、ぜひご参加ください。

 

 

日弁連委員会めぐり 91

カジノ・ギャンブル問題検討ワーキンググループ

 

今回の委員会めぐりは、カジノ・ギャンブル問題検討ワーキンググループです。「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」(以下「カジノ解禁推進法」)が2016年12月に成立し、カジノ設置に向けた実施法の1年以内の策定が予定されています。
新里宏二座長(仙台)、三上理事務局長(東京)、吉田哲也委員(兵庫県)にお話を伺いました。

(広報室嘱託 柗田由貴)

 

設置の経緯

左から吉田委員、新里座長、三上事務局長。「カジノ解禁に反対するQ&A」を手に前身は、多重債務問題検討ワーキンググループです。改正貸金業法の施行に伴い、多重債務問題への対策をさらに進めるべく2012年に発足し、近時はカジノ解禁問題への対応を重要課題として取り組んできました。今般のカジノ解禁推進法の成立を受け、本年4月、名称・体制ともに、カジノ・ギャンブル問題への対応に特化した組織に改組しました。
なお、従来から取り組んできた多重債務問題は、消費者問題対策委員会に移管されました。


活動内容

カジノ解禁に反対する諸団体と隔月で意見交換会を開催し、情勢を見極めつつ、どのような活動が効果的かなどを話し合い、対策を練っています。
本年5月12日には新宿駅西口前で街頭宣伝を行いました。また、翌13日にはシンポジウムを開催し、刑法の賭博罪との関係で、カジノについて違法性阻却事由は認められないことなどを訴えました。
そのほかにも、院内学習会を開催したり、リーフレット「カジノ解禁に反対するQ&A」を作成・配布したりして活動しています。
カジノ解禁については、世論調査では半数を超える市民が反対し、否定的なメディアも少なくありません。さらに世論を喚起すべく、積極的な活動を展開したいと思います。
また、本年6月から団体署名も行っています。

 

会員へのメッセージ

ギャンブル依存症の疑いがある人の割合は、他国では1~2%前後であるのに対し、日本では約5%。欧州などでは、掛け金や利用回数が上限に達するとカジノを利用できなくなる仕組みとなっており、広告も禁止される等していますが、日本では、依存症は自己責任と放置され、対策が遅れています。依存症への対策は、カジノ解禁にかかわらず立法や行政が取り組むべき課題であり、自己責任論からの脱却が必要です。
日本には1800兆円の個人金融資産が眠っているとされています。カジノは、外国人観光客だけではなく、日本人、特に高齢者層を対象にしたものでもあると思います。多重債務問題が再燃することのないよう、今後も皆で声を上げていきましょう。
*リーフレット「カジノ解禁に反対するQ&A」は日弁連ホームページでご覧いただけます。

 

ブックセンターベストセラー
(2017年4月・手帳は除く) 協力:弁護士会館ブックセンター

順位 書名 著者名・編者名 出版社名
1 審判では解決しがたい 遺産分割の付随問題への対応
−使途不明金・葬儀費用・祭祀承継・遺産収益分配等−

遺言・相続実務問題研究会 編

新日本法規出版
2 駐車場事故の法律実務−過失相殺・駐車場管理者の責任− 中込一洋・末次弘明・岸 郁子・植草桂子 著 学陽書房
3 判例による不貞慰謝料請求の実務[主張・立証編] 中里和伸・野口英一郎 著 LABO
4 完全対応 新個人情報保護法−Q&Aと書式例−

第二東京弁護士会 情報公開・個人情報保護委員会 編

新日本法規出版
5 信託法からみた民事信託の実務と信託契約書例 伊庭 潔 編著 日本加除出版
6 景品表示法[第5版] 大元慎二 編著 商事法務
7 要件事実マニュアル第3巻[第5版]商事・手形・執行・破産・保険・金融・知的財産 岡口基一 著 ぎょうせい
8 金融六法[平成29年版] 金融法規研究会 編 学陽書房
9 労働関係法規集 2017年版 労働政策研究・研修機構 編 労働政策研究・研修機構
10 こんなところでつまずかない!交通事故事件21のメソッド 東京弁護士会親和全期会 編著 第一法規

  

日本弁護士連合会 総合研修サイト

 

eラーニング人気講座ランキング 2017年3月~5月

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順位 講座名
1

LACの制度の概要と対応のポイント(2016年度)

2 LAC制度について-具体的事案をもとに実践演習を行う
3 交通事故の実務に関する連続講座 第1回
4 交通事故の実務に関する連続講座 第5回 ケーススタディー(死亡及び後遺症事例)と資料の活用方法(赤い本・青本)
5 遺産分割の基礎~よく尋ねられる内容を中心として~
6 交通事故の実務に関する連続講座 第3回
慰謝料、物損及びADR等の諸手続
7 交通事故の実務に関する連続講座 第2回
損害総論、積極損害及び消極損害
民事裁判における裁判官とのコミュニケーションスキル―裁判官との認識の不一致やずれを解消し有利な展開へ―
9 【コンパクトシリーズ】地図の読み方の基本~ブルーマップ・公図の利用方法~
10 成年後見実務に関する連続講座 第3回 成年後見人の事務2~医療同意、死後事務、保佐・補助、後見制度支援信託

お問い合わせ先 日弁連業務部業務第三課(TEL 03-3580-9927)