日弁連新聞 第521号

債権法改正法成立!!

5月26日、民法の一部を改正する法律(債権法改正法)およびその施行に伴う整備法が成立した。本改正は、約120年ぶりの抜本改正となる。施行は公布の日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日からとされる。

今回の改正は、民法制定以来の社会・経済情勢の変化に対応するとともに、確立した判例法理を明文化することにより分かりやすい民法を目指すものである。改正項目は200を超えているが、以下の4つの改正項目が注目を集めている。

 

消滅時効

民法第170条ないし第174条の短期消滅時効を削除する。債権一般の消滅時効は権利を行使し得ることを知ったときから5年、あるいは権利を行使し得るときから10年のいずれか早い方とする。商事消滅時効(商法第522条)も整備法により削除する。

 

法定利率(中間利息控除)

改正法施行時の法定利率を3パーセントとし、緩やかな変動制とする。また、これに伴い中間利息控除に関する利率も同率とする。

 

個人保証人保護

貸金等根保証に関する規律を他の根保証類型に順次拡大するとともに、保証一般について各種の情報提供義務を規定する。さらに事業用貸金債務についての保証に関して、保証意思を有する旨を公正証書で公証人に表示する規律を設ける。保証人になろうとする人に今一度考える権利、熟慮する権利を与えるものである。

 

定型約款

民法が新たに規定する約款の内容を定型約款として定義付け、さらに不当条項、不意打ち条項と呼ばれるルール、つまり、契約の拘束力から逃れるための規定を設けている。

(元法制審議会民法(債権関係)部会幹事 高須順一)

 

取調べの全件可視化を求める市民集会
これからの刑事司法を考える
「私は負けない」厚労省元局長事件を振り返って 
5月12日 弁護士会館

 


2016年5月、裁判員裁判対象事件および検察官独自捜査事件について、逮捕または勾留された被疑者取調べ全過程の録音・録画を義務付ける刑事訴訟法等の一部を改正する法律(以下「改正法」)が成立した。
改正法には、施行後3年を経過した後の見直し規定がある。取調べの全件可視化に向け、改正法の原点となった事件の当事者であり、立法にも関与した村木厚子氏(元厚生労働事務次官)を招き、これからの刑事司法の在り方について議論を深めた。


基調講演

村木氏が登壇し、大阪地検に逮捕された当初、検察が真相を解明してくれると期待したが、検事から開口一番「あなたの場合、起訴することになるでしょう」と言われたこと、取調べでは供述と異なる調書が作成され、なかなか修正に応じてもらえなかったこと、検事から「執行猶予が付くだろうから、大した罪ではないじゃないか」との発言があり、検事の感覚のずれに驚愕し、涙ながらに抗議したことなど、当時の体験を赤裸々に語った。
そして、自分は幸運にも無罪を証明する客観証拠が見つかり、無罪を得ることができたが、現在の刑事裁判は、取調べや供述調書に依存し過ぎていると指摘した。そして、刑事司法の中心は、検事でも裁判官でも弁護士でもなく、公平な裁判を受ける権利を持つ国民であり、法律家は刑事司法の仕組みをもっと分かりやすく説明し、国民の裁判を受ける権利を実質的に保障する制度にしてほしいと訴えた。
この事件で虚偽公文書作成・同行使罪等に問われた元厚労省係長の弁護人を務めた鈴木一郎会員(大阪)は、身体拘束下の取調べで被疑者の精神状態が日に日に悪化した様子などを語った。鈴木会員は、身体拘束自体が被疑者・被告人に極めて大きな精神的ダメージを与えると指摘し、可視化によって取調べは闇から明るみに出る、そうすればたたかうチャンスが増えると述べた。


パネルディスカッションの様子パネルディスカッション

後藤昭教授(青山学院大学)は、村木氏の事件は、供述調書中心の刑事裁判を象徴するものだと指摘し、捜査の透明度を高める必要があると述べた。
安岡崇志氏(元日本経済新聞社論説委員)は、法制審特別部会では、取調べの録画の範囲を取調官の一定の裁量に委ねるものとする案もあったが、村木氏など法律家以外の委員が中心となってこれに反対し、取調べの全過程が対象となったと議論経過を報告した。
*集会の様子は、Ustreamにて動画配信しています。日弁連ホームページからご覧いただけます。

 

