日弁連新聞 第517号

3/3臨時総会開催へ

3月3日(金)午後0時30分から、弁護士会館クレオにおいて、以下の議案審議のため、臨時総会が開催される。多数の会員の参加による充実した審議が期待される。

 

預り金等の取扱いに関する規程(会規第九十七号)中一部改正の件および依頼者見舞金制度に関する規程制定の件

詳細は2面に記載。

 

少年・刑事財政基金のための特別 会費徴収の件(平成二十年十二月五日臨時総会決議・平成二十三年二月九日改正・平成二十五年十二月六日改正)中一部改正の件

本年5月をもって終了する少年・刑事財政基金のための特別会費について、その徴収期間を2020年5月まで延長し、徴収額を2018年5月までは現行の月額3,300円、2018年6月以降は月額3,300円から1,900円に減額するもの。

 

法律援助基金のための特別会費徴収の件(平成二十三年二月九日臨時総会決議・平成二十五年十二月六日改正)中一部改正の件

本年5月をもって終了する法律援助基金のための特別会費の徴収について、その徴収期間を2020年5月まで延長し、2017年6月以降の徴収額を月額1,100円から900円に減額するもの。

 

会則中一部改正(第六十一条・会長の選挙)の件および会長選挙規程(会規第十九号)中一部改正の件

近年、会長選挙の投票率が低下する中、候補者による活発な選挙運動が行われ、選挙への会員の関心を高めることが課題となっている。また、情報通信手段が多様化する中、会長選挙においても、その有効活用は不可欠である。活発で時代に即した選挙制度への変革を実現して会長選挙への会員の関心を高めつつ、会員の意思を的確かつ合理的に反映した選挙を実施するという、直接選挙制度制定(1975年度)以来変わることのない理念を全うするための改善等を目的として、会則および会長選挙規程中一部を改正するものである。

具体的には、候補者の死亡または被選挙権喪失に伴う投票日の延期、当選者が就任前に死亡等で欠けた場合の繰上当選の要件の見直し、公聴会の実施回数の見直し、候補者による選挙運動用ウェブサイトの運用緩和、候補者以外の会員によるウェブサイトの利用の運用緩和等の変更を行うもの。

 

裁判所の処置請求に対する取扱規程(会規第七十三号)中一部改正の件

2016年12月1日に施行された刑事訴訟法等の一部を改正する法律および少年審判規則の一部を改正する規則において新たに規定された、検察官および裁判所の処置請求に対応すべく、必要な規定の改正を行うもの。

 

会則中一部改正(第四十条の二新設・総会の定足数)の件

会則中に総会の定足数に関する定めを新設するもの。具体的には、本人出席、代理出席および弁護士会出席の出席者数を合計して5,000人以上の出席があることを総会の開催および議決の定足数として規定することを提案するもの。

 

若年者に対する刑事法制の在り方に関する勉強会

 取りまとめ報告書を公表

 

2016年12月20日、法務省の「若年者に対する刑事法制の在り方に関する勉強会」は、取りまとめ報告書(以下「報告書」)を公表した。自民党政務調査会の「成年年齢に関する提言」を受けて設置された同勉強会の議論状況を取りまとめたものである。

報告書は、少年法の適用年齢を現行の20歳未満から18歳未満へ引き下げることについて、賛否両論とする主な理由を列挙している。

その上で、年齢引き下げによる刑事政策的な懸念に対し、どのような措置があり得るかを検討することが重要であるとして、少年法の適用年齢を18歳未満へ引き下げた場合の「若年者」(報告書では「26歳未満」の者が対象とされている)に対する「刑事政策的措置」について、幅広く検討を加えている。

例えば、施設内処遇に関し、若年受刑者に対する処遇原則の明確化・処遇内容の充実化に加え、懲役刑・禁錮刑を一本化した上で、受刑者に各種矯正処遇を義務付けられるようにすることなどを挙げている。

また、社会内処遇の充実として、刑の全部の執行猶予制度の見直しのほか、新たな措置(集中的な指導監督や特定行動の禁止、医療受診等や福祉への相談の義務付け)を挙げ、さらに、罰金または起訴猶予となる者に対する再犯防止措置や若年者に対する新たな処分の導入も検討すべきとしている。

