臨時総会(2006年3月3日) 議事概要

 


日時・場所

日時
平成18年3月3日(金)12:00~20:03
場所
弁護士会館2階講堂「クレオ」

出席会員数、出席外国特別会員数及び議決権数

項目 人数
本人出席 597名
代理出席 7,855名
弁護士会出席 52会
外国特別会員 0名
外国特別会員代理出席 7名
議決権総数 8,511名

議長及び副議長の氏名

役職 氏名
議長 山内堅史(東京弁護士会所属)
副議長 竹田真一郎(第二東京弁護士会所属)
副議長 山口孝司(大阪弁護士会所属)

出席した会長、副会長及び監事の氏名

役職 氏名
会長 梶谷 剛
副会長 柳瀬 康治、星 徳行、高木 佳子、中村 順英、中村 周而、益田 哲生、出口 治男、青山 学、二國 則昭、松崎 隆、鹿野 哲義、渡辺 英一、山原 和生
監事 (出席者なし)

会の流れ

日本弁護士連合会臨時総会は、2006年3月3日(金)午後0時から、東京都千代田区の弁護士会館2階講堂「クレオ」において開催された。


出席者は、午後0時30分の時点で、本人出席389名、代理出席5,814名、会出席51名の計6,254名であり、外国特別会員の出席は、本人出席はなく、代理出席7名であった。


本総会は、山岸憲司事務総長の司会で午後0時から始められ、まず、梶谷剛会長から、議事規程第2条に基づき開会宣言と挨拶が述べられた。梶谷会長の挨拶では、4つの議案について、十分な審議をして頂きたい旨要望があった。


続いて、正副議長の選任手続がなされた。


梶谷会長が議長の選任方法について議場に諮ったところ、伊藤茂昭会員(東京)から、選挙によらず、会長が指名する方法で、議長及び副議長2名を選出されたいとの動議が提出され、他に意見はなかったため、梶谷会長が動議を議場に諮ったところ、賛成多数で可決された。


動議可決を受けて、梶谷会長は、議長に山内堅史会員(東京)、副議長に竹田真一郎会員(第二東京)及び山口孝司会員(大阪)をそれぞれ指名し、正副議長の挨拶がなされた。


その後、議事規程第5条に基づき、梶谷会長から議案が提出された。


議長は、本総会の出席者につき、現在集計中のため、後刻報告する旨述べた。


議長より議事録署名者として、桑原周成会員(東京)、横溝髙至会員(第一東京)及び伊東卓会員(第二東京)の3名が指名された。


議長は、議事に入る前にいくつかの注意事項等を述べ、また、本総会の議事は、会則第54条により公開されている旨及び傍聴者は傍聴席にて傍聴されたい旨を述べた。


[第1号議案] 裁判所の処置請求に対する取扱規程制定の件

議長は、第1号議案「裁判所の処置請求に対する取扱規程制定の件」を議題に供する旨宣した。また、全ての議案について朗読を省略したい旨を議場に諮ったところ、異議がなかったことから、全ての議案の朗読を省略することになった。


続けて、柳瀬康治副会長より第1号議案の趣旨及び提案理由の説明がなされた。提案要旨としては、今般の刑事訴訟法(以下「刑訴法」という。)改正により、従来の処置請求に加えて処置請求が制度化されることとなったこと、裁判所からの処置請求事案が増加することが予想され、弁護士会としても処置請求の原因となった裁判所の訴訟指揮の適正さを吟味し、弁護権を擁護する必要性があること、処置請求に対処する処置を行う場合の適正手続を保障する必要があることから、処置請求に対する取扱規程を整備しておくことが必要であること、調査の公正さや対処結果の適正さ等に差異が生じないよう日弁連として制定する必要があることから提案する旨、議案書の提案理由を敷衍して説明し、その後、各条項毎に説明を行った。


続いて、第1号議案に関する質疑に入った。まず、阿部潔会員(仙台)から、議案の背景が分からないとして、(1)過去にどの程度の処置請求が行われたのか、日弁連としてどのような対応をしてきたか、(2)処置請求の数が増加するという提案理由であったが、刑事訴訟規則(以下「刑訴規則」という。)第303条に基づく対処と同様の対処でなぜいけないのか、(3)同条については、これまでどおり規定が存在しなくておそらく指針に基づいて対応してきたと思われるが、なぜ会規的な規程で制定されなければならないのか、指針とか、ガイドラインでは足りないのか、(4)過去の処置請求の具体的内容について教えて欲しいとの質問がなされた。これに対し、柳瀬副会長から、(1)過去に処置請求そのもののほか善処方依頼を含めると10件程度あり、各弁護士会毎に対処され、会長談話を裁判所に届けたケースもあり、日弁連にあがってきたものについては、日弁連会長より弁護士会宛に善処方を要望する文書を出したことがある、(2)改正刑訴法は、内容の形式性が増したことから処置請求が増加することが懸念され、そのため規程を整備する必要がある、(3)ガイドラインにすると弁護士会によっては規程を制定しない場合も出てくるが、調査や対処結果がバラバラとなり、対象弁護士に対する不利益処分なのに適正手続が欠けることになる、(4)具体的内容については、1)日弁連宛の善処方要望があった件は、日弁連より各弁護士会に対し、このようなことがきたということで参考のために送付したこと、2)ハガチー事件というのがあり、日弁連宛に最高裁より善処方要望があり、東京弁護士会綱紀委員会に回付されて人権委員会で調査をし、懲戒不相当という結論に至ったという事案である、3)東大事件で、東京、第二東京、名古屋(現愛知県)、大阪等に対し、適切な処置をとるよう要望があり、処置が何らなされずに終わった、4)昭和46年に鹿児島地裁の出入国管理令の違反で大阪弁護士会宛に処置請求があり、常議員会では調査処置をとらなかった、5)札幌で2件あり、常議員会での調査のうえ当該弁護士の行為は遺憾である旨の決議と、口頭で注意をする旨の決定がなされたとの答弁がなされた。


吉田孝夫会員(宮崎県)より、弁護士活動を萎縮させるような規定を会則ではなく、会規で決めることができるのかという質問がなされた。これに対し、柳瀬副会長から、当該規程上、弁護士に対して行う助言、指導は、弁護士会の弁護士に対する指導、監督権に基づくものであり、懲戒に付すというのは、懲戒手続のことで弁護士法に基づき厳格に会則に則っていることから、当該規程を会規でできるというのは、当然である旨の答弁がなされた。


熊野勝之会員(大阪)より、(1)刑訴規則第303条に迅速な進行を妨げた場合と規定されているが、どのような場合がそれにあたるか想定される例を10個挙げて欲しい、(2)国際基準と我が国の批准している人権規約との整合性、適合性をチェックされたか否か、されたとすればどの機関で何時されたか、(3)弁護士会の審査は、実質的に何時間くらいかけることができるのか、審査にあたる人数は何人か、(4)年間何件位処置請求があると予想されるか、(5)処置請求に対処するマンパワーをどの位必要と見ているのか、(6)処置請求と法廷秩序維持法との関係を裁判所はどのように考えているのか、裁判所と討議したことはあるか、討議内容、日弁連としての考えを聞きたい、(7)自由権規約の国連の解説である一般的意見13を検討したか否か、(8)日本政府が出した報告書に対する国連の最終見解は検討されたか否か、(9)国連の弁護士の役割に関する基本原則を検討したか否かとの質問がなされた。これに対し、柳瀬副会長から、(1)例を挙げても意味がない、(2)迅速と公正な裁判の関係については、質問者の指摘のとおりであるが、問題は、処置請求がなされた場合、それが訴訟指揮に問題があるのか、弁護人の行為から発生するものなのかということを十分に吟味をする必要がある、(3)マンパワー等の問題は、処置請求のなされた事案毎に全く異なり、一概に何人で何か月という回答は困難であり、調査が必要である、(4)処置請求は、懲戒とは必ずしも即結びつく制度ではなく、そうした処置をするかどうかを弁護士会に要求してくる制度であり、弁護士会においては、綱紀委員会や懲戒委員会ではなく、常議員会もしくはそれに代わる機関、弁護士会が定めた機関が行うことになる、(5)自由権規約第2条、第14条について、直接検討はしていないが、迅速性と公正との関係は十分に検討した、(6)法廷秩序についても裁判所に見解を質したことはない、(7)質問(7)から(9)までは、いずれも本件では検討していないとの答弁がなされた。


