日弁連新聞 第477号

山岸会長インタビュー
新たなステージに立つ日弁連

就任から1年半が経過した山岸憲司会長に、これまでの取組と残された任期にかける思いについてインタビューしました。
(広報室嘱託 大達一賢)


復興支援への思い

―就任から1年半、もっとも力を入れてきたことは

会長室でインタビューに応じる山岸会長

やはり復興支援です。今年3月に被災地を訪問しましたが、復興には程遠い現状を目の当たりにして、その思いを新たにしました。

 

―原発事故被害の消滅時効問題が現実味を帯びています

各弁護士会や日弁連による提言等の結果、世間でも東京電力による時効の援用を許さない雰囲気になってきたと感じます。しかし、東電側に裁量の余地を残しておくべきではありません。被害者の方が安心できるよう、3年の消滅時効を認めない立法を今年中に実現すべきです。

 

法曹養成・法曹人口

―合格者数の3000人目標が撤回されました

事実上撤回はされましたが、それに代わる法曹人口の在り方や、法科大学院制度の具体的な改革、司法修習生に対する経済的支援、法曹の活動領域拡大のための具体的施策など、多くの課題が残されています。
既に新たな体制での検討が始まっていますが、法曹志願者の減少という状況を変え、司法の機能と役割を強化していくために、速やかに対応していく必要があります。執行部としても引き続き全力で取り組んでいきます。

 

刑事司法改革への取組

―法制審議会「新時代の刑事司法制度特別部会」でも議論が進んでいます

取調べの可視化問題を中心に、議論を進めるようしっかりと取り組みます。

 

日弁連としての発信力を

―会長就任以後、情報発信力の強化に力を入れてこられました

弁護士・日弁連の活動を広く理解してもらうため、広報に力を入れています。会長ブログも、会員のみならず会員以外の方に関心を持っていただこうと始めました。

 

―会長ブログには国際化の促進に関する記事が多く見られます

会長として国際会議に出席すると、他国の先進的な取組に大きな刺激を受けます。日本の弁護士にも公害問題への対応や人権擁護に取り組んできた歴史があります。特にアジア地域において、これらの経験を踏まえた日弁連のプレゼンスを発揮していかなければならないと感じます。特に若手会員には、もっと海外に目を向けてほしいと願っています。

 

弁護士への信頼回復のために

―不祥事の再発防止策強化にも力を入れています

依頼者からの預り金の着服や流用は、弁護士を信頼した依頼者への裏切りで、絶対にあってはなりません。再発防止策として今年5月に「預り金等の取扱いに関する規程」を制定しましたが、今後はさらに、市民窓口と綱紀・懲戒制度の連携や事前公表制度の適時の運用等も検討し、全弁護士会をあげて弁護士・弁護士会の信頼回復に取り組んでいく必要があります。

 

―最後に会員に向けたメッセージをお願いします

会長として各地を巡った中で、弁護士不在の市町村に事務所を構え、他士業との連携で活躍の場を拡げる等、さまざまな工夫・努力で法的ニーズを掘り起こしておられる会員の方々に接してきました。会員の皆さんには、ぜひアウトリーチの姿勢で積極的に業務に取り組んでいただきたいと考えています。私も日弁連会長として、会員の皆さんの活動を最大限バックアップするため、研修や若手支援策の強化、弁護士の活動領域の拡大等に向けて、残る任期も全力で取り組んでいく所存です。

 

名張毒ぶどう酒事件シンポジウム
一日も早い再審開始を願って
9月7日 弁護士会館

  • 名張毒ぶどう酒事件 映画「約束」の上映とパネルディスカッション-奥西勝、半世紀の叫び

52年前に起きた名張毒ぶどう酒事件の再審請求人である奥西勝氏を描いた映画「約束」の上映と、奥西氏の無実を信じ支え続けた母タツノ役を演じた女優の樹木希林さんらを招いてパネルディスカッションを開催し、再審開始を訴えた。

 

裁判官の責任の重さ

タツノ役を演じた樹木希林さん(左)と鈴木会員(右)

映画の監督・脚本を務めた齊藤潤一氏は東海テレビの報道部記者であり、映画制作の経験はなかった。「これまではドキュメンタリーを作っていたが、より多くの人に伝えるために奥西さんの人間像をリアルにしたくて、ドラマという手法を併せて撮ることにした」そうだ。確かに、「約束」はドキュメンタリーとドラマが交錯した構成で、現実味を際立たせている。また、印象的に描かれていたのは、裁判所に内在する古い体質である。名張事件弁護団長の鈴木泉会員(愛知県)は「この事件では50人以上の裁判官が関与していたのに、死刑判決が覆らなかった。これはおかしい」とあらためて訴えた。

