日弁連新聞 第453号

本年度新司法試験に2,063人が合格

9月8日に本年度新司法試験の合格発表が行われた。合格者数は2063人、受験者に対する合格率は23.5%で、いずれも昨年度より若干減少した。受験者数と合格者数の推移は別表のとおりである。

 

法科大学院創設当初の構想では、厳格な成績評価と修了認定を経た者の7~8割が司法試験に合格することを目指すとされたが、現状の合格率は低迷し、そのため法科大学院志願者も急減する悪循環となっている。

 

今後、法曹の養成に関するフォーラムで法科大学院と司法試験の在り方等が議論される予定であるが、地域適正配置を考慮した法科大学院の統廃合と総定員数削減など、抜本的な改革が求められる。

 

新司法試験合格率等の推移
  H18
(2006)
H19
(2007)
H20
(2008)
H21
(2009)
H22
(2010)
H23
(2011)
出願者数 2,137 5,401 7,842 9,734 11,127 11,891
受験者数 2,091 4,607 6,261 7,392 8,163 8,765
合格者数 1,009 1,851 2,065 2,043 2,074 2,063
合格率
(対受験者数)
48.3% 40.2% 33.0% 27.6% 25.4% 23.5%

原発事故賠償請求

東電請求書に重大な問題

日弁連は会長声明を発し注意喚起

膨大な量の書類

9月12日より、福島第一、第二原子力発電所事故被害者のうち、仮払金支払者について、東京電力から賠償請求にかかる請求書式(個人向け)が発送されている。しかしながら、請求書式には重大な問題があり、日弁連は9月16日に会長声明を発して東京電力に対し見直しを求めるとともに、原発事故被害者に対し注意を呼びかけた。

 

請求書式は約60頁、説明書類は約160頁に及ぶ膨大かつ煩雑なものであり、記入に多大な労力と注意力を要する。しかも、最も重要と思われる土地・建物等の損害に対する賠償の扱いは先送りとされている。さらに、請求時の同意書において、損害が「地震あるいは津波による損害ではなく、本件事故による損害であること」の確認や、事前の承諾書で診断書・カルテ・検査記録等の開示・提供を被害者に求めるなど、東京電力の都合を優先させるものとなっている。

 

日弁連は、会長声明においてこれら問題点を指摘するとともに、東京電力に対し、より簡便な方式への変更等を求めた。そのうえで、全国の被害者に対し、請求にあたっては慎重な検討を行うべきこと、原子力損害賠償紛争解決センターや訴訟など他の手続を選択することが可能であること、不明な点があれば弁護士が無料で相談に応ずることなどを呼びかけている。

 

 

被災地における  弁護士雇用等に補助金

一時金・月例給付金を支給

9月15日の理事会において、東日本大震災の被災地における法的需要に的確に対応し、被災地の復興及び被災者の生活再建を促進するために、当該地域に設置されている法律事務所で執務する弁護士を新たに雇用する等した場合に、補助金を支給する制度の創設が承認された。

 

制度の概要は次のとおり。申請があったときは、日弁連において申請が制度趣旨に合致するか否か等を速やかに審査し、相当であると認める場合に補助金支給を決定する。詳細については日弁連東日本大震災・原子力発電所事故等対策本部担当事務局(電話03─3580─9956)に問い合わせをいただきたい。

 

補助対象地域

岩手県、宮城県、福島県の各対象地域。なお、必要に応じて対象地域を追加して指定することもある。

 

支給対象

①既存事務所が震災後に執務する弁護士を雇用する場合。
②弁護士法人が震災後に既存事務所に弁護士を常駐させ、執務する弁護士の数を増加させる場合。
③弁護士が震災後に既存事務所で執務することとなった場合。
④弁護士が震災後に対象地域に法律事務所を開設する場合。
⑤弁護士法人が震災後に対象地域に法律事務所を開設して弁護士を常駐させる場合。

 

申請方法

補助金支給申請書と誓約書の提出が必要(書式は会員専用ホームページからダウンロード可)。但し、補助金を受給する弁護士等が10人に達した場合には、申請の受付を終了する。

 

申請期間

2011年9月30日から2012年12月31日まで

 

