日弁連新聞 第520号

ついに実現!司法修習生への給付、改正裁判所法成立

4月19日、参議院本会議において裁判所法の一部を改正する法律が政府提案のとおり全会一致で可決、成立した。

本法律は、近年の法曹志望者の減少に対応するため、本年11月以降に採用される司法修習生に対して基本給付金月額13.5万円、住居給付金月額3.5万円、その他必要に応じて移転給付金を支給するものである。

司法修習生の給費制は2004年12月の裁判所法改正により、2010年11月から貸与制に切り換えることが決まり、その後、日弁連の運動の成果もあって、施行日を1年遅らせることが決まったが、最終的に2011年11月から貸与制が開始されるに至った。

日弁連は、2010年にこの問題に対応する本部を立ち上げ、経済的負担の重さから有為な人材が法曹への道を断念する事態が生じるとして、給費の継続、その後は修習手当の創設を求めて活動を継続してきた。

本法律は、法曹養成課程における経済的負担を軽減し、法曹となる人材の確保の推進等を図るものであり、法曹養成制度の改革にとって前進となる。

他方、この法案審議を行う衆参法務委員会においては、2011年11月から2016年11月までに司法修習生に採用されたいわゆる谷間世代の者(新65期〜70期)の経済的負担が、改正法施行後に司法修習生に採用された者に比して重くなる、ということについて指摘がなされるなどしており、引き続き検討を要する課題がある。

これまで、裁判所法の改正に向けて多大なるご協力をいただいた、司法修習生に対する給与の支給継続を求める市民連絡会、ビギナーズ・ネット、各政党、国会議員の方々、最高裁、法務省等関係機関の皆さま、そして、各地で修習手当の創設を求めて活動に取り組んでくださった会員の方々に心から感謝を申し上げる。

 

※日弁連は、4月19日付で「裁判所法の一部を改正する法律の成立に当たっての会長声明」を公表しました。

詳細はホームページ(HOME>日弁連の活動>会長声明・意見書等>会長声明・日弁連コメント>2017年)でご覧いただけます。

 

GPS捜査に関する最高裁大法廷判決

本年3月15日、最高裁大法廷は、いわゆるGPS捜査の違法性が争われていた事案の上告審において、①GPS捜査は強制処分に当たり、令状を取得することなく行われたGPS捜査は違法であり、②憲法、刑訴法の諸原則に適合する立法的な措置が必要であるとする画期的な判決を言い渡した。

日弁連は、本年1月19日付の「GPS移動追跡装置を用いた位置情報探索捜査に関する意見書」において、大要、①警察庁が実施しているGPS捜査は直ちに中止すべきであり、②GPS捜査について、捜査対象者のプライバシー権を不当に侵害することのないよう、一定の要件および手続を法律によって定めるべきであるとの意見を述べていた。

今回の最高裁大法廷判決は、前記意見書の趣旨に沿い、高く評価できるものである。このことを踏まえ、日弁連は、同日(3月15日)付で「GPS捜査に関する最高裁判所大法廷判決についての会長談話」を公表した。

今後は、一定の要件および手続を定める立法措置が講じられることが想定される。日弁連においても、前記意見書を前提とした検討をさらに進めていくことが求められる。

(事務次長 神田安積)

 

シンポジウム
弁護士になりたい!って思ってるだけじゃ始まらない
3月18日 イイノホール

より多くの若者が弁護士を目指す端緒となるよう、各分野の専門家を招聘し、弁護士の仕事やその魅力を発信するシンポジウムを開催した。500人規模の会場は、中・高校生、大学生をはじめとする来場者でほぼ満席となった。

(主催:日弁連・東京三弁護士会、共催:関東弁護士会連合会、後援:法科大学院協会)

 

会長挨拶

冒頭、中本会長が挨拶し、弁護士の仕事ややりがい、社会における活躍の場など、このシンポジウムで弁護士という職業の魅力を実感して、ぜひ弁護士を目指してほしいとメッセージを送った。

 

第1部「聞いてみよう。君の知らない弁護士の世界」

恵俊彰さん、八代会員、菊間会員が軽妙なトークを展開した第1部の様子TBSドラマ「下町ロケット」(※)での弁護士の活躍シーンの上映を織り交ぜながら、同ドラマで神谷弁護士を演じた恵俊彰さん、元フジテレビアナウンサーの菊間千乃会員(第二東京)、コメンテーターとしても活躍中の八代英輝会員(東京)が軽妙なトークを展開し、弁護士の仕事のやりがいや面白さ、多様なバックグラウンドを持って弁護士になることの利点などを語った。