 

「えん罪だなと思った」

「監督、『脚本の書き方』という本を見ながら脚本書いてるんだもん、困っちゃうわ」と茶目っ気たっぷりに語る希林さんがこの役を引き受けた理由は、これまで齊藤監督が制作した奥西氏のドキュメンタリーを観て「えん罪だなと思った」からだそうだ。江川紹子氏(ジャーナリスト)は、「えん罪は奥西さんのご家族だけでなく地元の人々にも半世紀以上苦しみと禍根を残した。松本サリン事件の時にも同じようなことがあった」とえん罪が本人だけでなく、周囲の人に対しても影を落とすことを強調した。
奥西氏は半世紀にわたって無実を叫び続け、現在八七歳。肺炎にかかり、今年5月には医療刑務所で喉を切開したため、今となっては彼の声を直接聞くことはできない。1日も早い再審開始決定が望まれる。


本年度司法試験に2049人が合格

9月10日、2013年度司法試験の合格発表が行われ、2049人が合格した。合格率は26.8%で昨年度に引き続き前年を上回った。また、今年は予備試験を経た最終合格者が120人誕生した。受験者数と合格者数の推移は別表のとおりである。

日弁連は、合格発表の当日に会長談話を発表した。昨年3月に「合格者数をまず1500人まで減員」し、その動向を検証するよう提言したことおよび政府の法曹養成制度関係閣僚会議が、司法試験の年間合格者数について3000人という数値目標を現実性を欠くものとして撤回し、当面数値目標を設けないとの決定を行ったこと踏まえ、本年度合格者数については「なおこれまでの急増ペースに沿うものであり遺憾」であり、「新たな検討体制において、急増による弊害が顕著な現在の合格者数を減少させ、急増を漸増へ転換する方向性がより明確に示されることを強く求める」との見解を表明している。

 

司法試験合格率等の推移

H19(2007) H20(2008) H21(2009) H22(2010) H23(2011) H24(2012) H25(2013)
受験者数 4607 6261 7392 8163 8765 8387 7653
合格者数 1851 2065 2043 2074 2063 2102 2049
合格率
(対受験者数)
40.2% 33.0% 27.6% 25.4% 23.5% 25.1% 26.8%

 

ひまわり

婚外子の相続分を婚内子の2分の1とする民法の規定について、最高裁大法廷は9月4日、違憲決定を出した。同規定は明治民法時のまま、戦後の家族法改正でも手がつけられなかったものである。今回の決定は遅きに失したとはいえ、個人の尊重に立脚した妥当なものであり、歓迎したい▼本決定では、もう1つ重要な論点について判断が示された。「本件の先例としての事実上の拘束性」という問題である。最高裁は今回「遅くとも平成13年○月(各事件の相続発生月)当時において本件規定は違憲」と判断したが、併せて、上記時点後本決定までに開始された相続のうち、既に本件規定を前提として確定的となった法律関係には影響を及ぼさない、とした。最高裁の違憲判断の先例拘束性を限定し、法的安定性の確保との調和を図ったとされている▼本決定までの12年間に築かれた多くの法律関係を考えるならば、適切な結論だと思うが、今後の違憲判断においてどのような場合にどの範囲で先例としての拘束性を限定しうるのか、議論されるべき点は多い。本決定でも2人の裁判官がこの論点について補足意見を述べている▼違憲判断による影響力の大きさという点では、現在最高裁に係属中の「1票の格差」訴訟も同じである。注目したい。(T・S)

 

被災自治体任期付職員を励ます会
8月24日 仙台弁護士会

 

日弁連は、震災復興支援のため、東北の被災自治体が弁護士を任期付職員として任用する機会の拡大に取り組み、赴任した任期付職員に対し、さまざまな側面からの支援を行っている。今般、既に赴任地において活躍する任期付職員および任用予定の会員らを交え、意見交換会を行った。

 

意見交換会に参加した会員ら

参加した任期付職員および任用予定の方々と、赴任中の自治体は次のとおり。菊池優太元会員(岩手県)、大岩昇会員(宮城県)、佐藤隆信会員(東松島市)、野村裕会員(石巻市)、高橋厚至郎会員(相馬市)、永田毅浩会員(山田町)、井上航会員(浪江町)、山本桂史会員(気仙沼市)。