支給額

一時金:100万円
月例給付金:2年間を限度として月額20万円

 

災害復興支援に関する全国協議会

広域避難者に対する支援体制などを議論

9月5日神戸市

 意見交換の模様

今年で7回目となる全国協議会は、全国から110名を超える会員が参加した。東日本大震災後の被災者支援活動について情報を共有するとともに、広域避難者に対する今後の支援体制について議論した。

 

前半は被災地の弁護士会等から震災発生後の活動報告を受けた。「被災自治体の行政機能が低下するなか、弁護士会が早期に法律相談を行い情報提供することが重要」(岩手)、「震災ADRは4か月で250件を超える申立があり、今後は本庁だけでなく気仙沼、石巻等でも対応できるようにしたい」(仙台)、「弁護士会支部が広域に分散するなか、情報共有と意思疎通の円滑に努めた」(福島県)、「最大で8000人に達した避難者向けに、ポケットティッシュを配布したり、原発事故被災者ノートを作成した」(新潟県)など、各地の工夫や課題が披露された。

 

震災に備えた各地の態勢作りが喫緊の課題

後半のワークショップでは、地域ごとに10班に分かれ、広域避難者に対する各弁護士会の支援体制等について意見交換した。「被災地の弁護士会は多忙を極めるので、日弁連等からの研修、Q&Aなどのバックアップは非常に助かった」、「今後も大規模な震災が想定されるなか、統一的なものだけでなく各地の実情に応じた態勢作り、マニュアル整備が喫緊の課題」などの意見が出された。
災害復興支援委員会の永井幸寿委員長は、今後の復興政策に関連し「経済活動の回復のみ優先させてはならない。復旧・復興計画に住民の意向を反映させるため、弁護士・弁護士会が積極的に支援していくことが必要」と語った。

 

 

ひまわり

仏像が好きで奈良や京都によく出かける。最近のお気に入りは薬師寺東院堂の聖観音菩薩像。優美な造形と凛とした中に悲しみを湛えた表情に惹かれた。この仏像は長屋王の妻であった吉備内親王が造立したもので、大津皇子の面影を伝えるものだという。長屋王と内親王、大津皇子も密告によって謀反の嫌疑をかけられ非業の最期を遂げた
▼聖武天皇は獄にえん罪に泣くものがいないかを調べるよう繰り返し詔勅を発している。東大寺の大仏は誣告によって死んだ長屋王の霊を慰めるために建立されたとも言われる。平安初期の嵯峨天皇の時代から保元・平治の乱まで約350年間死刑執行は停止されていた。源氏物語や枕草子は死刑のない時代に花開いた文化なのである
▼武家の時代となって死刑が多用されたのは事実。しかし、仏教思想には犯罪者を憎しみと排除の対象としない考えが含まれている
▼明治維新後の初代司法卿江藤新平は佐賀の乱に連座し即決裁判で処刑された。今年は大逆事件で幸徳秋水らが処刑されて100年目。えん罪とは言えないが、秩父困民党や加波山事件でも多くの政治犯が処刑されている
▼今年の人権大会は死刑と刑罰がテーマだ。西欧諸国に倣ってではなく、日本の歴史と伝統に根ざした死刑についての議論を始めたい。(Y・K)

 

第31回市民会議

災害復興のための法整備の必要性などを議論

9月8日 弁護士会館

東日本大震災発生から半年が経過したことを踏まえ、前回に引き続き被災者支援や被災地復興の取り組みについて意見交換した。

 

復興の主体は被災者であるとの視点が必要

冒頭、中野明安東日本大震災・原子力発電所事故等対策本部事務局長代行から、阪神・淡路大震災以降の法整備状況や弁護士会の取り組みを説明した。同震災をきっかけに被災者生活支援法が成立したこと、当時の被災者支援に関わった弁護士が今回の大震災でも活躍していることなどの成果の一方、いわゆる「二重ローン」対策や復興関連の法整備が課題であるとした。6月に成立した東日本大震災復興基本法の評価については、「復興の主体は被災者であるとの視点が不十分」と指摘した。
清原慶子委員(三鷹市長)からは「全国の自治体が被災自治体へ職員を派遣し成果をあげているが、費用負担や労働災害の場合の取り決めがない。災害救助法に位置づけるなどの法整備が必要」との指摘があった。