菊間会員は、証人尋問について、証人からの予想外の回答に対する対応力は、テレビの生放送を仕切る司会に求められている力と似ていると、弁護士業務とアナウンサーの仕事の類似点を挙げた。

恵さんは、弁護士役を演じてみて、弁護士が法廷で争うだけではなく、紛争予防のために尽力していることや、依頼者に寄り添う奥深い仕事であることなどの気付きがあったと述べた。

八代会員は、米国の弁護士と日本の弁護士の働き方の違いなどについて、実体験を踏まえて話をした。

※下町ロケット:下町の工場である佃製作所の奮闘を描いたドラマ。恵さん演じる神谷弁護士は、ライバル企業の大手メーカーから理不尽な特許権侵害で訴えられた佃製作所の代理人となり、さまざまな法廷戦術を駆使して、大手メーカーと対決する。

 

第2部「ますます広がる活躍のフィールド」

奥国範会員(東京)をコーディネーター、女優の宮前杏実さんを会場進行サポーターとして、各分野の専門家を招いて、弁護士の仕事・活躍の場についてパネルディスカッションを行った。
吉柳さおり氏(株式会社プラチナム代表取締役)は、ベンチャー企業の成長を支える弁護士がまだまだ必要とされていると述べた。
塩野誠氏(株式会社経営共創基盤取締役マネージングディレクター)は、AIをテーマに挙げながら、プログラミングや生物学など、法律以外にも精通分野を持つことが強みになるとアドバイスした。
杉山悦子准教授(当時・一橋大学大学院法学研究科)は、グローバル化に対応できる国際的な視野を持った弁護士を目指してほしいと述べた。
正岡明氏(読売新聞東京本社論説委員)は、弁護士は世の中のさまざまな事象に関心を持ち、より良い世の中を実現するため、社会的弱者に手を差し伸べてほしいと語った。

 

第68回定期総会
 東京で開催(5月26日) 

本年5月26日(金)午後1時から、パレスホテル東京(千代田区)において、第68回定期総会が開催される。

平成28年度(一般会計・特別会計)決算報告承認の件、平成29年度(一般会計・特別会計)予算議決の件、宣言・決議の件のほか、海外のABS(非弁護士に持分または議決権を与える法律事務所の形態)所属の外国弁護士による外国法事務弁護士登録申請に対応する外国法事務弁護士職務基本規程(会規第百号)中一部改正の件など、計8本の議案が審議される予定である(議案内容等の詳細は、5月16日頃に送付される議案書に記載)。

多数の会員の参加による充実した審議をお願いしたい。

 

2017年度会務執行方針(要約)

はじめに

世界各国で大きな変化の兆しが見られる中、我々には平和と人権を守るための不断の努力が求められています。国内においては、様々な分野で制度改革が求められる中、司法の役割、とりわけ日弁連を中心とした弁護士及び弁護士会の役割は益々重要なものになっています。
日弁連の会員数は、本年、39,000人を超え、世代間や地域間で、また業態や業務分野の違いによって弁護士会に対する意識や要求も多様化しています。しかし、全ての弁護士は、強制加入制度という同じ船に乗り、人権擁護と社会正義の実現という弁護士法に基づく使命を担う点で同じ方向を目指しているといえます。日弁連は、会員の様々な意見を集約し、合意形成を図りつつ、以下の諸課題に取り組み、改善・改革していかなければなりません。市民の皆様に利用しやすく頼りがいのある司法を築き、希望と活力にあふれる司法の実現を目指し、全力で取り組みます。

 

第1 平和と人権を守る

弁護士の最大の使命は人権の擁護にあります。立憲主義を堅持し、憲法を護り、多方面にわたる人権擁護の取組を継続します。
安保法制については、立憲主義と恒久平和主義の立場から、廃止に向け取り組みます。憲法改正については、憲法審査会の議論や国家緊急権の創設等の問題点をわかりやすく発信していきます。
両性の実質的な平等と女性の権利の確立を目指し、選択的夫婦別姓制度の導入、再婚禁止期間の廃止等を求めます。
少年法の成人年齢引下げに反対します。国選付添人制度について、身体拘束事件全体への対象の拡大実現を目指します。
成年後見制度の利用の促進に関する法律に基づき、成年後見の制度構築と運用改善に努めます。
外国人に対するあらゆる人種差別を解消し、その基本的人権を確立するため一層の取組を行います。
消費者基本計画への適時適切な対応などの課題に取り組みます。
労働時間法制の不当な規制緩和に反対し、派遣労働の固定化の見直しを求めます。また、生活保護基準の切下げに反対し、奨学金制度の充実、貧困対策や自殺対策に取り組みます。
性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターが全国で設置されるよう、各種取組を行います。また、犯罪被害者を総合的に支援するための被害者庁の設立を視野に入れた調査・研究を深化させ、犯罪被害者法律援助制度の国費化に向けた取組も一層強めます。
暴力団等による被害の防止、救済を図るとともに、暴力団等の活動の排除に取り組みます。
個人情報保護法の改正を求め、マイナンバー制度の運用状況等を厳しく監視・検証していきます。
国連の各人権条約機関への個人通報制度の導入に取り組みます。
特定秘密保護法については、廃止を含めた抜本的見直しを実現するための取組を進めます。
共謀罪法案の問題点を広く社会に共有し、廃案に向けた取組を強化します。
昨年10月の人権擁護大会で採択された「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」の実現に向け、犯罪被害者・遺族の方々の実情に配慮しつつ、国民の理解を得るための努力をしながら取組を進めます。
法制審議会「少年法・刑事法(少年年齢・犯罪者処遇関係)部会」の議論に的確に対応していきます。
公害と環境破壊を根絶するため、また、持続可能な社会を建設するために取り組みます。