開会の挨拶に続いて、各参加者からの自己紹介と、各赴任地での業務の内容や活動状況、課題などが報告された。

次いで、任期付職員の方々との間で①任期付職員が自治体間の連携に果たしうる役割、②被災地における用地取得につき生じる問題とその解決方法③自治体職員として関係者から法律に関する相談を受ける際の弁護士倫理④日弁連に対する要望、等について意見交換を行った。

予定された時間を超過するほど白熱した議論がされ、用地取得問題への具体的な対応など各地が抱える課題や、自治体内職員ならではの悩み情報の共有ができた。さらに、率直な意見交換を通じて、今後の情報交換や連携が円滑になったことが一番の収穫であった。意見交換会の後には懇親会も開催され、赴任地を超えた交流がさらに深まった。

参加者からは、今後もこのような意見交換会を行ってほしいとの要望があったため、継続的に意見交換会の機会を持つ予定である。

今後の課題は、現在任用されている方々の任期後も、その活動を承継し、継続的に復興支援をしていくために、後任者を確保していくことである。あなたも被災自治体の任期付職員に応募してみてはいかがだろうか。

(日本司法支援センター対応室嘱託 新谷泰真)


 

連続市民集会Part2
取調べがアブナイ!「作られた自白で有罪」時代との決別
9月11日 弁護士会館

  • 取調べの可視化(取調べ全過程の録画)を求める連続市民集会 取調べがアブナイ! Part 2 「作られた自白で有罪」時代との決別

取調べの録音・録画の制度化をはじめとする刑事司法制度の見直しのための議論は、この秋冬まさしく正念場を迎える。本市民集会では、多くの参加者を得て、取調べの可視化について、元裁判官やジャーナリストが熱い議論を交わした。

 

「取調べ全過程の可視化が必要」と語る宮崎会員

可視化は進んでる?

「『可視化は遅々として進んでいる』って、本当でしょうか」と江川紹子氏(ジャーナリスト)は問題提起した。同氏は検察の在り方検討会議の委員。同会議の提言を受けて設置された法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会(特別部会)の基本構想について、「可視化を広く行うべきという意見が無視されて作られたように感じた」という。基本構想で可視化を想定している裁判員裁判対象事件は、2011年中に一審判決が出た事件全体のうち2・3%程度にすぎない。江川氏は、「村木厚子さんのえん罪事件がこの特別部会の出発点であったはずなのに、録音・録画の対象範囲について捜査機関側の裁量を認め、対象を裁判員裁判事件のみとするのでは、再発は防止できない」と語り、もう一度原点に立ち返るべきだと主張した。

 

裁判官の意識改革を

元裁判官の木谷明会員(第二東京)は、「おかしいと思いつつ、控訴されるのでは、などと考えているうちに無罪判決を書けない裁判官もいるのではないか」とも指摘する。

「可視化はえん罪を減らすために必要。しかし、ゼロにするには裁判官の意識改革も必要では」と意識改革の重要性を説いた。

特別部会委員の宮﨑誠会員(大阪)は、「捜査機関側の裁量に任せて取調べの全過程ではなく一部録画を行えば、屈服した後の自白動画が残る可能性があり、布川事件のようにかえって悪影響を及ぼすことがある」と、対象範囲について取調官の裁量に委ねることの危険性を指摘した。もう一度原点に返って取調べ全過程の可視化を求めようという意見に会場の多くの人がうなずく姿が見られた。


日弁連短信
面会室における写真撮影

兼川次長

身柄事件の接見で、被疑者・被告人がけがをしたと訴えたらどうするか―。弁護人としての正解は「バッグからカメラか携帯電話、iPadなどを取り出して傷の写真を撮る」だろう。治療が必要な場合も違法な取調べの立証の場合も被疑者に知的障がいが疑われる場合も、まず証拠保全が必要だからである。司法研修所の「刑事弁護実務」にもそう書いてある。

しかし、最近、収容施設によっては、面会室での写真撮影や録音を禁止したり、撮影内容の検査等をしている。写真撮影をめぐり、収容施設から懲戒請求された事案も出ている。

これまで、問題なく証拠保全のための撮影や録音をし、公判でも証拠採用されてきたことを考えるとこの扱いは受け入れがたい。

収容施設としては、パソコンの持ち込みは予め申し出ることが必要で、カメラ、携帯電話の持ち込みは禁止(被収容者の外部交通に関する訓令の運用について(依命通達))、証拠保全の必要性がある場合には裁判所の検証手続によるべきだというのが公式見解である。