 

原発賠償ADRに期待の声

原発事故への対応については、「放射能が身体に与える影響について十分な説明がない。ベクレル、シーベルトなど単位もまちまちで分かりづらい」、「政府からの情報提供が不十分で、原発事故の深刻性が矮小化されている。中立的な立場からの弁護士会の情報提供に期待する」などの意見があった。
8月末に発足した原子力損害賠償紛争解決センターについては、「大きなADRができたことは評価できるが、手続きに法的な裏付けがないのが不安」、「同種の被害者については集団申立ても考えるべき」などの意見が出された。日弁連からも、センターに裁定機能を付与するなどの立法提言を行っている旨説明した。

 

大逆事件死刑執行100年の慰霊祭を挙行

慰霊塔

9月19日、旧東京監獄・市ヶ谷刑務所刑場跡慰霊塔前で、刑死者慰霊祭が挙行された。本年はいわゆる「大逆事件」死刑執行100年に当たることから、宇都宮会長も出席し、この地で刑死した大逆事件受刑者らの霊を慰めた。

 

大逆事件においては、1910年(明治43年)、明治天皇の殺害を計画したとして26名がいわゆる大逆罪で大審院に起訴され、わずか1か月ほどの審理で有罪判決を受け、うち12名が1911年(明治44年)1月24日、25日に死刑執行された。戦後の研究の結果、社会主義者、無政府主義者らを根絶するために当時の政府が主導して捏造した思想・言論弾圧事件であるといわれている。

 

慰霊塔は、大逆事件で死刑執行された12名をはじめとする290名あまりの刑死者への慰霊のため、弁護士有志の呼びかけで1964年7月に建立されたものである。以後毎年9月に、日弁連と地元町内会の共催で慰霊祭を開催してきた。
本年は大逆事件死刑執行100年に当たることから、日弁連は、9月7日に慰霊祭に当たっての会長声明を発表し「その重い歴史的教訓をしっかり胸に刻む」とともに、「思想及び良心の自由や表現(言論)の自由を制約しようとする社会の動きや司法権を含む国家権力の行使を十分監視し続け、今後ともこれらの基本的人権を擁護するために全力で取り組む」決意を改めて表明した。

 

日弁連短信

新司法試験合格率と法科大学院制度の評価

海渡総次長
合格率低迷と志願者減少

本年度新司法試験は合格者数、合格率ともに昨年より微減となった(一面参照)。法科大学院修了者の7、8割が司法試験に合格するとの目標に比して合格率は低迷しており、そのため法科大学院の入学志願者は当初の約4万人から現在は約8000に急減した。これは人材の多様性の喪失と質の低下を招きかねない重大な問題である。
司法試験合格率が低迷している原因は明らかであり、合格者の増加ペースと無関係に法科大学院が乱立し、総定員が当初5700人にも及んだことにある。合格率の低迷は法科大学院教育に受験優先の歪みをもたらし、法科大学院間の格差の拡大にもつながる。
これに対し、文部科学省と法科大学院側の努力により総定員数は現在約4500人にまで削減されたが、今後さらに法科大学院の統廃合と総定員削減をはかり、厳格な成績評価と修了認定を経た修了者の大部分が司法試験に合格することをめざす必要があろう。

 

新制度の到達点

他方、司法試験合格率の低迷や志願者の減少をもって法科大学院制度が破綻したという議論もあるが、これは行きすぎである。
司法試験合格率の低迷といっても、3%程度しか合格しなかった旧試験時代に比べればはるかに高く、受験3回以内に合格する者は約5割、法学既修者に限っていえば7割近くに達している。
法科大学院入学志願者数についても、急減したとはいえ旧試験時代の新規受験者数を大きく上回っており、社会人と非法学部出身者の入学者数はいずれも2割を超えている。法曹への途はかつてより広くなっている。

 

法科大学院教育は、法学部教育の空洞化と予備校依存の弊害を指摘されたかつての状況を一新し、多数の実務家の協力の下で少人数形式の充実した教育に取り組んでいる。確かに、教育内容はまだ不十分な点が多いが、修了後1回目の受験者が新司法試験合格者の過半数を占めていることを見れば、法科大学院教育の成果は明らかである。

 

冷静な評価に基づく議論を

新しい法曹養成制度は司法試験の「点」よりも専門教育の「プロセス」を重視することを理念としており、その下ですでに6600人もの新法曹が生まれている。
新制度の到達点の冷静な評価に基づき、その改善方策を検討すべきである。
(事務次長 中西一裕)

 

第17回弁護士業務改革シンポジウム

もっと広く!もっと多様に!もっと市民のために!