遠藤憲一会員(東京)より、(1)平成17年6月24日の読売新聞における日弁連のコメントと規程案第1条の目的とは違っているのか、同コメントは正しいのか、(2)調査対象とされた弁護士には、調査に応じる義務はあるか、代理人を選任できるか、代理人の人数、資格に制限はあるか、根拠規定は何か、意見陳述は、処置が決まった後だけか、その都度判断することは非常にあやふやではないか、(3)対象弁護士は公判記録を調査委員会に出すことができるか、刑訴法第281条の4違反になるか否かについて質問がなされた。これに対し、柳瀬副会長から、(1)について、第1条の目的どおりであり、コメントが正しいか否かは、質問者が判断すべきである、(2)について、義務ではなく、代理人をつけることは当然であるが、どのような代理人を選任するか、弁護士以外の者がなれるのかということは、調査の段階で選任を見た上で判断することになる、意見陳述は、意見を聞いた上で最終的に処置請求をするかどうかを判断するということになる、(3)について、公判調書も当然閲覧することになる(第3条第6項)、具体的に係属する事件についてなされた処置請求であるから、違法性がないとの答弁がなされた。


武内更一会員(東京)より、(1)昨年11月1日に施行された刑訴法の規定につき、全会的な反対、抗議、そして立法阻止のための活動をしたか否か、(2)第6条第2項は、具体的にどういう場合か、弁護士会に聞く意見は何か、(3)第7条について、調査委員会は常設するのか。委員はどのように選任するのか、特に外部委員を入れるのか、(4)第8条第4項において、3か月という基準を置いた理由、その例外として延長する場合、対象弁護士の権利か、調査委員会が一方的に決めるのか質問がなされた。これに対し、柳瀬副会長から、(1)日弁連の対応は、ファックスニュース、日弁連新聞等で会員にお知らせしたとおりであり、このような規定を置くことについては内容的に反対してきた、(2)第6条第2項の具体例として、小さな弁護士会の大多数の会員が共同弁護を組んでいるような事件があって、その弁護士会自体で処置請求について調査をすることが公正さを疑われる場合、当該弁護士会で役員が調査委員になると決められていて、役員の何人かが当該弁護人になっている場合など、当該弁護士会に事案を送付することが処置請求の公正さを疑われるような場合が考えられ、意見を聞いて弁護士会が自己に事案送付を希望しても、日弁連はそれに従う必要はなく、独自の判断で行う、(3)調査委員会については、執行部としては、常設機関とし、各ブロックから1名、あるいは大弁護士会の東京、大阪、愛知県等からは2名というような形で配分して公正な調査ができる機関をと考えている。外部委員については全く考えていない、(4)第8条については、現に係属中の事件に重大な影響を及ぼす可能性があるという意味で、早期に結論を出すことが望ましく、被告人の迅速な裁判を受ける権利を妨げないためにも適切な期間内に結論を出す必要があり、また、原因が複雑であり、長期の調査をする必要がある場合に、調査委員会において事案の判断をしつつ決定するとの答弁がなされた。


熊野勝之会員(大阪)より、裁判官、検察官に対する弁護人の反対尋問権も保証されるか否か質問がなされた。これに対し、柳瀬副会長から、調査は裁判そのものではないので、反対尋問は行えない旨の答弁がなされた。


新穂正俊会員(埼玉)より、提案理由中の公平さ・公正さ・適正さとは、誰から見てのそれなのかとの質問がなされた。これに対し、柳瀬副会長から、誰が見てとの観点よりも、むしろ公正・適正な裁判という概念であると理解して頂くよりほかない旨の答弁がなされた。


長谷川直彦会員(東京)より、(1)証拠の目的外使用にあたらないとの回答であったが、最高裁、法務省と摺り合わせて統一見解という形で回答しているのか、(2)日弁連としては、刑訴法改正に賛成していたわけではないと回答されたが、何故にかつての刑訴法改正や弁護人抜き法案と同じ態度を取らなかったのかとの質問がなされた。これに対し、柳瀬副会長から、(1)については、実質的に違法でないと判断している、裁判所とは協議していない、(2)については、会内合意に基づいて意見を形成し、改正に臨んできたのであって、かつてと同じ運動をしたと言っている訳ではない旨の答弁がなされた。


続いて、第1号議案について討論に入った。まず、森下弘会員(大阪)より、賛成の立場から、「大阪弁護士会では、法廷委員会において、既に昭和58年には法廷委員会運営準則として本規程案と同様の規程が制定され、その後平成6年から、刑事弁護委員会が同準則を引き継ぐ形で、刑事弁護委員会法廷問題運営準則という形で制定され、引き続き運用されている。刑事弁護委員会は、不適切事案の一掃に努めてきた。弁護士会が推薦する弁護人は、適切な弁護活動を行う人でなければならない。処置請求の内容は、弁護人と裁判所とが鋭く見解を対立させる場合が想定されているが、弁護活動が正当なものであるかどうかを守りきるには、弁護士自治以外なく、適正な実体規定と手続規定が整っていなければならない。会内研修のさらなる充実、実体的な判断基準や対向する理論を確立、構築すると同時に、適正な手続を整備し、不当な処置請求につき、それが正当に排斥されたというためには、その適正な手続によって審理がなされなければならない」旨の意見が述べられた。


森川文人会員(第二東京)より、反対の立場から、「私は、横浜事件の弁護団に加わったが司法権力も権力であり、自分に不都合な訴訟記録は自ら消却、隠蔽する。現在の検察庁ですら、横浜事件の審理を公開の法廷で行うことすら嫌っていて、反省が見られない。司法権力は、弁護士が闘う姿勢を示し続けなければ、図に乗って強制的に訴訟を進めてしまう。刑訴法第278条の2、第295条自体は、弁護権に対する過度の規制であり、弁護士及び弁護士自治を信頼していない証であり、改悪である。非常識な裁判官が行う処置請求に従うことなどできない。弁護士自治は、権力と対峙してこそ意義がある。私は、無罪判決を3件経験し、今も無罪を争っているが、無罪を得るに至る道筋は、迅速に訴訟を進めたり、裁判所に迎合することではなく、徹底的に闘うという姿勢を示し、裁判所を追いつめなければならないのが現実であり、刑事裁判における先輩弁護士から引き継いできた唯一の正しい姿勢である。」との意見が述べられた。


高島剛一会員(熊本県)より、賛成の立場から、「処置請求は、迅速な裁判、公正な裁判に資するために制度化されたと考えている。そうであれば、弁護権を十分に行使し、適正な裁判が行われるためにも裁判所の処置請求に対処するため、弁護士会及び日弁連の会内手続は整備しておくことが必要である。熊本において、無罪を争う熾烈な事件で、弁護士がなかなか出廷しないで裁判が非常に空転し、裁判所が弁護士会に対応を要求したが、弁護士会も手続ができないということで長期化し、被告人自身に非常な不利益を与えた例がある。弁護士会及び日弁連の会内手続を整備して、いかなる事案にも対応できるように最低限のルールをつくることは必要である。」との意見が述べられた。


小山香会員(埼玉)より、反対の立場から、「埼玉弁護士会では、2月25日、臨時総会を開き、第1号議案につき執行部として反対の提案をしたところ、賛成110名、反対28名であり、すべての意見は、処置請求は悪法であるということで一致した。主な意見として、悪法をできるだけ発動させないように受け皿を作ってはならない、50年以上処置請求に対する規定は置いていなかった、悪法と認めつつ迎合する会規をつくるべきではない、弁護を制御される弁護人の立場から、係属中の事件につき弁護活動を続けながら、3か月の間に調査され、自分の意見を述べるということに耐えられるか、第3条は弁護活動の妨害であって調査すべきではない、却下の規定がない、本当に真摯に被告人の立場に立って活動している弁護士に対する制裁であるという意見があった。先ほどの質疑で、自由権規約を一切検討していない、立法事実がないことが明らかになった。埼玉弁護士会としては、反対票を投じる所存である。」との意見が述べられた。


山田庸男会員(大阪)より、賛成の立場から、「一般会員の立場から意見を述べると、ある会員が処置請求を受けた場合、取扱規定の有無により対処方法が異なると、場合によっては会員を孤立させる危険性もある。取扱規定がなければ、対象会員の個人的な問題となってしまう可能性があり、弁護権の確保は、弁護士会全体の問題であることを裁判所に示すためにも、あらかじめ対処方法を規定するべきことは当然である。本規程案の中に、不当な訴訟指揮に対して弁護士会が制度として意見を表明できる旨定められており、これを制度化することの意義は誠に大きいと考える。先ほど、大阪弁護士会の実情が紹介されたが、会員の弁護権を守るために周到な準備をしていたことが伺える。また、ガイドラインの設置で十分である旨の意見もあるやに聞いているが、各弁護士会の判断に委ねた場合、処置請求の対処の手続が異なることが予測される。どこの弁護士会でも同じような手続で、同じような公正かつ適正な手続で妥当な結論が出されるように、日弁連で取扱規程を設けることの必要性は高い。裁判所の逸脱した訴訟指揮には、弁護士会を挙げて断じて許さないという気概を示す意味でも、この規程を整備するべきである。」との意見が述べられた。