しかし、検証手続など悠長なことをしている間に痣は消えてしまう。第一選択が検証というのはいかにも非現実的であり、写真撮影等の禁止は弁護権を侵害するものだと言わざるを得ない。

日弁連では2011年1月に「面会室内における写真撮影(録画を含む)及び録音についての意見書」を公表し、収容施設に対応を改めることを求めるとともに、「面会室内における写真撮影等の問題に関する連絡会議」を設置して対応を検討してきた。この9月にも、再度法務省や警察庁宛に、写真撮影等の禁止等の扱いを改めるよう申し入れた。

一方、面会室における写真撮影禁止等を接見妨害として国家賠償請求訴訟が複数提起され、審理中である。

法務省等はこの件の問題性は十分に認識しているようだが、協議等によって対応することはなかなか難しいという考えのようである。

しかし、写真撮影等による証拠保全は、弁護活動に必要不可欠である。弁護活動でもこの点を十分に認識することが必要だろう。

同時にこの問題の背景には、技術の発達等により、誰もがカメラを持ち歩くようになったという生活の変化がある。不可避的な世の中の変化に対しては、柔軟な対応が必要である。その意味でも、今後も、国賠訴訟の結果にかかわらず、弁護権を尊重する対応を求めていきたい。

(事務次長 兼川真紀)


 

11/20ハーグ条約に関するライブ実務研修開催

2014年に締結が予定されているハーグ条約について、代理人弁護士としておさえるべき基本的な知識を学ぶため、条約の目的と国内実施法、中央当局の役割や裁判手続について解説を行います。

日弁連が中央当局等をとおして弁護士紹介を行う際の紹介弁護士名簿への登録のためには、本研修の受講が必要となります。

 

日時 2013年11月20日(水)13時~17時
場所 弁護士会館2階講堂「クレオ」・全国各地の弁護士会にライブ中継

申込方法

■東京会場

研修総合サイト(https://kenshu.nichibenren.or.jp/)またはFAXにてお申込みください。

【WEB申込締切】2013年11月19日(火)

【FAX申込締切】2013年10月23日(水)17時

 

■東京会場以外

研修総合サイトまたはご所属の弁護士会が行う案内に従ってお申込みください。

【申込締切】弁護士会によって異なります

 

※会員専用ホームページもご確認ください

https://w3.nichibenren.or.jp/member/index.cgi?loginscr.a=contents:3488887

※後日eラーニング受講もできます

紹介名簿の登録要件指定研修としてeラーニング受講される場合は、研修全体を受講していただく必要がありますので、映像の最後に「日本弁護士連合会」というタイトルが出るまでご覧ください。

問い合わせ 日弁連法制第一課(03-3580-9893)

 

シンポジウム
秘密保全法制と表現の自由
9月5日 弁護士会館

  • 憲法と秘密保全法制-私たちの「表現の自由」を守れるか-

9月3日、国の機密情報を流出させた国家公務員への罰則強化を盛り込んだ「特定秘密保護法案」の概要が公表された。政府が秋の臨時国会に提出する方向で調整に入った今、秘密保全法制の問題点を整理し、憲法問題についても併せて考えるために本シンポジウムを開催した。

 

左から右崎教授、江藤会員、藤原会員
秘密保全法制の危険性

冒頭、憲法委員会事務局長の藤原真由美会員(第二東京)が、戦時下の軍機保護法と特定秘密保護法案との類似性を指摘した上で、軍機保護法違反で逮捕・拷問を受けた北大生の事件(レーン・宮沢事件)を紹介し、特定秘密保護法案でも同様の悲劇が繰り返される危険性を指摘した。

 

今必要なのは徹底した情報公開

右崎正博教授(獨協大学法科大学院)は、国民が国政の在り方を決定するにあたり、限られた情報しか持ち得ないとすると、国民主権の原理は後退すると批判する。
そして、「今必要とされているのは、秘密保全法制によって秘密保護の範囲を拡大することではなく、人権と民主主義そして平和のために、より実効的で徹底した情報の公開を実現することである」と訴えた。

 

憲法の基本原理と矛盾する秘密保全法制

後半は、右崎教授、藤原会員と秘密保全法制対策本部本部長代行の江藤洋一会員(第一東京)によるパネルディスカッションが行われた。
「特定秘密保護法案は、特定秘密の範囲が不明確であることから、報道機関の報道・取材の自由を制限し、国民の知る権利を侵害する。刑事罰の前提としての捜索差押で、プライバシー権も後退する」と江藤会員。
右崎教授は、日本版NSCを創設し米国との情報共有を図るという契機で政府が秘密保全法制の導入を目指している点に鑑み、「いつも米国に追随する必要性はない。独立国としての行動の在り方が問われている」と述べた。