→第17回弁護士業務改革シンポジウム

 

弁護士業務の新たな可能性を求めて

11月11日(金)10:00~18:00 パシフィコ横浜

どこの国に行っても、弁護士はたいてい忙しい。誠実に事件をこなそうと思えば、いくら時間があっても足りない。しかし、時には立ち止まり、多くの弁護士が弁護士業務の将来をどのように構想・実践しているのかを知り、考えることが、多忙な日常を超えた、新たな発展につながる。2年に1度の貴重な機会であるので、一人でも多くの皆様に参加していただきたい。必ずや、何かしらのヒントが得られるはずである。

 

第1分科会 小規模法律事務所におけるマーケティング戦略 ~さらなる依頼者志向へ


第2分科会 地方自治体の自立と弁護士の役割 ~監査、議会のあり方、クレーマー対策を題材として


第3分科会 事務職員の育成と弁護士業務の活性化 ~日弁連研修・能力認定試験をどう生かすか


第4分科会 企業等不祥事における第三者委員会ガイドラインの今後の課題 ~ガイドラインの意義と普及のために


第5分科会 さらなるITの活用 ~弁護士業務支援ソフトでできること/判例公開の最先端を聞く


第6分科会 今こそ「夢」実現! ~より深く、より広く、若手弁護士の活躍の場はここにも


第7分科会 弁護士保険の範囲の拡大に向けて ~市民のための紛争解決費用を保険で


第8分科会 中小企業の身近で頼れるサポーターとなるために ~支援ネットワークの提言と実践


第9分科会 今の働き方に不安はありませんか?弁護士のワークライフバランス ~子育て・リタイアメント/メンタルヘルス


第10分科会 高齢社会におけるホームロイヤーの役割 ~高齢者へのトータルな支援を目指して


第11分科会 民事裁判の活性化 ~財産開示の活用/損害賠償の充実へ

 

(第17回弁護士業務改革シンポジウム運営委員会委員長 小原 健)

 

「自由と正義」9月号および日弁連ホームページもご参照ください。

 

第3回
裁判員裁判に関する経験交流会

9月3日 弁護士会館

裁判員制度施行から2年が経過した。この間に日弁連が収集した情報をもとにして、判決の分析結果や問題点などを報告し、全国の経験を共有するため本交流会を開催した。

 

大阪市母子殺人事件最高裁判決に注目

大阪市母子殺人事件の最高裁平成22年4月27日判決(一審無期懲役・二審死刑判決を破棄し、一審に差し戻し)は、間接事実だけで有罪認定をする場合、「間接事実中に、被告人が犯人でないとしたならば合理的に説明することができない(あるいは、少なくとも説明が極めて困難である)事実関係が含まれていることを要する」と判示した。犯人性が争われた裁判員裁判で、この最高裁判決を引用する判決が出てきており、今後も注目する必要があると指摘された。

 

量刑の変化について細やかな分析が必要

裁判員裁判の量刑判断の特徴を検討することは、あるべき弁護活動のために必要といえる。罪名別の量刑分析によると、傷害致死事件の量刑ピークは、裁判官裁判が「懲役5年以下」であるのに対し、裁判員裁判は「懲役7年以下」となるなど、全体として重い方にシフトしている。ただし被害者類型別でみると、被害者が「親」や「関係なし」のものは必ずしも重くなっておらず、細やかな量刑分析の必要性が指摘された。

 

証拠の存否をめぐる問題なども議論

弁護人の証拠開示請求に対し、検察官が当初「存在しない」と回答したが、後に証拠の存在が判明した事例などが報告された。また、公判前整理手続終了前に公判期日を指定されると整理手続が拙速になりかねないという問題や、被害者参加人の被告人質問に対する異議などについても議論を行った。