新穂正俊会員(埼玉)より、反対の立場から、日弁連、弁護士会がサポート態勢をつくることが必要であるところ、処置請求は、不適切弁護を対象にしているのではなく、弁護権を行使しようと強い意思を持っている弁護士が対象となる可能性が非常に強く、本規程案は、全く逆方向に動いているものであるとの意見がなされた。


熊野勝之会員(大阪)より、反対の立場から、弁護士法第56条の品位を損なうという概念と、刑訴規則の迅速な進行を妨害するという概念は範疇が違い、公正な裁判を受ける権利を保障する立場から遅れて弁護活動をした結果、それが迅速な進行を妨害すると裁判所から評価されることが品位を汚すことになるのはおかしく、また、自由権規約など各種国際規約が全く考慮されておらず、これらに反し、一般に認められた基準・倫理に対する極めて特殊な基準による制約であり、本規程案は、弁護士に対する治安維持法にも匹敵するから、執行部は、この議案を取り下げて頂きたいとの意見が述べられた。


澤野正明会員(第一東京)より、賛成の立場から、「従前、処置請求に関する定めは刑訴規則第303条のみであったが、改正刑訴法によって、出頭在廷命令違反、尋問制限命令違反に関する処置請求が付け加えられ、裁判所の処置請求がなされる可能性が高くなった。このような状況において、会内手続を定める必要性がある。そして、とるべき処置について何ら規定がなければ、弁護士自治の観点からも制度の不備と言わざるを得ない。また、ある弁護士会は規程を整備し、ある弁護士会は整備していないというのは好ましくないことから、日弁連が統一的に規程を策定したほうが良い。また、処置請求の対象となった弁護士のために弁護権擁護及び適正手続の保証の見地から会内手続を整備する必要がある。これは、恣意的な手続であってはならないからである。今まで処置請求に対する規定がなくても不都合ではなかったという反対意見があるが、日弁連は、昭和53年11月には、理事会の議を経て弁護士自治の問題に関する答申書を発表し、その中で刑訴規則第303条第2項の処置請求を受けた場合の指導・監督についてとして、具体的な提案を行ったという経緯があり、本規程案のような内容の提案は今回が初めてではない。第一東京弁護士会の会員で、平成16年度に国選弁護事件において第1回公判期日に出頭しなかった者がおり問題となったが、取扱規程があったとすれば、会員も慎重適切な弁護活動をしたのではないかと思われ、一般予防的見地からも処置請求に対する規程は制定したほうが良い。本規程案によれば、原則として所属弁護士会において対処することになっており、弁護士会の自主性・自治の尊重の観点から適切な定めである。また、裁判所の訴訟指揮や検察官の訴追活動に問題がある場合には、これに対する意見を付することもできるなど規程案自体整備されたものになっている。」との意見が述べられた。


鈴木達夫会員(第二東京)より、反対の立場から「刑訴法改正は、どう読んでもとてつもない改悪であり、治安維持法である。改悪であることがはっきりしたことから、とるべき態度として、この改悪に絶対に反対し続けることだ。刑訴法改悪に日弁連を挙げて反対をした事実はなく、各弁護士会に意見照会したこともない。刑訴法の現場で闘っている人達の声を改めて反映させて、廃案に向かって闘うべきである。日弁連が毅然とした反対の立場を貫いたことによって、実質上空文化できた例はいくつもある。例えば、刑訴規則第303条第2項、簡易公判手続などである。弁護士会が裁判所の処置請求を跳ね返す根拠規定になるんだということを盛んに言っているが、そんなことは書かれていない。第8条第2項、第9条は、無意味、無効な規定である。」との意見が述べられた。


川村理会員(東京)より、反対の立場から、「反対理由を端的に言うと、本来不当なものとして評価すべき制度を、弁護士会が積極的に評価し、受け容れたことを意味するからである。本規程により処置請求が誘発されることが心配である。現行刑訴規則第303条第2項が成立してから、弁護士会は50年以上前から対応を迫られてきたが、大阪弁護士会以外は、処置請求に対応する規程を置かないという態度を維持し、その結果、10件も満たない数で抑えられてきたものと思う。これは弁護士会が対応規程を置かなかったことの大きな成果である。いろいろな事例を自分でも調べてみたが規定がないことによって不都合があったという事例は一切ない。本規程の不必要性を認める立法事実ではないか。本規程案の内容で、処理期間を3か月としている点や処置の在り方として助言または勧告という領域を設けている点は、かつてのいわゆる処理要綱案と瓜二つであり、弁護人抜き法案当時の議論の成果が反映されていない。今回の執行部の提案が通ることになれば、戦後50年以上にわたって日弁連が築いてきた歴史的地位が180度転換され、裁判所の御用機関化するも同然となる。」との意見が述べられた。


佐藤昭夫会員(第二東京)より、反対の立場から、反対の方々は、実際の刑事弁護の体験から発言されているのに対し賛成の方は具体的な反論をなされておらず、弁護士は社会生活の医師であり、病気が現在どのような状況の中で発生しているのか十分検討する必要があり、どういう薬を投与するのか、どんな副作用があるのか、その薬を賛成できるかが問題であるから、採決を強行するのではなく、今回は採決せずに、討論を続行することを求めるとの意見が述べられた。


長谷川直彦会員(東京)より、反対の立場から、「今回の刑訴法改正の眼目は、公判前整理手続、期日間整理手続である。山形地裁米沢支部では初公判から8日後に結審して、求刑以上の判決が、東京地裁では、証拠調べ2日間で結審から1週間後に無期懲役が、仙台地裁では、初公判から15日で懲役16年の判決が出されている。私が扱った事件は、短期間であるうえに、午前10時から11時15分位まで論告・弁論、同日の午後4時半に判決があったが、判決が約1時間であり、きれいに文書化されて完全に何かを朗読しているというものであった。これは公判が終わる前に既に全部判決ができていたということであり、公判は完全な儀式になっている。著名でたくさんの論点のある事件を公判前整理で行えば、とてもではないが弁護の名に値しないものしかできず、弁護士がこれに抵抗するのは当然であるが、それを強権的に抑えることを担保するのが今回の処置請求ではないか。日弁連が反対運動を行っていたら、こんな法改正ができたかわからず、裁判所、法務省、検察庁と一体となって刑事弁護をつぶそうとしていて無責任である。」との意見を述べた。


村崎修会員(第一東京)より、反対の立場から、「私は、否認事件もかなり経験しており、現在、2件やっているが、私の経験から、今の裁判所は、本当に真実を究明していくというようにはなっていないことは、我々弁護士の間では公知の事実になっている。弁護活動と訴訟指揮がぶつかることはままあり、裁判官に対する忌避申立てを考えたり、検察官に対し苦言したこともあるが、刑訴法改悪、憲法改悪、小泉内閣の問題が全部繋がっていると思う。処置請求に対し、日弁連がどういう対応をとるべきかということは、やはり弁護士を信用するかどうかだと思う。日弁連は、我々の味方として個々の弁護士を応援して頂きたい。処置請求に追随して規則を日弁連で制定することは、私に限らずどの弁護士もおかしいとの感情が湧くのは自然である。ぜひ私がみなさんに訴えたいのは、本当にこれでいいのか、正義を実現するために弁護士になっているのだから、本規程案は容認できない。」との意見が述べられた。


遠藤憲一会員(東京)より、反対の立場から、「日弁連の刑事弁護センターではこの元の案で否決している。処置請求が新設、増強された狙いは、改悪された刑訴法による超スピード結審のための訴訟指揮を弁護士に押しつけて屈服させるための制度である。公判前整理手続が始まって、聞こえてくるのは弁護人の悲鳴ばかりであり、検察官は凱歌をあげている。弁護権無視の過酷な審理スケジュールで検察官の言いなりの重刑判決が出されており、日弁連の責任は極めて重大である。刑訴法改悪によって、弁護人が徹底的な抵抗をしなければ、まともな弁護活動ができない事態にまでなってきていて、抵抗する人を見越してつくられたのが処置請求である。必ずしも重大事件とか、公判事件に限られない。こんな処置請求などという刑訴法の廃止こそがまず先決である。本規程案は、弁護権を守るものなど何もない。代理人の選任規定もなく、一方的な調査対象である。調査委員会が個別事件の弁護活動の当否を判断することは不可能である。処置請求がされたら、弁護士会の刑事弁護委員会、関連委員会でじっくり時間をかけて議論をすれば良い。改悪刑訴法の廃止のために日弁連は全力を挙げるべきである。」との意見が述べられた。


