臨時総会(2004年11月10日) 議事概要

 

 

日時・場所

日時
平成16年11月10日(水)12:00~19:53
場所
弁護士会館2階講堂「クレオ」

出席会員数、出席外国特別会員数及び議決権数

項目 人数
本人出席 782名
代理出席 10,653名
弁護士会出席 52会
外国特別会員 17名
議決権総数 11,509名

議長及び副議長の氏名

役職 氏名
議長 久保井一匡(大阪弁護士会所属)
副議長 柳瀬 康治(東京弁護士会所属)
副議長 奥村敉軌(名古屋弁護士会所属)

出席した会長、副会長及び監事の氏名

役職 氏名
会長 梶谷 剛
副会長 岩井 重一、東谷 隆夫、山田 勝利、清水 規廣、木村 謙、宮崎 誠、大塚 明、小川 宏嗣、平井 昭夫、前田 豊、松尾 良風、田中 宏、西嶋 吉光
監事 小寺 貴夫、森 誠一

会の流れ

臨時総会が,2004年11月10日(水)正午から,弁護士会館2階講堂「クレオ」にて開催された。

 

総会は,山岸憲司事務総長の司会により正午から始められ,まず,梶谷剛会長から,議事規程第2条に基づき開会宣言と挨拶が述べられた。

 

会長の挨拶では,今回の臨時総会のテーマが,「弁護士職務基本規程の制定」,「ひまわり基金の期間延長と増額」,「弁護士職務経験法制定に基づく会則改正」,「外弁特別措置法の改正に基づく会則・会規の整備」にあることが述べられた。

 

そして,まず弁護士職務基本規程について,その基本的視点が,(1)司法改革の取り組みの一環として,弁護士の使命・責務にふさわしいものでなければならないという点,(2)弁護士に対する国民の信頼をより強固にするとともに,弁護士自治堅持に資するものでなければならないという点,(3)弁護士人口の増加と弁護士を取り巻く状況の変化の中で,高い職業倫理を堅持し,個々の弁護士の自主性や独立性を確保しつつ,弁護士の職務遂行に対し,守られるべき行動規範ないし行動基準となるものでなければならないという点にあるということ,そして弁護士が市民や社会から信頼と支持を得て,基本的人権と社会正義の実現という使命を果たすためには高い倫理性も持たなければならず,弁護士会が弁護士の行動規範と行動基準を制定し,それを弁護士会が的確に運営することを市民・社会に明示しなければならないこと,現行弁護士倫理は総会による宣明決議という形に過ぎず,弁護士及び弁護士会が社会のあらゆる分野で活動するためには,形式的にも内容的にも現在の弁護士を取り巻く環境に見合った,弁護士の行動規範や行動基準を客観的な会規をもって制定し,これに則って行動することを積極的に社会に公表することが必要であり,それが国民の日弁連に対する信頼を高め,弁護士自治の強化・拡充につながるものであるということが述べられた。次に,ひまわり基金について,これまでの日弁連の取り組みによって,弁護士過疎偏在対策は急速に充実してきたものであるが,過疎偏在対策は今後もなお継続すべきであるので,ひまわり基金徴収期間の延長と増額をお願いしたいということが述べられ,最後に,本日の臨時総会は,弁護士,弁護士会が社会的に高い評価を受け,国民から厚い信頼と支持を得ることができるか否かが問われる大変重要な意義を持つ総会であると締めくくった。

 

続いて,正副議長の選任手続がなされた。会長が議長の選任方法について議場に諮ったところ,江藤洋一会員(第一東京)から,選挙によらず,会長が指名する方法で,議長及び副議長2名を選出されたいとの動議が提出され,他に意見がなかったため,会長が動議を議場に諮ったところ,賛成多数で可決された。

 

動議可決を受けて,会長は,議長に久保井一匡会員(大阪),副議長に柳瀬康治会員(東京)及び奥村やす軌会員(名古屋)をそれぞれ指名し,正副議長の挨拶がなされた。

 

その後,議事規程第5条に基づき,会長から議案が提出された。議長は,本総会の出席者につき,現在集計中のため,後刻報告する旨述べた。議長より議事録署名者として,松江康司会員(東京),村越進会員(第一東京)及び佐藤誠一会員(第二東京)の3名が指名された。

 

議長は,議事に入る前にいくつかの注意事項等を述べ,また,本総会の議事は,会則第54条により公開されている旨及び傍聴者は傍聴席にて傍聴されたい旨を述べた。議長は,議事に入る旨を宣した。

 

[第1号議案] 会則中一部改正の件

[第2号議案] 弁護士職務基本規程制定の件

[第3号議案] 弁護士倫理(平成2年3月2日臨時総会決議)を廃止する決議の件

[第4号議案] 外国特別会員基本規程中一部改正の件

会長より,第1号議案から第4号議案は関連する内容であるので,一括審議にして裁決は個別に行いたいとの提案がなされた。議長が,そのような取扱いをすることについて議場に諮ったところ,賛成多数で可決された。

 

まず,議長から,第1号議案から第4号議案までの議案の朗読は時間の関係上省略したいとの提案がなされ,議場に諮ったところ,賛成多数で可決された。

 

続いて,山田勝利副会長から第1号議案から第4号議案までの議案の内容と提案理由について説明がなされた。

 

第1号議案の内容は,主として弁護士職務基本規程,判事補及び検事の弁護士職務経験に関する法律の制定並びに外弁特別措置法の改正に基づく日弁連会則の改正であること,第2号議案の内容は弁護士職務基本規程を会規として定めること,第3号議案の内容は現行の弁護士倫理を廃止すること,第4号議案の内容は外国法事務弁護士に弁護士職務基本規程を準用するものであることとの説明がなされた。(以下第1号議案から第4号議案までの審議において「規程」とあるのは「弁護士職務基本規程」を指す。)

 

続いて,質疑に移り,まず阿部潔会員(仙台)から,第3号議案について,現行弁護士倫理は臨時総会で宣明されたものであり,弁護士職務基本規程が会規として制定されることになったとしても弁護士倫理の重要性が減ずるところはないのであって,廃止する積極的理由は無いのではないかとの質問がなされ,これに対し,山田副会長から,弁護士倫理と弁護士職務基本規程は内容的に相当程度に重複しており,また,弁護士倫理が尊重されなければならないことも明らかなことであり,その内容を取り入れて,会規として弁護士職務基本規程を定めるのであれば,弁護士倫理は廃止されることになるとの答弁がなされた。

 

ここで,武内更一会員(東京)から,第1号議案は3つの別々の問題が含まれているから,進行については,テーマごとに時間を区切って議論をすべきではないかとの意見が出された。これに対し,議長からは,第1号議案はあくまで1つの議案として上程されているものであるから一括して質疑討論したいと思うが,めりはりをつけるべきではあるので,指摘の内容ごとに整理して質疑討論したいとの発言があった。

 

続けて,阿部潔会員(仙台)から,弁護士職務基本規程の制定自体については反対するものではないし,規程と現行弁護士倫理の内容が重複するものであることも理解しているが,基本理念として,弁護士が自律的に守るものとしての弁護士倫理と会規としての弁護士職務基本規程では質的に差異があるのではないかとの質問がなされ,これに対し,山田副会長から,弁護士倫理を発展的に会規の中に取り込んだ以上,その精神は会規の中に含まれるものであるとの答弁がなされた。

 

佐藤昭夫会員(第二東京)から,規程第19条について,雇用契約を解除した後の者についても,指導監督に服することになってしまうが,その法的根拠が不明であり,労働者の側からみれば,労働関係を離れても,終身,指導監督に服さなければならなくなり,個人の尊厳を踏みにじることになるので,同条を削除すべきなのではないかとの質問がなされ,これに対し,山田副会長から,第19条は,原則として解雇された者や事務所から離れた者についてまで適用があるものではないので,同条を削除することはしないとの答弁がなされた。

