日弁連新聞 第518号

平成28年熊本地震 現地視察

本年1月30日、中本和洋会長、岩渕健彦副会長、出井直樹事務総長らが熊本県を再訪問した。

 

益城町を視察する中本会長

被災地および益城法律相談センター視察

前震と本震の二度にわたり震度7を観測した、上益城郡益城町の被災地を視察した。

2016年5月に訪問した際に倒壊した家屋が続いていた町並みは、解体撤去工事が終わり更地となっているところもあるものの、がれきや家財道具がそのままとなっている家屋もまだ多く、復旧・復興が順調に進んでいるとは言えない状況が見られた。

続いて、本年1月27日に開設された益城法律相談センター(益城町中央公民館内)を訪問した。2016年4月25日から実施している無料法律相談(電話および面談)の件数は、本年1月末時点で1万件を超えており、同センターでは、今後も被災者の法的ニーズに応えるため、地震に関する相談に無料で対応していく。

 

益城町長との面談

西村博則町長(写真奥)との面談の様子益城町役場を訪問し、西村博則町長と面談を行った。西村町長からは、町内の復旧・復興の状況について、地震直後は益城町に住み続けることに不安を感じる声が住民から多く聞かれたが、現在は益城町に戻りたいという声に変わっているとの報告があった。

日弁連からは、「熊本地震無料法律相談データ分析結果(第2次分析)」に基づき、益城町における相談内容の傾向等の分析結果の説明を行った。

*前記分析結果は、日弁連のホームページでご覧いただけます。

 

 

 

 

 

熊本県弁護士会との意見交換

吉田賢一会長をはじめ熊本県弁護士会執行部と被災者支援活動に関して意見交換を行った。

同会からは、現行の被災者生活再建支援制度では、住家被害認定が基礎支援金の適用要件とされているため、地盤の被害が考慮されないこと、自然災害による被災者の債務整理に関するガイドラインの運用等に関して課題があること等が報告された。

 


東日本大震災被災者支援

東日本大震災から6年が経過するが、今なお全国で避難生活を送り続ける人々が12万人以上おり、いまだ被災地の復旧・復興が進んでいるとは言えない。原子力事故による損害賠償の問題、福島県による無償住宅支援打ち切りの問題など、多くの課題が残されており、被災者および被害者一人ひとりの抱える問題が、複雑かつ深刻になっている。

日弁連は、2016年5月の定期総会で被災者・被害者の基本的人権を回復すべく支援活動を継続していくこと等を内容とする宣言を採択したが、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする法律専門家団体として、引き続き被災者および被害者に寄り添い、支援活動を継続するとともに、原発事故の再発防止に取り組んでいく必要がある。

 

司法修習生に対する給付型の経済的支援制度~閣議決定~

 

法務省は、2016年12月19日に2017年度以降に採用される予定の司法修習生に対する給付型の経済的支援制度の創設を発表しました。
日弁連はこれまで、法曹志望者を確保するためのさまざまな取り組みを行っており、その一環として、修習に専念し得るための経済的支援を求めてきたものであり、今回の法務省の発表を前進と受け止め、同日付で会長談話を公表しました。

本年2月3日には裁判所法の一部を改正する法律案が閣議決定されています。
今後は通常国会において裁判所法改正に向けた法案審議がなされる見通しで、日弁連は、早期の裁判所法改正を目指し全力で取り組みます。
今回の新制度発表は、弁護士会、ビギナーズ・ネット、市民連絡会の皆さまの多大なる尽力の賜物であり、これまで協力をいただいた皆さまに御礼を申し上げます。引き続きのご支援、ご協力をよろしくお願いします。

 

*裁判所法の一部を改正する法律案は法務省のホームページでご覧いただけます。

 

 

[報告] 第6回法曹養成制度改革連絡協議会

2月8日、第6回法曹養成制度改革連絡協議会が文部科学省で開催された。協議会には、法務省、文部科学省、最高裁判所、日弁連と法科大学院協会が出席し、この間の報告と意見交換を行った。