いわゆる共謀罪の創設を含む組織的犯罪処罰法改正案について

本年3月21日、いわゆる共謀罪の創設を含む組織的犯罪処罰法等の一部を改正する法律案(以下「本法案」)が閣議決定され、本国会に上程された。
衆議院法務委員会での審議において、計画(共謀)よりも前の段階から尾行や監視が可能となること等が明らかになる一方、一般市民も捜査の対象となり得るという懸念が払拭できない中、5月23日の衆議院本会議にて、与党などの賛成多数で可決された。
日弁連は、同日付で「いわゆる共謀罪の創設を含む組織的犯罪処罰法改正案の衆議院での採決に対する会長声明」を公表し、対象となる277の罪の中には、組織犯罪やテロ犯罪とは無関係の犯罪が含まれていること、また、たとえば、組織的威力業務妨害罪が対象犯罪とされていることから、マンション建設反対の座込みが処罰対象となる可能性があることを指摘した。
現在、参議院法務委員会において審議がなされている。日弁連には、引き続き、国会審議を注視しながら、本法案の廃案に向けて、問題点を分かりやすく社会に共有していくことが求められている。

(事務次長 神田安積)

 

法制審議会少年法・刑事法(少年年齢・犯罪者処遇関係)部会始まる

本年3月16日、法制審議会少年法・刑事法(少年年齢・犯罪者処遇関係)部会第1回会議が開催された。2月9日に法務大臣から法制審議会に対して諮問された事項は、少年法適用年齢を18歳未満に引き下げることの是非と、非行少年を含む犯罪者に対する処遇の充実である。日弁連は、委員2人および幹事2人の計4人を推薦している。
法務省は、2015年11月、省内に「若年者に対する刑事法制の在り方に関する勉強会」を発足させ、同勉強会は2016年12月、「取りまとめ報告書」を公表した。同報告書は、少年法の適用年齢について、現行法を維持すべきであるという考え方と18歳未満に引き下げるべきであるという考え方の両論併記としている。また、懲役刑・禁錮刑を一本化した上で作業や各種矯正処遇を義務付けること、保護観察付き刑の全部執行猶予の猶予期間中の再犯でも再度の刑の全部執行猶予を言い渡すことができる仕組みの導入、起訴猶予等とする場合に検察官が被疑者に訓戒、指導をすることや保護観察所等に生活環境の調整を依頼することができるようにする仕組みの導入などを挙げている。
これまでの部会会議における議論では、少年法の適用年齢を18歳未満に引き下げることを前提とし、成人となる18・19歳を含む若年者に対して現在の少年院における処遇に近い処遇を実施する余地を認めつつ、その処遇を実施するために、懲役刑と禁錮刑を一本化した上で、作業や各種矯正処遇を義務付けることを述べる意見も出されたが、日弁連の委員、幹事はこれには反対する意見を述べた。
また、関係機関へヒアリングがなされており、第2回会議(4月19日)では、少年鑑別所と少年院の実情について、第3回会議(5月31日)では、少年刑務所、刑務所、保護観察の実情および施設内処遇と社会内処遇の連携についてのヒアリングが実施された。併せて、事務当局から論点表(案)が示され、第4回会議(6月29日)において検討することとなった。

(法制審議会少年法・刑事法(少年年齢・犯罪者処遇関係)部会バックアップ会議事務局長 水野英樹)

*同部会の議論状況および資料等は、法務省ホームページでご覧いただけます。

 

第68回定期総会
外国法事務弁護士職務基本規程および外国特別会員基本規程中一部改正を可決
5月26日 東京都千代田区

2011年ころから英国などで、弁護士以外の者に持分や議決権を与える法律事務所の形態であるABS(Alternative Business Structure)が認められるようになった。

日本では法律上、ABS形態での法律事務所は存在し得ないが、外国のABSに所属する外国弁護士が日本で外国法事務弁護士として登録請求することが考えられる。この登録の可否について、弁護士の独立性などの観点から検討が重ねられてきた。

このたび、投資型ABS(法律事務所の業務に参加しない非弁護士に持分または議決権を与えるもの)に所属する外国弁護士は外国法事務弁護士としての登録を認めず、業務参加型ABS(法律事務所の業務に参加する非弁護士に持分または議決権を与えるもの)に所属する外国弁護士については一定の厳格な要件の下で登録を認めるとの結論に至り、その趣旨の外国法事務弁護士職務基本規程および外国特別会員基本規程の一部改正が賛成多数で可決された。施行日は、2018年4月1日を予定している。日弁連では、現在登録のある外国法事務弁護士や関係する法律事務所の方を対象に、説明会等の実施を予定している(詳細はおって日弁連ホームページ等で案内します)。