大口昭彦会員(第二東京)より、反対の立場から、「この規程につき、各会でもう一度議論をして、再度、総会を開いてこの問題を検討するという手続を行って頂きたい。賛成意見は、手続を整備することが対抗することになると言っているが、これは空論であり、今までも個々の不当な事例に対して、弁護士会が意見をまとめて、その都度、裁判所、あるいは法務省にたたきつけてきた。裁判の長期化は、裁判員でなかったからとか、規則がなかったからというのではなく、証拠が開示されない、あるいは、刑訴法第321条の濫用ということによる。これまでの無罪確定事件が短期間で、無罪判決が出るとは思われない。アリバイ証人を捜し、陳述書を書いてもらう、法廷に出てもらうのに時間と労力がかかることは、みなさん経験済みである。どんな事件でも2週間であげてしまうこと自体、無理であり被告人のことを考えていないことから、弁護人は当然闘わなければならないが、発言禁止され、従わなければ処置請求されてしまう。弁護士会が真っ向から反対せずに、手続規定をつくることが闘うことだという考え方が間違っている。弁護士会自体がこういう裁判を許さないんだという姿勢を固め、はっきり打ち出すことが何よりも必要であり、問題はそこからしか始まらないことを強調したい。したがって、私は反対だし、拙速的に決議することにも反対である。」との意見が述べられた。


以上の他に討論を希望する者がなかったので、議長は討論を終局し採決に入る旨を宣言した。


続いて第1号議案「裁判所の処置請求に対する取扱規程制定の件」の採決に入った。


第1号議案についての裁決の結果は、以下のとおりである。


出席会員総数(代理出席・会出席含む。) 8,161名
賛成 6,288名
反対 1,804名
棄権 69名

以上の結果、第1号議案は可決された。


[第2号議案] 開示証拠の複製等の交付等に関する規程制定の件

議長は、第2号議案として、「開示証拠の複製等の交付等に関する規程制定の件」を議題に供する旨宣し、星徳行副会長(第一東京)から議案の趣旨説明がなされた。提案要旨としては、刑訴法一部改正により新しい証拠開示制度が導入され、検察官からの開示証拠の範囲が従来よりも拡げられたが、複製等の流用によって第三者の名誉やプライバシーを侵害したり、罪証隠滅や証人威迫を誘引するなどの弊害を発生する可能性があること、事件記録の保管又は破棄については、弁護士職務基本規程第18条に規定されているが、事件記録の利用ないし使用については直接言及しておらず、注意義務の内容につきできる限り具体的に示す必要があること、刑訴法第281条の3が新設され、審理準備目的での利用のうち複製等の交付等について、弁護士職務基本規程第18条を補完・補充する趣旨で弁護士の行為規範を明確にする必要性が高くなったこと、被告人の防御権並びに弁護人の弁護権の保障を十分なものとすると同時に弁護士の信頼を確保することにあることから提案する旨の説明があり、特に重要な第3条、第4条の内容について説明を行った。


続いて、第2号議案に関する質疑に入ったが、まず、秋山知文会員(東京)より(1)被告人への複製交付は従前行われていたが、新たに義務まで課す意味は何か、(2)議案書によると、第3条の義務が弁護士職務基本規程の行為規範、あるいは行動指針にすぎないと説明されているが本規程案は新たに義務を課したのか、それとも確認規定にすぎないのか、(3)本規程案では被告人への刑事記録の交付が自由であることが特に規定されていないが、それは何か理由があるのかとの質問がなされた。これに対し、星副会長から、(1)新たな義務を課するものではなく、被告人の防御権、弁護権の保障のために差し入れが禁止されるわけではない。政府答弁でも確認している、(2)改正刑訴法で被告人が開示証拠複製を使用目的以外に使用した場合に罰則が課せられる可能性が生じていることを踏まえて、弁護士に新たな注意義務が求められることに対応しようという側面も有しており、被告人の利益を守るための職務上当然の規定であるとの答弁がなされた。


石崎和彦会員(第二東京)より、例えば、松川事件の広津和郎氏の場合のように、裁判所において取り調べ済みの捜査記録を報道機関などに資料として提示するなど、社会に向かって不当性を訴えていくことは、第4条に該当するか、また、第4条にただし書として、違法性がない旨を入れて頂きたいとの質問がなされた。これに対し、星副会長から、十分に理解のできることであるが、例えば、強姦事件の被害者の調書、有名人のプライバシーを記載した調書、企業秘密に属することが記載された調書などのように、公開の法廷において調べられた記録であれば、目的を問わず、どんな使用をしても懲戒の対象にはならない旨明文で言い切ってしまうことは賛成し難いが、被告人の防御のため、法廷で取り調べ済みのもの、現実に第三者の秘密、プライバシー、名誉が侵害されたのでなければ、多くの場合違法性が阻却されるであろうことは、刑訴法第281条の4第2項で考慮すべき事項として盛られていて、無罪を勝ち取るために闘っている弁護人が懲戒の対象になることは、例外的なケースであると思われ、ただ、自主判断事項なので、弁護士自治により我々が懲戒手続の中で判断することになるとの答弁がなされた。


佐藤誠一会員(第二東京)より、署名運動、世論喚起は、審理の準備のための行動と思っているが、執行部の見解を改めて聞きたいとの質問がなされ、続けて石崎和彦会員(第二東京)より、自分は、準備にあたらないと思うので、違法性阻却事由なのか、そもそも違法ではないのか明確にして頂きたいとの質問がなされた。これに対し、星副会長より、検察官から開示された証拠であることを前提に、審理準備のため、あるいは、資料収集、あるいは、理解を求めて証拠を求めるというのであれば、あくまでも審理準備の範囲の範疇に入ると理解するが、審理準備のためでない場合は、本規程の射程の範囲ではなく、具体的な総合考慮の中で判断することになるとの答弁がなされた。


弓仲忠昭会員(第一東京)より、広津和郎氏の松川裁判は、今回の規程案に違反するのかしないのか、刑訴法の目的外使用にあたるのかあたらないのかとの質問がなされた。これに対し、星副会長から、広津氏の発表したものについては、そういった努力が実ってその後の展開を開いたという意味で、準備にあたると解釈しているし、正木氏が調書、法医学鑑定書を引用して出版活動されたことも審理準備の範囲であると理解しているとの答弁がなされた。


阿部潔会員(仙台)より、当然認められていいはずの目的内利用について、ここまで細かく規定することの意味がよく理解できないので、もう少し説明して頂きたい、また、弁護士職務基本規程第18条に「利用」という言葉を入れれば良いのではないかとの質問がなされた。これに対し、星副会長から、「立法事実の一事例として、13歳未満の少女を強姦した被告人の弁護人が証人予定者である少女に対して、非常に細かな供述調書、あるいはいろんな手紙等を流したことが公になった事例がある。刑訴法第281条の3につき、具体的にどのような場合に注意すればよいかを示す必要がある。また、弁護士職務基本規程第18条に「利用」という一言を入れなかったという点については、利用の場合、他人のプライバシー、秘密に触れなければならない事態が当然生じるからである。第三者に対する流出の危険が非常にあることから、改めて具体的に規定する必要があった。」との回答がなされた。


臼井一廣会員(東京)より、必要な行為をしている場合でも検察官から本規程案に違反するというようなことをちらつかされたり、その責任がないことが確定するまで不安定な立場に置かれるなど、刑事弁護が萎縮する心配があるので、このようなことに対しどのような配慮がなされるのかとの質問がなされた。これに対し、星副会長から、「行為規範を明確にすることが検察からの懲戒請求の可能性を大きくしたり、弁護活動を萎縮させるとは考えていない。刑訴法第281条の3以下の制定過程で、原案では目的外使用全般について刑事処罰の対象とされてきたが、正当性あるいは相当性の判断は、一義的に決まるものではなく、弁護人が相対峙している検察官から刑事処罰を求められる危険にさらされることはどんなことがあっても避けなければならない。そこで、日弁連は、相当な目的外使用があった場合の対処は、弁護士会の懲戒手続に委ねるべきで、刑事処罰の対象とすることは断固反対するということで阻止をした。不当な懲戒請求などには萎縮することなく、堂々と対処していくことが必要である。」との答弁がなされた。