 

即時独立開業予定者のための相談会
9月3日 弁護士会館

担当弁護士からアドバイス

日弁連は、2009年から即時独立開業予定者のための相談会を開催している。昨今の就職難を反映してか、48名の相談者が参加し、終了予定時間を超えても相談席は一杯であった。当日のアドバイスのポイントを紹介する。


メーリングリスト、チューター制度の活用

即時、早期に独立する場合の様々な不安を解消し、サポートするために、日弁連では、メーリングリストを開設し、チューター弁護士制度を実施している。また、各弁護士会でも、様々なサポートを用意している。まずは問い合わせていただきたい(日弁連業務部業務第一課03―3580―9832)。

 

開業時の考慮ポイント

開業資金は、開業場所にもよるが概ね最低300万円程度。よくよく考えるべきは、開業場所。一般に裁判所の近くを希望する人が多いが、裁判所の近くは弁護士も多いというデメリットもあると指摘されていた。

 

委員会活動をしてみよう

受任につなげるためのアドバイスとしては、いろいろな団体の会合に顔を出すこと、弁護士会の委員会活動を通じて、様々な期の会員と知り合いになること等が挙げられていた。

 

選択肢の一つとしての「即独」

当日は、即時独立も視野に入れて現在就職活動中の相談者も多くいた。募集を行っていない事務所であっても、紹介などにより、うまくマッチングできて採用に至ったケースがあることや、たとえ就職先が見つからなくても、弁護士登録をしておけば、研修などの様々なサポートが受けられるなどのアドバイスもあった。
相談者からは、就職活動の仕方から、資金関係までざっくばらんに聞けて有意義であったという声が聞かれた。

 

シンポジウム 女性こそ主役に!災害復興

9月8日 弁護士会館

→シンポジウム女性こそ主役に!災害復興

 小島会長

 

東日本大震災からの復興に向け、女性の参画を含めた社会の在り方を議論するためのシンポジウムが開催された。

 

震災によって社会の歪みが顕在化

冒頭、鈴木隆文会員(両性の平等に関する委員会特別委嘱委員)は、災害弱者は自然災害で出現した問題ではなく、元々の社会の歪みが災害により浮き彫りになったものだと問題提起した。
現時点の復興は残念ながら歪みの改善という視点はなおざりだ。実際、東日本大震災復興構想会議では委員15人中、女性はわずか1名であり、復興についての意思決定過程において女性の参画は著しく低い。

 

仮設住宅に移ってからの心のケアがより必要

続く被災地からの報告では、NPO法人「みやぎジョネット(みやぎ女性復興支援ネットワーク)」事務局長草野祐子氏が、むしろ仮設住宅に移ってきてから被災者の間で意見が対立したり、孤立したりした人が増え、心のケアがより必要になったと感じる。支援をする人は現地の生の姿を是非見てほしいと語った。菅波香織会員(福島県)は、子どもに安全な食べ物をと考える親が、教員から「国を信じられないなら日本人をやめるしかない」と非難されるという生々しい現状を語った。

 

女性の声を届けるためのパイプ作り

続くパネルディスカッションでは、大沢真理教授(東京大学)が戦後の偏った経済開発が災害弱者を生み出したという経緯を説明し、竹信三恵子教授(和光大学、東日本大震災・女性支援ネットワーク共同代表)は、声を上げることが「わがまま」と評されがちな女性の声を届けるためのパイプ作りを呼びかけた。
林陽子会員(第二東京)は、「そもそも国は、国際社会から歪みを正せと求められながら先送りにしてきた」と指摘した。小島妙子会員(仙台)の「地域に住むそれぞれの個人がパワーを自由に発揮できてこそ地域の復興につながる」との示唆に、強い共感を覚えた。

 