報告書が挙げる刑事政策的施策は、今後、法務大臣の諮問機関である法制審議会において議論される予定であるが、その内容は若年者にとどまらず、すべての年齢の者を対象とすることが相当と考えらえる措置も含まれており、今後、少年法の適用年齢の引き下げを前提とした議論が進むことが懸念される。
日弁連は、市民向けシンポジウムやマスコミ向けプレスセミナーを開催するなどして、少年法の適用年齢引き下げの問題点について、さらに分かりやすく発信していくとともに、法制審議会に向けて会内での検討を急ぐ必要がある。

*「若年者に対する刑事法制の在り方に関する勉強会」の議論状況および報告書等は法務省のホームページでご覧いただけます。

(子どもの権利委員会少年法・裁判員裁判対策チーム 座長 山﨑健一)

 

新事務次長紹介

髙﨑玄太朗事務次長1月31日付で、戸田綾美事務次長(第二東京)が退任し、後任には、髙﨑玄太朗事務次長(第二東京)が就任した。

 

髙﨑 玄太朗 (第二東京・46期)


社会的・対外的に弁護士を代表する「顔」であり司法の一翼を担う日弁連の事務次長に就任し、身の引き締まる思いです。
微力ながら、事務局の一員として、組織の安定性・継続性・信頼性に貢献できるよう、奮励努力していく所存です。

 

 

 

依頼者保護制度、臨時総会議案に

預り金等の取扱いに関する規程(以下「預り金規程」)の改正と依頼者見舞金制度(当初は依頼者保護給付金制度と呼んだ)の新設について、各弁護士会に意見照会するとともに理事会で討議されていたが、本年1月の理事会で、3月3日に開催される臨時総会の議案とすることが決まった。
預り金規程は、口座名義に「預り金」「預り口」等の預り金口座であることを明示する文字を用いること、一般の預り金口座を弁護士会に届け出ることを義務化する等の改正が審議される。
依頼者見舞金制度は、弁護士が依頼者等から預かった金員を横領した場合、被害者からの申請により、調査委員会が事案を調査の上、会長が裁量により見舞金を支給するもので、被害者一人当たり500万円、横領をした弁護士一人当たり2,000万円を上限とする制度の新設が審議される。予算による制限があるほか、理事会が1億円を超えない額を目安に年間支給額の上限額を定める。一般会計から支出し、会員一人当たりの負担額は年間1,600円余と試算されており、会費の値上げは視野に入れていない。
担当副会長や小職を含む当ワーキンググループのメンバーは、全国20か所以上で、これらの制度の説明をした。依頼者見舞金制度については、不正をした弁護士のために、なぜ我々の会費を使うのかという根強い反対論があった。しかし、弁護士は、原則として法律事務を独占しており、依頼者は弁護士以外の者に法律事務を依頼することができない。その弁護士が依頼者を裏切って大事な金員を横領したとき、その弁護士の所属する組織が責任はないと述べているだけでは、弁護士という職に対する信頼が失われるおそれがある。見舞金により、弁護士に対する信頼の低下を防ぐことができれば、その効果は会員全体に還元されることになる。
生命保険業界では、保険会社の倒産に備え、各生命保険会社が資金を拠出して生命保険契約者保護機構が設立されているが、当初、大手保険会社は設立に反対したそうである。自分の会社は、絶対に倒産しないのに、なぜ資金を拠出する必要があるのかというのが反対の理由である。しかし、現在では保険という制度自体に対する信頼を確保することは、大手保険会社にとっても意味のあるものと捉えられていると聞いている。
故意に依頼者等の資金を横領した当該弁護士に対する信用が失墜することは当然であるが、日弁連、弁護士会は、弁護士全体に対する信頼が揺らぐことのないよう努力する必要がある。
もちろん、横領の予防が最も重要であることは論をまたない。今回、預り金規程を改正するのは、その一つであるが、今後も預り金規程の強化を含めた総合的な不祥事対策を進めていくことが肝要である。
臨時総会では、依頼者保護制度に関する理解を深めていただくとともに、会員による活発な討議が期待される。

(依頼者保護制度に関する検討ワーキンググループ座長 菰田 優)

 

日弁連短信

課題に取り組む日々を振り返って

 