第3回 日韓バーリーダーズ会議
9月6日~8日 韓国・慶州

本年度の日韓バーリーダーズ会議が、韓国の美しき古都である慶州において開催された。同会議は、1987年から日韓交互開催方式で毎年開催されてきた日韓定期交流会を前身とし、日韓のバーリーダーズが一堂に会する形態の会議に発展してから今年で3年目を迎えた非常に歴史のある国際会議である。今回は、日弁連執行部や各弁護士会の代表等総勢47人が訪韓し、日韓合わせて総勢100人超の大規模な会議となった。

 

日韓双方から活発な議論が交わされた

セッション1「法曹養成制度(ロースクール制度)と弁護士業務領域の拡大」では、日韓の制度内容および現状が報告された後、両会が共に直面している弁護士人口の急増に伴う問題を中心に議論がなされた。特に、日本において導入済みの予備試験の意義や問題点等について白熱した議論が展開された。
セッション2「若手弁護士による人権擁護などの公益活動への参加」では、日韓で現在取り組んでいる多様な公益活動が詳細に紹介され、公益活動といえるための基準や義務化の方法・態様等について掘り下げた議論がなされた。
セッション3「民事事件における弁護士強制主義と法曹一元化」では、日本側にとって、先行している韓国での議論状況を知るための絶好の機会となった。
いずれのセッションも、時間が限られた中で数多くの質疑応答が活発に交わされ、似た悩みを抱える者同士、率直な意見交換を通じて、両国の法律文化の質を高め合おうとする意識が感じられた密度の濃いものとなった。日本からの参加者にとって、韓国弁護士の向上心の高さに刺激を受けつつ、日韓弁護士間の友好を一層深めることができた、実に有意義で充実した3日間であった。

(国際室嘱託 八木哲彦)


 

シンポジウム
集団的消費者被害回復訴訟制度
えっ、まだ成立してなかったの?!
8月28日 弁護士会館

  • シンポジウム「えっ、まだ成立してなかったの?!集団的消費者被害回復訴訟制度」

2006年に適格消費者団体訴訟制度が導入されて以来、30件の適格消費者団体による差止請求訴訟が提起されている(2013年7月時点)。しかし、現在の制度では最終的な被害回復は個々の消費者の対応に委ねられている。そこで、被害回復を可能にする訴訟制度の意義を考え、早期の実現を求めるべく、シンポジウムを開催した。

 

被害回復のための制度内容

冒頭、加納克利氏(消費者庁消費者制度課長)が、先の通常国会に提出された集団的消費者被害回復訴訟制度の法案概要について基調講演を行った。同制度は、①適格消費者団体の中でも認定を受けた特定適格消費者団体が訴えを提起し、被害を受けた消費者に共通する被告側の義務を確定する、②当該団体が共通争点について勝訴判決を得た後、個々の消費者に対し個別争点に関する審理に参加するための通知・公告、手続加入を経て回復を受ける被害額の確定を行うという2段階に分かれる。同氏は、「同制度により被害額は少額でも、個々の消費者が救済を受ける可能性が高まる」と説明した。

 

1日も早い導入を目指して

パネルディスカッションでは、オーストラリア出身のタン・ミッシェル教授(帝塚山大学法学部)が、同国では、消費者被害救済のために行政機関がクラスアクションを起こすことが可能と紹介し、「日本の集団的消費者被害回復制度は目新しいものではなく、ようやく先駆的な国に追いついたに過ぎない」と指摘した。

また、同制度の導入が濫訴につながるのではないかという業者側の懸念に対し、磯辺浩一氏(消費者機構日本専務理事)は、「同制度を利用できるのは適格消費者団体の中でも特定の団体に限定されており問題はない」と述べた。コーディネーターの二之宮義人会員(京都)は、同制度について、「必要性に異論はなく、一刻も早い導入を目指して早期の審議入りを実現すべき」と強調した。