小林修会員(愛知県)より、(1)再審は、審判が非公開が多いことから、公開法廷だということでは解決ができない問題があり、広く国民に事件の冤罪性を知って頂いて、情報資料などを収集し、力を貸して頂く必要があって、松川事件の広津和郎氏の執筆、布川事件での佐野洋氏の「檻の中の詩」、小田中聰樹教授の「冤罪はこうして作られる」などが有名であり、名張事件では、江川紹子氏に「六人目の犠牲者」という本を書いて頂いたが、江川氏には、開示証拠を含めて全記録を見て頂き、その上で関係者に取材しているが、弁護人がこのような活動をしても本規程違反にはならないか、江川氏に迷惑はかからないか、(2)再審開始を勝ち取るためには、支援者などに対し開示証拠やその引用を示して、情報資料の収集に力を貸してもらうことが必要であるが、名張事件もニッカリンという農薬を入手することができ、開始決定の大きな力となった、今後もこのような活動をしても本規程違反にならないか、(3)再審開始のためには新証拠が必要であり、重要なものとして鑑定があるが、鑑定人が開示証拠を引用した鑑定、あるいは、開示証拠の一部を研究論文に発表、出版することが本規程違反にならないか、(4)規程案第1条の「弁護士に対する信頼を確保する」というのは、防御権、弁護権を制約するものではないか否か、(5)規程案第3条、第4条は義務規定となっているので、義務違反となると懲戒となってしまうのか、(6)規程案第4条第2項では、返還・廃棄・削除を求める必要があるとされているが、必ず返還や回収をしなければならないのかとの質問がなされた。これに対し、星副会長から、(1)江川氏にご協力頂いたのは、審理準備にあたると理解している、(2)刑訴法第281条の3は、弁護人、あるいは弁護人であった者、あるいは被告人を対象にしているので、江川氏が同規定の制約を受けることはない、(3)規程案第4条の適用をちゃんと対応していれば懲戒を受けることはあり得ない、(4)支援者のネットワークを通じて、情報や資料を収集するための弁護活動を行っていたことは審理準備に供するということではないか、(5)新証拠としての鑑定依頼は、審理準備のために当然であり、また、研究論文に発表、出版することは、審理準備のためと言えるか否かの判断がまず必要であり、仮に審理準備と関係がない場合でも、プライバシーの侵害、証人威迫などの弊害のおそれがない部分だということは、その判断でも考慮されるのではないか、(6)弁護人は、時として一般国民感情に反しても、被告人を擁護して弁護活動を続けなければならないことは、職責上当然であるから、防御権あるいは弁護権を制約するものではない、(7)規程案第4条第2項は、必要な範囲を超えて第三者に漏れないように配慮するという点にあり、返還とかは例示にすぎず、必要な範囲を超えて漏れないように配慮をしてくれということである、(8)規程案第3条、第4条に反したから即懲戒であるということではなく、その事由が懲戒に該当するほどの品位を害しているか否かという認定が必要であるとの答弁がなされた。


笠井治会員(第二東京)より、法科大学院における臨床系教育科目は、法曹養成制度の中でまさに理論と実務とを架橋する重要な位置づけであり、法科大学院の学生が開示証拠の複製を使用することが許されないとすると、法科大学院制度を壊滅させる効果をもたらすことから、法科大学院制度を今後育てていこうという気持ちがあるのか、それを前提に、法科大学院教育、とりわけ臨床系科目の教育において開示証拠を複製することは許されないと考えているのかとの質問がなされた。これに対し、星副会長から、法科大学院の学生については、臨床教育は大事であるが、司法修習生とは異なり、教育の意義、在り方、あるいは記録閲覧等の取り扱い、秘密・プライバシーの保護、あるいは当該学生の守秘義務違反とそれに対する大学の責任、これらの整備・検討が十分に行われて、議論が整理されるものと考えるとの答弁がなされた。


正木みどり会員(大阪)より、(1)弁護士職務基本規程第18条との関係であるが、提案理由の中でそれを補完・補充する趣旨となっているが、弁護士職務基本規程をつくるときに慎重な議論を行い、第18条に収まったのではないかと思っていたが、なぜ今あえてこれを入れるのか。(2)冤罪、無罪、不当起訴などについて、大部分は情報収集というよりは世論喚起でやっているのが実情であり、端的に情報収集が目的でない世論喚起でも大丈夫なのか、(3)第4条第2項は、単純に返してもらえというのではなく、使用の目的を超えて漏れることのないように注意しなければならないとなっているので、学者が論文を書く、鑑定人が書く、あるいは弁護士が論文を書く場合、そういうふうなことをしてもらっては困るというふうに、鑑定人や学者に頼むときに言わなければならないのかとの質問がなされた。これに対し、星副会長から、(1)弁護士職務基本規程第18条は、弁護士は、事件記録を保管または廃棄するに際しては秘密及びプライバシーに関する情報が漏れないように注意しなければならないという規定であり、その使用もしくは利用というのは、他に交付・提供するという場面を想定すると、やはり秘密あるいはプライバシーが漏れる場合があるだろうことから規定から省かせて頂いた経緯があり、そういった意味ではやはり補完するという意味で必要であろう、(2)世論喚起、あるいは支援のための集会でも、こういう開示された証拠を参会者に配布するのはどうか、やはり審理準備のためにということに該当するか否かを判断しなければならない、(3)鑑定者等にお願いする場合は、その情報の種類、相手方によっては、十分気を付けた方がいい場合もあれば、口頭で注意・配慮をお願いする場合もあるということで範囲を超えて漏れないようにお願いするということであるとの答弁がなされた。


松永和宏会員(沖縄)より、「(1)第2条第2号の複製と第4号の交付等の意義について、開示証拠の一部を開示調書の中から供述調書の一部を抜き書きするようなものをつくって、それを例えば支援集会等でパワーポイントとかOHPを作って集会の支援者に見せた場合、証拠の一部を記録した書面を提示したことになるのか。(2)ロースクールのエクスターンに見せる行為は、審理の準備等のために当たるか当たらないのか。他の法律事務所で修習している司法修習生が傍聴に来る際に、その前に記録を見せるのはどうか。(3)第4条は、結局審理の準備等のためではない場合にはどういう態度をとっているのか。審理の準備等のためであっても必要な注意をしなければ違反だというのであれば、そうでない場合には、正当な理由があれば違法性が阻却されるのか、何一つ定めていないということなのか。(4)目的外ではないところは一切定めていないのであれば、何で定めないのか。」との質問がなされた。これに対し、星副会長から「(1)供述調書の抜き書きを引用して集会で配布する場合、検察官から開示された調書をそのままそっくり記録したものも複製にあたると解する。(2)司法修習生に見せるのは審理準備にあたるか否かは既に回答した。準備という側面も場合によってはあり得るし、目的に正当性があれば違法性を欠く。(3)違法性の問題が本規程に関係するかという点は、刑訴法第281条の4第2項において違法性がない。(4)目的外の使用について、何か規定を定めるかは、今後の課題と承知している。」との答弁がなされ、続いて中村順英副会長から「(1)抜き書きを支援者に会場でパワーポイント等で示す場合、部分部分の内容を表示したものを幾つか提示したとしても、その部分部分そのものは複製そのものではないという考え方に立ちうると思う。これは、複写そのものではないという前提である。(2)司法修習あるいはエクスターンシップ等につき、純然たる教育修習目的100%で示すという場合は、形式的に審理準備そのものではないというのはそうだろうと思う。ただ、資料等を共に見ながら審理のために議論をする、討論をする、あるいはブレーンスターミング的なことを行うという場面はあり得るわけで、一概に審理準備目的に該当しないとは言えない。複合している場合には、審理準備の目的があるわけなので、そのこと自体で違法性を帯びることにはならない。」との答弁がなされた。


森下弘会員(大阪)より、今議論をしているのは目的内使用のときにどうするかを議論しているのであるから、もっと議論を整理して頂きたいとの意見がなされた。これに対し、議長より、森下会員の言った趣旨で理解をし、質問を受け止め、それに対する執行部の回答を待っているという状況であるとの答弁がなされた。