全国仲裁センター連絡協議会
9月16日 札幌市

今年の協議会には、北海道から沖縄まで38弁護士会から約100名が参加し、活発な議論が行われた。


各地の運用上の工夫を紹介

協議会は2部構成で行われ、第1部では「仲裁センター・紛争解決センターの活性化について」と題するパネルディスカッションを行った。ADR利用件数の多い仙台・愛知県・岡山及び大阪の総合紛争解決センターの紛争解決センター運営委員がパネリストとなり、ADRセンターにおける利用活性化のための方策について、①広報、②法律相談前置、③申立てのサポート体制、④あっせん人選任上の工夫、⑤相手方の応諾を得る工夫、⑥和解成立率を高める工夫、⑦利用者の満足度調査・フィードバックなど多岐にわたる運用上の工夫等が紹介された。

 

未設置会へのサポート方法等を議論

第2部では「活性化実現のための未設置会・隣接弁護士会との連携の在り方及び震災ADRの活用について」と題し、近時ADRセンターを設置した会の苦労話、未設置会からセンター設置の検討や金融ADRへの対応に関する検討状況の報告がされたほか、未設置会へのサポート、特に北海道・四国を中心に隣接弁護士会との連携等について意見交換が行われた。また、震災に関連して、原発ADRへの対応状況、神戸の震災時対応の紹介や、仙台弁護士会から震災ADRの立上げ・利用状況、工夫や苦労話、福島・岩手・茨城からも検討状況の報告等がされた。
(ADR(裁判外紛争解決機関)センター 事務局長森 倫洋)

 

日弁連セミナー
国際分野のスペシャリストを目指して

8月26日・27日、弁護士会館

金井郁講師(埼玉大学)

2日間にわたり、「国際分野のスペシャリストを目指す法律家のためのセミナー」を開催した。昨年に続く開催であり、法務省・外務省と共催し、法科大学院協会と国際法学会が後援した。
(国際室嘱託 大川秀史)


国際舞台で活躍中の専門家による講義

国際舞台で活躍中の弁護士・検察官・国連職員・大学教授ら23名が次々と演壇に立ち、活動内容や応募の方法、そのために長期間にわたり準備すべき事項について、詳細な説明がなされた。
 「実践・国際法」講義を担当した横田洋三教授は「正解の暗記をするのではなく、正解のない問いに回答しようと努めるべき」と語り、法整備支援パネルディスカッションのパネリストとして参加した佐藤直史会員(国際協力機構(JICA))も「採用ポストは求めるものではなく、自ら創り出すもの」と説示するなど、まさに日本での日常の域を超えて飛躍するための様々な示唆が印象に残った。そして、今年も受講生から、熱意のある質問が次々と寄せられていた。

 

今後もさらに充実したセミナーを提供

本年度は昨年度にも増して多数の申込があり、弁護士・法科大学院生(修了生を含む)・学部生ら112名が受講、内74名の皆勤者には修了証が授与された。また本年度は初日の全講義終了後に懇親の場も設定し、講師と受講生とが直接に話すことの出来る機会の充実にも努め、大半の受講生がこれにも出席した。
受講者アンケートを見る限り、今回も大好評を博すことができた。上級者向け、あるいは専門分野に特化したセミナーの開催を求める声も数多く寄せられている。国際室はこれらの声に基づき、来年度以降もさらに充実したセミナーを提供し、我が国の法律家が次々と国際分野で活躍できるよう努めたい。

 

JFBA PRESS -ジャフバプレス- Vol.60

総合的な高齢者支援の在り方を考える
「委員会めぐり」でご紹介した日弁連高齢社会対策本部は、各弁護士会の実情に応じた「モデル事業」を実施しています。今回は、モデル事業第一号となった鳥取県弁護士会の取り組みをご紹介し、急速な高齢化社会における総合的な高齢者支援の在り方を考えてみたいと思います。(広報室長 生田康介)

 

鳥取県弁護士会の取り組みから

寺垣会員と安田職員モデル事業の取り組みと現時点での成果

高齢者のための法律相談モデル事業は、地域の実情を踏まえた総合的な法的支援を検討するため、2009年12月の鳥取を皮切りに、以後全国各地で実施されている。内容は無料相談、有料出張相談が中心であるが、地域包括支援センターなどとのネットワーク作りや、講演会、研修会を実施する弁護士会もある。
モデル事業の成果も踏まえ、日弁連では、高齢者専門法律相談窓口の活性化、ワンストップサービスの実現、ネットワーク構築などを柱とする「高齢社会対応のための標準事業案」を策定した。その一環として、2012年4月を目処に、各弁護士会での取り組みの実施を要請している。