 

第2 利用しやすく、頼りがいのある民事司法の実現

民事司法の改革は、弁護士の活躍の場を拡げ、市民にとって身近で利用しやすい司法を実現するために重要な課題であり、2011年5月の「民事司法改革と司法基盤整備の推進に関する決議」に基づく取組を継続します。
弁護士会照会制度、当事者照会制度及び文書提出義務の強化など証拠収集制度拡充の取組を進めます。
抑止的付加金制度の導入を含め、司法に助力を求める者が報われる損害賠償制度の構築に向け、議論・検討を進めます。
民事執行法改正の議論において、過酷執行に配慮しつつ強制執行制度の実効性を高めるべきとの日弁連意見を踏まえた議論がなされるよう、更に検討します。
家事事件手続法の適正な運用を見守るとともに、家庭裁判所の人的・物的基盤の充実に向けて取り組みます。
司法による行政チェック機能を実効あるものとするよう、行政訴訟制度の改革に向けた検討を進めます。
提訴手数料を抜本的に低額・定額化するための取組を進めます。
権利保護保険(弁護士保険)の拡充を図り、その信頼性維持のための取組を進めます。
依頼者が弁護士との間の通信内容の開示を強制されない権利を確立するための取組を行います。
民法(債権法関係)改正について、調査研究、会員への周知など、改正法に対応した諸準備を進めます。

 

第3 法曹養成制度の改革

昨年3月の臨時総会で成立した「法曹養成制度改革の確実な実現のために力を合わせて取り組む決議」に基づき、法曹養成制度を巡る改革諸課題全般について、主体的かつ積極的に取り組みます。

年間司法試験合格者数1,500人の早期実現に努めます。また、法曹志望者確保のため、法曹の意義・魅力等を発信する取組を積極的に進めます。

法科大学院の規模の適正化、教育の質の向上など制度改善の取組を進めます。

司法修習の充実に引き続き取り組みます。また、新たな修習給付金制度が創設されましたが、司法修習生の修習環境の整備と貸与制が適用された世代の問題について引き続き取り組んでいきます。

 

第4 弁護士の業務拡充と活動領域の拡大

法の支配を社会の隅々に広げ、希望と活力にあふれる司法を実現するため、弁護士の業務拡充と活動領域の拡大に関わる諸課題について取組を強化します。

国、自治体への弁護士の任用促進、行政連携など各種の取組を進めます。

中小企業による弁護士の利用を促進する取組を進めます。

企業の諸活動及びコーポレートガバナンスにおいて、上場企業の社外役員としての弁護士選任の推奨等、法律・制度の改正を積極的に働きかけていきます。

弁護士が組織内においても活躍できるよう、関係機関に働きかけるとともに、組織内弁護士への支援態勢を整える取組を進めます。 関連機関・団体と連携し、中小企業の海外展開支援など、国際業務の推進に取り組んでいきます。

会員によるインターネットを用いた情報発信が適正に行われるよう環境整備を進めます。

会員の要望に応え、市民の弁護士に対する信頼を高めるため、研修を更に充実させます。

 

第5 司法アクセスの改善及び司法基盤整備

法律相談の活性化・再生に取り組みます。

引き続き弁護士過疎・偏在対策を進めるため、ひまわり基金法律事務所や都市型公設事務所の在り方や支援策を検討します。

裁判所支部における裁判官の常駐化などの取組を進め、必要な司法予算の増額を訴えていきます。

 

第6 えん罪を生まない刑事裁判の実現

裁判員裁判における弁護人の活動についての実演型研修を積極的に行います。公判前整理手続の長期化の原因や改善策を検討します。

昨年5月の刑事訴訟法改正を踏まえ、取調べの録画に関する施行後3年後見直しに向けた立法事実となるべき事例を収集分析します。また、弁護人立会権の実現に向けた取組を強化します。

