会長からのご挨拶(2019年10月1日)

会長からのご挨拶


菊地裕太郎会長

7月31日から8月3日にかけて、POLA(アジア弁護士会会長会議)に出席するため、3泊4日で中国の昆明(クンミン)へ行って参りました。POLAにはアジア各国・地域から32の弁護士会が加盟しており、今回は16の弁護士会会長、3つの各国際法曹団体の代表が一堂に会しました。
 

昆明は中国雲南省にある人口約726万人の大都市で、標高2000メートル近い高原に位置し、日本からは一日がかりの旅です。
 
セッションの中でも「リーガルエイド(法律扶助)」と「司法とAI」のセッションは特に興味深いものがありました。各国弁護士会ではリーガルエイドの拡充に力を入れているものの、国の予算がつかず、弁護士の社会貢献活動(プロボノ)に大きく頼っており、取り組みとして極めて不十分であることが報告されました。私は、法テラス(日本司法支援センター)の設立とその役割、そして国の予算が付かない人権課題について日弁連が年間10~15億円を負担して、法テラスを通じてリーガルエイドを実践していることを説明したところ、参加者から驚きをもって受け止められました。社会的弱者、ことに刑事被疑者・被告人の人権救済が、各国弁護士会の重要課題であるとの認識を共有することができました。
 
また、司法のデジタル化の流れは凄まじいものがあります。昆明の法律サービスセンターを見学して驚いたのは、「法律相談ロボット」なるものです。法律相談の分野、概要、当事者名などを画面表示に従って入力していくと、関連裁判例や法令の説明が記載された紙が出てきます。必要があれば備え付けの電話で当番弁護士にアクセスし、顔写真入りの弁護士名簿から選んで予約もでき、しかも全て無料です。昆明で開発され、雲南省には既に1500台配置されており、AIが、日々クラウド上で判決等を集積し、データを更新しているそうです。会議の中でも、中国からはオンライン司法サービスやインターネット裁判について、シンガポールからはAIによる民間リーガルサービスについての説明がありました。香港、マレーシア、韓国などを中心とした各国の議論は、今や裁判のIT化を超えて、ODR(オンライン上での紛争解決手続)が中心となっており、裁判のIT化に着手したばかりの日本とは大きく異なります。


中国・シンガポール・香港などは、国際紛争を解決するための司法機関の拡充に対して貪欲です。日本も来春、国際仲裁・調停の審問施設を東京にオープンする予定です。また、国を挙げて国際(司法)人材を養成するシステムも検討中です。


こうしてみると、これからの法曹界には、AIなどのデジタルに強い人材、英語に堪能で国際的視野を持つ人材が必要であることを強く感じます。経済・会計・商取引・国際公務など様々な分野のエキスパートも必要です。ぜひとも意欲のある方々に法曹界を目指していただき、多様な人材が集まるよう、司法試験のあり方もそろそろ考えるべき時代に来ている気がします。


残り半年となった会長在任期間の間、全力を尽くして山積する課題に取り組み、次年度につなぐため結果を出したいと存じます。


ご支援のほど、よろしくお願いいたします。



2019年(令和元年)10月1日
日本弁護士連合会会長

菊地裕太郎会長