吉田孝夫会員(宮崎県)から,第1号議案に関して,自律的規範と他律的規範が混在しているが,それらは区別して規定すべきなのではないかとの質問がなされ,これに対し,山田副会長から,自律的規範と他律的規範を可能な限り1つの会規として定めることについてはいささかの矛盾もないとの答弁がなされた。同会員からは,続けて,弁護士倫理が会規として制定されなかったため,結果として拘束力を持たなかったという説明が会員を誤解させるのではないかとの質問がなされ,山田副会長からは会規という形式をとらなかったため,内部的なモラルという限度においては拘束力を持たなかったものであり,その点において会員に誤解を生じさせてはいないとの答弁がなされた。さらに同会員から,弁護士倫理は拘束力を持たせるべきでないから宣明にされたにもかかわらず,宣明にされた結果として拘束力が無いという説明を提案理由でしていることは過去の経過に違反するものであり,それを訂正する意思はあるかとの質問がなされ,山田副会長から,過去の経緯からしても誤りはないので,提案理由を訂正しないとの答弁がなされた。

 

大谷辰雄会員(福岡県)から,規程第82条で,「第5条の解釈適用に当たって,刑事弁護においては」とあるが,なぜ少年事件が除外されているのかとの質問がなされ,これに対し,山田副会長から,少年事件については流動的であるため,もう少し待ってから定めた方がよいと考えられたものであり,ただ,依頼者等の概念の中に少年が入ることは当然であり,少年の人権を擁護すべきであることは精神として繰り込まれていることは当然のことであるとの答弁がなされた。

 

里見和夫会員(大阪)から,規程第18条について,北海道警の不正経理疑惑を追及する事件の訴訟において,追及側の代理人が道側の準備書面をマスコミに公表したことによって,道側の代理人から懲戒請求を受けている等の事例をあげて,同条の構成要件が不明確ではないかとの質問がなされ,これに対し,山田副会長から,同条の保護法益は,準備書面や証拠書類に記載されている個人の病気の履歴や前科等の保護であり,準備書面を配布すること自体について規定しているわけではないが,そこにプライバシーに関係する記載があれば,それを不特定多数に配布すると同条違反になる可能性があるとの答弁がなされた。

 

寺崎昭義会員(東京)から,規程第18条について,患者の病歴や取引内容がもれないようにすべきであるという趣旨であるとするが,住所・氏名・年齢・続柄も含めてプライバシーと考えるのかとの質問がなされ,山田副会長から,「プライバシー」とは,他人に知られたくない私事であり,その具体的な点や範囲については,後日,綱紀・懲戒等で問題になったときにその時点で判断すべきものであって,本日議論すべきものではないが,ただ,個人によっては,住所・氏名・生年月日は知られたくないこともあり,そのような情報の記載された書面等の配布や保管・廃棄については気をつけなければならないとの答弁がなされた。

熊野勝之会員(大阪)から,規程第2条について弁護士間の接待は弁護士の独立を脅かすものになるのではないか,国連の「弁護士の役割に関する基本原則」は検討したのか,第1条と第8条は内容的に重なるものであって,あえて第8条を規定する必要はないのではないかとの質問がなされ,山田副会長から,弁護士の自由と独立というのはもとより国家権力からの独立,裁判所や検察庁からの独立,あるいは依頼者からの独立,相手方からの独立ということであり,弁護士が自己の良心に従って,誰にも拘束されることなく,自分自身の判断で職務を遂行すべきであることは当然であり,そのようなことを踏まえて第2条が規定されたものであること,第1条と第8条については,第1条の方がはるかに広い規定であり,第8条の公益活動というのは,第1条を遂行していく上において,それにふさわしい公益活動をするという意味があり,第1条とは異なる意味があるとの答弁がなされた。

 

ひき続き熊野会員から,国連の「弁護士の役割に関する基本原則」を配布して議論したことはあるのか,第1条の方が第8条より広いとするならば,第8条は第1条に含まれるものであり,それにもかかわらず,あえて第8条を規定したのはなぜかとの質問がなされ,山田副会長から,「弁護士の役割に関する基本原則」は検討の対象にしたものであり,第1条は全ての活動の使命とすれば,第8条はその一部として特に定めたものであり,第1条とは別に存在意義があるとの答弁がなされた。さらに,同会員から,国連の「弁護士の役割に関する基本原則」について真剣に検討したことはあるのかとの質問がなされ,藤井篤事務次長から,委員会の討議資料として配布したことはないが,それを前提とするという認識の中で議論を進めたという経過であるとの答弁がなされた。

 

中川瑞代会員(第二東京)から,規程第19条について,弁護士倫理第17条では「業務に関し」とされ,現在雇用されている者に限られると読めるが,規程では「関与させた者」となっており,退職後の事務員などに対する指導・監督をしなければならないように解釈するべきことになるのか,との質問がなされ,山田副会長から,弁護士倫理第17条と規程第19条の趣旨は同一であるとの答弁がなされた。続けて,同会員から,趣旨が同一であるなら,条文の文言としては,弁護士倫理第17条の文言どおりにすべきなのではないかとの質問がなされ,山田副会長から,「関与させた者が」というのは,「かつてさせた」という意味ではなく「現在させている」というふうに十分に読み取れるものであり,また,規程第19条は,弁護士倫理第17条の内容に「知り得た秘密を漏らし,若しくは利用することのないように」ということを加えて若干の具体性を付加したものであるから弁護士倫理第17条の文言どおりに直すことはしないとの答弁がなされた。

 

吉田孝夫会員(宮崎県)から,弁護士職務基本規程は弁護士会の自律的規範という意味になると思うが,弁護士会の綱紀委員会や懲戒委員会には外部委員が入っており,綱紀審査会があることからすれば,自律的規範になるのか,規程の制定は弁護士自治の拡充と結びつくのか,第82条では,第5条についてのみ防御権や弁護権を侵害することのないように留意しなければならないと規定しているが,第5条以外の場合には弁護士を厳しく取り締まれということになるのか,との質問がなされ,山田副会長から,弁護士職務基本規程は我々自身が制定するという点で自律的規範といえる,会規化によって社会に胸を張って弁護士の信頼と活動,使命というものを理解してもらうことによって自治の拡充は明らかであり,第82条については,第5条の場合について特に注意的に書いたものであるとの答弁がなされた。

 

茆原正道会員(横浜)から,規程第8条について,その使命にふさわしいかどうかは誰がどのように判断するのかとの質問がなされ,山田副会長から,個々の弁護士がその良心にかけて判断すべきものであり,若しくは各単位会で規定を設けるなどしていくことも考えられるとの答弁がなされた。

 

山脇晢子会員(東京)から,(1)規程について,細かいルールで弁護士個人の活動を制約することと第2条は矛盾するのではないか,(2)細かい規定を設けることは弁護士自治に反し,第3条の規定と矛盾するのではないか,(3)第4条について,司法制度の健全な発展とは法曹一元を実現することなのではないか,(4)第5条について,刑事には適用されないのか,そもそもここにいう真実とは何か,(5)第7条について,あらゆる法令を調査するということは不可能を強いることにならないか,(6)第8条について,公益活動の内容が各単位会の解釈によって決まってしまってよいのか,(7)「品位を損なう」とか「不当な」というのは誰が解釈するのか,との質問がなされ,山田副会長から,(1)弁護士の活動の最も基本を定めた弁護士職務基本規程を守らなければならないということと弁護士の自由と独立を重んじなければならないとする第2条は矛盾するものではない,(2)第3条は,弁護士自治を正面から定めるために新設した規定であり矛盾しない,(3)第4条について,法曹一元は理想の1つではあるが,健全な司法の発展は法曹一元に限られるものではなく,法曹一元がないからといってこの規定が無駄になるということはない,(4)第5条について,さまざまな議論をしたが,ここにいう真実とは,客観的な真実をさすわけではなく,弁護士が自らの良心に照らしてこれが正しいと思うところ,いわば主観的真実を指すものである。これは,刑事にも民事にもかかわるが,刑事については積極的な真実義務はなく,しかし,明らかな偽証などを許すものではない,(5)第7条は,弁護士として最低限の必要な法律は常に勉強し,具体的な事件にあたっては一層勉強するという当然の定めであり,また,弁護士法にも規定されているものであって,不可能を強いるものではない,(6)第8条の公益活動については,弁護士会の歴史と現実的な社会における活動,役割,地位に照らして考えれば,その使命にふさわしい公益活動というものはおのずと出てくることになる,(7)品位や不当については弁護士自身が判断するものであるが,具体的には綱紀委員会や懲戒委員会によって判断されることになるとの答弁がなされた。

 