同日のテーマは、①法曹人口、②法科大学院、③司法試験、④司法修習生に対する経済的支援の在り方、⑤法曹志望者の確保であった。

法曹人口については、法務省から関連するデータの最新の報告があり、第69期司法修習生の進路別人数等が報告された。法科大学院については、文部科学省から、加算プログラムの基準の見直し、教育の質の向上と法曹志望者確保のための法学部と法科大学院の連携に関する取り組みや議論状況、適性試験任意化後の未修者等選抜ガイドライン案、ICT(情報通信技術)の活用に関する調査研究協力者会議の検討結果案についての説明がなされ、若干の意見交換が行われた。日弁連からは、地域適正配置の観点からICTの活用に注目しているとの意見を述べた。

また、法務省から、2016年司法試験予備試験の結果の報告と、司法修習生に対する経済的支援の在り方について、2月3日に閣議決定された裁判所法改正案の内容が報告された。

最後に、法曹志望者の確保に関し、法務省と文部科学省が行った法学部生に対するアンケートの結果が報告され、日弁連からは、この間の日弁連と各弁護士会の取り組みを紹介した。

次回(第7回)は活動領域の拡大がテーマとなる予定である。

(司法調査室嘱託 高橋しず香)

◇               ◇

*同協議会の議論状況および資料等は法務省および文部科学省のホームページでご覧いただけます。

 

最高裁判事に山口厚会員(第一東京)

最高裁判事に山口厚会員(第一東京)1月15日限りで定年退官した櫻井龍子最高裁判事の後任として、山口厚会員(第一東京)が2月6日付で任命された。

 

山口会員は東京大学法学部を卒業後、東京大学大学院法学政治学研究科教授、東京大学大学院法学政治学研究科長・法学部長、早稲田大学大学院法務研究科教授を歴任し、その後弁護士登録。

司法試験委員会委員長、日本刑法学会理事長、法制審議会委員なども務めた。

 

 

 

 

 

 

ひまわり

大学受験では「理高文低」傾向が続き、文系の花形「法学部」の人気も長い間低迷してきた。しかし、文系志望者数は2年前位から回復してきているようだ。

他方、法曹志望者の減少傾向は底を打つ兆しが見えない。後継者養成に責任をもつべき弁護士会としては、このまま座して待つわけにはいかず、法曹養成制度改革と法曹志望者確保のための取り組みを積極的に進める必要がある。

法学部生を対象とした最近のアンケート調査結果では、法曹を志望する時期は高校生以前が多い。弁護士会の中には、高校等へ弁護士を派遣して法曹の魅力を紹介する取り組みを実践している会もある。地道な努力の積み重ねが大切であろう。

3月18日に、日弁連と東京三会では、シンポジウム「弁護士になりたい!って思ってるだけじゃ始まらない」を開催する。弁護士が活躍するドラマ「下町ロケット」の出演者を交え、弁護士の魅力や活躍のフィールド等について語る企画だ。ぜひとも多くの高校生・大学生に参加を呼び掛けていただきたい。

今、私がこの原稿を書いている横で、高校受験を終えたばかりの長男が漫画を読んでいる。さて、理数系が得意な彼に法曹の魅力をどう語りかけようか。

(H・F)

 

2016年懲戒請求事案集計報告

 

日弁連は、2016年(暦年)中の各弁護士会における懲戒請求事案ならびに日弁連における審査請求事案・異議申出事案および綱紀審査申出事案の概況を集計して取りまとめた。

弁護士会が2016年に懲戒手続に付した事案の総数は3,480件であった。

懲戒処分の件数は114件であり、昨年と比べると17件増えているが、会員数との比では0.29%で、ここ10年間の値との間に大きな差はない。

懲戒処分を受けた弁護士からの審査請求は31件であり、2016年中に日弁連がした裁決内容は、棄却が26件、処分取消が1件、軽い処分への変更が2件であった。

弁護士会懲戒委員会の審査に関する懲戒請求者からの異議申出は55件であり、2016年中に日弁連がした決定内容は、棄却が29件、決定取消が1件、処分変更が1件であった。