前事務次長 戸田綾美2014年7月から日弁連の事務次長を務めさせていただきましたが、本年1月末をもって退任となります。これまでいただきましたご協力に感謝申し上げます。

就任直後から、司法修習生の経済的支援を担当させていただきました。当時、司法修習費用給費制存続緊急対策本部が、各弁護士会、ビギナーズ・ネットなどと協力し、国会議員の賛同メッセージを集め始めました。各弁護士会のご協力を得て、賛同メッセージは2016年1月には国会議員の過半数を超え、年末には450通を超えました。毎回の院内意見交換会の熱気も大変高まりました。多方面からのご理解をいただき、2016年12月には、法務省から、経済的支援についての方針が発表されました。

これから裁判所法の改正が控えていますが、これまでご尽力いただきました各弁護士会、司法修習費用給費制存続緊急対策本部、弁政連、ビギナーズ・ネット、市民連絡会の皆さんに心から感謝しています。議員の方々、最高裁、法務省には多大なご協力をいただきました。

そのほかには研修を担当したほか、人権関係で子ども、消費者、人権擁護、両性、貧困、その他多くの委員会を担当させていただきました。日弁連の多方面にわたる人権活動は素晴らしいもので、社会にもっと広くその内容をお知らせすることも必要ではないかと思いました。また、人権活動も時代とともに発展していくものだと思いますが、女性の活躍や少子化問題が言われる時代、女性や子どもの人権擁護についてもいろいろな場面で尋ねられることが多くありました。後に続く若い会員の皆さんが、幅広い人権活動の流れを受け継ぎ、さらに深化させてくださることを願っています。

また、昨今は、弁護士不祥事などさまざまなことから、弁護士に厳しいご意見をいただくことも多くなっています。しかし、一方で、弁護士の人権活動や、被災者支援、過疎地への法的サービスなど、市民のための活動に高い評価をいただくことも多いのです。弁護士がこうした社会的な活動をしっかりと進めていくことが、弁護士に対する市民や社会からの信頼を維持し高めていくことにつながることを実感してきました。

これからも、弁護士、弁護士会、そして日弁連がさらにその使命を果たし、発展していかれることを願っております。

(前事務次長 戸田綾美)

 

成年後見制度利用促進委員会
基本計画の案に盛り込むべき事項を整理

2016年4月に成立した成年後見制度利用促進法に基づき、内閣府は、成年後見制度利用促進委員会の意見を踏まえ、成年後見制度利用促進基本計画の案に盛り込むべき事項を整理した(以下「内閣府案」)。
政府は、内閣府案についての意見募集(パブリックコメント)を経て、基本計画の案について閣議決定を行い、その後、厚生労働省が事務の所管を受けた上で、基本計画に基づく施策が推進されていくことになる。

 

内閣府案は、今後の施策の目標として、ア)利用者がメリットを実感できる制度・運用へ改善を進める、イ)全国どの地域においても必要な人が成年後見制度を利用できるよう、各地域において、権利擁護支援の地域連携ネットワークの構築を図る、ウ)不正防止を徹底するとともに、利用しやすさとの調和を図り、安心して成年後見制度を利用できる環境を整備する、エ)成年被後見人等の権利制限に係る措置を見直す、を掲げ、利用促進に向けて総合的かつ計画的に講ずべき施策を取りまとめている。
イ)の目標に関しては、市町村の単位を基本として、地域連携ネットワークの中核となる機関を設置し、中核機関の機能として、広報、相談、成年後見制度利用促進、後見人支援の各機能を整備していくとしており、今後、弁護士・弁護士会としても各地域において中核機関の立ち上げと運営に関与していくことが求められる。
他方、内閣府案は、後見人の権限の縮小など、障害者権利条約を踏まえた制度改善のための施策に関しては不十分な点もある。日弁連としては、法定後見の3類型の中で後見類型が約8割を占める現状の改善に向けて、3類型をとる制度の在り方の見直しも含め、成年後見制度から意思決定支援制度への移行に向け議論を喚起し、取り組みを進める必要がある。

(日弁連高齢者・障害者権利支援センター事務局次長 高江俊名)

◇      ◇

*日弁連は、本年1月19日付で内閣府案に対する意見を取りまとめました。詳しくは日弁連のホームページをご参照ください。
*成年後見制度利用促進委員会の議論状況および資料等は内閣府のホームページでご覧いただけます。