ここで議長より,質疑を終局し,討論に移りたい旨発言されたが,武内更一会員(東京)から,進行について,弁護士倫理・弁護士職務基本規程以外の他のテーマについての質疑は行わないのかとの質問が出された。これに対して議長より,弁護士職務基本規程の関係以外の質問がなかったため,全部の質疑を打ち切りたい旨説明され,あらためて質疑の打ち切りが会場に諮られたところ,賛成多数により,質疑は打ち切られた。

 

続いて,議長より,討論に入る旨宣され,併せて柳瀬副議長から,午後0時30分現在の出席者の状況(会員について,本人出席478名,代理出席7411名,会出席47名の合計7936名,外国特別会員について,本人出席2名,代理出席17名の合計19名)が発表された。

 

討論に入り,まず,川合善明会員(東京)から,第1号議案から第4号議案までについて賛成の立場から,まず,弁護士職務基本規程については,会則会規化は弁護士法第33条及び第46条の規定の要請に応えるものであること,市民に対する公約として明確な規定を持つことは弁護士等に対する市民の信頼をより強固にすること,照会を経て十分議論を尽くしていることなどの観点から賛成であり,また,個別には,第82条第2項により倫理規定等が明示され,同条第1項の解釈指針もあって実質的に判断されるので,会規化が正当な業務への不当な干渉・妨害につながるとの議論には当たらないと考えていること,第5条について,倫理規範,努力義務の規定であることは第82条第2項から明らかであり,客観的真実義務を認める文言でもなく,特に第82条第1項第2文において留意すべきことが規定されており,刑事弁護における障害になる懸念はないとの意見が付された。次に,判事補及び検事の弁護士職務経験に関する法律制定に関連する改正については,制度を少しでも利用しやすくするため,また,日弁連の要請による制度として配慮が必要であり,弁護士任官と車の両輪の関係にあり,法曹一元に一歩でも近づくため,推進していくことが必要であるとの意見が述べられた。次に,外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法の関連については,同法改正に伴うものとして賛成する旨の意見が述べられた。

次に,高山俊吉会員(東京)から,第1号議案に反対の立場から,戦争の危機が迫っており,有事法制が完成しようとし,教育基本法の改悪,改憲,刑事司法改悪が進むという状況の下で,弁護士のありようを変えるというところに弁倫の会規化の狙いがある旨,弁護士倫理の宣明は10年かけて会規化しないという結論をとったものであり,自らの首を絞めるような会規化は不要であること,公益とは公共の責務のことであり,自民党が憲法に入れようとしているものとして家族扶助義務,非常事態における国民の協力義務などと定義されているが,正面から対決すべきものであると考えること,弁護士職務基本規程の適用は,実質政府の管理下にある司法支援センターの判定者,綱紀審査会の委員が決めるので,直ちに懲戒に結びつくか否かの説明も曖昧となっていること,真実尊重義務について,第82条で補正されているというが,そもそも第82条のような規定があるのは危険な規定であることの証拠であって,しかもその判断者は弁護士でない,経団連,法務省,検察官であって,到底賛成できないこと,人権侵害に苦しんでいる人は懲罰会規の成立を喜ぶことはなく,本当に期待するのは闘うことである,との意見が述べられた。

 

続いて,吉川精一会員(第二東京)から,規程制定に賛成の立場から,第1に,エンロン事件の会計士の行動への影響,イギリスでの弁護士自治への批判などの例を挙げ,消費者主権の下,自ら規律できない職業への批判は一層大きくなるが,不祥事に対する批判を最小限にし,弁護士自治に対する攻撃を受けるようなことがないようにするためには,規範性,透明性あるルールを定めてアピールすることが極めて重要であること,第2に,巨大事務所,企業内弁護士の増加,専門化の進行等弁護士の多様化が進み,職業観,価値観とも多様化し,弁護士自治の拠点である弁護士会への参加離れが起き,強制加入制度の廃止の意見も出かねないという展望の下,明確かつ規範性あるルールを作ることは,結束の拠り所となり,弁護士自治が内部から崩壊することを防ぐ意味で重要であるとの意見が述べられた。

 

次に,田中由美子会員(千葉県)から,第1号議案から第3号議案について,千葉県弁護士会の会内議論を踏まえて会として反対である旨,規程の各条項はどんな規定でも弁護士法第56条第1項及び会則の会規遵守義務を通じて懲戒事由となり,行為規範となるので明確な規定がなされるべきであるが,多義的な価値基準の概念が多く不明確であり,また,網羅的,詳細に規定されているため,場面毎に切りわけて判断されてさらに不明確となるなど,恣意的な判断の余地は明らかである旨,第82条第1項でも「不当」という曖昧な概念が含まれており,恣意的判断を払拭できない旨,弁護士倫理は倫理としての高い目標であり,規程は行為規範であるが,同列に混在させていて分かりづらく,行為規範が曖昧に,倫理が義務化するという不都合が生じる旨,懲戒請求の際,形式的に該当するとして申し立てられたものについて実質的判断で該当しないと説明しても第三者から納得され難い旨,日本司法支援センターに関して,弁護士の独立や弁護士自治を前提にした実質的判断は第3条があっても困難と思われる旨,国家権力との対峙を本質とする刑事弁護について,懲戒申立てを通じた介入をもたらすおそれがあり,刑事弁護活動の基本を侵害するおそれがある旨,綱紀審査会など一般人が判断すること,司法支援センターの規定に取り込まれる可能性があることなどを考えると会規化は避けるべきである旨,今回の問題は世論や力に迎合した結果と考えられ,社会正義,人権擁護の使命,弁護士自治などを放棄し,無関心である結果であり,そのような観点からの議論が必要であって,弱者に厳しい状況の下,弁護士会がその使命を果たすべきであるが,弁護士職務基本規程の会規化はそれに反するものであるとの意見が述べられた。

 

続いて,大谷辰雄会員(福岡県)から,13年前に裁判官から弁護士になり,委員会活動に触れて日弁連に加入したことを誇りとしていたが,最近は失望している旨,任官当時学生運動に対する裁判が残っていたが,一方的に意見陳述の時間制限をし,守らなければ退廷を命ずるなどの裁判所のやり方について30期以前の弁護士は知っているが,近い将来改憲に対する反対運動が起こったとき,いろいろな規制の中で弁護士活動がやっていけるか非常な不安を覚える旨,弁護士倫理の宣明の不都合,会規化の必要はなく,司法制度改革審議会で勝手に約束されたものに過ぎない旨,努力目標と行為規範は明確に区別して議論し,何を入れ,何を外すべきかという議論であれば可能であるが,何でも一緒にして1つの規定とするのでは賛成できない旨,少年事件について,福岡では相当数の会員が少年事件を扱っており,例外的な事件ではなく,その性質について弁護人的なものか否かなどの議論があるが,正しく付添人活動を行った弁護士が懲戒されないよう,流動的ということで片付けず,きちんと理解した上で議論してほしい旨,これからも後輩について誇れる日弁連を引き継いでいきたいと考えている旨の意見が述べられた。

 

次に,星徳行会員(第一東京)から,全ての議案に賛成の立場から,現行の弁護士倫理は,昭和30年の旧弁護士倫理理事会決議を拡充し,平成2年の総会決議とされたものであり,道徳的行動指針であったが,平成2年の総会から14年経過し,司法制度改革の現状及び展望を考えれば,大幅な人口増加,広告の自由化,報酬規程撤廃,活動分野の拡大など,弁護士を取り巻く環境の激しい変化と多様化に応じて,今こそ基本的な倫理規範と具体的な行為規範の全般にわたる事項を弁護士の共通のあるべき姿として示し,会規として定めることが必要不可欠である旨,業務広告に関する規程その他の規程が相次いで定められているが,これらは,自らルールを定め,それを重視するものであることを明確にすることにより社会全体の信頼を得るためのものであり,弁護士職務基本規程も,国民から,高度な職業倫理及び非違行為に対する適切な措置が求められていることに対して,自らの責務として対応することを内外に明らかにしていくものであると考える旨,内容的にも時代に応じた新たな規定も設けられ,今日の状況に応じて改めることを内外に示すものであって,3年余り真摯に検討されて提案されたものであるので賛成する旨意見が述べられた。