国際分野のスペシャリストを目指す法律家のためのセミナー
8月30日~31日 弁護士会館

  • 国際分野のスペシャリストを目指す法律家のためのセミナー

本セミナーは、1人でも多くの法曹が国際分野への関心を持ち、国際的な舞台で活躍することができるよう、国際機関、国際法曹団体、国際司法支援団体、インハウス等、法律家が活躍しているさまざまな国際的分野を紹介するとともに、実際に第一線で活躍している講師から実体験を聴く機会として2010年から行われている。4回目となる今年も、法務省、外務省の共催および法科大学院協会、国際法学会の後援にて開催し、弁護士、法科大学院修了生、法科大学院生、大学生等を含む約120人が出席した。

 

基調講演では、アジア・太平洋地域の法曹団体および法律家の団体であるLAWASIA次期会長の鈴木五十三会員(第二東京)が、国際社会が変化する中での日本の弁護士の役割に触れ、「自分のためになる活動・好きな活動をすれば、それが日本のためになり、アジアのためになるので、志高くより上を目指してほしい」と述べた。
本年度から導入された新セッションであり、日本で弁護士登録を維持しながら行う国際人権活動に重点を置いたパネルディスカッション「日本の弁護士としての国際人権活動」では、東澤靖会員(第二東京)、児玉晃一会員(東京)および土井香苗会員(東京)から、弁護士会における委員会活動、個別事件への取組、人権NGOの運営という異なる視点から活動の紹介があった。受講生は講師からのメッセージに熱心に耳を傾け、30日夜に行われた懇親会では、参加した講師や関係者に対して意欲的に質問をしていた。
受講後のアンケートでは、回答者の96%が本セミナーについて参考になったと評価しており、将来に向けてモチベーションが上がったとの声が多く寄せられた。

(国際室嘱託 川本祐一)


 

夢実践シンポジウム vol.2
一人一票の実現を目指して
若手弁護士への熱きメッセージ
9月2日 弁護士会館

  • 日弁連 夢実践シンポ vol.2「一人一票の実現を目指して 升永弁護士、久保利弁護士、伊藤弁護士が大いに語る~若手弁護士への熱きメッセージ~」

先の衆議院選挙に関するいわゆる一票の格差訴訟では、各地の高裁で違憲もしくは違憲状態にある旨の指摘がなされ、「一票の格差」問題に対する注目が高まっている。本シンポジウムでは、一票の格差問題を題材に、その先駆者である弁護士が若手に対し、これまでの弁護士としての経験や思いを語り、弁護士としての志と夢とは何かを問いかけた。

 

若手会員にメッセージを送るパネリスト

一票の格差問題に関し、升永英俊会員(第一東京)は、代議制民主主義の3つの柱として、①主権者(国民)の多数決、②正当な人口比例選挙、③国会議員の多数決を挙げた。現在の制度下では、①について実現されているが、③は②が有効に機能していないことが理由で実現されていない。すなわち、②は③を①と等価にするための変換ソフトであり、それが機能していないと指摘した。また、②が実現されている実例として、米国のペンシルバニア州の下院選挙区割りでは、最大人口と最小人口の各小選挙区の人口差がわずか1人であることを挙げた。
久保利英明会員(第二東京)は、弁護士の活動領域の拡大について、かつて自身が総会屋対策に奔走した例を挙げた。「会社経営者たちが、弁護士ではなく反社会的勢力を利用して総会を収める事態が許されてはならない」という思いで取り組んだ結果、株主総会対策の分野において、弁護士の役割と職域が増大したと紹介した。
伊藤真会員(東京)は、30年間続けてきた司法試験の受験指導について、「憲法の価値を社会において実現するために、一刻も早く実務家になってほしいという思いによるもの」と述べ、「憲法の価値の実現がきれいごととしても、そのきれいごとを徹底してやることが、何かを生み出すことにつながる」と語った。
各会員はいずれも、若手に向けたメッセージとして、「自分に制限をかけることなく信念を貫くことが重要」と述べ、「信念を貫いた先に、仕事や成功、またそれ以上の何かが見えるはずだ」と訴えた。


JFBA PRESS -ジャフバプレス- Vol.82

いじめから子どもを守れ
弁護士によるいじめ予防授業

滋賀県大津市で起きたいじめ自殺事件の報道を機に、子どものいじめ問題に対する社会の関心が高まっています。本年6月には「いじめ防止対策推進法」が成立し、日弁連は、いじめ防止の観点からも常設の第三者機関を設けるべきことなどを内容とする意見書を公表しています。
いじめの事実が発見された時には、既に子どもの受けた心の傷が深くなっていることが多いと聞きます。
今回は、弁護士による「いじめ予防出前授業」の取組を始めた、子どもの権利委員会幹事の平尾潔会員(第二東京)にお話を伺い、9月に都内の小学校で実施された東京弁護士会主催のいじめ予防授業を取材しました。