(外国弁護士及び国際法律業務委員会委員長 片山 達)

*定期総会の様子は、7月号の本紙に掲載します。

 

市民の人権・自由を広く侵害する共謀罪創設に反対する集会
5月18日 イイノホール

いわゆる共謀罪法案(以下「法案」)の問題点をあらためて指摘し、慎重な審議を求めるため、集会を開催した。会場は満員となり、会場外のモニターでも多数の市民が熱心に視聴した。

 

基調講演

木村草太教授(首都大学東京)が、法案は、憲法が定める思想信条の自由を侵し、罪刑法定主義に反するおそれがあること、テロ対策や国連越境組織犯罪防止条約批准の観点から過剰な法制であることを分かりやすく説いた。

 

リレートーク

山田健太教授(専修大学)は、法案は、捜査権限・警察権限の拡大につながりかねないと指摘した。
近藤ゆり子氏(大垣警察市民監視違憲訴訟原告)は、警察が風力発電施設建設に反対する市民の情報を収集して電力子会社に伝えた事件を紹介し、監視を受ければ市民の言動は萎縮することになると指摘した。
浅田和茂教授(立命館大学)は、刑事法の観点から、木村教授の基調講演の内容を敷延するとともに、捜査の前倒しが監視社会を生み出すと警鐘を鳴らした。
周防正行氏によるリレートーク 泉山禎治会員(仙台)は、元裁判官の立場から、共謀罪は「内心」にかかわる罪であり、対象事件で勾留請求がなされた場合の判断が難しいと懸念を示した。
徳住亜希氏(株式会社主婦と生活社「週刊女性」編集部)は、法案について10ページにわたる特集などを掲載したところ、読者から不安の声が続々と寄せられていると述べた。
山田火砂子氏(映画監督)は、空襲に遭った体験および映画「小林多喜二の母の物語」に込めた反戦のメッセージについて語った。
竹内広人氏(自治労連帯活動局長)は、公職選挙法違反者の摘発のため、警察官によって連合大分に隠しカメラが設置された事件を踏まえ、法案は労働組合に対する弾圧につながりかねないと述べた。
山口二郎教授(法政大学)は、法案の文言が不明確であり、恣意的な捜査につながるのではないかとの危惧を示した。
周防正行氏(映画監督)は、法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会の委員であった経験を踏まえ、法案には条約批准のために必要であるという立法事実がないことを説明した。
集会には、曽根威彦名誉教授(早稲田大学)等からもメッセージが寄せられた。

 

院内市民学習会
あるべき労働時間法制に関する院内市民学習会
4月20日 衆議院第一議員会館

政府は、2013年6月の「日本再興戦略」と「規制改革実施計画」の閣議決定以来、労働法制全般の規制緩和を進めているが、行き過ぎた規制緩和には労働者の権利確保の観点から大きな問題がある。
労働時間規制の安易な緩和の問題点を指摘し、「あるべき労働時間法制」を考えるため、院内市民学習会を開催した。

 

まず、貧困問題対策本部の房安強事務局員(鳥取県)が、日弁連の2016年11月24日付「『あるべき労働時間法制』に関する意見書」について報告し、労働時間の量的上限規制の法定、勤務間インターバル規制の導入、時間外労働・休日労働の割増賃金率引き上げ等の「あるべき労働時間法制」の詳細を説明した。
次に、井坂信彦衆議院議員(民進党・衆議院厚生労働委員会理事)が、2016年11月に野党4党が提出した「長時間労働規制法案」の趣旨説明を行った。労働時間の延長の上限規制、インターバル規制の導入、使用者への労働時間管理簿の調製義務付け、罰則の強化等の概要を説明し、ワークライフバランス実現などのため、労働時間等の規制を実効化すべきと述べた。
続いて、毛塚勝利客員教授(法政大学大学院)、中原のり子氏(全国過労死を考える家族の会東京代表/過労死等防止対策推進協議会委員)および中村和雄事務局員(京都)による座談会が行われた。
毛塚客員教授は、長時間労働には労働者の家庭生活・社会生活等のための「生活時間」を奪う側面があると指摘し、1日の最長労働時間規制や、賃金ではなく代替休暇による時間外労働の清算原則等の「生活時間」確保を基軸に据えた規制が必要であると主張した。
中原氏は、2017年3月に政府の「働き方改革実現会議」が定めた「実行計画」には、長時間過重労働の容認等の問題があると指摘した。そして、過労死を根絶するため、政府や企業には大改革を実現する勇気と決断が、国民一人一人には家族や自分自身の健康を大切にする信念が、それぞれ求められると述べた。
当日は代理人出席1人を含む5人の国会議員が出席し、過労死が生じ得るような労働時間を容認する労働法制は認められないとの声や「過労死」という言葉の存在自体が恥ずべきことであり労働者の生活を守ることができるよう努力していきたいとの声が上がった。