続いて,森川文人会員(第二東京)から,反対の立場で,自民党が憲法改正の論点整理の中で強制加入制度・弁護士自治についてまで言及しているが,だから弁護士職務基本規程が必要というのは主客転倒である旨,弁護士は弁護士らしい活動をすることにより信頼を勝ち得てきたのであり,そのような活動をするべきであって,規定で縛るのは違うと考える旨,有事立法の国民の協力義務につき,協力するのが公益か,拒むのが公益か不明であり,お金にならない少数のための活動を指すのであれば,それは各弁護士の自由であって,歴史的に獲得した権利であり,強制されるものではない旨,このような規定を今決めるというのは,信頼が却って失われるのではないかと考えている旨,公益活動はそれぞれしているはずであって,それを示すべきであるが,それをしない若手が業務ばかりしているというのはボスが悪いのであって,各事務所で弁護士職務基本規程のようなものを定めればよい旨,弁護士の活動自体で信頼を勝ち得ることが大事であり,現在の無茶な改憲論議に法律家らしく楔を打ち込むことこそ弁護士にふさわしいと考えるなどの意見が述べられた。

次に,山本志都会員(東京)から,若手の見地から,反対の立場で,規程の提案理由には「若手に対する基準を示すもの」とあるが,倫理研修などでも,若手は経験がないので簡単に結論のみを覚え,危ない橋を渡らないと思われること,難しい問題については先輩に相談し,最終的には自分で責任をもって決めることこそ自律的であるということであり,外部の要求や市民の要請ということで今回会規化を決めれば,若手のマニュアル化は一層進み,危険であること,解釈基準があっても,弁護士でない依頼者,相手方,検察官は懲戒申立てをしてくるのであって,さらなる濫用を招くことは明らかであること,また,申立てをされるのみでも大きな制約となると思われ,結局,依頼者の依頼を断る根拠とされるのではないかと危惧していることなどから,若手の活動に対しては,弁護士の活動を守るという点に尽力されたい旨,個々の依頼者から信頼される活動をするべきであり,その積み重ねによって一般の信頼を勝ち得るのであって,活動を萎縮させる弁護士職務基本規程は,長い目で見れば信頼を失うことになり,また,各論についても第5条,第8条などに疑問が有り,反対である旨の意見が述べられた。

 

次に,ロビン・ゲイ・ナドラー外国特別会員(第二東京)から,第4号議案について,反対はしないが,準用する条文が読みにくいので,分かりやすいフォーマットでお願いしたい旨の要望が出され,これに対しては,東谷隆夫副会長より,外国特別会員への説明会を予定しており,読み替え後の規定を用いて示すことになっている旨説明された。

 

続いて,足立定夫会員(新潟県)より,まず新潟県弁護士会会長として地震についての支援へのお礼と協力要請の挨拶がなされた上で,賛成の立場から,過去に名誉棄損,不当な懲戒申立てを受けた経験を述べ,そのようなものを許さない立場であるが,弁護士職務基本規程とは矛盾しないと考える旨,第1に,規程は,弁護士の職務のあり方や目標を初めて明らかにしたものであり,弁護士倫理は,倫理といいながら,3分の1は弁護士法,会規・会則と同一内容であって,倫理綱領を除くと行為規範が大半と解され,規程はそれらを統一的に整理したものであり,第82条第2項で努力目標を明示し,実質的に解釈する旨解釈指針も明示され,規定の方法,解釈についても明確化して法定されたと考えられ,人権及び社会正義の実現に大きな影響を持つ自治組織たる日弁連がそもそも体系的な行為規範を持てないことが異常であり,そのような自治規範を持つことによって司法改革後の新しい社会に備える体制が可能になると考える旨,第2に,規程は職務のあり方を定めたものであって処罰要件を定めたものでなく,構成要件として不明瞭との意見があるが,ある程度抽象的に規定する部分があるのは当然であり,却って処罰を狭める方向での裁量を広げる方向であり,それぞれ合理的な理由がある旨,第3に,日本司法支援センターの法律事務取扱規程に取り込まれるのではないかとの指摘があるが,同規程は,総合法律支援法で制定が義務づけられている以上,弁護士職務基本規程がなくとも制定されるのであり,規程を盾として取り込むことを求めた方が行政からの干渉を排する力となると考えており,真実の尊重の規定も,尊重という内心のあり方の規定となり,従前の行為規範的な規定方法から,より倫理的になり改善されたと考える旨,最後に,新潟県弁護士会その他10数単位会では会則で弁護士倫理の遵守義務を定めているが,懲戒処分にあたっては実質的解釈がなされており,そのような会則の定めのない単位会においても,実質的解釈をなす限り,同じ結論に至るのであり,それを第82条は条文で解決していると考える旨意見が述べられた。

 

続いて,坂井興一会員(東京)より,進行について,希望のある会員からは質疑も受けるべきであるとの意見が出された上で,反対の立場から,会規化自体に反対というわけではないし,規定の明確化にも限度があることは了解しているが,ただ,立法理由が倫理の徹底,自浄努力自律権能の厳正化など抽象的な必要性に終始し,具体的な内容に触れていない点,また,自ら招いた弁護士大量増問題について考察しておらず,将来の問題を現在の問題のように語るのはおかしいと思う旨,今まで実体規定の不備のために処置に苦しんだということは聞いたことがないこと,大量増員によりモラル低下が危惧され,共同事務所,双方代理,利益相反問題など難しい問題があるが,それを招いたことについての反省,原因分析,克服すべき課題の明示がない旨,これらの問題については必要な措置をとり,個別の立法や懲罰に限らない手法による対応があってもよいと思うが,刑法典1本による処理をしようとするマイナスが出ていると思う旨,議案の持つ問題点,マイナス,克服課題等を隠さず公平に記述すべきであり,解釈基準についてもどの程度実体審査の中で考慮されるのか,審査委員会,外部委員,司法支援センターと刑事弁護問題等の相乗効果により自治意識の低下が危惧される旨,本議案は大会派の賛成委任状で決される現状にあり,その場合日弁連の監督官庁化を顕著に進めることとなるが,そのことへの問題意識,自省が感じられない旨,刑事弁護共同受任の利益相反案件について,第42条・第43条の問題の未解決など,刑事弁護の分野での今後の取締,懲戒請求問題,裁判員制度の問題,LSCと公的弁護の直結による刑事弁護の困難な環境,それらの相乗効果が深刻に危惧される旨,弁護士倫理第17条と規程案第19条は同じとの答弁があったが,明らかに違うので戻すべきと考える旨,理事会,代議員会での反対意見を重く見るべきである旨,市民のためとの観点からも,馴れ合い弁護士を生むおそれがあるにもかかわらずスケジュール感覚で通過させようとするのは遺憾である旨意見が述べられた。

 

続いて,中本源太郎会員(東京)より,反対の立場から,弁護士の戦後50年の人権擁護の活動は国民の信頼を勝ち得たが,権力者,政府からは目の上のたんこぶと見られ,司法改革として弁護士自治に対する弱体化のための攻撃が過去10年続けられてきたが,日弁連の対応はおそれをなして呼応し同調するものであったのであり,弁護士職務基本規程は画竜点睛であるというが,まさに弁護士の変質と弱体化の総仕上げであると考える旨,大量増員,広告規程・報酬規程の撤廃,他士業開放,72条問題,30条改正による自由化などが弁護士のアイデンティティーの変質をもたらし,日弁連はよいこととして受け入れてきたが,綱紀審査会及び弁倫会規化は弁護士自治に対する直接の攻撃であり,弁護士職務基本規程の制定を議論しなければならないということ自体が今までの方針に反省を迫るものである旨,公益活動の規定は,努力規定とされるが,外部から義務化の提案がされ,努力規範でも違反によっては懲戒事由になるというのであって安心できない旨,第2次案の前文の記載から考えると,現在単位会で定められている公益活動義務と異なり,公共性の空間に日弁連を取り込んで国家社会に対して公益的な役割と責務を課そうとするものであり,それを進めたのはRCCの社長であった中坊氏であり,RCCの業務において国策遂行弁護士が大量に出てきたのであって,公益義務と密接に関連があると考える旨,そのような社会情勢の下で判断すると,弁護士職務基本規程は弁護士のあり方について根本的な変質を迫り,弁護士自治を危機に陥れるものとして反対する旨意見が述べられた。

 