 

【お見舞い】

2016年12月22日に発生した糸魚川市大規模火災によって被害に遭われた方々に対し、心よりお見舞い申し上げます。

 

第52回市民会議
日弁連の災害復興支援活動、児童相談所への弁護士配置について議論
1月13日 東京都千代田区

災害復興支援活動

岩渕健彦副会長が、2016年は、4月の平成28年熊本地震に始まり、8月の台風第10号災害(東北・北海道)、10月の鳥取県中部地震、12月の糸魚川市大規模火災など、日本中が大規模な災害に見舞われた一年であったことを振り返り、それらに対する日弁連の支援活動について報告した。糸魚川市大規模火災については、発生直後から、新潟県弁護士会と連携を取り、12月29日に、同火災が人災に止まらず自然災害であるとの会長談話を公表し、翌30日に被災者生活再建支援法の適用対象とされるに至ったことなどを詳説した。また、東日本大震災については、本年3月に災害救助法の住宅支援が区域外避難者に対して打ち切られる問題や、在宅被災者と避難所・仮設住宅入居被災者との間の支援格差の問題、熊本地震については、熊本県弁護士会の震災ADRの受付状況、震災関連死の問題などを報告した。

委員からは、被災者が抱える多様な問題に、弁護士が他の専門職や行政と連携してフォローすることが望まれるとの意見や、災害時には、即座に日弁連と現地の弁護士が連携を取れる仕組み作りが期待されるなどの意見が述べられた。

 

児童相談所への弁護士配置

小林元治副会長から、2016年10月に施行された改正児童福祉法に関し、児童相談所への弁護士配置をめぐる状況や、一時保護など児童虐待対応における司法関与の在り方に関する議論状況について報告した。
委員からは、弁護士配置が進み、児童虐待に精通した弁護士が増えることで、制度がさらに充実していくとの意見や、児童虐待の解決はケースワークの力量に影響されるところもあり、スキルと意欲のある弁護士が全国に配置される必要があるとの意見が述べられた。

 

市民会議委員  (2017年1月13日現在)(五十音順)


井田香奈子 (副議長・朝日新聞東京本社オピニオン編集部次長)
長見萬里野 (全国消費者協会連合会会長)
北川正恭 (議長・早稲田大学名誉教授)
清原慶子 (三鷹市長)
神津里季生 (日本労働組合総連合会会長)
ダニエル・フット (東京大学大学院法学政治学研究科教授)
中川英彦 (元京都大学法学研究科教授)
松永真理 (テルモ株式会社社外取締役)
村木厚子 (前厚生労働事務次官)
湯浅 誠 (社会活動家、法政大学現代福祉学部教授)

 

犯罪被害者支援モデル条例案セミナー
12月26日 弁護士会館

日弁連法務研究財団の研究班が作成した犯罪被害者等支援モデル条例案(以下「モデル条例案」)を題材とし、犯罪被害者支援に関する現状の課題、その解決手段の一つとして条例案を作成する際の留意点等についてセミナーを開催した。

(共催:公益財団法人日弁連法務研究財団)

 

はじめに泉房穂明石市長が講演を行い、誰もが犯罪被害に遭遇する可能性を指摘し、犯罪被害者支援は市民全員のセーフティーネットの問題だと述べた。そして、明石市が被害者の心のケア等の総合的支援、賠償金の立替制度等を内容とする条例を定め、犯罪被害者支援に取り組んでいることを説明した上で、犯罪被害者支援条例を全国に拡げていこうと力強く訴えた。
続いて、犯罪被害者支援委員会の岡本矢委員(福井)と伊藤佑紀委員(仙台)が登壇し、全国の犯罪被害者支援条例の制定状況を概説した。また、モデル条例案中の被害者支援体制の整備、心理相談・弁護士による相談などの基本的施策に関する各条項を説明し、その活用を訴えた。
パネルディスカッションでは、泉市長が、職員や市民の理解を得ながら、犯罪被害者支援を普遍的な制度とするためにも条例制定は必要だと述べた。また、明石市で常勤弁護士が条例の策定に携わっている例を挙げ、弁護士の正義感・リーガルマインド・実務解決能力が条例作りに役立つと指摘した。
鴻巣たか子氏(犯罪被害者団体ネットワーク《ハートバンド》運営委員/社会福祉士)は、犯罪被害者支援条例を制定する際には、被害者を準備委員会等に参加させ、その意見を反映させた適正な条例を制定してほしいと訴えた。
犯罪被害者支援委員会の武内大徳副委員長(神奈川県)は、神奈川県の条例を紹介し、条例で総合的な相談窓口を設け、被害者のニーズを聞き取り、行政サービスや弁護士等の専門相談につなげる役割を担わせることが犯罪被害者の支援に資すると指摘した。
茅ケ崎市市民相談課の和田佳世課長補佐は、自治体担当職員の経験等に基づき、条例案の作成や条例の運用には弁護士のアドバイスが必要だと指摘した。また、全国の条例を調査検討し、法律実務家の観点を加えて作成されたモデル条例案は、実務を行う上で大変参考になると述べた。