被疑者又は被告人の身体の拘束に係る判断に当たって否認や黙秘等を理由に不当に不利益な扱いがなされた事例を収集分析するなどの取組を行います。

全面的証拠開示の実現に向けた取組を続けます。

国選弁護報酬の増額に向けた取組を行います。

新たに導入される捜査・公判協力型協議・合意制度について、研修、経験交流等を充実させます。

 

第7 自然災害等により被害を受けた人々の生活の回復

東日本大震災から6年を経過した現在もなお、多くの人々が過酷な生活を強いられています。また、昨年は熊本地震など多数の災害が発生しました。今後も被災者・被害者が迅速かつ適切な支援を受けられるよう、積極的に役割を担っていきます。

災害復興法制の改正や生活再建支援制度の抜本的改善に向けた取組を更に強化します。

福島第一原子力発電所事故による損害の完全な賠償を実現するための諸活動に引き続き取り組みます。

被災者・被害者の救済のため、自治体、隣接士業などとの緊密なネットワーク構築に努めます。

原発事故を踏まえ、再生可能エネルギーの推進等を中核とするエネルギー政策の構築に向けて行動します。

 

第8 日本司法支援センター(法テラス)事業に関する取組

昨年改正された総合法律支援法の本格的施行に向け、諸制度の周知と適正な運用の実現を目指します。

法テラスと連携し、法律扶助対象事件の拡大、立替基準の適正化、困難案件加算や償還免除の活用・拡大等に取り組みます。

公的弁護制度の逮捕段階への拡大、国選付添人制度の対象範囲拡大や、人権分野の法律援助7事業の本来事業化等を目指します。

 

第9 若手会員への支援

若手会員向けの相談窓口等を全国に広めるため、情報の収集と共有化に努めます。また、研修コンテンツの充実、eラーニングの利用等の促進を図ります。

司法修習生・若手会員に対する就業支援及び独立開業支援を継続して行います。

日弁連会費の更なる減額を検討します。

 

第10 男女共同参画の推進

男女共同参画の推進のための研修・啓発活動に積極的に取り組みます。また、理事者に占める女性会員の割合を計画的に高めるため、まずは副会長のクオータ制導入の検討を進めます。

 

第11 法教育の充実

法教育や教育現場における弁護士の関わりを広めるため、教員・学生向けのイベントの企画、教材の開発、政策提言や学校派遣事業などの取組を推進します。

 

第12 司法及び弁護士の国際化の推進

国際活動や国際的イベントにおいて日弁連のプレゼンスの更なる向上を目指します。

中小企業の海外展開におけるリスクの軽減に向けて活動します。

日本企業が裁判外で国際的紛争を迅速適正に解決し得るような制度的・人的・物的インフラ整備の検討を進めます。

ハーグ条約事件等渉外家事事件に対応できる人材を育成するとともに、相談窓口の整備などを検討します。

ABS(弁護士以外の者に持分や議決権を認める法律事務所の形態)に所属する外国弁護士が日本で外国法事務弁護士として登録する意味や影響を分析し、ABSの所属を規制する外国法事務弁護士の制度的対応を進めるべく提案を行います。

 

第13 広報の充実

日弁連の意見や活動を報道していただくため、適時、適切な発信を行います。

弁護士・弁護士会のイメージアップ広報を引き続き展開するとともに、各種パンフレット等を通じて、弁護士の仕事や役割などを広く社会に理解いただくことを目指します。

 

第14 弁護士自治を堅持する方策

総合的な不祥事対策の適正かつ実効的な運用を目指す取組を継続します。

弁護士職務基本規程について、十分な会内論議を行い、必要な改正に向けた検討を進めます。

財政の見直しと経費削減を行うとともに、組織の合理化を進めます。

弁護士法第72条違反事例の情報を収集・集約し、違反に適切に対処する仕組みを検討します

犯罪収益移転防止に関し、引き続き職務の適正の確保を図るとともに、国際機関であるFATF(金融活動作業部会)第4次相互審査に向けた準備を進めます。

 

院内学習会
オーフス条約加入を考える
4月4日 参議院議員会館

1998年に採択されたオーフス条約(以下「本条約」)は、市民参加が環境問題の適切な解決に最も資するとの地球サミット合意(リオ宣言・1992年)の考えに基づき、条約締結国に対し、①情報アクセス、②意思決定への参加、③司法アクセスという3つの権利を市民に保障する具体的な法整備を求めている。
現在、47の国と地域が加入している本条約について、日本でも加入に向けた検討を開始し、環境に関する実効的な市民参加を実現する方策を考えるため、院内学習会を開催した。