次に,立松彰会員(千葉県)から,反対の立場で,第5条の真実の尊重の規定について,解釈運用指針があるからといって大丈夫ではないこと,条文があること自体によって公権力による介入を招き,萎縮効果は明らかである旨,第82条第1項についても,弁護士会としてそのようなことを期待するという程度のものであり,また,留意して解釈していると言われるだけで実効性がない条文である旨,第3条の弁護士自治の規定について,コメントには会員の関心が薄くなりつつある旨記載されているが,それは司法改革を進めたためであり,執行部が反省すべき事柄であって,会員宛でなく,第5条,第82条ともに日弁連理事者宛の規定とすべきであり,弁護士自治を掘り崩す危険のある規程の策定に反対する旨意見が述べられた。

 

続いて,伊藤誠一会員(札幌)より,賛成の立場から,理事会での議論,検討の経過を踏まえ,弁護士は今アイデンティティーを問われているという現状であること,裁判官の任命過程に初めて国民の意見を反映させる道が開かれ,被疑者段階からの公的弁護を実現できたことなど,市民のための開かれた司法を目指して改革がなされ,札幌弁護士会としても多数の外部への委員の推薦を行うなど,国民の弁護士職への期待が高まっていること,反面,依頼者の要求も弁護士の使命を全うしようとすればするほど高くなり,職業倫理への厳しい目が向けられることも当然であること,また,法曹人口の増大について,新入会員が1割に相当する現状であり,実務修習,後輩への弁護士職務の伝え方も変容してきていることや,司法書士の法律事務取扱など,弁護士を取り巻く環境は変容しつつあること,そのような状況においては,基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とする弁護士として何をなすべきかを考えるべきであるが,逆に,すべきでないということについては国民に明示して他の業種との差異,優位性を明らかにするべきであり,宣明を超え,これから外れたときは他からの批判を許す職務の基本である規範を定めるべきであって,いわれのない攻撃に対しては断固として戦う必要があるとの観点から,賛成である旨の意見が述べられた。

 

佐和洋亮会員(第二東京)より,反対の立場から,『自由と正義』本年6月号「日弁連の回顧と展望」83頁に,日弁連元会長が「格下」とされる人にも自ら説得したという記載があるが,「格下」という表現自体が日弁連執行部の官僚化した人権感覚の鈍磨を表しており,そのような執行部が全国の弁護士に押し付けているのが今回の規程案である。日経論説委員の藤川氏は,弁護士職務基本規程は来るべき大量増員時代に向けて弁護士が特別な倫理に基づく資格であることを対外的に宣言する意味を持つ,いわば予防的なものというが,そもそも大量増員自体が見直されるべきである。また,弁護士会の自治と多様性を重視すべきであり,多くの弁護士会が反対している案を日弁連が押し付けるべきではない。すでに破綻した「司法改革」というカーナビのスイッチは切り,自らの手で運転すべきである,との意見が述べられた。

 

新穂正俊会員(埼玉)より,反対の立場から,「会規化そのものに反対するのでなく,内容を十分議論し,取捨選択してからにすべきであるという会員も多い。規程第5条の真実尊重義務の「真実」について,執行部は弁護士が主観的に真実と信じるものであるというが,そうであれば規定する意味はなく,客観的真実があるという前提であるとしか考えられないが,それは神のみぞ知るものであり,裁判で出された結論も証拠に基づいて真実として扱うというものに過ぎない。そのような裁判の仕組みを真実尊重義務はすべて否定するのではないか。したがって,今回の真実尊重義務に関して言えば反対であり,会規化についても,十分な議論がされていないという意味で反対する。」旨の意見が述べられた。

 

佐藤昭夫会員(第二東京)より,反対の立場から,「規程第19条に『職務に関与させた者が』とあるのは,『関与させている者が』と現在形に直せば問題ないのに,執行部は同じとして改めない。弁護士倫理ができて10年経っており,弁護士法人ができたことのように,変化があれば新たな事態に対処する規定を入れればよく,別の規程を設ける必要はない。また,弁護士倫理が会内の宣明だから社会に対してというなら,その決議の仕方を会内外に対して声明するというような仕方に変えれば十分である。なぜ弁護士自治を掘り崩すという政策意図,国家戦略に基づいて行われてきたものに日弁連が迎合するのか。第82条のような規定があるからいいというが,その規定を現在の日弁連執行部のような人が実質的に解釈したら,権力と全く同じとなる。そういう事実と論旨,法律と良心に基づいて十分な議論をしてもらいたい。」旨の意見が述べられた。

 

河田英正会員(岡山)より,賛成の立場から,「反対意見のいうように,権力に利用される危険があることも確かである。しかし,執行部や理事の押し付けではなく,3年間をかけて,多数の反対意見を取り入れながら,修正を加えて提出されたもののはずであり,今の段階ではベストであると考える。必要性については提案理由のとおりであり,弁護士自治が内部から崩壊するおそれがあるという指摘はそのとおりであるが,まさに弁護士自治を守るためにこのような規定を設ける必要がある。反対派はこのような規定を置くと,懲戒が増えるというが,現にすでに増えている。懲戒による攻撃に対しては,規定があってもなくても戦うべきであり,攻撃のないような団体になったらだめなのである。」との意見が述べられた。

小川修会員(埼玉)より,反対の立場から,「すでに派閥を通じて結論が決まっていると聞いて驚いた。それが理性集団である弁護士会の意思決定であろうか。また,反対派にも,構成要件が明確なら会規にしてもいいという意見も相当ある。それに対し,賛成理由として,大量増員すれば質が落ちるので必要だという反論をする。これは議論のすり替えであり,そうした筋違いの議論をして混乱させること自体すでに質が落ちている証拠である。賛成論の友人もたくさんおり,よく話して考えてみたが,違いは,弁護士の在野性,権力は堕落するという共通認識に立ち,権力が弱いものいじめをするのではないかということを嗅ぐ能力の健全な弁護士と,その感覚が鈍磨してきた人達の論争であり,弁護士は弁護士であらねばならない。」旨の意見が述べられた。

 

寒竹里江会員(東京)より,反対の立場から,「会規化の理由としてあげられているものは,いままで会規ではなく宣明にしてきた弁護士の先達を侮辱するものである。賛成論は,規程第5条が積極的真実義務でない根拠として第82条をあげるが,積極的真実義務がないことを国民に理解してもらうためには,真実義務などの文言は入れないほうがよい。公益についても,何をしてよいかわからないようなあいまいなものは入れないでほしい。弁護士自治については,その必要性を国民に説得し説明すべきであり,会規制定で防御するというのは本末転倒である。」との意見が述べられた。

 

続いて,野村修一会員(第二東京)より,反対の立場から概ね次の意見が述べられた。「立法事実がそもそもない。提案理由では,法曹人口の大量増員と職域拡大があげられているが,53期で5年目の弁護士である私達は1回もそれらを希望しておらず納得できない。また,弁護士のアイデンティティーが必要だというが,会規で縛らないとなぜそれが守れないのか不明確である。国民の信頼についても,国民とはだれが,具体的にどういう事案が問題としたのか不明確である。依頼者のために地道に仕事をしているのに,依頼者以外の人から市民だ,国民だという形で懲戒請求が増えるおそれがあり,これを今の弁護士会が早期に却下するとは思われない。いろいろな規定があるが,市民の信頼や支持を口実として懲戒請求してくる人達を説得できるか疑問である。」

前田春樹会員(大阪)より,賛成の立場から,「大阪弁護士会で弁護士職務基本規程の意見を取りまとめた経験を踏まえると,大阪で1番多くの意見が寄せられたのは,会規化することの是非であった。確かに現行の弁護士倫理は,懲戒事由を規定したものではないものの,弁護士法第56条第1項の懲戒事由の解釈基準として機能することは当初から予定されていた。他方で,そうした運用では形式と実質が一致しないという批判があり,今回はそれらを一致させるべく会規化したものである。会規化するとその違反が直ちに法第56条第1項の会則違反となり懲戒事由になるのではないかという指摘に対しては,会規化されても,懲戒判断は法第56条第1項の実質的解釈によりなされることに変わりがないといえる。以上から会規化に賛成である。」旨の意見が述べられた。

 