弁護士会綱紀委員会の調査に関する懲戒請求者からの異議申出は1,103件、綱紀審査申出は332件であった。日弁連綱紀委員会および綱紀審査会が懲戒審査相当と議決し、弁護士会に送付した事案はそれぞれ8件、0件であった。

 

*一事案について複数の議決・決定(例:請求理由中一部懲戒審査相当、一部不相当など)がなされたものについてはそれぞれ該当の項目に計上した。

*終了は、弁護士の資格喪失・死亡により終了したもの。日弁連においては、異議申出および綱紀審査申出を取り下げた場合も終了となるためここに含む。

 

表1:懲戒請求事案処理の内訳(弁護士会)

新受 既済
懲戒処分 懲戒しない 終了 懲戒審査開始件数
戒告 業務停止 退会命令 除名
1年未満 1~2年
2007 9585 40 23 5 1 1 70 1929 30 138
2008 1596 42 13 2 2 1 60 8928 37 112
2009 1402 40 27 3 5 1 76 1140 20 132
2010 1849 43 24 5 7 1 80 1164 31 132
2011 1885 38 26 9 2 5 80 1535 21 137
2012 3898 54 17 6 2 0 79 2189 25 134
2013 3347 61 26 3 6 2 98 4432 33 177
2014 2348 55 31 6 3 6 101 2060 37 182
2015 2681 59 27 3 5 3 97 2191 54 186
2016 3480 60 43 4 3 4 114 2872 49 191

  • ※日弁連による懲戒処分・決定の取消し・変更は含まれていない。
  • ※新受事案は、各弁護士会宛てになされた懲戒請求事案に弁護士会立件事案を加えた数とし、懲戒しないおよび終了事案数等は綱紀・懲戒両委員会における数とした。
  • ※懲戒審査開始件数は、綱紀委員会で「懲戒委員会に事案の審査を求めることを相当とする」とされ、懲戒委員会で審査が開始されたもの。
  • ※2007年の新受事案が9,585件となったのは、光市事件の弁護団に対する懲戒請求が8,095件あったため。
  • ※2012年の新受事案が前年の2倍となったのは、一人で100件以上の懲戒請求をした事案が5例(5例の合計1,899件)あったこと等による。
  • ※2013年の新受事案が前年に引き続き3,000件を超えたのは、一人で100件以上の懲戒請求をした事案が5例(5例の合計1,701件)あったこと等による。
  • ※2016年の新受事案が3,000件を超えたのは、一人で100件以上の懲戒請求をした事案が5例(5例の合計1,511件)あったこと等による。

 

表2:審査請求事案の内訳(日弁連懲戒委員会)

新受(原処分の内訳別) 既済 未済
戒告 業務
停止
退会
命令
除名 棄却 原処分
取消
原処分
変更
却下・終了
2014 15 11 0 1 27 28 1 4 1 34 29
2015 20 11 1 1 33 22 6 1 4 33 29
2016 15 13 2 1 31 26 1 2 4 33 27
  • ※原処分取消の内訳【2014年~2016年:戒告→懲戒しない(8)】
  • ※原処分変更の内訳
    • 【2014年:業務停止2月→戒告(1)、業務停止1年→業務停止10月(1)、退会命令→業務停止6月(1)、除名→業務停止2年(1)】
    • 【2015年:退会命令→業務停止2年(1)】
    • 【2016年:業務停止2月→業務停止1月(1)、退会命令→業務停止2年(1)】

 

表3:異議申出事案受付の内訳(日弁連綱紀委員会)

新受 既済 未済
審査相当 棄却 却下 終了 速やかに終了せよ
2014 1353 5 1362 796 9 22 2194 249
2015 1002 6 896 17 5 18 942 309
2016 1103 8 929 25 9 241 1212 200
  • ※2014年の新受事案のうち、同一の異議申出人による大量の異議申出事案の例が1例あり(778件)。
  • ※2015年の新受事案のうち、同一の異議申出人による大量の異議申出事案の例が1例あり(285件)。
  • ※2016年の新受事案のうち、同一の異議申出人による大量の異議申出事案の例が1例あり(305件)。