 

大久保規子教授(大阪大学大学院法学研究科)は、基調報告の中で、日本では、市民参加の実効性を保障する法整備が本条約の求めるレベルから大きく後退していると指摘した。また、環境団体訴訟制度は先進国では整備されているのが当然の制度であり、オーフス条約に加入していないアジア諸国でも、中国、インド、タイ、フィリピン、インドネシアが、環境裁判所を設置するなどしているところ、司法アクセスの点でも、日本は大きく遅れをとっていると報告した。
公害対策・環境保全委員会の喜多自然特別委嘱委員(沖縄)は、本年2月16日付で日弁連が公表した「環境に関わる市民参加を保障するためにオーフス条約への加入と国内法制の拡充を求める意見書」について報告し、開発を中止する選択肢が残っている初期段階から、市民が意思決定過程に参加できることが重要だと指摘した。
葉山政治氏(公益財団法人日本野鳥の会)は、環境NGOの立場から、環境アセスメントで反対の意思表示をするだけでは事業者による開発を止めることはできないと述べ、生物多様性保全のため本条約への加入が必要だと訴えた。
学習会に参加した議員からも、オーフス条約の内容は日本でも実現されるべきであり条約加入への検討を早急に進めるべきとの発言が相次いだ。

 

第53回市民会議
国際化時代の弁護士の役割について議論
3月22日 弁護士会館

2016年度最終回の市民会議では、国際化時代の弁護士の役割に関し、①依頼者と弁護士の通信秘密保護、②国際機関における弁護士の活動、③国際司法支援の3つのテーマについて、現在の取り組み状況を報告し、議論を行った。
なお、2017年度市民会議の議長、副議長として、北川議長、井田副議長が再任された。

 

依頼者と弁護士の通信秘密保護制度

依頼者と弁護士の通信秘密保護制度の確立に関するWGの片山達座長(第二東京)が、通信秘密保護制度をめぐる日本の現状について、海外の法制度と比較しつつ概説し、日本においても早急に通信秘密保護制度が導入され、国際標準化が図られるべきと報告した。

委員からは、市民が法的に適切な行動をとるためには、弁護士に安心して相談できる環境、すなわち弁護士との通信秘密の保護が必要不可欠である、同制度の欠如は国際的な経済活動を阻害しているとの声が上がった一方、市民になじみのないテーマであり、問題の所在が分かりづらいとの声もあった。


国際機関における弁護士の活動/国際司法支援

幸寺覚副会長(当時)が、国際機関での活動を希望する弁護士に対する日弁連の支援体制(就職情報の提供、研修の実施等)と、アジア諸国を中心に20年来実施してきた国際司法支援活動について報告した。
委員からは、国際機関で活躍する日本人を増やすことは重要であり、まずは学生時代の早い段階で、国際機関の採用システムや採用に当たり必要とされる能力についての情報共有が図られるべきとの意見や、グローバル化する経済において、弁護士が果たすべき法的役割は増大しており、弁護士自身がそれを強く認識すべきとの意見が述べられた。


市民会議委員 (2017年3月22日現在)(五十音順)

井田香奈子 (副議長・朝日新聞東京本社オピニオン編集部次長)
長見萬里野 (全国消費者協会連合会会長)
北川正恭 (議長・早稲田大学名誉教授)
清原慶子 (三鷹市長)
神津里季生 (日本労働組合総連合会会長)
ダニエル・フット (東京大学大学院法学政治学研究科教授)
中川英彦 (元京都大学法学研究科教授)
松永真理 (テルモ株式会社社外取締役)
村木厚子 (前厚生労働事務次官)
湯浅 誠 (社会活動家、法政大学現代福祉学部教授)

 

シンポジウム
聞いてびっくり!多様な弁護士ライフ
3月14日 弁護士会館

若手弁護士サポートセンター夢実践部会の企画により、他の分野においてもプロとして活躍している弁護士にスポットを当て、彼らの“夢”の形や、その活動の内容、シナジー効果等について、報告・検証を行うシンポジウムを開催した。

 