中本源太郎会員(東京)より、「この規程は確かに目的内使用の規定であるが、目的外なのか目的内なのかの質問は当然あっていいであろう。法科大学院生に見せることの適否の質問も当然あって然るべき。限界事例みたいなことは当然あるから、この規程の適用のある目的内使用とはどういうことなのか、当然明らかにされるべきだと思う。司法修習生については、日弁連の配布資料では、目的外使用に該当するとはっきりとうたっている。支援者への交付について、この資料には限界事例として、目的外使用に当たる場合もあり、どちらかといえば目的外使用に当たるとあげている。ここは、支援者に対していろいろな資料を配布することが目的外使用にあたるかどうかはっきりさせるべきである。それを前提にして簡単な質問をしたい。(1)まず、秘密とかプライバシーとは、一体何を指して言っているのか。検察官から開示された証拠の中で、秘密やプライバシーに該当しない証拠というものはあるのか。まず、開示される証拠の中でプライバシーや秘密に当たらないものがあるのか、あるとすればどういうものなのか、はっきり説明して頂きたい。(2)次に、秘密・プライバシーに関する情報の取り扱いに配慮しろ、注意しろとあるが、配慮とは何か、注意するとはどういうことか。この注意の中には、配布資料を渡すときに念書を取れというのか。内容証明郵便で通告するのか。確定日付を取るのか。口頭で足りるのか。どんなことをすれば注意したといえるのかはっきりして頂きたい。(3)第3条第2項に目的外使用の罰則、規定の内容を説明しなさいよとなっているが、どこまで説明すれば良いか。弁護士でも分からないことを被告人にどのように説明すれば良いか。明瞭にお答え願いたい。(4)証拠開示で、開示された証拠が拡大されたと言っているが、この証拠開示の条文は、公判前整理手続の中の条文であり、それが適用されない一般の事件については、従来と全く同じはずなのに、証拠開示範囲が拡大されたと理解して良いか。」との質問がなされた。これに対し、星副会長から「(1)ここでいう秘密とは、弁護士職務基本規程第18条を補完するという意味では、その秘密・プライバシーという意味は同じ、あるいは弁護士法・会則のそれぞれの第23条でも同じである。いわば一般的に知られていない事実であって、本人が特に隠しておきたいと考えるような性質の事項であり、主観的、なおかつ一般の人の立場から見ても秘匿しておきたいという事項、そういう意味で主観的・客観的な部分で肯定するその秘密というふうになると思う。プライバシーに関しても私生活をみだりに公開されない、そういった法的な権利というふうに理解をしている。これに対し、公知の事実で、一般に知られている事実で、逆に隠す必要のないようなことといったものが秘密ではないと理解している。(2)被告人に交付する際の注意の具体的な方法については、被告人は当事者であり、その他の関係者とは明確に立場が違い、防御権を有する。そういった立場を考慮して、なおかつ、第三者に流出の可能性のあることを喚起して十分に取り扱いに配慮されたいという意味で、逆に言うと、目的外使用にならないように注意を促すこと、こういう規定で、かつ第2項においてはそれが刑事罰にも該当するという新たな規定なので、弁護人としては、その助言をする義務ということである。(3)支援集会において記録を配布することは、審理準備目的にはおよそ遠いと申し上げた。(4)注意の内容は、個別的・具体的に判断されるべきことであり、一概にこうすればよいというものではない。正確性を期するために、表現としてはこのような規定にさせて頂いた。」との答弁がなされた。


友部富司会員(第二東京)より、質疑を終えて討論に入るべき旨の質疑終局の動議が20人以上の出席会員の賛成を得て提出された。


議長が動議の採決を議場に諮ったところ、賛成の圧倒的多数により質疑を終局し、討論に入った。


まず、小寺正史会員(札幌)より、賛成の立場から、「札幌で、今年の春ぐらいに、刑事事件の被告人が被害者宅に手紙を送ったことが非常に問題となり、批判的な報道がなされた。被告人への刑事記録の渡し方に工夫が必要であるとしても、このような報道がなされると若い弁護士にとってはなかなか心理的な制約が入ってくると思う。はっきりしたルールがあれば、この規程に従っているから大丈夫なのだというルールがあることによって、安心して弁護活動ができると思う。社会的に制裁を受けることは、弁護活動を萎縮させることになるので、萎縮効果を生まないためにも、正しい弁護活動は何なのだということを明確にしていくという意味で、この規程は必要だと思う。とりあえず、目的内についてだけでも定めておくことは非常に価値があると思う。」との意見が述べられた。


加藤健次会員(第二東京)より、反対の立場から、「(1)刑訴法第281条の4が目的外使用は罰するとか違法だと定めたからこういうものが起きており、これは大悪法であると思っている。ただ、その中で私達は、弁護士として被告人の利益を最大限守って、世の中に真実を訴えていくためには、やるべきことをやらなければならない。そのときに、弁護士会がどれだけ弁護活動や被告人の防御権の立場、裁判の公開という立場から、この悪法を発動させないか、適用させないかという見地から質問している。今回は目的内だからとりあえず決めてくれという問題ではないと思う。被告人も目的外使用であれば、刑罰対象になるのであり、冤罪を訴えるとき、被告人はできるだけ世の中に自分が何故無罪なのかを広め、こんなひどい証拠で起訴されたということを訴えるのであるから、その時に目的外か目的内かの議論も尽くさないでどうやって被告人にアドバイスできるのか。議論が詰められていない下でこういう議論がされていること自体、非常に問題だと思う。とりあえず目的内だけ規定をつくればいいという問題ではないと思うし、例えば、痴漢冤罪と言われる強制わいせつ事件などでも、今まで規定がなくても開示証拠の取り扱いについて、プライバシーの保護という観点で十分理解してやってきた。被害者調書は、今までだって出ているが、規定がなくて本当に弊害がいつも生じていたのか。そんなことはないと思う。弁護士としての良心や職業的な倫理に任せれば、それで今までやれたはず。弁護士職務基本規程ができているから、その範囲で十分である。賛成ということで来られた方も、目的外・目的内の問題を含めていろんな問題があることがわかったと思う。審理準備目的だから大丈夫だというのを鵜呑みにして被告人にコピーを渡して、被告人がこれを使って罰則適用されたら、執行部は責任をとれるのかという問題である。だから、一度提案を引っ込めて頂き、一から議論をして頂きたい。(2)自分の経験から、新刑訴で証拠開示の範囲がすごく広がって、その反面で今回の規程案ができているというのは、前提事実として間違っていると思う。検察官が開示しないのは、出したくないから出さないだけで、プライバシーが流出するおそれがあるからではない。(3)この提案理由で決定的に抜けているのは、裁判の公開や刑事裁判に対する監視、国民的な批判、報道の自由、国民の知る権利である。確かにプライバシー流出は問題であるが、日本の憲法の下での刑事裁判の鉄則は、公開の法廷で出された証拠に基づき判断し、しかもその判断について国民が十分批判・監視ができるような中で裁判をやるのが原則である。マスコミから見れば、弁護士から開示証拠のコピー等が取れないとなると記事が書けないから、報道機関から見れば、報道の自由、さらに国民の知る権利にかかわる大問題である。開示証拠の取り扱いの問題は、もともと刑訴法第281条の4が突然入ったためにこんなに苦労している。もう一度原則に立ち戻って議論をした上で規定をつくる。規定ができなくても、今までもプライバシーに関する証拠の扱いは、一人ひとりの弁護士の良心と倫理に基づいてやってきていて、特段大きな問題はなく、大いに議論して頂きたいということで、第2号議案については、今日は採決しないで継続討議をお願いしたい。」との意見が述べられた。


岩村智文会員(横浜)より、反対の立場から、「日弁連の刑事法制委員会の正副委員長会議全員一致で反対している。一番の問題は、執行部は、善意で簡単に言えば、何か文書をつくって被告人に渡したり関係者に渡しておけば弁護人は最終的に責任を負わないよというものをつくりたいのが本音だと思うが、とにかく弁護士が責任を負わないためには何らかの文書をうまくつくれと言っているだけのものをわざわざ規定でつくる必要があるのか、何故マニュアル化やガイドラインみたいなものにしておかないのか、大きな疑問がある。やはり一番問題なのは、刑訴法第281条の4の証拠等の目的外使用の禁止にある。これは、松川事件や冤罪事件などにおける訴訟に直接関与するものでない市民が証拠等を検討し、公正な裁判を求めて声を挙げていく活動を規制する狙いがある。目的外使用禁止を打ち破っていかなければならないにもかかわらず、日弁連が積極的にかかわってきた冤罪・再審等の事件における広範囲な市民に依拠した刑事裁判の取り組みを否定していることが、私が反対する第一の理由である。第2号議案の提案理由の16頁にあるように、これは明らかに複製等が転々とすることはよくないという発想に立っている。私たちは、学者ともこの条文で議論した際、学者より、資料に基づいて研究発表ができるのか否か、どうすれば大丈夫なのか言われずに、弁護士が責任逃れのためだけに注意してくださいなんて言われたら、学者としてどうなりますかと言われた。私もそう思う。鑑定だけではなく、刑訴法学者、刑法学者、憲法学者でも同様である。相手を困らせる条文である。刑訴法は、弁護人が国家と直接対峙する場であり、権力や証拠収集の力も持たない弁護士が、重大な事件になればなるほど多くの市民の知恵や力を得ながら訴訟に取り組むことが不可欠である。こういうときに、プライバシーと鋭く対立したり、秘密を暴露しなければならない場面が出てくる。それを暴露したときに裁判所や検察庁から追及されたときに守るのが弁護士会である。その人達と一緒に知恵を傾けて戦うのが弁護士会だと思う。これは、弁護士に対しての行動規範であり、ねばならないとしていることから、反射的機能として懲戒の可能性もあり、不利益となる。「秘密」など構成要件がしっかりしておらず、規定の仕方が曖昧なままで、弁護士に対して行動規範として押しつけてはならない。日弁連はここの一線は絶対に頑張るべきだというのが私の意見である。」との意見が述べられた。