 

表4:異議申出事案受付の内訳(日弁連懲戒委員会)

新受 既済 未済
棄却 取消 変更 却下 終了 速やかに終了せよ
2014 40 20 8 1 0 1 4 34 26
2015 43 33 0 1 3 0 2 39 30
2016 55 29 1 1 2 1 2 36 49

  • ※取消の内訳【2014~2016年:懲戒しない→戒告(9)】
  • ※変更の内訳【2014年:戒告→業務停止1月(1)】【2015年:戒告→業務停止1年(1)】 【2016年:戒告→業務停止1月(1)】

 

表5:綱紀審査申出事案処理の内訳(日弁連綱紀審査会)

新受 既済 未済
審査相当 審査不相当 却下 終了
2014 340 2 1076 5 3 1086 209
2015 396 4 437 17 1 459 146
2016 332 0 399 4 3 406 72

 

LAWASIA(ローエイシア)東京大会2017にご参加を!

 

本年9月18日から21日まで、第30回ローエイシア年次大会(ローエイシア東京大会)が東京で開催されます。

ローエイシア”The Law Association for Asia and the Pacific”は、1966年に設立された、アジア太平洋地域(ESCAP)の法曹団体・法律家・学者・実務家等、法律に関連する業務に携わる者が参加している国際法曹団体です。毎年行われている年次大会には、主にアジア太平洋地域から多くの法曹が参加します。

大会のプログラムには、人権、ビジネス、家事、公益、司法、刑事、ADR、企業法務、若手法曹、MOOT(模擬仲裁)の10部会から30以上のセッションが用意されています。養育費、司法取引、AIなど、国内法律業務においても参考になるテーマが取り上げられます。セッションはすべて英語で行われますが、約半数のセッションに日本語の同時通訳が提供されます。

また、ウェルカムレセプションやガラディナー等のソーシャルイベントも多数企画されています。海外の法曹とネットワークを築く絶好の機会です。

大会初日にはビギナーズセッションが用意されていますので、国際会議が初めての方でも安心してご参加いただけます。

大会の詳細および参加登録については、大会のホームページ(外部サイトhttp://www.lawasia-tokyo2017.jp/)をご確認ください。

5月31日までに参加登録された方には、早期割引料金が適用されますので、お早めの登録をお勧めします。

なお、若手会員の参加を促進するため、弁護士会または日弁連の委員会等が推薦する登録後10年目以下の会員に対し、大会登録費用の一部として5万円を補助する制度を用意しています。

詳しくは日弁連国際課までお問い合わせください。

(大会組織委員会事務局次長 竹内千春)

◇若手会員参加費用補助に関するお問い合わせ先◇

   日弁連企画部国際課 TEL 03ー3580ー9741

 

障がい者差別解消のための弁護士会等対応要領モデル案、弁護士等対応指針モデル案を策定

2016年4月、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)が施行された。弁護士会や弁護士等は、同法第8条の「事業者」に該当するところ、同条は事業者に対し、障がいを理由とする不当な差別的取り扱いを禁止し、障がい者の性別、年齢および障がいの状態に応じて社会的障壁の除去の合理的配慮を行うことを努力義務としている。日弁連は、本年1月、障がいを理由とする差別の解消のため、弁護士会等対応要領モデル案、弁護士等対応指針モデル案を策定し、全国の弁護士会・弁護士会連合会宛てに、各会で対応要領・対応指針を制定するよう依頼した。
対応要領、対応指針を実効的なものとするためには、今後、弁護士会等が、左記のような、障がい者への配慮に関する種々の情報を収集し、会員に提供していくことも必要である。
①ワードやテキストデータを、メールの添付ファイルで送って申し込むと無料で点字化した文書を送ってくれるサービスがある(個人情報や裁判関係資料等については使用しない)。②法律相談に当たっては、障害者総合支援法を活用して手話通訳者や要約筆記者の派遣を受けることが可能である。③分かりやすい表現については「知的障害のある人の合理的配慮」検討協議会の「わかりやすい情報提供のガイドライン」が参考になる。
障害者差別解消法の詳細は「自由と正義」2016年9月号に掲載されているので参照されたい。