シンポジウム「聞いてびっくり!多様な弁護士ライフ」坂口裕昭会員(徳島)は、企業法務に携わる中で得たスキル・経験を活かしてプロ野球独立リーグ加盟球団を経営してきた経験を語り、弁護士としての能力・経験が経営のすべての場面において役立っていると述べた。
医師資格を持つ越後純子会員(第二東京)は、医師と弁護士の双方のスキル・経験を活かし、都内の地域医療支援病院で医療安全管理業務に従事していること、弁護士の事実認定能力や訴訟を見据えて対応する能力は、同業務においても有用であることを報告した。
小菅哲成会員(東京)および川邉賢一郎会員(神奈川県)は、いずれも自ら法律事務所を経営すると同時に、小菅会員は生家の寺院で副住職を務め、川邉会員はプロレスラーとして活躍している。小菅会員は、多様なバックグラウンドを持つ人から話を聞く点が両業務に共通しているところ、弁護士であるからこそ信頼して相談を寄せてもらえているとの実感を述べた。
来場者のアンケートでは、「それぞれの仕事で身に付けた技術を双方で活かせることが分かった」「もっと詳しく聞いてみたいと思った」「今後も同様の企画をしてほしい」といった声が寄せられた。

 

シンポジウム
オーストラリアのフランチャイズ法制に学ぶフランチャイズ規制法の在り方
4月7日 弁護士会館

日本のフランチャイズチェーン(以下「FC」)は1,300を超え、市民の生活になくてはならない存在である一方、フランチャイズを規制する法制度は十分とは言えず、加盟店と本部の間の法的紛争が絶えない。
2016年10月に日弁連が実施した豪州のフランチャイズ規制法に関する調査結果を基に、日本のフランチャイズ法制の在り方を検討するシンポジウムを開催した。

 

基調講演

長谷河亜希子准教授(弘前大学人文社会科学部)が、豪州のフランチャイズ規制法制を概説し、規制がフランチャイズ事業の信頼性向上をもたらし、同事業への投資家の参入、同事業の発展を促したと述べた。

 

豪州調査の報告

消費者問題対策委員会の中村昌典幹事(東京)は、豪州におけるフランチャイズ規制の導入の経緯について、本部側から強い反対もあったが、従来の自主基準では不十分であるとして政府が導入を決定したと説明した。

中野和子委員(第二東京)は、豪州におけるフランチャイズ制度と市民政策との関連性について、豪州では、FC加盟権の購入が、永住権取得要件たる一定額以上の投資を満たすことから、永住権取得を希望する外国人と投資呼び込みを期待する政府の双方の意向を満たすものとして機能していると指摘した。

佐藤千弥幹事(東京)は、豪州では、日本と異なり、FC組織内部で紛争が生じた際の調停申し立てが義務付けられており、紛争の解決促進が図られていると報告した。

 

パネルディスカッション

本部から提供される店舗売上予測の曖昧さが、加盟店の経営不安定化を招いている問題について、元FC本部法務担当の佐藤衛氏(現FC加盟店)は、後発店舗のオープンなど多様な変化要素の下での売上予測は、不確実性を包含せざるを得ないと、予測困難な実情を説明した。
また、佐藤氏は、豪州での調停義務付けに関連し、相談窓口などの充実は、フランチャイズの発展に結び付くと指摘した。

 

シンポジウム
木造戸建住宅の耐震性は十分か?
熊本地震を契機として4号建築物の耐震基準を考える
4月8日 弁護士会館

熊本地震では、現行の基準下で建築された建物も多数倒壊した。その要因として、建築基準法第6条第1項第4号に定める2階建てや平屋建ての木造建築物など(以下「4号建築物」)について、構造計算が免除され、特例(以下「4号特例」)により建築確認手続時の構造審査の省略が認められていることが挙げられる。

熊本地震から約1年経った今、耐震基準につき多角的に検討し、住宅の安全性確保に向け、あるべき法制度を模索するため、シンポジウムを開催した。

 

各種報告

冒頭、消費者問題対策委員会土地・住宅部会の安田周平委員(鹿児島県)が、震度7を観測した熊本県益城町の建物の倒壊や大破の甚大な状況を、木造家屋を中心に写真を用いながら報告した。

次に、倒壊の原因について、耐震基準の観点から、国土交通省住宅局の石﨑和志建築指導課長が報告し、「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会」が取りまとめた報告書によれば、倒壊の主な原因は現行の耐震基準の不十分性ではなく、同基準の未遵守にあることを説明した。

また、神崎哲幹事(京都)が4号建築物に係る法令の問題点について基調報告を行い、4号建築物にも構造計算を義務付けるとともに、4号特例を撤廃すべきなどと指摘した。

 

パネルディスカッション

石﨑課長、日本建築構造技術者協会の金箱温春前会長(工学院大学特別専任教授)、大橋好光教授(東京都市大学工学部建築学科)、大阪府堺市の石黒一郎職員および神崎幹事をパネリストに迎え、構造計算の義務付け、4号の手続特例などにつき、各立場から議論を行った。また、参加者からの多数の質問にも回答し、白熱した討論を繰り広げた。

 

 

JFBA PRESS -ジャフバプレス- Vol.121

LAWASIA東京大会2017にご参加を!