三井義廣会員(静岡県)より、賛成の立場から、「この規程案は目的内の使用という場面に限った規定であることを大前提にしなくてはならない。検察庁は、証拠開示を積極的に進めようという考えにたっていないことは明らかである。そういう場合、プライバシーや秘密が口実として使われることが今後も十分考えられる。そこで、その口実を事前に排除しておくということに積極的意義があると考える。結論的に、これは弁護権と関係人あるいは被害者のプライバシー・秘密との調整の問題ではないかと思う。弁護権の行使が常にオールマイティではなく、その影に氏名、住所を知られたくないという被害者の要求もある。調整機能として、少なくとも弁護士会がプライバシー、秘密に配慮しているのだという立場を鮮明にすることは必要ではないか。」との意見が述べられた。


田中重仁会員(埼玉)より、反対の立場から、「改悪刑訴法を改めさせることが第一、第二に刑訴法第281条の4第2項の中身の具体化を日弁連が努力すべきものである。今回出された規程案、その説明、理由を見ても、納得できないところ、おかしいところが多々ある。まず、例えば、私は、医療過誤の裁判を多くやっており、医師との打合せをずいぶんやるが、関連すると思って説明したことが関連せず、関連しないと思っていたことが関連しているなど、専門家から見たら私たちの考えとは違うことが幾らでもあり、使用の目的を達成するために必要な範囲の判断を弁護士の判断でやってしまったら、その道の専門家がみたらおかしな判断になる。しかし、この規程案は、それを強いている。次に、使用の目的を達成する必要な範囲を超えない範囲についてだが、ある人のプライバシーに関連する情報を出さなければならないことは当然あり、駅頭で多くチラシを配布した後、それを回収・返還・削除など到底不可能であり、今回の規程案は、不可能を強いるのか、それは良いというのか分からない。埼玉弁護士会は、臨時総会を開催し、賛成2名、反対126名、ほぼ全会一致で反対することになった。この案については、撤回ということでお願いしたい。」との意見が述べられた。


吉田孝夫会員(宮崎県)より、反対の立場から、「第3条によると、被告人に複製等を交付する場合、弁護士がいろいろと説明をしなければならないが、これは弁護士に対して被告人を管理させるような規定であり、被告人と弁護人との関係を破壊するものでしかない。第3条は、私の理解によれば、被告人が刑訴法第281条の4の禁止規定を知らずに目的外使用をしてしまうことのないように、必ず弁護士が同条の禁止を説明することにして、被告人が私はそれを知りませんでしたと言わせないためと思う。もし被告人が目的外使用をした場合、弁護人と被告人とは利害が対立し、弁護人は説明をしないと懲戒処分になり、被告人はそういう説明を聞いていないと言わないと有罪になる。これは、刑訴法の規定そのものに問題がもともとあり、日弁連が下請けとしてこういう規程を置くことは、弁護人と被告人との関係を破壊し、刑事弁護ができなくなってしまう。」との意見が述べられた。


小野正典会員(第二東京)より、賛成の立場から、「この規程案は、目的内使用に関してシンプルに定めているにもかかわらず、論議が改正刑訴法の解釈にいっていて、混乱している。こういう改正法があったが故に目的内使用というのはこのように注意してね、という規定を弁護士会が持つことは必要であり、現実的に若い弁護士が活動の中でこの刑訴法改正の意味について必要以上に萎縮してしまうという事例があり、そのようなことがないようにこの規程を我々は持つべきなのだということをはっきりと認識すべきである。証拠開示の問題についても、今回の改正法で公判前整理手続の中で、類型証拠開示と関連証拠開示が肯定され、これまでの訴訟指揮における証拠開示ではなく、法律によって証拠開示が定められた。だからこそ、弁護士はこの規程を十全に活用して実績を積み重ねる必要がある。そうやって、この証拠開示規定が生きていく、他方でこの規程を設けて、我々の注意義務をきちんと自覚しながら弁護活動をやっていく。これこそが被告人の防御権を全うする道であると私は考える。」との意見が述べられた。


熊野勝之会員(大阪)より、反対の立場から、「今、若い弁護士のためにということが言われたが、私の経験からすると、若い弁護士もいろんな経験というか、ぶつかるわけだから、第2号議案があればいいという問題ではない。まさに目的外になるかもしれない部分についてどう対処するということが示されなければ、目的内の何かが示されたからといって問題は解決しない。刑訴法第281条の4は、自由権規約、憲法、あらゆる点で違法であり、それらを踏まえて刑訴法第281条を規定しなければならないのに、審理の準備に限定したことに根本的に誤りがあると思う。ただ、自由権規約第19条第3項にあるとおり、特別の義務及び責任を伴い、無実の人が死刑になるのを防ぐ目的と、ある人のプライバシーの問題、そういうものを慎重に考慮しなければならない。両方を比較衡量していくことがまさに我々実務家に課された課題であって、第2号議案をつくったからといって問題が解決するわけではなく、むしろ刑訴法第281条の4の違法性を覆い隠す危険性がある。そういう意味で、執行部は是非この提案を撤回していただくことを提案する。」との意見が述べられた。


中本源太郎会員(東京)より、反対の立場から、「まず第一に、第1号議案もこの目的外使用禁止もその刑訴法改悪の一環である。これを日弁連が容認し受け入れ態勢をとり、弁護士会が刑訴法改悪について、悪法として捉えて反対していくのではなく、そのことに触れなくて制度作りをしているというところに一番大きな問題があると思う。そして、目的外使用と目的内使用の管理は、裁判批判の封殺が目的であり、刑訴法改悪の狙いであろうと思う。目的外使用禁止がまさに裁判支援運動を封殺するためであることは明らかである。また、目的内使用も、被告人に対して渡した資料が外に流れ出ないようにコントロールをしなければならない役割を弁護士、弁護士会に果たさせようとしている。第1条に書かれている被告人の防御権及び弁護人の弁護権を保障するためにという目的がこの4箇条、5箇条の条項のどこにあるのか、欺瞞そのものであると思う。第二に、この規程案は、被告人との信頼関係よりも社会や世間、あるいは裁判所や検察庁との信頼関係を重く見ていると思われる。被告人に証拠を渡す際に、秘密・プライバシーが漏れないように気をつける、家族や支援者にも見せるな、下手すると刑罰を受けるぞと注意して、資料を渡さなければならないが、弁護人と被告人との信頼関係は、全く破壊すると思う。弁護人が逃げを打てるための規定である。第三に、弁護人活動は萎縮する。例えば、秘密、プライバシーの取扱いに配慮するように注意するというのは、構成要件が明らかではない。そういう意味で、弁護人は、被告人や関係者に供述証拠その他の関係証拠資料を渡す際に自ずと慎重になる。第四に、今回の法改正によっても開示される証拠は広がらず、むしろ、狭まる可能性すらあるのではないかと思う。だから、証拠が広がるからプライバシー等が漏れないように気をつけなければならないので規程を作るというのは、筋違いである。」との意見が述べられた。


冨田秀実会員(東京)より、討論終局の動議が20人以上の出席会員の賛成をもって提出され、討論終局の動議の採決に入った。


第2号議案の討論終局の動議についての採決の結果は、以下のとおりである。


出席会員総数(代理出席・会出席含む。) 6,571名
賛成 4,660名
反対 1,685名
棄権 226名

以上の結果、第2号議案の討論を終局した。


佐藤昭夫会員(第二東京)より議長不信任案が提出されたが、圧倒的多数の反対により、否決された。


また、石崎和彦会員(第二東京)から出された休会の動議は、討論終局の動議が成立して採決されたことにより、採決しないことになった。


第2号議案の採決に先立ち、梶谷会長より、各弁護士会への意見照会、委員会への照会、理事会において議論した上で、いろいろな方々の意見を入れながら成案として提案させて頂いている旨の発言がなされた。


続いて、第2号議案「開示証拠の複製等の交付等に関する規程制定の件」の採決に入った。


第2号議案についての採決の結果は、以下のとおりである。


出席会員総数(代理出席・会出席含む。) 6,358名
賛成 4,441名
反対 1,758名
棄権 159名

以上の結果、第2号議案は可決された。


[第3号議案] 法律事務所等の名称等に関する規程制定の件

[第4号議案] 外国法事務弁護士事務所の名称に関する規程制定の件

梶谷会長より、第3号議案「法律事務所等の名称等に関する規程制定の件」及び第4号議案「外国法事務弁護士事務所の名称に関する規程制定の件」を一括して議題に供したい旨の意見が述べられ、議長が議場に諮ったところ、異議がなかったことから、議長は、両議案を一括して議題に供する旨宣し、ただ、審議は一括して行うものの、採決は個別に行う旨を説明した。