(障がいを理由とする差別の解消の推進に関する対応検討ワーキンググループ 座長 市川正司)

 

院内学習会
カジノ解禁について考える
2月14日 参議院議員会館

2016年12月15日、特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律(以下「カジノ推進法」)が成立した。カジノ推進法は、暴力団やマネーローンダリング対策上の問題、ギャンブル依存症の拡大、多重債務問題再燃の危険性および青少年の健全育成への悪影響など多数の問題を孕んでいる。
カジノ推進法では、施行後1年以内に政府が実施法を策定するとされていることから、審議の経過や法律の問題点について確認し、実施法に関して議論をするべく、学習会を開催した。学習会には、約130人(うち国会議員54人《本人16人、代理38人》)が参加し、カジノ解禁に対する関心の高さがうかがわれた。

 

鳥畑与一教授(静岡大学)が、「カジノ推進法(プログラム法)の問題点~国会審議で明らかになったこと~」と題して報告を行った。
鳥畑教授は、カジノ推進法は、①カジノの有害性などに対する具体的な評価の時期を先送りし、②賭博禁止を定める刑法体系との整合性を十分図らず、③ギャンブル依存症対策やマネーローンダリング規制についても不十分であるなど、さまざまな欠陥を抱えていることを指摘した。
参加した国会議員をはじめ、労働者福祉中央協議会、日本司法書士会連合会等の各種団体からも同法に対する懸念の声が寄せられた。日弁連は、今後も学習会などの開催を通じ、カジノの問題点を広く市民に伝え、カジノ推進法の廃止を目指していく。

 

第19回
多重債務相談に関する全国協議会
1月28日 弁護士会館

多重債務相談に関する各種テーマについて情報を共有し、意見交換を行うために、弁護士会の担当者による全国協議会を開催した。

 

消費者問題

まず、日弁連中小企業法律支援センターの尾田知亜記幹事(愛知県)が、「経営者保証に関するガイドライン」に基づく保証債務整理の手法について、自らの経験を基に概説した。

次いで、消費者問題対策委員会の小林孝志委員(宮崎県)が、先の国会でカジノ推進法が成立したが、536万人ものギャンブル依存症者が国内に存在すると推計される中でのカジノ解禁の問題は大きいと述べた。

三上理幹事(東京)は、銀行カードローンが総量規制の対象外であり貸出が増大していることを報告し、銀行カードローンを原因とする破産に関する調査を検討していると述べた。

小野仁司委員(神奈川県)は、弁護士会へのアンケート結果を基に、多重債務事件等の法律相談体制や破産事件での同時廃止事件と管財事件の振り分け基準について報告した。

 

貧困問題

貧困問題対策本部の岩重佳治事務局員(東京)は、日本学生支援機構の奨学金制度について、返済困難者への救済制度はあるが、延滞があると減額や免除の利用ができないなど問題点が多々あると指摘し、早期に改善すべきであると訴えた。

藤本紗季委員(山梨県)は、「女性と子どもの貧困部会」の委員が中心となって、2016年に2回にわたり実施した「児童扶養手当ホットライン」では、受給対象の該当性に関する相談が寄せられたことを報告した。

塩見卓也事務局員(京都)は、2008年のリーマンショック後から長時間労働が顕著に増加していることを報告し、労働問題が、従前の非正規雇用問題から、いわゆるブラック企業に雇用される問題に広がっており、複雑化していると指摘した。

最後に、楠晋一会員(大阪)が、児童手当が振り込まれた直後の自治体による預金債権差押につき、児童手当法15条の趣旨に反し違法とした裁判例を報告した上で、全差押禁止債権に関する違法な差し押さえについての注意を促した。