ローエイシア “The Law Association for Asia and the Pacific” は、1966年に設立された、アジア・太平洋地域の法曹団体・法律家・学者・実務家など、法律に関連する業務に携わる者が参加している国際法曹団体です。

その記念すべき第30回年次大会(以下「大会」)が、本年9月18日から21日まで東京で開催されます。【於:ホテルニューオータニ東京(千代田区)】

日本での大会は、実に14年ぶり。アジア・太平洋地域における最先端の法律実務に触れる絶好の機会となる大会の魅力をお伝えします。

(広報室嘱託 柗田由貴)

 

多彩なセッション

大会のテーマは、「法の支配による大いなる飛躍〜ローエイシアの軌跡とこれからの役割」。人権、ビジネス、家事、公益、司法、刑事、ADR、企業法務、若手法曹、ムート(模擬仲裁)の10の部会から、30以上のセッションが用意されています。近年、ローエイシアはビジネス法に関する活動に力を入れており、表1のとおり、ビジネス法に関するセッションが連日開かれます。
全公式セッションにおいて日英同時通訳が提供されます。また、大会初日には、国際会議初参加者を対象にビギナーズイントロダクションも準備されていますので、安心してご参加いただけます。

 

交流の場

セッションの合間には、ランチやコーヒーブレイクの時間が設けられているほか、各種パーティも開かれます。また、参加者の要望に応えて「大相撲秋場所観戦」、「アメ横での買い物・散策」といったツアーも企画されており、参加者の素顔に触れ、交流を深めることができます。

 

経験者の声

大会には、30以上の国・地域からの参加者が見込まれ、日本企業による事業展開が拡がるアジア・太平洋地域の多数の国の法律家が一堂に会するまたとない機会です。
過去の大会参加者からは、日常業務に直結する情報はもちろん、各国・各分野の最新情報に触れることができ、その後の業務に役立っているとの声が寄せられています。
また、大会を通じて親しくなった海外の弁護士に、その国の法制度を適時に教えてもらうことができ、相談者からの信頼獲得につながることなどもあるそうです。

 

参加登録料の早期割引、若手向け費用補助

5月31日までに登録すると、表2のとおり、早期割引が適用され、通常より登録料が2万円割り引かれます。

さらに、日弁連では、登録10年以下(ただし、新旧第60期の会員は全員が対象)の若手弁護士を対象に、弁護士会または日弁連委員会などの推薦により5万円の補助を行っています。現在2次募集を行っていますので、ご希望の方は弁護士会または日弁連国際課(TEL 03-3580-9741)までお問い合わせください(ただし、定員がございますので、申請はお早めにお願いいたします)。

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LAWASIA東京大会2017にご参加を!詳細や最新情報は、ローエイシア大会ページへ大会ホームページ や 大会Facebookページへ大会のフェイスブック に随時アップされています。

また、委員会ニュースでも、適宜情報を提供していますので、ぜひご覧ください。

 

【表1】ビジネス法に関するセッション

9/19 14時 アジアと欧州 アジア企業の欧州ビジネス投資における近時の動向と法的課題
ADR/ビジネス法 トランプ・ブレグジット時代の投資協定仲裁
16時 金融 アジア各国のキャッシュレス決済事業者に対する規制の現状と今後の方向性
証券・投資 アジア各国におけるM&Aに際して適用ある外資規制とそれに伴う実務的な対応例
9/20  9時 証券・投資 アジア投資におけるAnti-Corruptionに関わる現地規制や展望
11時 データ保護 ビッグ・データ 〜データ保護法は最新テクノロジーを捕らえているか?〜
環境 排気、廃水、廃棄物に関する問題点とそれらがもたらす効果について
14時 知的財産権 デジタル時代におけるクリエイターへの対価還元と著作権の集中管理
不動産 アジア諸国における不動産担保・執行手続の実務上の諸問題
16時 エネルギー・資源 アジア地域のエネルギー保障
9/21  9時 雇用 アジア各国のハラスメント及びダイバーシティに対する法規制とその運用
11時 租税 国際的租税回避への対応

 

【表2】参加登録料(抜粋)

カテゴリー 早期割引参加登録料 通常参加登録料
ローエイシア会員 12万円 14万円
ローエイシア非会員 13万円 15万円
登録10年以下の弁護士 10万円 12万円

 

※ローエイシア非会員の参加登録料には、ローエイシア会員登録料1年分が含まれます。

※登録10年以下の弁護士(ただし、新旧第60期の会員は全員が対象)は、日弁連の5万円の費用補助の対象となる場合があります。

 

 

続・ご異見拝聴 (3)

神津 里季生 日弁連市民会議委員

 