 

「カジノ解禁推進法」の廃止を求めて

特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律(いわゆる「カジノ解禁推進法」)の廃止を求め、街頭宣伝行動およびシンポジウムを実施した。

 

カジノ解禁推進法の廃止を訴える新里座長

街頭宣伝行動

5月12日新宿駅西口前

いわゆる「カジノ解禁推進法」に反対する街頭宣伝行動を行い、リーフレット「カジノ解禁に反対するQ&A」を配布した。
カジノ・ギャンブル問題検討ワーキンググループの新里宏二座長(仙台)が登壇し、カジノ解禁に伴い、ギャンブル依存症が増加するおそれがあることを指摘した。また、想定される経済効果への疑問として、海外から観光客を呼ぶためというよりも、むしろ日本人の個人金融資産がターゲットとされているのではないかと述べ、「日本でカジノを許さない」と訴えた。

(カジノ・ギャンブル問題検討ワーキンググループ事務局長 三上 理)

 

シンポジウム

5月13日主婦会館プラザエフ

まず、依存症者の男性が経験談を報告し「ギャンブル依存症は、回復しても完治はしない。カジノができたら自分はどうなるのか怖い」と切実な思いを吐露した。
吉田哲也委員(兵庫県)は、この間の政府の動きを報告し、政府が導入するという「世界最高水準のカジノ規制」について、厳しい規制を導入すれば事業そのものが成り立たなくなる矛盾をはらんでいると指摘した。
新里座長は、基調報告の中で、賭博罪の保護法益から考えて、民間賭博であるIR型カジノが違法性阻却される余地はないと主張した。
階猛衆議院議員(民進党)からも、IRという言葉でごまかしているが、IRであればこそ、射幸性が高く依存度の高いカジノでなければ施設の維持ができず、単体のカジノを作る以上に危険が大きいとの指摘があった。また、多くの国会議員からカジノ解禁に反対するメッセージが寄せられた。

 

登録政治資金監査人へのご登録を

政治資金規正法により、国会議員関係政治団体が政治資金収支報告書を提出するときは、あらかじめ登録政治資金監査人による政治資金監査を受けることが義務付けられています。
弁護士は、政治資金適正化委員会に備える名簿への登録を受けて、登録政治資金監査人になることができます。本年4月末現在、全国で296人の弁護士が登録されています。
登録政治資金監査人が政治資金監査業務を行うには、名簿への登録後、政治資金規正法の概要や政治資金監査マニュアルに関する研修を修了する必要があります。この研修は政治資金適正化委員会事務局のほか、全国各地でも実施されています。
政治資金適正化委員会では、随時登録政治資金監査人の登録を受け付けています。
*登録の詳細や各種資料は総務省のホームページでご覧いただけます。

 

シンポジウム
施行70年 問われる憲法の危機
私たちの平和と自由の今を考える
4月22日 弁護士会館

安保法制の施行(2016年)に代表される憲法の危機とも言える状況に立憲主義を堅持する立場からどう対応すべきかを考えるため、シンポジウムを開催した。

当日は200人を超える参加者が集まり、会場は熱気に包まれた。


基調講演

廣渡清吾名誉教授(東京大学)が、「新安保法制下の日本と憲法の危機」と題して基調講演を行い、安保法制の仕上げとしての憲法改正が現実味を帯びていると述べた。その上で、憲法は本来、国家を拘束して国民の権利を擁護すべきであるが、国民と国家の関係が逆転し、立憲主義が弱体化する危険に晒されていることを指摘した。

 

パネルディスカッション

廣渡名誉教授のほか、柳澤協二氏(元内閣官房副長官補)、池内了名誉教授(名古屋大学)、髙山佳奈子教授(京都大学大学院)をパネリストに迎え、民主主義による立憲主義の擁護などに関するパネルディスカッションを行った。