 

虐待事案対応の成功例~鳥取のケース

鳥取県中部の老人養護施設で暮らす70代半ばの男性は「今は言うことないくらい良くしていただいてます」と言葉少なに語ってくれた。男性は親族方で生活していたが、居室である離れは防寒対策が不十分で、食事も満足に与えられていなかった。昨冬の鳥取は記録的な豪雪となり、男性の健康状態を不安視したケアマネジャー(介護支援専門員)の通報をきっかけに、「成年後見ネットワーク鳥取」に連絡がきた。担当となった鳥取県弁護士会の寺垣琢生会員らが保佐人に就任して親族からの分離に成功した。分離から半年以上が経つが、懸念された親族からの物理的な抵抗もなく、平穏に推移しているという。

 

法人後見を受けられる機関が必要

弁護士・司法書士・社会福祉士を中心に「成年後見ネットワーク鳥取」が結成されたのは2002年のこと。2008年からは鳥取県から虐待対応専門職チームの対応を受託している。最近の問題は、虐待事案、財産のない方の事案などにおいて成年後見人が見つけにくいということ。寺垣会員は「これらの成年後見をスムーズに行うために『法人後見』を受けられる機関が必要」と力説する。
寺垣会員の事務所の安田ゆみ職員は、ネットワーク鳥取の事務局も兼ねており、社会福祉士の資格を有する。「取り組みの必要性を実感することが多いが、専門的に取り扱う弁護士が少なく、相談を受けたときの振り分けが大変」と目下の悩みを語ってくれた。

 

自治体、社会福祉協議会などとの連携

鳥取市中心部から車で約40分。鳥取県の南東部に位置する智頭町は、高齢化率(65歳以上の高齢者人口の割合)が35%に達する。
同町社会福祉協議会の垣屋稲二良常務理事は「支援が必要と考えられるケースでも、法的根拠について判断が難しい場合もある。そんなときに弁護士の支援があれば非常に助かるし、迅速な対応ができる」と語る。ネットワーク鳥取については「難しいケースでも引き受けてくれて頭が下がる。ただ、特定の弁護士に事件が集中しないように配慮しなくては」と評価する。

 

11/18中国地方弁護士大会で記念シンポジウム

寺垣会員は「福祉の場面における権利擁護は、あくまで『自己実現の支援』にある。手厚ければよいというものではなく、本人のためいかに『程よい』支援をするかが問われる」と高齢者支援の勘所を語る。
11月18日には、中国地方弁護士大会が鳥取県米子市で開催される。記念シンポジウムのテーマは「権利擁護支援センター(仮称)の設立を目指して…高齢者・障がいのある人の積極的権利擁護のために」。多数の会員の参加による有意義な議論を期待したい。

 

モデル事業実施弁護士会一覧

鳥取県弁護士会 (1期)2009年12月~2010年2月
(2期)2010年5月~2010年7月
(3期)2011年3月~2011年5月
愛知県弁護士会 2010年1月~2010年4月
福島県弁護士会郡山支部 2010年4月~2010年6月
福岡県弁護士会筑後支部 2010年5月~2010年8月
北海道弁護士会連合会 2010年8月~2010年10月
静岡県弁護士会 2010年9月~2011年3月
横浜弁護士会 (1期)2010年10月~2010年12月
(2期)2011年1月~2011年3月
大分県弁護士会 2011年1月~2011年4月
宮崎県弁護士会 2011年2月~2011年3月 
長野県弁護士会

2011年5月~2011年8月 

福井弁護士会 2011年7月~2011年9月
香川県弁護士会 2011年10月~2012年1月

日弁連委員会めぐり 46

高齢社会対策本部
現在、急速な高齢化社会の中で、高齢者に対する総合的な法的支援が求められています。今回は、高齢者支援の充実を目指す高齢社会対策本部(以下「対策本部」)の活動について、高野範城本部長代行(第二東京)と池田桂子事務局長(愛知県)にお話を伺いました。(広報室嘱託 葭葉裕子)