 

シンポジウム
死刑廃止の実現を考える日
12月19日 弁護士会館

日弁連では、2008年から毎年、シンポジウム「死刑廃止を考える日」(2011年までは「死刑を考える日」)を開催し、死刑の問題点について考える機会としてきた。
今年度は、2016年10月の人権擁護大会で「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択したことに伴い、「死刑廃止の実現を考える日」と改称して、わが国で死刑廃止を実現するための問題点と展望を議論した。

 

ゲストスピーチ

駐日欧州連合代表部のフランチェスコ・フィニ公使は、欧州連合に死刑制度は存在せず、世界でも約140か国が制度を廃止または執行を停止しているとして、国際的趨勢は死刑廃止に向かっていると述べた。また、もともとは欧州諸国でも死刑存置の世論が優勢であったところ、政治家が死刑に関する情報を提供し続けた結果、死刑廃止の流れに転じたことを紹介し、死刑廃止の実現には政治家のリーダーシップが重要であることを強調した。

 

パネルディスカッション

フランチェスコ・フィニ駐日欧州連合代表部公使佐々木さやか参議院議員(公明党)は、誤判の可能性がある以上、死刑制度を廃止すべきであると訴えた。
小熊慎司衆議院議員(民進党)は、従前は死刑存置派であったが、死刑に関する映画を観たことがきっかけで、裁判員制度の下、善良な市民に生命を奪わせる決断をさせるわけにはいかないとの考えに変わったと述べた。
鈴木貴子衆議院議員(無所属)は、被害者の家族や刑務官などから得た生の情報を広く開示した上で、国民的議論を行っていく必要があると指摘した。
伊藤正志氏(毎日新聞社論説委員)は、読者からの反響は少ないが、死刑制度は国民全体で議論をしていかなければならない重要な問題であるとして、今後も死刑制度について報道していきたいとの考えを示した。

 

犯罪被害者支援の現状と課題

犯罪被害者支援委員会の合間利事務局委員(千葉県)は、2004年に犯罪被害者等基本法が成立し、5年ごとに犯罪被害者等基本計画が策定されているが、2016年の第3次犯罪被害者等基本計画には予算措置を伴うものが少なく、さらなる被害者支援の施策が求められていると指摘した。

 

シンポジウム
消費者法の課題と展望Ⅺ クローズアップ!消費生活条例
不当な取引行為の規制と消費者安全確保地域協議会
12月22日 弁護士会館

不当な取引行為と消費者安全確保地域協議会(以下「協議会」)をテーマに取り上げ、今回で11回目となるシンポジウム「消費者法の課題と展望」を開催した。
当日は、訪問販売事業者の登録制度を導入した先駆的な条例として注目を集める滋賀県野洲市の「くらし支えあい条例」も紹介し、知見を深めた。

 

報告および講演

まず、消費者問題対策委員会の浅野永希幹事(大阪)が、不当な取引行為規制に関し、条例ごとの規制対象の差異を示した。
続いて、伊吹健人幹事(京都)が、不当な取引行為における勧誘規制について諸条例の比較検討を行い、諸外国の類似法制についても報告した。
また、川本真聖幹事(大阪)が、改正消費者安全法で2016年から設置可能となった協議会の概要や各地における協議会の設置状況を報告した。
野洲市市民生活相談課の久保田直浩主事は、2016年10月に施行された「くらし支えあい条例」について基調講演を行った。同条例は、訪問販売事業者の登録制度を設けた点に注目が集まっているが、久保田主事は、この制度は訪問販売への規制強化を目指すものではなく、事業者の連絡先を把握するための制度だと説明した。また、不当な取引行為に関する禁止リストを設けない代わりに、違法行為を把握した際は、国や県など、処分権限を有する他の行政庁に対応を求める規定を設けており、人員の乏しい小規模自治体でも行政事務処理を停滞させることなく市民の権利擁護を図れると述べた。