柳澤氏は、力による抑止は相手方の攻撃を誘発するとの観点から、軍事力をもって日本を守るのではなく、武力衝突の発生自体を防止する仕組みを構築すべきと説いた。

池内名誉教授は、大学に対する予算が減らされる一方で、軍事研究に対する予算が増額され、学者がそれに頼らざるを得なくなることで、学問の自由や大学の自治が後退しているとの危機的状況を語った。

髙山教授は、秘密保護法により国家情報が秘匿され、いわゆる共謀罪に関する法案により市民の情報発信が抑制されるおそれがあるなど、国家による情報統制が刻一刻と進みつつある現状に警鐘を鳴らした。

 

[公開講座]
コーポレート・ガバナンス改革の新しい流れと社外取締役の役割
-社外取締役ガイドラインの活用-
4月19日 弁護士会館

2015年6月のコーポレート・ガバナンス・コード適用以来、コーポレート・ガバナンス改革は急速に変化を遂げ、その関心は、後継者育成、取締役会の多様性や評価といった次の段階に移っている。他方で、スチュワードシップ・コード等に基づき、議決権行使の判断基準を明確にする機関投資家が増加する傾向にあり、社外取締役に求められる役割が重みを増している。
そこで、日弁連が2015年3月に改訂した「社外取締役ガイドライン」を軸として、社外取締役とその役割について考える公開講座を開催した。会場には約260人が集まり、全国各地の弁護士会へのテレビ中継もなされた。

 

倉地正氏(英国機関投資家Hermesシニアアドバイザー)、齊藤太氏(三井住友アセットマネジメント株式会社企業調査グループスチュワードシップ推進室長)、籔ゆき子氏(株式会社ダスキン社外取締役)、山口利昭会員(大阪)をパネリストに迎え、社外取締役に求められるもの、社外取締役・会社経営者・投資家の立場や役割、任意の委員会など、多岐にわたる事項について議論した。
倉地氏は、多数の企業で設置されている任意の指名委員会や報酬委員会について、コーポレート・ガバナンス改革が進められている今こそ、それらの決定プロセスの透明性を上げるチャンスであると力説した。
パネルディスカッションの様子 齊藤氏は、内輪の論理に基づく暗黙の了解による経営から、外部の社外取締役の目から見て分かりやすい経営にシフトしなければ、コーポレート・ガバナンス改革は達成できないと述べた。
籔氏は、女性の社外取締役として、前職の経験を生かす、女性客の視点で提言する、女性従業員の人材育成を促進し企業のダイバーシティを実現するという3点を重視して職務に従事していると語った。
山口会員は、企業の利益の源泉は従業員にあり、経営者から従業員までが同じ方向に向かって進んでいることの大切さを説いた。

 

刑事司法制度に関する講演会・勉強会
4月11日 弁護士会館

 

袴田事件講演会

袴田事件については、2014年3月に静岡地裁が再審開始決定を出したが、3年が経過した今なお、再審開始には至っていない。
この経緯を弁護団の一員である加藤英典会員(埼玉)が報告した。再審開始決定直後、検察側は即時抗告を申し立て、原審のDNA鑑定に関する判断を批判し、新たな鑑定実施を求めた。弁護側はこれに反対したものの、裁判所は鑑定の実施を決め、今に至るも鑑定結果が出ていないと説明した。
同じく弁護団の戸舘圭之会員(第二東京)は、袴田氏が、長期にわたり「死刑確定囚」として身体拘束された結果、重い拘禁症を病み、今なお回復途上にあるなど、袴田事件のこれまでを時系列に沿って報告した。
これらの報告から、死刑制度がえん罪に問われた被疑者・被告人に与える負の影響が大きく浮き彫りとなった。

 

死刑制度に関する政府世論調査のミラー調査に関する勉強会

佐藤舞氏(レディング大学法学部専任講師)が、2014年の死刑制度に関する内閣府世論調査(以下「政府調査」)について実施したミラー調査(政府調査と同内容の質問を含む調査)の報告を行った。
死刑制度の存廃に関し、政府調査が「死刑は廃止すべきである」「死刑もやむを得ない」「わからない・一概に言えない」との選択肢から国民の約80%が死刑存置を支持したという結論を導き出していることを説明した上、態度の強弱を加味した5つの選択肢を設けたミラー調査では「どちらかといえば死刑制度があった方が良い」との回答が46%を占めたに過ぎないこと等を指摘し、態度の強弱等を踏まえた複数の選択肢を設ける必要性を述べた。
また、ミラー調査において、死刑存置を支持する人の71%が、政府が死刑廃止を決定すれば政策として受け入れると回答したことなどを報告し、死刑存廃のような「態度」を評価するためには、視点を変えた質問を多数設定し、多角的・総合的な検討をする必要があると述べ、今後世論調査を行う場合の指針を示した。