 

景観シンポジウム
景観法の成果と課題
2月3日 弁護士会館

2004年に景観法が制定されてから、景観施策に取り組む行政団体は着実に増加している。
景観法施行から現在に至るまでの日本の景観問題の現状と課題に関する理解を深め、今後必要な提言を検討する契機となるよう、シンポジウムを開催した。

 

5五十嵐敬喜委員(法政大学名誉教授)まず、公害対策・環境保全委員会の五十嵐敬喜委員(東京/法政大学名誉教授)が、世界遺産登録基準にある「景観」概念と日本でいう「景観」との差異を踏まえながら、21世紀の景観論の展望を論じた。
続いて、小浦久子教授(神戸芸術工科大学)が、芦屋市の先駆的実践事例などについて報告した。芦屋市は、市内全域を景観地区に指定しつつ、より細かな地域ごとの配慮方針を作成・公表しており、事業者との事前の景観協議も有効に機能している。小浦教授は、地域らしさの持続のためには、景観や地域環境への関心を高めることが重要だと指摘した。
日置雅晴特別委嘱委員(第二東京)は、景観をめぐる裁判について報告した。鞆の浦(福山市)の事例など、景観利益を原告適格の判断材料にした判決はあるものの、景観利益そのものを正面から認めて救済した事例はないという。
飯田昭委員(京都)は、土地利用規制を強化した京都市の新景観政策の深化と問題点について報告した。
後半のパネルディスカッションでは、小島延夫副委員長(東京)が、アメリカでは景観利益が重視されており、ドイツでも連邦裁判所の判断を契機に環境についての住民参加が積極的になったと指摘した。
五十嵐委員からは、開発業者や行政当局に限らず土地や建物を「商品」としか見なくなった国民の意識転換が絶対条件である、敷地単位の土地所有権の過度な保護から「土地の共同利用」への発想転換も必須であるとの強い訴えがあった。
最後に、日置特別委嘱委員が、町並みを保存した地域の方が観光客も多くにぎわっており、美しいものを残すことは経済的にも価値がある、多くの国民がこの事実に気付けば、景観法にも明るい未来が開けるはずだと期待を示した。

 

市民集会
バス事故はなぜ?繰り返される事故の原因と対策を考える
1月28日 弁護士会館

2012年7月、日弁連は、同年4月に関越自動車道で46人が死傷した事故を受け、市民集会「高速バス事故はなぜ?原因と対策を考える」を開催したが、事故は繰り返され、2016年1月には軽井沢スキーバス事故が発生した。
このような現状に危機感を抱き、あらためてバス事故の原因およびこれを踏まえた対策について考えるため、市民集会を開催した。

 

冒頭、貧困問題対策本部の猪股正副本部長(埼玉)が、2012年の市民集会後もバス事故が繰り返されていることへの問題意識を示し、今回あらためて市民集会を開催した経緯を説明した。
続いて、川村雅則教授(北海学園大学)が、「繰り返されるバス事故と、その背景を考える~交通労働の改善に向けて」と題して基調講演を行い、規制緩和によってバスの利用料は安価になったものの、バス業界が疲弊してしまっているというひずみに鋭く切り込んだ。
これを踏まえ、労働現場からの報告として、髙松伸幸氏(全日本交通運輸産業労働組合協議会事務局長)および菊池和彦氏(全国自動車交通労働組合総連合会書記長)が、規制緩和に伴うバス運転者の低賃金、不規則な長時間労働といった過酷な労働実態を明らかにした。
また、尾木直樹教授(法政大学/教職課程センター長)が、軽井沢スキーバス事故で帰らぬ人となったゼミ生4人の遺族や他のゼミ生らが、いまだに彼らの死を受け入れられずにいる悲痛な現状を涙ながらに語った。
さらに、宮原修平氏(NHK社会部記者)が、自らが取材に携わったNHKスペシャル「そしてバスは暴走した」の映像を用いつつ、同バス事故後も連日の長時間労働が横行し安全が軽視されている現場の状況を訴えた。
髙橋信博氏(国土交通省自動車局安全政策課課長補佐)は、同バス事故を受けた国土交通省の対応や打ち出した貸切バス事業者等の遵守事項の強化などの各種対策、当該対策の進捗状況について説明した。