 

パネルディスカッション

島田和夫名誉教授(東京経済大学)が、東京都における不当な取引行為規制の発展の歴史について詳述した。
野洲市市民生活相談課の生水裕美課長補佐は、ハイリスクを抱えた市民に対応するには個人情報の活用が必須だが、野洲市の場合、協議会の全体会議では個人情報を扱わないなどして、協議会構成員にとって、守秘義務が重い負担とならないよう配慮していると説明した。

 

日弁連新聞モニターの声

日弁連新聞では、毎年4月に全弁護士会から71人のモニター(任期1年)をご推薦いただき、そのご意見を紙面作りに生かしています。
2016年度は、平成28年熊本地震への対応に関する記事が注目を集めました。
また、民法(相続関係)や刑事法(性犯罪関係)の法制審議会部会での議論状況や、刑事訴訟法等の一部改正法に関する記事にも、高い関心が寄せられました。多くの会員が、実務に直結する問題を注視していることがうかがわれます。
さらに、第27回司法シンポジウムについて、大きく紙面を割き、詳細な記事を掲載したところ「司法の役割の大きさを再認識した」など、好意的なご意見をいただきました。
日弁連新聞の4面では、広報室嘱託がタイムリーな情報発信を目指して毎号特集記事を作成しています。6月号「赤ちゃんを虐待死から救う(認定NPO法人フローレンス)」、8月号「児童相談所における弁護士業務」などは、特に高い評価をいただきました。
また、9月号では、新たな試みとして、2・3面を見開きで用いて「全国弁護士会キャラクター」と「日本初の女性弁護士たち」という2つの特別特集を掲載しました。こちらも高評価をいただきました。
3面では、毎号主にシンポジウム等のイベントを取り上げて記事にしています。イベントの内容を詳細に記載してほしいとのご意見をいただくことが多いのですが、記事数を絞り込んで内容を充実させるべきか、それとも、より多くのイベントを紹介すべきかで、いつも悩ましく感じています。
広報室では、今後とも、会員のニーズに応える紙面作りに努めてまいります。

(広報室嘱託 大藏隆子) 

 

JFBA PRESS -ジャフバプレス- Vol.119

留学の夢を叶えた先に
日弁連のロースクール推薦留学制度

 

日弁連には、ニューヨーク大学(米)・カリフォルニア大学バークレー校(米)・イリノイ大学(米)・エセックス大学(英)に会員を客員研究員として派遣する(エセックス大学のみLLM《法学修士》の学生としての派遣もあり)推薦留学制度(以下「本制度」)があります。本制度は、公益活動に取り組む会員のための制度であり、海外への情報発信・帰国後の日弁連や弁護士会への成果還元も目的としており、応募資格として、公益活動を継続的に行い、関連する研究テーマを有し、研究開始までに研究に足る英語力を有することなどが求められています。

帰国後は、報告書の提出や「自由と正義」等での成果発表が必要となります。その後、日弁連から100万円の活動支援費が支給されます。

本制度を利用し、客員研究員として留学を実現した会員から体験談を伺いました。

(広報室嘱託 佐内俊之)

 

2015年度 イリノイ大学 渡邊享子会員 (埼玉)

 

弁護士会の外国人人権センター運営委員会で法律相談等を担当し、外国人の面会交流・親権などの問題を多く取り扱ってきました。留学時の研究テーマは「国境を越える親子関係の現状と課題等」です。

 

埼玉 渡邊享子会員

留学は長年の夢

大学時代にホームステイをして以来、留学したい、英語を使って生活してみたいとの夢がありました。ただ、弁護士として働き始め、結婚・出産を経て、いつしかあきらめてしまっていました。
ところが、本制度の存在を知った夫が、「留学したいなら今行くべきだよ」と強く勧めてくれたのです。家族の理解があったとはいえ、やはり本制度の存在自体が、長年の夢にチャレンジできた一番の理由です。