 

高野本部長代行と池田事務局長

高齢者の生活のトータル支援を念頭に

急速な高齢化社会にあって、高齢者の消費者被害が深刻化するなど、高齢者は様々な問題に直面している。そこで、対策本部は、2009年6月、高齢者の生活をトータルに支援することを念頭に、高齢者支援の充実を目指して発足した。
対策本部には、①相談体制整備、②新規事業企画、③地域支援事業、④広報・研修の4つの部会が設けられ、それぞれの課題を検討している。


「高齢社会対応のための標準事業案」の実現を目指す

対策本部では、高齢者の法的ニーズや今後の弁護士・弁護士会の取り組みの方向を明らかにするため、「モデル事業」を実施している。小規模弁護士会モデル事業である鳥取県弁護士会の取り組みや、愛知県弁護士会で行った地域包括支援センターなどの高齢者の社会的支援者・機関と連携して行うモデル事業などである。高野本部長代行は、「モデル事業の実施により、相談実績が上がるなど、大きな成果を実感している」と語る。
さらに、モデル事業での成果を踏まえて、対策本部は、「高齢社会対応のための標準事業案」を策定した。高野本部長代行と池田事務局長は、「標準事業案は、各弁護士会で標準的に実施されるのが望ましい事業を定めたものであり、全国での実現を目指していきたい」と抱負を語ってくれた。

 

若手会員にも、ぜひ関心をもっていただきたい

現在、東日本大震災の被災地に設置予定の高齢者介護等のサポート拠点と弁護士・弁護士会の連携のあり方などの検討も行っているという。
また、来る11月11日の弁護士業務改革シンポジウムでは、分科会を行うことになっており、池田事務局長は、「高齢者のためのホームロイヤーとしてトータルな支援業務を考察するので、ぜひ第10分科会に来てください」とメッセージを述べた。そして最後に、高野本部長代行は、「高齢者の総合的な法的支援の需要は、今後益々増えると思われるので、ぜひ若手会員にも、関心をもっていただきたい」と訴えた。

 

ブックセンターベストセラー(2011年7月・六法、手帳は除く)
協力:弁護士会館ブックセンター

順位 書籍 著者・編者 出版社
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東京地裁破産実務研究会 著
きんざい
判例 弁護過誤 高中正彦 著 弘文堂
クレジット・サラ金処理の手引 5訂版  東京弁護士会・
第一東京弁護士会・
第二東京弁護士会 編著

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[改訂版]Q&A災害時の法律実務ハンドブック 関東弁護士会連合会 編 新日本法規出版
弁護士のためのリスクマネジメント
事例にみる弁護過誤
平沼高明法律事務所 編 第一法規出版
子どもの連れ去り問題
~日本の司法が親子を引き裂く 平凡社新書576
コリン P.A.ジョーンズ 著 平凡社
優越的地位濫用規制の解説 別冊 公正取引 No.1 公正取引協会 編  公正取引協会
家庭裁判所における 成年後見・財産管理の実務 片岡 武・金井繁昌・
草部康司・川畑晃一 著 
日本加除出版
合同労組・ユニオン対策マニュアル  奈良恒則 著  日本法令
10 労災民事訴訟の実務  ロア・ユナイテッド法律事務所 編  ぎょうせい

編集後記

広報室嘱託に就任して、多くの会議、シンポに足を運ぶようになった。結局自分が不勉強だったというほかないが、日弁連の委員会で議論され発信される情報は日々の弁護士業務に密接に関わる有益な情報だと、実際に自分が話を聞くようになってから実感することができた。
私だけでなく、日々の弁護士業務に追われて、シンポに足を向け、日弁連が発信する情報に触れる機会を若手会員が失くしていると思うのは気のせいだろうか。結果的に多くの先輩方が培ってきた知識、ノウハウという財産を知らないままでいることもありうる。
日弁連に日頃縁がない人、自分に関係ないと思っている人にこそ日弁連新聞やメールマガジンを読んでもらいたい。記事を読んだ読者がさらに問題を知ってみたいと思う一歩になればと願いながら、新人嘱託は今月もペンをとる。
(R・S)