 

第91回 国際人権に関する研究会
接見交通権をめぐる課題
4月18日 弁護士会館

今回の国際人権に関する研究会は、接見交通権をテーマに取り上げた。国際人権法の観点から課題を整理したほか、欧州における接見交通権の保障状況などについても知見を深めた。

 

まず、日弁連刑事弁護センターの高平奇恵幹事(福岡県)が、接見国賠訴訟の概況と展望について報告を行った。
高平幹事は、近時、複数の国賠訴訟が提起している接見室内での写真撮影の問題に関し、自身が弁護団の一員として関与している田邊国賠の事案を取り上げて問題点を整理した。その上で、接見交通権が被疑者・被告人の防御活動のための重要な権利であるとの原則に立ち返る必要があると述べ、裁判所は被疑者・被告人と弁護人が面会できてさえいれば接見交通権の保障に不足はないとするが、次の弁護活動につながる写真撮影等による記録ができなければ実効的な防御活動は困難だと指摘した。そして、このような状況を変えるためには、弁護人自身が国賠訴訟等を通して権利を確立していかなければならないと訴えた。
葛野尋之教授(一橋大学大学院法学研究科長)は、国際人権法における接見交通権の保障について講演を行った。
葛野教授は、欧州各国が欧州人権条約を批准しており、欧州人権裁判所の判断に従わなければならないこと、同裁判所が、2008年、弁護人との接見は取調べに先立って保障される必要があり、これに反して採取された自白は証拠排除されるとの判決を下したことを報告した。また、欧州では多くの国で取調べへの弁護人立会いが認められていること、英国では弁護人の接見室内への電気通信機器の持込みが原則として認められていることなどを指摘し、被疑者・被告人の防御権が実効的に確保されていると報告した。

 

[セミナー]指定管理者制度のあり方
公共性の観点からの検証
4月18日 弁護士会館

日弁連法務研究財団の研究班が作成した指定管理者基本条例案(以下「モデル条例案」)を題材として、指定管理者制度に関する現状と課題および今後の取り組みの方向性についてセミナーを開催した。(共催:公益財団法人日弁連法務研究財団)

 

はじめに、片山善博教授(早稲田大学/元総務大臣)が「図書館と指定管理者制度」と題して講演を行い、制度本来の趣旨を逸脱した運用が多く見られるが、特に、図書館には指定管理者制度を使うべきではないと指摘した。その理由として、指定管理者が長期的視点を持つのは難しいこと、図書館は「知の拠点」、司書は「知のナビゲーター」であること、図書館が指定管理になると地元書店がダメージを受けることなどを挙げ、地方自治の熟度は図書館を見れば分かると述べた。

次に、伊藤久雄氏(認定NPO法人「まちぽっと」理事)が登壇し、総務省による指定管理者制度の導入状況等に関する調査から、近年の状況および指定取消事例を分析し、自治体は制度導入の是非について総点検・総検証を行うべきであることなどを訴えた。

続いて、太田雅幸会員(東京)がモデル条例案について概説し、経費の節減を目的として導入しないこと、図書館など「長期の継続的な方針の下に行われる必要がある施設」や病院など「利用者に対する役務提供についての信頼関係を継続する見地から期間を限定することが適当でない施設」には導入しないことなどのモデル条例案が定める導入要件の趣旨などを説明した。

パネルディスカッションでは、板垣勝彦准教授(横浜国立大学大学院)が、保障行政の法理論を指定管理者制度に当てはめ、自治体は指定管理者の業務遂行について指示・監視を及ぼす必要があると述べた。

市川敏之氏(静岡県経営管理部地域振興局長)は、施設の設置目的を達成するため、最も効果的な管理運営方法をゼロベースで検討する必要があると述べ、静岡県の取り組みとして、専門家が施設の実態を検証して助言・指導を行っていることを紹介した。