 

子育てとの両立

留学当時は6歳と4歳の2人の子育て真っ最中。住まいや学校の選択、子どもの心身のケアから予防接種まで、国外での育児には国内とは違う難しさがあります。そこで、イリノイ大学に留学した先輩方の紹介を受け、住居・小学校・学童保育などの情報をいただきました。先輩方の経験の蓄積があることも、本制度の利点でした。おかげで研究と子育てを両立させ、母子3人で濃密な1年間を過ごすことができました。
子どもたちも、英語で、さまざまな国の人と物おじせずに渡り合うという大変貴重な経験を積むことができたと思います。

 

経験と出会いは一生の宝

アメリカ社会で実際に暮らし、その理想と現実を肌で感じることができました。また、ロースクールでは、学生の意識の高さ、教授の議論の進め方のスキルに驚かされ、いつかこの経験を国内のロースクールに伝えたいと強く感じました。
お世話になった教授や裁判官、弁護士の研究に関する指導や助言、現地で知り合った各国の友人たちとの出会いは一生の宝です。
留学の1年間はかけがえのない経験となりました。

 

2014年度 エセックス大学 水島俊彦会員 (青森県)

 

弁護士会の高齢者・障害者委員会や人権擁護委員会の委員として、また、法テラスのスタッフ弁護士として、多数の成年後見事件に携わってきました。留学時の研究テーマは「成年後見制度から意思決定支援制度へのパラダイムシフトの実現可能性」です。

 

青森県 水島俊彦会員

すき間時間で英語学習

留学が実現したのは、本制度への申込み2回目のことです。初回の挑戦では、準備の時間も少なく、面接で「まず英語を頑張りなさい」と指摘されてしまいました。
しかし、当時スタッフ弁護士として赴任していた新潟県佐渡市には、留学準備用の語学学校がありませんでした。そこで、すき間時間を使って毎日最低1時間は英語に触れることにしました。半分は30分500円のインターネット電話サービスでの英会話、残り半分はTOEFL対策の勉強に充て、これを1年間継続しました。
留学直前のフィリピン超短期留学やエセックス大学の10週間プレセッショナルコースも効果的でしたが、すき間時間の活用が英語克服のポイントでした。

 

学外へ飛び出して研究

研究では、培った人脈を頼りに、積極的に学外に飛び出しました。英国の意思決定能力法(MCA)や諸制度を真に理解するには、実務家の研修プログラムへの参加や自治体の訪問など、MCAの実務に接することが必須でした。さらに、実務現場で知り合った人の紹介で、約1か月間、オーストラリアで国連障害者権利条約に即した意思決定支援活動に触れる機会にも恵まれました。
個人留学や他大学への留学と異なり、日弁連からの留学生として、国際人権法のメッカであるエセックス大学に留学したからこそ、充実した研究ができたと思います。

 

留学成果の還元

留学でキャリアや生活は劇的に変わりました。意思決定支援制度を扱った2015年の人権擁護大会シンポジウムで、日弁連の英・豪視察をコーディネートする等の準備に加わったほか、国内外で年50回を超える講演を行いました。現在は「意思決定支援推進全国キャラバン」で講演しながら、全国各地の弁護士会を巡っています。
今後もこれらの活動の中で留学の成果を還元していきたいと考えています。

*日弁連の推薦留学制度の詳細は会員専用ページ(HOME≫国際活動・海外展開≫海外ロースクール留学・サマープログラム)をご確認ください。

 

日弁連委員会めぐり 90

依頼者と弁護士の通信秘密保護制度の確立に関するWG

 

今回の委員会めぐりは、依頼者と弁護士の通信秘密保護制度の確立に関するワーキンググループ(以下「WG」)です。日本における依頼者と弁護士との間の通信の秘密は、欧米諸国と比較すると、十分に保障されているとは言い難い状況です。

片山達座長(第二東京)、池田綾子副座長(第二東京)、苗村博子副座長(大阪)、山本晋平事務局長(第二東京)、京野垂日委員(秋田)にお話を伺いました。

(広報室嘱託 渡邊寛一)

 