(広報室嘱託 柴田亮子)

 

平尾潔会員インタビュー

―いじめ予防授業を始めたきっかけは

インタビューに応じる平尾会員

検察修習中に21歳の被疑者の話をじっくり聞く中で、被疑者がどんどん変わっていくのを目の当たりにし、少年に関わっていきたいと思いました。
弁護士になって、早速、子どもの権利委員会に入り、いじめの相談を受けるようになって、いじめは予防が肝心、弁護士として何かできないかと考えるようになりました。そんな中、自分の子どもが通う小学校の校長先生にいじめ予防授業のアイディアを持ち込んで直談判し、実現にこぎ着けたのが始まりです。

 

―今後、この取組はどのように展開して行くと思われますか

子どもの権利に関する事件に取り組む弁護士は、日々事件に触れていることから体験的にいじめを語れる数少ない存在だと思います。
今年2月に開催された全国付添人経験交流集会の分科会の1つでいじめ予防授業が取り上げられたこともあって、全国的にいじめ予防授業の存在を周知することができました。
今後は、各弁護士会でいじめ予防授業を担当する講師の推薦等の仕組みができれば、全国に拡がるのではないかと思います。各地で授業を行うためには、授業の進め方のDVDやマニュアルの作成も必要ですね。

 

―子どもの権利について学ぶため最近まで留学されていたそうですね

昨年日弁連の海外ロースクール留学制度を利用して、英国のエセックス大学で子どもの権利について学ぶ機会を得ました。
英国では、いじめ防止に力を入れており、学校にいじめ防止ルールの策定を義務づけています。ルール作りの過程で、教師、生徒、保護者が議論を重ねることで、いじめに対する理解が深まり、これがいじめ予防という効果につながっているようです。
また、英国では加害者ケアの施設も訪問しました。いじめる側の子どもが抱えている問題を取り除かないことには、いじめはなくならないという観点から、子ども1人ごとに異なるプログラムを用意し、全体的な解決を図ろうとするものです。日本では、守るべきはいじめられている子どもで、いじめている子どもは罰せよという考え方も多く、大きな違いを感じました。

 

小学校いじめ予防授業参観

いじめられる子が悪いのか

いじめ予防授業風景

「弁護士って知っている?」という問いから始まり、弁護士は人権を守る人、いじめは人権を傷つける行為とスムーズにいじめの話に導入していく。
「いじめられる子が悪いのか」という質問に対しては、当初はほとんどの児童が「いじめられる子が悪い場合もある」に手を挙げた。
その後、いじめられるのび太、いじめるジャイアン、はやし立てるスネ夫、傍観者のしずかちゃんに例えた「いじめの4層構造」を説明し、小学生との対話の中で、しずかちゃんがキーパーソンであることが導かれていく。
実際の事件が紹介され、いじめの水で一杯になった心のコップは、あと1滴の水であふれてしまう、その1滴は「ウザい」「キモい」「死ね」などの何気ない一言であるという話に小学生も神妙に聞き入り、授業の最後に再度、「いじめられる子が悪いのか」という質問をすると、ほとんどの児童が「悪くない」に手を挙げた。
当日は、千葉県、長野県、沖縄弁護士会の会員も見学に来ており、いじめ予防授業の取組が着実に拡がっていることを実感した。

 

相談相手に「弁護士さん」

授業を受けた児童に対するアンケートでは、多くの子どもたちが一番心に残った話として、自殺してしまった女の子の実話を挙げていた。「少しのことでも、コップから水があふれて自殺してしまうこともあるから、いじめは絶対にいけない」という意見もあった。いじめを相談できる相手として「弁護士さん」との記載もあった。
学校の先生へのアンケートでは、いじめ予防授業を定期的にお願いしたいという意見や、6年生の公民の授業にも関わってほしいとの意見もあり、学校現場で弁護士の果たしうる役割の大きさを痛感するとともに、いじめ予防授業は弁護士に対する垣根をも取り払うという副次的な効果を有していると感じた。


日弁連委員会めぐり 58

日本司法支援センター推進本部

今回は、日本司法支援センター推進本部の横溝髙至本部長代行(第一東京)と渕上玲子事務局長(東京)にお話を伺いました。日本司法支援センター(法テラス)と連携を取りつつ、業務を担う弁護士や利用者の目線に立った改善を法テラスや関係機関と協議するという重要な役割を担っていることを実感したインタビューでした。