このほか、モデル条例案の条文に沿って、指定管理者の選定基準、指定管理協定書、事業評価、情報公開条例における取り扱いなどについて活発な意見交換が行われた。

(法律サービス展開本部自治体等連携センター条例部会長 幸田雅治)

 

JFBA PRESS -ジャフバプレス- Vol.122

渋谷区男女平等・ダイバーシティセンター アイリス
LGBT支援の輪をつくるために

2015年、東京都渋谷区は、全国初となる同性カップルのパートナーシップ証明発行を含む条例(以下「条例」)を制定・施行しました。

渋谷区におけるLGBT支援の中核施設「アイリス」を訪ね、渋谷区男女平等・ダイバーシティ推進担当課長である永田龍太郎氏にお話を伺いました。

(広報室嘱託 大藏隆子)

 

お話を伺った永田課長。LGBTへの支持を表す「レインボー・アイリス」とともに

パートナーシップ証明について教えてください

パートナーシップ証明とは、区が、同性同士のカップルをパートナーとして証明するものです。
条例では、①パートナー同士が、互いを任意後見人の一人とする任意後見契約を公正証書で締結すること、②共同生活に関する合意契約を公正証書で締結することを証明発行の要件としています。これまでに18組のカップルに証明を発行しました(本年5月現在)。
同性カップルがパートナーシップの宣誓を行えば宣誓受領を証する書面を発行する自治体もあり、渋谷区だけが費用のかかる公正証書の作成を求めていることにご意見をいただくこともあります。しかし、渋谷区としては、「同性カップルが二人で住居を借りられるか」「一方が入院したとき、もう片方がICU内で面会したり医師から病状説明を受けたりできるか」という観点から検討を行い、企業や医療機関に「最大限、配偶者と同じ扱いをしてほしい」と働き掛ける根拠として、公正証書が必要だと結論付けました。

 

支援の輪をつくるための施策とは

LGBT当事者は全人口の約8%といわれており、渋谷区だけでも1.7万人ほどいると思われます。しかし、渋谷区で証明を受けたのはわずか。その何千倍もいるLGBT当事者全体のための支援が必要です。
LGBT当事者は、差別をおそれ、自身のセクシュアリティを周囲に隠して生活しています。彼らが生きやすい環境を作るには、マジョリティ側が意識を改革することが必要です。
渋谷区は、区の花・ハナショウブを、LGBTへの支持を表す代表的なモチーフである6色の虹に彩ったシンボルマークを開発し、そのバッジをイベント参加者や区の職員に配布しています。性別を尋ねることの多い役所は、病院と並び、特にトランスジェンダーへ緊張を強いる場所ですが、目の前の職員がこのバッジを付けていることで、少しでも安心して利用いただけたら、と考えています。
今年度は、このシンボルマークを用いた小型POPも制作し、手を挙げてくれた事業所等に配布する(夏以降)など、啓発を拡大する予定です。

 

相談事業も実施していますね

当施設では、「法律相談」「悩みごと何でも相談」「にじいろ電話相談」という3種類の相談事業を行っています。「法律相談」は弁護士が、「悩みごと何でも相談」は心理カウンセラーが相談に当たっています。
「にじいろ電話相談」はLGBTに特化した相談窓口で、当事者団体の方が相談員を務めています。こちらに寄せられる相談の多くに、具体的な解決策を求めるというより、複合的な悩みをまずは誰かに聞いてほしい、という傾向がみられます。例えば、LGBT当事者にとって学校生活は困難が多く、不登校になったりメンタルを病んでしまい、その結果、希望する職に就けず、成人後も経済的に困窮する方がいます。複合的な悩みを抱えているにもかかわらず、各窓口がセクシュアリティを理解・尊重してくれるか不安で、相談をためらう。「にじいろ電話相談」には、そんなつらい気持ちが多く寄せられています。


当事者が情報交換できる場も設けていますね渋谷区のパートナーシップ証明書

LGBT当事者の方々に、安心して集い、確かな正しい情報に触れてもらえるよう、NPOと協力してコミュニティスペース事業を実施しています。
家族にLGBT当事者がいる人、LGBTの先生など、テーマを絞った形で情報交換の場を設け、多様なLGBT当事者を支援しています。 


弁護士・弁護士会に期待することは

セクシュアリティは、社会生活全体にかかわるものです。一般的な法律相談の背景にセクシュアリティの問題があることも多々あります。弁護士の皆さんには、LGBT当事者が安心して相談できる存在になっていただきたいと思います。