そして、益田哲生副会長より両議案の提案理由及び趣旨が説明された。第3号議案の提案要旨としては、法律事務所の名称規制は、現在、弁護士法人の名称に関する規程はあるが、弁護士の事務所名称については、弁護士法第20条第1項は、弁護士の事務所の一般名称が「法律事務所」であることを述べるにとどまり、必ず「法律事務所」の文字を使用することまで義務づけているものではない。そのため、現に「法律事務所」の文字を使用していない例が見受けられる。しかし、弁護士法第74条第1項は、弁護士又は弁護士法人でない者が「弁護士」、「弁護士法人」、「法律事務所」等を僭称することを禁じており、この趣旨は、一般人が弁護士、弁護士法人でない者を弁護士又は弁護士法人と誤信するなどして不測の損害を被ることを防止するためにあり、同条の趣旨を全うするためには、弁護士、弁護士法人は、事務所名称中にすべからく「法律事務所」の文字を使用することによって一般人がかかる誤信などをしないようにする必要があるべきである。また、司法試験合格者数の飛躍的増加による弁護士大増員時代を迎え、今後弁護士の思考や価値観等の多様化が一段と進むことが予想されることに伴い、事務所名称にも様々なものが現れ、他の法律事務所と誤認、混同が生じたり、時には品位を欠く等の不適切なものが現れることが懸念され、このような状況下で、事務所名称について一定のルールを設け、市民の側に誤認、混同を生じることがないようにしたり、その他不適切な名称を防止、排除するための措置等を講じておくことが求められる。他方、これまで規制がなかったことから、既存の事務所名称につき、現状を無視した過剰な規制を加えて、会員に過度な負担を強いることなどがないように配慮する必要もある。そこで、本規程を設けるに当たり、基本的に現状を大きく変えない範囲で最小限の規制にとどめる考え方に立つことが相当と考えた。本規程により現状の変更が求められる主な事項は、弁護士の法律事務所を例にとると、従前日弁連に届出をしないまま事務所名称を付している場合に新たに日弁連への届出が必要になること、共同事務所の他の弁護士が事務所名称を付している場合には同一の事務所名称を付して日弁連に届け出ることが必要になること、従前事務所名称に「法律事務所」の文字を使用していない場合に「法律事務所」の文字を付することが必要になると説明し、規程案の概要を各条項毎に説明した。


引き続き、益田副会長は、第4号議案につき、弁護士、弁護士法人について法律事務所等の名称等に関する規程を制定するのに併せて外国法事務弁護士の事務所名称について同様の規定を設けることにした旨と規程案の概要を説明した。


続いて、第3号議案、第4号議案に関する質疑に入ったが、まず、関守会員(第一東京)より、(1)現在、「法律事務所」の名称以外の名称を付している事務所が何件か、(2)そのうち末尾が「事務所」になっていないのは何件か、(3)附則第2項につき、なぜ第5条の規定と同様に現に使用されている事務所については適用しないということにしなかったのか、(4)(2)につき、どういう名称になっているかとの質問がなされた。これに対し、益田副会長から、(1)「法律事務所」の文字を用いていないのは29件、(2)そのうち最後に「事務所」の文字がきていない例が6件、(3)現状を認めなかったのは、提案理由のとおり弁護士法の趣旨を全うするためである、(4)6件中4件は「何々法律センター」という名前を付けている。1件は、抽象名、もう1件は、「法律相談所」という言葉を最後につけているとの答弁がなされた。


久行康夫会員(広島)より、海外の有名なローファームの承諾を得た上で、そのローファームと同じ名称を名乗ることができるかとの質問がなされた。これに対し、益田副会長から、第8条の問題であり、著名な組織との関係を誤認させるものに当たるか否かであり、承諾を得た上でということであるが、常務理事会で判断されることになる旨の答弁がなされた。


小川達雄会員(京都)より、第9条と第2条第4号につき、第9条により共同事務所の弁護士は、同一名称を義務づけられ、「共同事務所」につき第2条第4号に定義規定があるが、何を共にするのかということが書いていないので、内容をもう少し明瞭にして頂きたい旨の質問がなされた。これに対し、益田副会長から、何を共にするかは、弁護士職務基本規程の複数の弁護士が法律事務所を共にする場合と同一であり、社会的実態として、具体的に、例えば、物理的・場所的同一性、収支・経費の処理などに照らして、個々の事案で判断させて頂くことになる旨の答弁がなされた。


中村雅人会員(東京)より、議案書中の用語が不統一であり、「本会」、「日弁連」、「連合会」となっており、整合性がないので、統一すべきではないかとの質問がなされた。これに対し、益田副会長より、規程案では使い分けられているところはないようであり、提案理由、解説で使い分けられているが、全て「連合会」の趣旨なので、そのように理解願うとの答弁がなされた。


他に質疑がなかったため、第3号議案及び第4号議案について討論に入った。


関守会員(第一東京)より、一部反対の立場から、「私は「法律相談所」という名称を使用しているが、下町の日暮里で仕事をしており、「相談所」というほうが特に下町の人にとっては温かみのある名称であると思われ、他と紛らわしいとか不適切ということは全くないから、既存の名称を剥奪して変えなくてはならないというのは、とても承服できない。また、広告としてタウンページを使っているが、期間が3月1日から次の年の2月28日までで、平成18年12月31日までしか適用除外が認められないとすると、違法状態が生じてしまう。したがって、現在の名称を一代限り使用できるというふうに修正して頂きたい。」との意見が述べられた。


加戸茂樹会員(第二東京)より、賛成の立場から、「事務所名称の規制問題は、古くからの懸案でありながら今まで会規化が実現できなかった。最近、従前なかったような事務所名称が見受けられ、今後も今まで考えもつかなかった事務所名称が出てこないとも限らないが、それがあまりにも不自然であるがゆえに依頼者である一般市民をして誤認、混同させるようなものであってはならない。したがって、弁護士増員時代を控えている今この時に一定のルールをつくることが必要であると考える。反面、最初から厳格な規制をすることも適当ではなく、事務所名称それ自体によって直接一般市民が重大な損害を被るということは比較的希であるから、既存名称を禁止することはなるべく避けるべきである。欧米では、弁護士の事務所名称は、その事務所のパートナー、あるいは過去のパートナーの氏名を使用することを原則とする規制も少なくないと聞くが、我が国の場合は、既に抽象名詞を使用した事務所名称も数多く、これによって今まで特段の不都合もなかったのであるから、抽象名詞の使用も肯定すべきであり、その意味で、本議案は、欧米の規定よりも緩和された規制となっている。抽象名詞の使用を肯定されると同一名称が生じる可能性があるが、本議案は同一名称を原則禁止としつつ、現在及び過去のパートナーの氏名を使用する事務所名称については禁止の例外としており、一般市民の誤認、混同を防ぎつつも、弁護士が自らの氏名を事務所名称とする自由を保障するものとなっており、バランスのとれた規制内容となっていて、その他の点についても、外国法事務弁護士事務所の名称に関する規程も含め、概ね最小限の規制であるということができ、妥当な規制である。最後に、この会規案は、弁護士法人の主たる事務所には弁護士法人の名称とは別の事務所名称ができるという立場に立っており、また、弁護士法人とその弁護士法人に属さない自然人たる弁護士が共同事務所を設立することが可能であるという前提に立っている。いずれも先の外弁法の改正に際して突如として法務省がそのようなことが可能であるというふうに至ったものであり、朝令暮改的な解釈の変遷は極めて残念であるが、改正外弁法がそのような解釈を前提とした規定となっている以上は、これを前提として日弁連も規制を設けることは結果として妥当なものと理解し、今このときに規制をする必要があると考える。」との意見が述べられた。


関守会員(第一東京)より、第3号議案につき、修正案提出の動議がなされたが、50人以上の出席会員の賛成が得られなかったため、修正案の提出は否決された。


続いて、他に討論を希望する者がなかったので、議長は討論を終局し採決に入る旨を宣言した。


議長は、まず、第3号議案「法律事務所等の名称等に関する規程制定の件」につき採決に付し、挙手による採決が行われたところ、賛成多数で可決された。


次に、議長は、第4号議案「外国法事務弁護士事務所の名称に関する規程制定の件」につき採決に付し、挙手による採決が行われたところ、賛成多数で可決された。


以上で、本総会の議案の審議は終了し、梶谷会長の挨拶ののち、午後8時3分、議長は閉会を宣言した。