熊野勝之会員(大阪)より,反対の立場から,「弁護士職務基本規程は,日弁連が賛成意見を出し,日本政府も賛成した国連の「弁護士の役割に関する基本原則」に違反しており,日弁連として一貫性を欠いている。日弁連のアイデンティティーは弁護士法第1条であり,それがこの規程の提案によってぐらついている。賛成論が,規定を明確化するという側面だけを強調して,弁護士の独立の重要性という国連原則に言及していないのは落ち度がある。弁護士の職能団体である日弁連は,職業上の基準倫理を維持して会員を訴追・不当な侵害から保護し,弁護士が不当な干渉を受けることなく職分を果たせる状態を確保し,これを周知徹底する義務があるのに,日弁連はこれに違反している。弁護士は人権を守るために独立を守るのであり,自己の職業利益のためにではないが,両者は不可分の関係にある。独立の法曹として信頼されるためには,弁護士職務基本規程が憲法,人権規約等に適合しなければならない。規程は,弁護士のみに厳しい職業倫理を要求しており,裁判官,検察官,報道機関等との関係で平等原則に違反する。職業選択の自由(憲法第22条),比例原則(憲法第31条の適正手続の保障)に違反する。弁護士の懲戒は職業そのものを奪われるものであり安易に考えてはいけない。公益は,戦時中の弁護士会が翼賛体制をつくったときのように使われる。法の支配のためにこの規程をつくるという議論は,山本七兵が『日本はなぜ敗れるか』で述べた精神主義,精兵主義であり弊害しか残さない。」旨の意見が述べられた。 

 

里見和夫会員(大阪)より,反対の立場から,「この臨時総会に向け,執行部からのレター等のみがファックスで送られ,反対意見を紹介する機会は会費では一切保障されておらず,不公正であり,議案は無効である。なぜ弁護士倫理を充実するのではなく,廃止して懲戒会規にするのか,説得的な理由がない。弁護士会は弁護士の自由と独立を守るのが任務なのに,今回の会規化は弁護士に対する一層の攻撃を招くものである。年間1000件の懲戒申立てがあり,うち50件が懲戒相当,そのうちの約50%は戒告にとどまっていると聞いている。懲戒申立ての濫訴の実状を十分調査し,これを防止して弁護士を守るのが本来の弁護士会の任務であるが,その姿勢が欠けている。規程第42条は,例えば労働事件において,警察が介入し,労働組合の内部に利害対立をつくらせ,それでも辞任せず組合員の説得を続ける弁護士に対して警察が懲戒申立てをしてくるというように使われ,組合自体が壊滅的打撃を受けることが明らかである。現在国会で上程されている共謀罪に関する法律で,共謀罪の対象とされた団体も同様に壊滅的打撃を受ける。こういう危険があるのに,行動規範として規定することは許されない。徹底した議論の場を保障すべきである。」旨の意見が述べられた。

 

森下弘会員(大阪)より,反対の立場から,「会規化は賛成だが,今回の案には賛成できない。懲戒について濫訴か否か,判断する規定がなかったことこそ問題である。罪刑法定主義の見地から,何をすれば懲戒になるのか明確な規定が必要であり,それをしてこなかったツケが回ってきている。しかし,今回の案の内容は,刑事弁護人の立場から賛成できない。真実義務,利益相反,利益相反後の辞任など,権力側が攻撃の糸口とすることが明らかであるのに,弁護士倫理前文のような,権力に利用されないための配慮がない。少なくとも弁護士倫理前文のようなものがない限りは賛成できない。」との意見が述べられた。

吉田孝夫会員(宮崎県)より,反対の立場から,「第1号議案について質問事項を提出したのに,うち切られたのは不当である。第1号議案について,判事補及び検察官の弁護士職務経験に関連し,弁護士職務従事職員の登録料の免除は理由がない。2年間で退会する人全員に返さない限り会員の平等の原則に反する。法曹一元を多元にすりかえてしまった司法制度改革審議会を成果として突き通そうとした結果である。外国弁護士関係の改正については,法律が変わったから当然これを変えるというのは理由がない。弁護士職務基本規程との関係では,日弁連がとってきた国民の理解と支持路線では,社会全体を敵に回しても1人の人権を守るという弁護士の任務に違反する。弁護士自治は1970年代から後退してきたし,このような路線ではそうなるしかない。規程第49条は,倫理としてはわかるが,強制することはおかしい。国選弁護といえども被告人が費用を負担していることには変わりがなく,にもかかわらず低額に抑えられている。十分な弁護をするため私選への切り替えを働きかけることまで禁止すると十分な弁護ができなくなるおそれがある。いろいろな考えがあろうが,強制することは,弁護士の思想信条の自由に対する侵害である。第50条によれば,自由と独立が制約される組織の中では,自由と独立を保持する心構えさえあれば安住してもよいのか。かえって倫理を低下させる規定ではないか。最善の弁護活動と規定にはあるが,現在の人質司法では最善のため虚偽の自白をさせても保釈を優先させるべきではないかと捉える。第47条も,現在の刑事訴訟の運用を前提にすればどういう結果になるのか十分に考慮されていない。規程では,弁護士の債務不履行を懲戒するような内容になっているが,民事責任以外に懲戒のおそれまで生じるというのでは弁護士を他の人よりも弱い立場に置くものであり非常に問題である。弁護士法上会則事項とされ,3分の2以上の多数でなければ決められないこうした事項を一括して会規に委任するのは危険である。」との意見が述べられた。

 

武内更一会員(東京)より,反対の立場から,「中坊公平が言い出した弁護士改革の内容は,弁護士を自由と人権の護り手として強化する内容ではなかった。弁護士職務基本規程もそういうことである。外国人弁護士による日本人弁護士雇用の自由化については,日本の弁護士についてもアメリカの弁護士のように帝国主義的な海外侵略・支配へ動員しようという動機がある。日本の弁護士会は,弱者,お金のない人のために発言してきたはずで,そうでなければ存在意味はない。企業に雇われてそのためだけに仕事をする弁護士なら弁護士会はいらない。弁護士法第1条は日本の弁護士にそういう存在であることを期待している。法第1条を放擲する潮流に弁護士会全体が移っていくような,外弁による雇用及び共同事業の自由化は絶対に認めるべきではない。」旨の意見が述べられた。

 

川崎達也会員(第二東京)より,賛成の立場から,「今までの賛成論と同趣旨である。公益活動については,すでに第二東京弁護士会では義務化しているが,年に1件国選受任程度なのに,それすらしない会員がいる。アメリカ法曹協会が採択した「弁護士模範業務規則」では,年少なくとも50時間のプロボノをするという抱負を持つべきとされているように,弁護士職務基本規程にも,努力義務にせよ具体的な規定を入れる仕方もあった。反対論は,公益活動の規定が弁護士の在野性を損ねると批判するが,ここでいう公益活動は経済的・社会的弱者に対する法的サービスの提供にあることは明らかであり,反対論は過敏すぎる反応である。」旨の意見が述べられた。

 

中川瑞代会員(第二東京)より,反対の立場から,「刑事弁護では,本人の利益のためにやったことにして1回で公判を終わらせることもしている。これは真実義務に違反していることになる。真実義務をいう以上,検察官にも証拠の全面開示義務を認めさせるべきである。それがないのに公正な裁判が実現できるのか。弁護人にさらに足かせをはめてどうするのか。民事事件でも同じである。従軍慰安婦の事件で国側の代理人は悲惨な実態について一切答えない。弁護士ばかり一生懸命真実義務を追及しても公平な制度になっていないのに,なぜこんなものが出てくるのか。国民の理解が得られないという点について,議論の相手が説得できないから,相手の案に賛成するのはおかしい,筋をとおすべきである。原理原則を放擲したもので非常に問題である。」旨の意見が述べられた。

 

遠藤憲一会員(東京)より,反対の立場から,「懲戒規定の会規化は,日弁連の歴史が始まって以来の弁護士取締刑法である。真実義務,共犯者の同時受任の禁止,公益活動を,強く求めてきたのが法務省や外部委員の日経新聞藤川氏らであることから明らかである。第42条は悪名高い刑事弁護ガイドライン第1案第10条の再来である。利害対立後の辞任義務が接見妨害に使われることは明らかである。公害事件等の大型民事事件においても辞任を強要されることになる。権力者らが弁護人,弁護団を分断する切っ先として使われる。業務妨害的懲戒請求が増えている。このことは,異議申立てで結論が変わったのは0.97%に過ぎないことからも明らかである。こういう濫訴がこの規程につけ込んで増えることは必定である。そんなことで思い切った弁護活動ができるわけがない。圧倒的多数の被支配者たる国民は,弁護士に強い者や権力と闘って自分達の権利を守ってほしいと望んでいるのであり,弁護士が立派な会規を持つことを望んでいない。コンプライアンス体制の確立という議論は,企業の競争力強化のイデオロギーであり,労働力の統制管理の手段であって,これを弁護士会に持ち込んで弁護士を組み込もうとするものである。戦争に向かう中で,国家総動員態勢を貫徹するため,憲法と弁護士は邪魔なのである。自治を破壊し,弁護士を押さえ込むこの会規化には断固反対する。」との意見が述べられた。