 

日弁連で働く弁護士たち(1)

調査室菊池室長(前列左から2番目)を中心に会務を支えている

 

日弁連の「法制局」ともいえる調査室には、9人の嘱託弁護士が在席しています。菊池秀室長(東京)からお話を伺いました。

(広報室嘱託 柗田由貴)

 




弁護士法や会則等に関する広範な業務を担当

調査室の業務の中心は、弁護士法や外弁法、日弁連の会則・会規等に関する調査・研究である。日常的に、日弁連の執行部や職員から、弁護士法等に関するさまざまな諮問・質問が持ち込まれ、これらを検討して回答を行っている。また、日弁連・弁護士会の会則・会規等の制定・改廃に際し、内容の点検を行っている。2016年度の総点検数は約2700件。点検が集中する年末から年度末は、寸暇を惜しんでの作業となる。
そのほか、「条解弁護士法」の改訂、日弁連総会の議事概要の作成、日弁連を当事者とする訴訟事件の代理人なども担当している。


活発な議論で室全体の理解を深化

室の業務の中心は調査・研究・起案。普段は皆黙々と執務に当たっているが、週に1回ある室会議や作業過程で疑問が生じたときは、担当嘱託から問題提起がなされ、室長を中心に一つの「島」となっているデスク上で、活発な議論が交わされる。こうしたフランクで自由闊達な議論は、当該事案の検討を深めるだけではなく、他のメンバーの知識や理解を蓄積・深化する相乗効果を生み、室全体の底上げにつながっている。


調査室業務の魅力

諮問等に対する調査・回答の業務や会則・会規等の点検業務では、他の法令・会則等および実務との整合性など、さまざまな事情を加味して検討しなければならない。このようにあらゆる事情を考慮して理論的に結論を導き出すというのは、調査室業務の醍醐味の一つである。また、日弁連や弁護士会が取り組む最先端の重要課題にいち早く触れることができるのも、調査室ならではといえる。

 

弁護士会・会員へのメッセージ

法律家の団体として、弁護士自治の根幹である弁護士法の適正な解釈・運用と、それに基づく会則等の一貫性のある解釈・運用は極めて重要である。調査室はこの一翼を担っていると考えているが、決して調査室だけで全うできるわけではなく、会則等を制定・改廃する弁護士会、ひいては会員の理解と協力が不可欠である。これからも弁護士会や会員各位とともに、弁護士自治を支えていきたい。

 

 

ブックセンターベストセラー
(2017年3月・手帳は除く) 協力:弁護士会館ブックセンター

順位 書名 著者名・編者名 出版社名
1 六法全書 平成29年版

山下友信・山口 厚 編集代表

有斐閣
2 判例による不貞慰謝料請求の実務[主張・立証編] 中里和伸・野口英一郎 著 LABO
3 金融六法[平成29年版] 金融法規研究会 編 学陽書房
4 平成28年改正 知的財産権法文集 平成29年4月1日施行版

発明推進協会 編

発明推進協会
5 男性のための離婚の法律相談 本橋美智子 著 学陽書房
6 こんなところでつまずかない!交通事故事件21のメソッド 東京弁護士会親和全期会 編著 第一法規
Q&A 交通事故加害者の賠償実務―被害者からの過剰請求対応― 弁護士法人愛知総合法律事務所 編 第一法規
8 新注釈民法(15)債権(8)§§697~711 窪田充見 編、大村敦志・道垣内弘人・山本敬三 編集代表 有斐閣
模範六法2017 平成29年版 判例六法編修委員会 編 三省堂
10 量刑調査報告集Ⅳ 第一東京弁護士会刑事弁護委員会 編 第一東京弁護士会
簡易裁判所における交通損害賠償訴訟事件の審理・判決に関する研究 司法研修所 編 法曹会

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コンパクトシリーズ人気ランキング 2016年11月~2017年4月

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順位 講座名 時間
1 戸籍の仕組み・読み方の基本 30分
2 接見の基本 34分
3 職務上請求の基本 30分
4 弁護士報酬の基本 29分
5 不動産登記の基本 31分
6 弁護士会照会の基本 32分
7 地図の読み方の基本~ブルーマップ・公図の利用方法~ 31分
8 内容証明の基本 30分
9 商業登記の基本 21分
10 公正証書の基本~概要と利用法~ 37分

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