WG設置の経緯は

前列左から苗村副座長、片山座長、池田副座長、後列左から京野委員、山本事務局長2016年2月、日弁連は、2年間にわたる調査結果(以下「最終報告書」)を踏まえ、「弁護士と依頼者の通信秘密保護制度の確立に関する基本提言」(以下「基本提言」)を策定・公表しました。
弁護士には依頼者の秘密を守る義務があります。一方、依頼者には、欧米では弁護士との相談内容を秘密にする権利が認められていますが、日本では認められていません。基本提言は、依頼者と弁護士間の相談内容の秘密が守られることを確保し、もって弁護士に依頼・相談する「依頼者の権利」として保障するべきとし、依頼者・弁護士の双方に、民事・刑事・行政の全分野における相談内容に関し、法律上の開示拒絶権を認める制度(以下「本制度」)を整備するべきであるとしています。WGは、基本提言の実現を目的として2016年6月に設置されました。

活動内容は

WGでは、約20に及ぶ関連委員会間の情報共有および連携活動の企画、社会的理解の普及および促進のための研究会・シンポジウムの企画等の活動、制度化に必要な事項の調査および研究などを行っています。

 

会員へのメッセージをお願いします

依頼者が弁護士に対して有利なことも不利なことも包み隠さず打ち明けて相談することにより、弁護士は適切な法的助言を行うことができ、その結果、社会における法令遵守がもたらされます。依頼者が安心して弁護士に相談できる本制度の確立は、法の支配を社会の隅々に行きわたらせるために必要不可欠です。
この問題について多くの会員に関心を持っていただきたいと思います。
最終報告書と基本提言は日弁連のホームページに掲載されていますので、ぜひご覧ください。
また、本年9月に開催される第30回LAWASIA東京大会では、依頼者と弁護士の通信秘密保護に関するセッションを予定しています。こちらもぜひご注目ください。

 

ブックセンターベストセラー
(2016年11月・手帳は除く) 協力:弁護士会館ブックセンター

順位 書名 著者名・編者名 出版社名
1 模範六法2017 平成29年版 判例六法編修委員会 編 三省堂
2 有斐閣判例六法Professional 平成29年版 山下友信・中田裕康・山口 厚・長谷部恭男 編集代表 有斐閣
3 携帯実務六法 2016年度版 「携帯実務六法」編集プロジェクトチーム 編 東京都弁護士協同組合
4 最高裁判所判例解説 民事篇 平成二十五年度

法曹会 編

法曹会
5 弁護士独立・経営の不安解消Q&A 北 周士・田畑 淳・野田隼人・深澤諭史・向原栄大朗 編著 第一法規
6 別冊ジュリスト No.230労働判例百選[第9版] 村中孝史・荒木尚志 編 有斐閣
7 ストーリーでわかる営業損害算定の実務―新人弁護士、会計数値に挑む 横張清威・伊勢田篤史 著 日本加除出版
8 弁護士のための家事事件税務の基本―相続・離婚をめぐる税法実務― 馬渕泰至 著 学陽書房
9 有斐閣判例六法 平成29年版 中田裕康・長谷部恭男 編集代表 有斐閣
交通関係訴訟の実務[裁判実務シリーズ9] 森冨義明・村主隆行 編著 商事法務

 

編集後記

日弁連留学制度の取材前は「留学は渉外業務を行う一部の弁護士だけの話」と思っていた。しかし、複数の留学経験者から話を聞き、この制度が一部の特別な会員のためのものではないことが理解できた。留学経験者は、日ごろの国内業務の中に課題を見いだし、その解決のために留学を選択していた。ただ異なっていたのは、「世界的視点」「国際的スタンダード」を意識し追求していたこと、それから留学の夢をあきらめず努力を続けたこと。日々の業務に忙殺される身からは、とてもまぶしく見えた。また、どの大学の留学経験者も、研究や生活にまつわる話に魅力的なエピソードがあふれ、留学時の写真からは皆一様にキラキラした留学生活がうかがわれた。
日弁連の留学制度は会員の誰にでも開かれている。少しでも興味があれば、キャリア、家族の生活、経済的負担、英語などの問題に悩みつつも、それらをのり越えて留学の夢を実現した先輩方から直接話を聞いてみてほしい。

(T・S)