 

鈴木達夫会員(第二東京)より,反対の立場から,「山田副会長のいう司法改革という画竜に会規化で点睛を加えるという点について,教育改革に日教組本部も多少は問題あるが基本的には賛成という立場をとっていたが,日の丸・君が代で起立しなかった先生が350人処分され,その人達を中心に5500人が集まるという戦いを通じて,教育改革が憲法改悪の先取であるということを見抜きつつある。国鉄改革から始まり,政治改革,行政改革,教育改革はいずれも,改革の名で日本の憲法体制をひっくり返すとんでもない行為だった。なぜ司法改革だけが画竜点睛というようなバラ色のものなのか。先日開かれた「裁判が変わる,日本が変わる」というフォーラムの後援は,日本経団連,経済同友会,日本商工会議所などであるが,日本経団連は改憲を明確に主張している。財界がここまで政治に口を出す姿勢は戦後異例である。自民党は11月に改憲私案を出そうとし,財界もこれに合わせて改憲案を出そうとしている。このような人達と日弁連が一緒にやったのが司法改革である。そのトップは保岡興治さんであり,自民党の改憲派の1人である。そういう司法改革の目的が,日弁連の体質を変える,個々の弁護士を取り締まること,そして今回の弁護士職務基本規程にあるということを,なぜ我々は見ようとしないのか。会長のいう「法の支配」についていえば,法の支配と法治主義とは違うという議論は,最近の憲法学者の一部の議論に過ぎない。田中耕太郎さんも,日米安保条約の前文も,「法の支配」という言葉を使っている。「法の支配」の徹底とは,法で人民を縛る,秩序維持,その先頭に弁護士が立つべきだという解釈以外ありえるのか。自民党改憲プロジェクトチーム論点整理では,憲法自体,権力者でなく国民を縛るものだと明確に言われている。新しい規程のうち,第8条の公益活動は,弁護士の使命という制約が入っているからよいとの議論がなされている。しかし,弁護士の使命(弁護士法第1条)に,「社会正義」はナチスドイツで盛んに使われた言葉であり,この文言が入れられたのは弁護士の人権擁護活動にブレーキをかける趣旨だったのであり,多数派の声で何でも社会正義になり得る危険な言葉である。公益活動といえば弁護士会の会務活動というイメージを持つが,これは間違いではないか。本来は社会的な公益活動である。今強調されている公益は,まさに国益,国策のことである。また,自衛隊法第108条の「秘密」にすら限定があるのに,第18条では何ら限定のない「秘密」について漏らしてはならないとされている。改悪刑訴法第281条の3以下で,訴訟記録,開示記録の目的外使用が禁止されようとしており,この規定と第18条はセットになって,裁判報道や裁判批判を妨害しようとしている。弁倫の会規化には,憲法と人権の砦だった日弁連を壊すための刃が満載されている。絶対に反対すべきだ。」との意見が述べられた。

 

西村正治会員(第二東京)から,第1号議案中の判事補及び検事の弁護士職務経験に関する法律の施行に伴う会則の整備について,「提案理由4頁には,「判事補及び検事がその身分を離れて弁護士の職務を経験する」と記載されているが,同法によれば,判事補や検事は公務員の身分を有したまま弁護士登録をするものとされている。弁護士の立場から事件に接するというのであれば,官の立場を離れる必要があるのではないか。また,公務員の身分を有し,最高裁や法務大臣に報告義務を負ったままで弁護士登録をして,日弁連の意思形成に関与することは,国家権力が日弁連に干渉する水路を開くことになり,弁護士自治の後退にもなり,第1号議案には反対する。」旨の意見が述べられた。

 

土屋公献会員(第二東京)から,「本来自律的な規範である弁護士倫理を会規化されることによって質的に変化し,権力に弁護士を懲戒請求するよりどころを与えることになってしまい,弁護士活動の萎縮につながる。また,公益活動という名前は,国策活動と同視される可能性があり危険である。そこで,第1号議案から第4号議案まで反対する。」旨の意見が述べられた。

 

ここで,議長より,討論の終結が宣言され,引き続き議案の採決に入った。

第1号議案についての裁決の結果は,以下のとおりである。

 

出席会員総数(代理出席・会出席含む。) 11044名
賛成 8629名
反対 2391名
棄権 24名

以上の結果,第1号議案が出席会員総数3分の2以上の賛成により原案どおり可決された。

 

第2号議案についての裁決の結果は,以下のとおりである。

 

出席会員総数(代理出席・会出席含む。) 10497名
賛成 8004名
反対 2470名
棄権 23名

 

以上の結果,第2号議案が賛成多数により原案どおり可決された。

 

第3号議案は挙手による採決が行われ,賛成多数により原案どおり可決された。

 

第4号議案も挙手による採決が行われ,賛成多数により原案どおり可決された。

 

[第5号議案] 弁護士過疎・偏在対策のための特別会費徴収の件

続いて,議長より,第5号議案「弁護士過疎・偏在対策のための特別会費徴収の件」の審議に入る旨宣された。

 

まず,担当の前田豊副会長より,ひまわり基金特別会費について,本年12月末で徴収期間が満了すること,日弁連は「法律相談制度の拡充」を司法改革の重要な課題としてあげ,ひまわり基金が総合的な過疎対策の実行の原動力となってきたこと,5年前ひまわり基金を決議したときは公的資金による解決が実現するまでの間の負担として決議したが,未だ過疎対策は道半ばであり,司法支援センターの業務開始までは少なくとも延長する必要があり,かつ1500円に値上げする必要があるとの趣旨説明がなされた。

 

続いて質疑に入ったが議場内に希望者がいなかったため,質疑を打ち切り討論に入った。

 

最初に,小笠原寛会員(釧路)より,賛成の立場から,ひまわり基金により法律相談センターを裁判所の支部のあるところには全て設置できた旨,会館設立などにより会員も増加し,比較的高額の会費や,すずらん基金法律事務所への各弁護士の援助金拠出等地方会なりの様々な努力をしているなかで援助を受けているが,釧路弁護士会のような小規模会では法律相談センターの維持は困難であり,ひまわり基金の補助によって成り立っている旨,現在網走と根室に公設事務所があり,北見と中標津町にも準備中で,網走の公設事務所の会員は定着されるとのことで,新規の弁護士を募集中であり,ゼロ・ワン地域を脱皮できるところまできた旨,そのような意味でひまわり基金は地方の過疎対策に非常に大きな力を与えてくれたものであり,本年7月の北海道弁護士会連合会定期大会ではひまわり基金の充実を決議したところであり,未だ司法支援センターの過疎対策がはっきりしていない段階では,ひまわり基金の増額,延長は是非とも必要である旨意見が述べられた。

続いて,長谷川直彦会員(東京)より,反対の立場から,過疎が何故できたのか,国の

経済政策から必然的に出てくるものであり,本来的に国の責務でやるべきものである旨,司法過疎も進んでいるが,国が裁判所支部や簡裁の統廃合を進め,新潟では三条支部に検察官がいないので全て本庁で起訴する旨の話があるなど,過疎を進め,司法を利用しづらくしているのは国であって,その対策の責務は国にあり,弁護士が自腹を切ってするべきものではないのが基本である旨,『ひまわり基金Q&A』によると,昨年のみで3,420万円の赤字状況であり,司法支援センターでの過疎対策の扱いも,総合法律支援法第32条によると,あくまで補完しか予定しておらず,大赤字を抱える国が赤字の公設事務所のような事業を引き取るはずがなく,まず自腹を切ってやろうと当番弁護士を始めたが,その結果LSCという最悪のものが出てきたのであって,自腹を切ってやろうという発想自体が間違いである旨,在野法曹である弁護士の使命は「在朝を批判して正す」ということであり,在朝の補完をするのは在野の姿勢に反する旨,戦時中にもいろいろ問題が起きるということで法律相談所が数多くできたが,現在のイラク情勢等の戦争状態におけるひまわり基金による法律相談というものとだぶるような気がする旨,いずれにしても議案に反対である旨の意見が述べられた。