今回は、2015年12月から日弁連の市民会議委員を務めていただいている日本労働組合総連合会(以下「連合」)の神津里季生会長にお話を伺いました。神津会長は、1979年に新日本製鐵株式会社(現:新日鐵住金株式会社)入社後、同社の労働組合連合会会長、連合事務局長を経て、2015年10月に現職に就任されました。

(広報室嘱託 神田友輔

 

連合の活動

神津里季生会長

個々の労使関係や産業別労働組合では解決が困難な労働法制、社会保障などの課題に取り組んでいます。一方で、労働者個人にも注目し、「なんでも労働相談ダイヤル(0120-154いこうよ052れんごうに)」を実施するなど、個々の労働問題にも対応しています。

弁護士との連携

 

各地で弁護士と一緒に労働問題相談会を実施しているほか、上記電話相談に寄せられたさまざまな法律問題に対応するため、弁護士と連携をしています。
弁護士の使命である人権擁護は、労働者が生き生きと働くための土台となるものです。連合としても、人権擁護活動をさらに強化していきます。

 

労働審判について

 

制度そのものは高く評価していますが、実施支部はまだまだ少なく、最高裁にその拡大を求めています。

本年4月には、連合も協力して、現役労働審判員とその経験者でつくる「労働審判員連絡協議会」を発足させました。紛争解決のノウハウを継承することを目的としています。同協議会のさらなる発展が期待されます。

 

労働教育・ワークルールへの取り組み

 

連合はワークルール教育に力を入れており、高校では出前講座、大学では寄付講座を実施しています。
また、職場で役立つ法律知識を広めるため、日本ワークルール検定協会と協力してワークルール検定も実施しています。

 

長時間労働の規制に向けて

 

残業時間の上限規制が政府で議論に上がっています。三六協定を結んでいない労使関係は約4割と言われていますが、そこで残業が全く行われていないと考えるのは困難です。残業時間の上限規制は、長時間労働を断ち切る最初の一歩だと思っています。

 

弁護士・弁護士会への期待

 

司法界が意欲的に改革を進めた結果、裁判員制度も市民の中に根付きつつあります。弁護士・弁護士会の役割は大きく、その活動は社会に変化をもたらします。今後も弁護士・弁護士会の活動に期待しています。

 

 

ブックセンターベストセラー
(2017年2月・手帳は除く) 協力:弁護士会館ブックセンター

順位 書名 著者名・編者名 出版社名
1 新注釈民法(15)債権(8)§§697〜711

窪田充見 編、大村敦志・道垣内弘人・

山本敬三 編集代表

有斐閣
2 こんなところでつまずかない!離婚事件21のメソッド 東京弁護士会親和全期会 編著 第一法規
3 こんなところでつまずかない!交通事故事件21のメソッド 東京弁護士会親和全期会 編著 第一法規
4 模範六法2017 平成29年版

判例六法編修委員会 編

三省堂
5 簡易裁判所における交通損害賠償訴訟事件の審理・判決に関する研究 司法研修所 編 法曹会
6 労働訴訟 −解雇・残業代請求[企業訴訟実務問題シリーズ] 森・濱田松本法律事務所 編、荒井太一・安倍嘉一・小笠原匡隆・岡野 智 著 中央経済社
7 労働法[第十一版補正版]法律学講座双書 菅野和夫 著 弘文堂
8 共有不動産の紛争解決の実務−使用方法・共有物分割の協議・訴訟から登記・税務まで− 三平聡史 著 民事法研究会
9 国会便覧 平成29年2月新版141版 シュハリ・イニシアティブ
証拠収集実務マニュアル[第3版] 東京弁護士会法友全期会民事訴訟実務研究会 編 ぎょうせい

 

日本弁護士連合会 総合研修サイト

 

ライブ実務研修人気講座ランキング 2016年11月~2017年3月

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順位 講座名
1 改正法の要点解説2016「割賦販売法」「特定商取引法」「消費者契約法」
2 破産管財人の税務
3 司法取引と刑事免責~知らなきゃ怖い2016年改正刑訴法~
4 知らなきゃならない2016年刑訴法大改正のツボ
5 民事裁判における裁判官とのコミュニケーションスキル-裁判官との認識の不一致やずれを解消し有利な展開へ-
遺言執行をめぐる諸問題2016-遺言執行トラブル対応と遺言書におけるトラブル予防-
7 よくわかる最新重要判例解説2016(民事)
8 児童虐待問題に対する法的対応の実務
9 弁護士が理解しておくことが望ましい会計基準の実務
10 対策は万全ですか?改正個人情報保護法の施行とマイナンバー利用開始1年を迎えて

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お問い合わせ先 日弁連業務部業務第三課(TEL 03-3580-9927)