女性差別撤廃委員会の総括所見についての会長談話


国際連合の女性差別撤廃委員会(以下「委員会」という。)は、2024年10月29日、国連女性差別撤廃条約(以下「条約」という。)の実施状況に関する第9回日本政府報告書に対し、総括所見を発表した。


当連合会は、非政府組織としての立場で、委員会から日本政府への事前質問リストに掲げられていた全ての項目について、日本の現状を正しく伝えるべく、日本政府報告書に対する詳細なカウンターレポートを提出した。また、公開のブリーフィングにおいて発言の機会を得て、政府から独立した人権機関の速やかな創設の必要性、選択的夫婦別姓を速やかに実現すべきことのほか、家族問題の背景にあるDVや貧困に着目すべきこと、婚外子差別の未解決事項等の家族法に関わる課題、堕胎罪や母体保護法の改正の必要性、包括的性教育の導入等のセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス&ライツに関わる課題などについて報告した。


一連の審議を経て示された総括所見において、委員会は、日本政府報告書に対し、積極的な評価も含めて60項目にわたる指摘を行った。これらの指摘のうち委員会が懸念を示し、勧告を行ったものには、ジェンダー・ステレオタイプの排除(26項)、ジェンダーに基づく女性に対する暴力への対応強化(28項)、政治や公的活動への女性の参画推進(36項)、教育・研究分野における女性割合の増加(38項)、雇用・労働分野における男女間格差の縮小・解消(40項)、保健分野における現代的避妊法や安全な妊娠中絶へのアクセス確保、妊娠中絶についての配偶者同意要件の削除(42項)、婚姻・家族関係における離婚時の財産分与の平等や養育費の確保(52項)などがあるが、これらはいずれも当連合会が重要な課題として意見表明や取組を続けてきたものであり、かつ、審議過程において前述のとおり報告・指摘を行っていたものである。


また、委員会は、これまで当連合会が国際水準の人権保障のため必要不可欠であるとして求めてきた、個人通報制度や政府から独立した人権機関にも言及した。委員会は、選択議定書の批准に対するあらゆる障害を速やかに解消して、個人通報制度を導入するよう勧告し(10項)、明確な達成期限を設定した上で、パリ原則に則った政府から独立した人権機関を創設するよう強く勧告した(22項)。


その上で、委員会は、特に重要性が高く、早急な対応を必要とする事項として、①選択的夫婦別姓の実現(12項(a))、②国政選挙における供託金額の減額(24項(a))、③緊急避妊を含む現代的避妊法へのアクセスの提供(42項(a))、④妊娠中絶についての配偶者同意要件の削除(42項(c))をフォローアップ項目と指定し、これらの実施状況を2年以内に書面で提出するよう日本政府に求めた(58項)。


今回の総括所見における委員会の勧告は、条約そのものによって設置された条約の解釈に責務を負う機関によるものであり、日本政府は、条約の締結国として、これを真摯に受け止め、誠実に取り組むことが求められている。また、当連合会としても、今回の勧告を契機としてこれまでの取組等を振り返り、女性差別撤廃に向けてさらに努力していく所存である。



2024年(令和6年)11月14日

日本弁護士連合会
会長 渕上 玲子