 

JFBA PRESS -ジャフバプレス- Vol.120

2016年度
日弁連の広報
~弁護士の仕事や役割について広く市民の理解を得るために~

「ジャフバくん」風船

日弁連は、2013年度から市民向けの広報活動の充実・強化に努めており、会務執行方針においても「広報の充実」を重要課題に挙げています。
2016年度は、CM動画の制作、小学生向け学習まんがへの制作協賛、弁護士会との連携・支援強化などを中核に据え、広報活動を展開してきました。
本稿では、2016年度に日弁連が実施した広報活動の内容をご紹介します。

(広報室)

 

 

CM動画の制作

武井咲さんを起用したCM2015年度に、女優の武井咲さんを起用し、全国で利用できる統一的なポスターを制作したことに続き、2016年度は、このポスターの世界観を映像化し、弁護士・弁護士会のイメージアップを訴求したCM動画を制作しました。本動画も、すべての弁護士会で活用いただける仕様となっています。

日弁連では、本年1月から2月にかけて、地上波およびBS放送のテレビ番組、JR東日本・JR西日本・東京メトロの各電車内ビジョン、YouTube TrueViewで、本動画を利用した広告を展開しました。

今後も本年12月末日まで、ホームページへの掲載のほか、各種メディアやイベントで放映するなどして活用します。

 

ポスター・クリアファイルの使用継続

武井咲さんのポスター2015年度に制作した武井咲さんのポスター・クリアファイルの使用期限を本年12月末日まで延長しました。

ポスターは引き続き、弁護士会の協力を得て、全国の裁判所、法務局、警察署、法テラス等の公共施設など市民が利用するさまざまな施設に掲出します。

クリアファイルは、日弁連や弁護士会のイベント等で配布します。

 

学習まんが「弁護士のひみつ」への制作協賛

日弁連が制作に協賛した「弁護士のひみつ」が本年2月に発刊され、株式会社学研プラスの小学生向け学習まんが「○○○のひみつ」シリーズの姉妹企画「仕事のひみつ編」の一つに加わりました。「○○○のひみつ」シリーズは、これまでに120作品以上が制作され、全国すべての小学校と、公立図書館に寄贈されている書籍です。

本書では、弁護士の社会的役割を子どもたちに理解してもらうこと、弁護士を将来の職業選択の候補にしてもらうこと、弁護士を身近な相談相手と感じてもらうことなどを目的として、弁護士の仕事や法律などについて説明しています。小学生の主人公が、弁護士や弁護士を目指して勉強している学生などと触れ合う中で、弁護士や法律に興味を抱いていくというストーリーです。学研キッズネット「まんがひみつ文庫」のウェブサイト内でも閲覧可能ですので、ぜひご覧ください(3月下旬公開予定)。

 

弁護士会との連携・支援強化

2015年度に引き続き、2016年度も弁護士会の広報担当者が一堂に会する全国広報担当者連絡会議を2回開催しました。第1回で得た広報ノウハウに基づく実践結果などを、第2回の会議で発表し合い、2017年度のさらなる広報活動へとつなげました。

また、弁護士会を規模別に4つのブロックに分け、マンパワーや予算等の実情を踏まえた意見交換を行いました。

日弁連では、今後も、弁護士会の意見に耳を傾け、弁護士会と連携して、よりよい広報施策の実施につなげていきます。

 

マスコミとの交流

2014年度、2015年度に引き続き、司法・法曹記者クラブとの定期的な懇親会(通称「居酒屋日弁連」)を開催しました。

2016年度の「居酒屋日弁連」では、再審事件、触法障がい者支援、いわゆる秘匿特権、犯罪被害者支援など、多様なテーマを取り上げ、これらに携わる会員をゲスト講師として迎えました。