 

続いて,根岸清一会員(第二東京)より,第二東京弁護士会ではひまわり事務所には力を入れており,十分な発展を願っており,ひまわり基金の継続には賛成だが,値上げは反対との立場から,そもそも特別会計となっているのは,独立して収支均衡させるためで,増額するためにそうなっているのではない旨,収支均衡のため今までいかなる努力をし,今後どのようにすべきなのか,その実績と意思表明が十分明らかとされていない旨,多くのひまわり基金事務所は黒字になっているのであって,開設資金援助を渡し切りにせず,赤字の際返還を免除する貸付金にするとか,努力次第で収支均衡の余地があるが見えてこない旨,給費制廃止もあり,これからの会員は会費の支払いは大変であって,会員数が増えるのであるから,会費の高額化は低額化に転じるべき時期である旨,従って延長には賛成するが増額には反対し,今後の努力を求める旨意見が述べられた。

 

次に,与世田兼稔会員(沖縄)より,賛成の立場から,弁護士過疎地域の石垣島,名護市に法律相談センターが,石垣島,宮古島に公設事務所が設置され,さらに石垣島に2つ目の公設事務所の設置が計画されているなどの状況を説明され,九弁連管内での法律相談センター・公設事務所も相当増加したが,まだ全国には法律相談センターが設置されていないところも多く,ゼロ・ワン地域も50近くが残っているのであって,ひまわり基金制度はまだ存続の必要があること,住民のための事業への取り組みであって,宮古島の公設事務所では,長期間未解決の困難な刑事事件について,当初本島の弁護人がついていたが弁護活動の困難さから共同して弁護人となって連日接見するなど被疑者の支えとなり,事実上不起訴となる釈放を勝ち得て大変感謝され,かつ,地元の高い評価を得るなどの活躍があった旨報告され,この基金による事業継続は弁護士の義務であると考えるとして,賛成意見が述べられた。

 

続いて,議長より,賛成2名,反対2名の意見を聞き,まだ発言通告が賛成2名,反対1名が残されているものの,討論を終結したい旨議場に諮られたところ,賛成多数で第5号議案の採決に移った。

 

また,議長より,一旦挙手による採決が議場に諮られたが,厳密なカウントをすべきとの意見が場内よりあり,厳密なカウントを行うこととした。

 

第5号議案についての裁決の結果は,以下のとおりである。

 

出席会員総数(代理出席・会出席含む。) 9145名
賛成 8381名
反対 663名
棄権 101名

 

以上より,第5号議案は出席会員総数の3分の2以上の賛成で原案どおり可決された。

 

[第6号議案] 外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法の一部改正に伴う会規整備の件

[第7号議案] 外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法の一部改正及び会則中一部改正に伴う会規整備の件

続いて,第6号議案及び第7号議案が上程され,東谷副会長から提案理由の趣旨が説明され,外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法の一部改正が行われたこと,外国法共同事業と,外国法事務弁護士による弁護士の雇用の2つが認められたこと,日弁連としては,来年の4月1日に改正法の一部が施行されるにあたり,外国法事務弁護士が弁護士又は外国法事務弁護士を雇用する場合の届出事項や権限外法律事務に関する規律などを明確にするため,外国法事務弁護士による弁護士又は外国法事務弁護士の雇用に関する規程を,外国法共同事業の届出や外国法共同事業に従事する弁護士及び外国法事務弁護士の法律事務の取扱に関する規律などを明確にするために,外国法共同事業に関する規程を制定する旨説明された。

 

続いて質疑に入るが,希望者がいなかったため討論に入った。

 

木下潮音会員(第一東京)より,賛成の立場から,「特別措置法改正に伴う適切な規制であり,日弁連の責任であるとともに権利である。外弁問題の経緯からも,外国法共同事業の必要性は明らかであり,我が国にも大規模事務所が増加していることから,外国法共同事業の名目で日本の弁護士が一方的に支配され従属する関係のみが成立していくと考える必要はない。外国法事務弁護士による弁護士の雇用についても,新規登録者の増加からこれを否定することは現実的ではない。今回提案された規定が,必要かつ十分なものかを検討すべきであり,外弁の権限外法律事務の禁止が実効性を持つこと,日弁連の調査権を明確にすることなどが押さえるべきところである。外国法共同事業に関する規程については,共同受任を認めつつ,依頼者に対する説明義務,広い守秘義務,届出と記録の保存及び日弁連,弁護士会の調査権が定められた。これらは,外国法共同事業という新しい形態の業務を開始するにあたり,その形態に特有の問題点を一括して指摘するものとして必要である。外国法事務弁護士による弁護士又は外国法事務弁護士の雇用に関する規程については,雇用者が被雇用者より権限が狭いという従来なかった事態を想定し,雇用者の権限外法律業務禁止に関し,被雇用弁護士は自己の計算で独立して受任することとし,雇用関係に基づく業務命令についても制約を設けるほか,外国法共同事業同様記録の保存義務や調査権が定められており,雇用を通じて外弁による日本法の法律事務取扱が行われることは認められないので,この程度の規制は必要である。」との意見が述べられた。

 

垣貫ジョン外国特別会員(東京)より,「外国法共同事業に関する規程第4条は,依頼者にそれぞれの弁護士及び外弁の権限並びに行う法律事務の範囲を説明することとされているが,外弁の依頼者は,事務所に対して依頼するものが多く,誰がどういう分担で業務を遂行するかは事務所側で決めてほしいというのが依頼者側の立場。第4条は誰の利益にもならないばかりか実務的に無用であり,外弁のいない事務所には同様の説明義務がないのであるから,内国民待遇の原則に反する。」旨の意見が述べられた。

 

エリック・ウィリアム・セドラック外国特別会員(第一東京)より,「現状において,外弁パートナーが,被雇用者であるアソシエートが自分と異なる範囲の資格を持っている場合に,そのアソシエートが取り扱うべき法律事務について受任を禁止する規定はない。外国法事務弁護士による弁護士又は外国法事務弁護士の雇用に関する規程第3条及び第4条は,改正法では要求されていない制約を新たに課すものであり,外弁法第5条の2に矛盾する。」との意見が述べられた。

 

石畔重次会員(名古屋)より,賛成の立場から,「平成15年度外弁法改正によりなされた2つの自由化,1つは外国法共同事業の自由化,もう1つは雇用の自由化は,弁護士の国際化に大きく寄与していくことが明らかである。しかし他方で我が国の弁護士資格制度及び弁護士の独立性が損なわれない配慮が必要であり,外弁自身が日本法事案を取り扱えるわけではない(外弁法第4条)。したがって,そういう特殊性に鑑みて適切なルールを設けることが必要である。規程案の目的は,外弁による権限外法律事務処理の防止と依頼者の保護にある。特に雇用については,適切な規定が必要である。いままでにも外弁が日本法に関与した事例が見受けられたが,雇用の自由化によりそのおそれが大きくなる。したがって,外弁が勤務弁護士を手足のように使用して権限外法律事務を扱うことがないようにし,被雇用弁護士の独立性を守る必要があり,適切な共同化のため必要である。日本の外弁制度は,世界的にみても開かれた制度である。今回の規程より,規律ある共同が促進され,日本の弁護士が一層大きな存在になることを祈る。」との意見が述べられた。 

 

岡田和樹会員(第二東京)より,「要綱案の作成段階で,実際に共同事業を営んでいる我々の意見のヒヤリングすらしないというのは手続上問題であり,内容も外弁法改正に真っ向から反するような内容であった。私が意見を言ったせいか,今回の案はだいぶ改善されたが,それでも外国法共同事業に関する規程案第15条は問題である。調査権限は非弁提携のように立法事実がはっきりしている場合についてのみ定められるものであり,外国法事務弁護士との共同について何か悪いことをしたという立法事実はない。外弁も同じ会員であり,会費も払っており,本国で厳しい規制に服しているのだから,エイリアン扱いはやめるべきである。」との意見が述べられた。

 

ここで,議長より,討論の終結が宣言され,議案の採決に入った。

 

最初に第6号議案について挙手による採決が行われ,賛成多数で原案どおり可決された。

 

引き続き第7号議案について挙手による採決が行われ,賛成多数で原案どおり可決された。

 

以上で,本総会の議案の審議は終了し,梶谷会長の挨拶ののち,議長が閉会を宣言した。