会長からのご挨拶(2022年4月1日)

会長からのご挨拶

2月4日に実施された日弁連会長選挙において選出された会長の小林元治(こばやし・もとじ)です。4月1日から2年間の任期で会長を務めます。どうぞよろしくお願いいたします。


2月24日から始まったロシアによるウクライナ侵攻は、全世界に衝撃を与えました。多くの市民に死傷者が出ています。私たちは、国連憲章に違反し、主権国家に武力をもって侵攻するロシアに対して強く抗議するとともに、一日も早いロシア軍の撤退と平和的解決を求めます。


いま、日本ではコロナ禍の中、さまざまな法的問題が発生しています。日弁連は、これらの法的ニーズに適切に対応し、市民社会に貢献できる存在でありたいと考えます。


国、地方公共団体、企業をはじめ、組織での働き方に関する助言等、働く現場でのハラスメントの防止、医療現場における事故や教育現場でのいじめ・自殺等の防止、事故後に発足する第三者委員会、児童相談所での弁護士関与、家庭におけるDVなど、弁護士が法的な危機管理に対応しなければならない場面が増えています。超高齢社会において、成年後見制度への弁護士の更なる関与も期待されています。


ESG、SDGsなど、環境保護やビジネスと人権といった視点でのガバナンスやコンプライアンス等は、今や世界標準とした上での対応が求められています。


市民の方々が利用しやすく頼りがいのある司法を実現するには、民事司法の改革・改善が必要です。同時に、弁護士と他士業との業際問題及び非弁・非弁提携問題にも揺るぎなく対応し、利用者の利益を保護するとともに、弁護士の業務基盤も守っていかなければなりません。


これからの弁護士会を担う若手弁護士の支援策を具体的に検討することも重要施策の一つです。いわゆる谷間世代の救済を国に求める働きかけも行ってまいります。


日本司法支援センター(法テラス)は、市民への法的サービスを行う重要なアクセスポイントであり、持続可能な権利・人権救済制度にしなければなりません。利用者負担の在り方を見直して利用者の負担軽減を図るとともに、労力に見合わないと指摘される報酬を見直す仕組みを創っていくことを検討します。


日弁連においては、男女共同参画の更なる推進と併せて、障がい者やLGBTQなど様々な生き方と社会の在り方を調和させるため、いわゆるダイバーシティ&インクルージョン(D&I)を推進していきます。多様な価値を受け入れ、尊重し活用すれば弁護士業界にもイノベーションが起き、変わっていくと考えています。


日弁連の一体化・組織力強化のために、小規模弁護士会への更なる支援も行います。地域の実情を踏まえた弁護士会運営の工夫も必要です。日弁連や弁護士会のIT化、システム化を総合的なDX政策に位置付けて進めてまいります。


取調べへの弁護人立会い、取調べの全件・全過程の録音録画の実現、再審法改正などえん罪防止を目的とする刑事司法改革は弁護士の使命であり、これらの問題にも全力で取り組みます。地震、風水害、コロナ禍など、これまでの経験と知見を活かした災害対策も必要です。


日弁連は、日本最大の人権NGOとして、基本的人権に関する諸課題に対し、憲法の理念に基づいて意見を述べることは重要な役割であると考えます。自由、民主主義、基本的人権の尊重、法の支配という普遍的価値を日本の内外で共有できるように努めます。


私は、参加と対話、そして団結と実行を、選挙期間中掲げてまいりました。 副会長、理事、事務総長・次長、職員と共に、日弁連が直面する重要課題に全力で取り組んでまいります。ご支援、ご協力をお願いいたします。



2022年(令和4年)4月1日
  日本弁護士連合会会長     

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