(広報室嘱託 白木麗弥)

関係機関との折衝が多いのが特徴
横溝本部長代行(左)と渕上事務局長

推進本部には現在196人の委員が在籍している。会長、副会長および理事からなる委員84人が月に1回理事会内で全体会議を行うほか、委員からなる事務局による事務局会議と課題ごとに実務検討を行う部会がある。このほか、民事法律扶助の抜本的改革を目指す法律扶助制度改革本部が設置され、運営会議において実務的な検討を行っている。法テラスを含め、関係機関との折衝が多いのが特徴だ。各地の法テラス地方事務所や弁護士会と運営上の問題や課題について意見交換を行うためのブロック協議会も開催している。
「私たちのことを法テラス内の組織と勘違いされる会員の方もおられるのですが、私たちは法テラスの業務に関し、日弁連の立場でとるべき方針や行動を立案、実現すべく活動しているのです」と渕上事務局長は説明した。

 

改革案は多岐にわたる

法テラスでは、来年4月から次の中期計画に入るところであり、計画案についても推進本部を窓口として意見交換が行われている。
「民事扶助改革では、生活保護受給者に対する償還免除の実現など一定の成果を上げてはいるが、さらに立替金の一部免除制度の導入、扶助制度利用対象者、対象事件の拡大を目指しています」と横溝本部長代行は現在の目標を語った。具体的には、立替金の償還免除制度の適正な活用や家事事件の報酬の見直し、一般のADRや行政不服審査への適用拡大を求めて活動している。
本年6月末まで家事事件における実際の業務量を調査するため、扶助制度を利用して離婚事件を代理受任した会員に対するアンケート調査を行った。渕上事務局長は、「このようなアンケートは折衝の重要な材料になるので、今後も実施する際にはぜひ協力してほしい」と呼びかけた。

 

贖罪寄付の積極的活用を

日弁連が法テラスに委託している法律援助事業の事業費の財源が会員の特別会費と贖罪寄付によって賄われていることをご存じだろうか。「刑事事件における改悛の真情を表すための手段として、贖罪寄付も積極的に活用いただければ」と横溝本部長代行は語った。


ブックセンターベストセラー
(2013年6月・六法、手帳は除く)協力:弁護士会館ブックセンター

順位 書名 著者名・編者名 出版社名
1 家庭裁判所における遺産分割・遺留分の実務 片岡 武/菅野眞一 編著 日本加除出版
2 若手弁護士のための 民事裁判実務の留意点 圓道至剛 著 新日本法規出版
3 弁護士研修ノート ―相談・受任~報酬請求 課題解決プログラム 原 和良 著 レクシスネクシス・ジャパン
4 別冊ジュリストNo.215 地方自治判例百選[第4版] 磯部 力・小幡純子・斎藤 誠 編 有斐閣
5 破産事件における書記官事務の研究 裁判所職員総合研修所 監修 司法協会
6 弁護士・事務職員のための 破産管財の税務と手続 横田 寛 著 日本加除出版
7 弁護士会照会制度[第4版]活用マニュアルと事例集[CD-ROM付] 東京弁護士会調査室 編 商事法務
8 法律事務所の経営戦略 元榮太一郎 監修 学陽書房
9 破産管財の手引[増補版] 東京地裁破産実務研究所会 著 きんざい
10 ジュリスト増刊 実務に効く M&A・組織再編判例精選 神田秀樹・武井一浩 編 有斐閣
別冊判例タイムズ No.36 後見の実務 東京家裁後見問題研究会 編著 判例タイムズ社

編集後記

先日、いじめ自殺した子どもの同級生のドキュメンタリー映像を見た。「なぜいじめを止められなかったのか」と3年たった今も堂々巡りする苦しさが、とつとつと語る彼の口調から窺え、見ているこちらも苦しくなった。いじめは予防こそが重要だとあらためて感じた。
今回、特集で取り上げたいじめ予防授業の参観をした。授業を担当する弁護士は、授業に赴く前に、学校の先生に普段のクラスの様子を聞きに行き、その後、各クラスにあった授業の進め方を弁護士間で検討し、授業に臨む。1回45分ほどの授業にかかる準備を考えると頭が下がった。
いじめ予防授業は、子どもたちにとっては1回限りの機会となることがほとんどだ。いじめについて継続的に考える機会をどうやって設けるかも課題である。いじめ予防授業の今後の展開に大いに期待したい。
(R・S)