毎回、多くの報道関係者に参加いただき、弁護士や日弁連・弁護士会の活動への理解を広める、貴重な機会となりました。

 

社会科見学対応の充実

日弁連では、小学校高学年・中学生・高校生を対象に社会科見学を実施しており、全国各地から年間約1,000人の児童・生徒を受け入れています。

2016年度は、社会科見学の講師の担い手を、従来の東京三弁護士会所属の会員のみならず、神奈川県弁護士会、埼玉弁護士会、千葉県弁護士会の会員にも拡大するとともに、講師募集説明会を2回開催し、社会科見学対応のさらなる充実を図りました。

 

日弁連広報キャラクター「ジャフバくん」の活用

「ジャフバくん」の名刺(左・中央)とシール(右)弁護士・弁護士会のイメージアップ目的の一環として、2016年度は、日弁連広報キャラクター「ジャフバくん」の積極的な活用に努め、風船、塗り絵、名刺、シールを制作しました。

また、弁護士会にも呼び掛けて、賛同が得られた各会のキャラクターを使用した塗り絵も併せて制作しました。会員専用ページからプリントアウトすることができます。

これらのグッズは、各地のイベントで活用されており、好評を博しています。

 

 

「ひまわりお悩み110番」、「ひまわり相談ネット」の広報(日弁連公設事務所・法律相談センター)

2016年度は新たな広報ツールとして、武井咲さんを起用したうちわとメモ帳を製作し、各弁護士会に提供しました。
また、2015年度に引き続き、Yahoo!・Googleでのリスティング広告、Yahoo!・グノシーでのインフィード広告も行いました。
武井咲さんを起用したポスターは、全国各地の図書館(2,627か所)や郵便局(766か所)に2月中旬から掲出しています。

 

「ひまわりほっとダイヤル」の広報(日弁連中小企業法律支援センター)

地域の商工会議所を通して、「ひまわりほっとダイヤル」の広告チラシを、中小企業事業者に直接届ける取り組みを新たに行ったほか、2015年度に引き続きYahoo!・Googleでのリスティング広告やFacebookを通じた広報を行っています。

また、日本政策金融公庫が起業者向けに提供するメールマガジンに寄稿するなど、他団体と連携した広報活動も実施しています。

 

ブックセンターベストセラー
(2016年12月・手帳は除く) 協力:弁護士会館ブックセンター

順位 書名 著者名・編者名 出版社名
1 模範六法2017 平成29年版 判例六法編修委員会 編 三省堂
2 有斐閣判例六法Professional 平成29年版 山下友信・中田裕康・山口 厚・長谷部恭男 編集代表 有斐閣
3 こんなところでつまずかない!交通事故事件21のメソッド 東京弁護士会親和全期会 編著 第一法規
4 別冊ジュリスト No.231 著作権判例百選[第5版]

小泉直樹・田村善之・駒田泰土・上野達弘 編

有斐閣
5 実践調停 遺産分割事件〜物語から読み解く調停進行と実務 片岡 武・細井 仁・飯野治彦 著 日本加除出版
6 弁護士の経験学 ―事件処理・事務所運営・人生設計の実践知― 髙中正彦・山下善久・太田秀哉・山中尚邦・山田正記・市川 充 編著 ぎょうせい
7 ストーリーでわかる 営業損害算定の実務―新人弁護士、会計数値に挑む 横張清威・伊勢田篤史 著 日本加除出版
8 要件事実マニュアル 第1巻[第5版]―総論・民法1 岡口基一 著 ぎょうせい
9 簡易裁判所における交通損害賠償訴訟事件の審理・判決に関する研究 司法研修所 編 法曹会
10 民事尋問技術[第4版] 加藤新太郎 編著 ぎょうせい
別冊判例タイムズNo.38民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準 全訂5版 東京地裁民事交通訴訟研究会 編 判例タイムズ社